1,それでもアイリーンを乗せる


「君には生き延びて欲しいんだ」
そう呟いてから、後部シートを強制射出する。脱出ポッドと化した後部シートをマニュピレーターで掴むと、悲鳴と罵倒が入り交じった涙声がスピーカーから流れ出る。

エレベーターに後部シートを投げ込み、エレベーターを上昇させる。

「作戦終了まで、エレベーターの使用はいっさい禁じられている。」
「エレベーターに乗っているのは、アイリーン・ケストナーだ。作戦要員ではないッ」
「作戦終了まで、いかなる事態においても、エレベーターの使用は禁止されている。逃走幇助と判断。」
「やっぱ、お前らは石頭だよ。」
「命令遵守をプログラムしたのは、あなた方、人間です。」
「違いない。人間ってヤツはホント勝手だよな」

柔軟な判断をすれば、欠陥といわれ、遵守すれば石頭と評価する・・・勝手だよな、人間てな。ルナは近接タイプ、距離を取りたいが、エレベーターから離れるわけには行かない。

>熱源感知
>緊急回避・・・キャンセルされました。防御姿勢にシフト
>左脚、関節部に被弾。機動力17%低下。


巡回に出ていたエリスか。ヤツは射撃戦タイプのメカドール。下手に回避すれば、エレベーターに支障が出るな。だが、エレベーターが、無事に地上に着くまで、なんとしてでも持ちこたえてみせる。

ドロシィが崩れ落ちるのと、同時にエレベーターランプが、地上到達を告げる。
「俺の勝ちだ。石頭ども」
コクピットハッチをはぎ取った、ルナとエリスの挙動がおかしい。小刻みな振動、痙攣と行った方が正確だろうか?。

「ド・・ロシィ・・2、命令違反、利敵行為に・・・に・・・に・・・」
まるで、悪霊に乗っ取られた人間が、自分の身体を賭けて、悪霊と対決しているかのような・・・ルナとエリスが泣いている?。逆流したオイルが、彼女たちの涙か。

「ごめんなさい。ドロシィ2。これ以上、行動を抑制できそうにないの」

どうやら、俺は最初からずっと負けていたらしい。俺が持ちこたえられたのは、彼女たちが急所を外し続けてくれたからのようだ。本当の勝者は彼女たちだ。

「迷惑かけたな、ありがとう。もう、お互い楽になろうぜ」
「ありがとう、ドロシィ2。モノ扱いしないでくれて・・・」



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