2、扉を閉める。


「ドロシィ2、退出して下さい」
ルナの声は、哀願のようだ。メカドール、100%機械で出来た彼女たちに、感情は存在するのだろうか?。撃つチャンスは何度もあったが、彼女は撃たなかった。

「ありがとう、ルナ」
エレベーターのドアが閉まる寸前、ルナは悲しげな微笑を残して、佇んでいる。

エレベーターが到着を知らせる鐘がなる。普段ならば、それは終業のベルで安堵する瞬間だが、今回ばかりは、違った。開きはじめた扉の隙間から、煙を吐き出す缶が飛び込んでくる。

ここが結婚式場で、乗っているのがゴンドラならば、ドライアイスだろうが、ここは戦場だ。アイリーンにしっかりと目を閉じて、操作盤のところにしゃがむように指示する。

ノーマルスーツとヘルメットを組み合わせなくては意味がない。むせるアイリーンに心を痛めながら、突入してくる兵士を待つ。最初に飛び込んできた兵士を引きずり込み、拳銃を突きつける。

「ようし、仲間の命が惜しければ動くなよ。俺だって人殺しはしたくないんだ」

だが、突入してきた兵士は、仲間ってなに?。と言う顔で、銃を構えると、躊躇なく発砲する。ガスマスク越しに見える瞳はとても澄んでいて綺麗だが、透明すぎて恐ろしささえ感じる。

対ボディアーマー用の徹甲弾、しかもバトルライフルとくれば、ボディアーマーと人体を貫通し、ノーマルスーツをも貫通した。俺の人質だった兵士は、怯えることも、抵抗することもなく、銃弾を甘受している。発砲している方も、まるで邪魔になった人形を処分するように、なんの呵責も、抵抗も感じていないようだ。

メカドールの方が人間らしいじゃねぇか。

吹き出した血がヘルメットのシールドに張り付き、泣き叫ぶアイリーンの姿を覆い隠す。



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