2、負けたら
>右脚、膝関節破損。
>着地衝撃吸収できません
踏み出した右脚が、着地と同時に、膝から抜け落ちていく。片足を失った人形は転ぶしかない。転倒の衝撃でモニターにノイズが走り、大きく歪む。
いや、歪んだのは衝撃のせいではないようだ。コクピットハッチが、金切り声をあげて、拒絶するが、それは虚しい抵抗だ。モニターとともにコクピットハッチがむしり取られる。
ルナは白兵戦重視タイプだっけか。それにしても大したパワーだ。
めくり上げられた、コクピットハッチからルナが、中を覗き込んでいる。ルナの無表情な顔が、より恐怖感を増長させる。
「ドロシィ2捕捉。負傷レベルB。脳波、脈拍ともに戦闘興奮値。錯乱兆候無し」
上の指示でも仰いでいるのか、イカレたのか、何事かをしゃべり続けているルナの視線が後部シートへ向かう。
「やめろ、その子に手を出すなっ」
叫んだところで、コンソールに足を挟まれ動くこともままならない俺には妨害する事もできない。
「・・・アイリーン・ケストナー。確認。消息不明から、保護へシフトします」
ルナの言葉を聞いた瞬間、全てのモノが脱落していくのが分かった。気力も体力も何もかもだ。とんだ独り相撲だ。
「罪状、友軍への故意の攻撃、命令不履行…極刑の通告です。」
「あの子をよろしく頼むな」
ルナの顔が、一瞬悲しげに見えたのは気のせいだろうか。俺はここで終わりだが、アイリーンは、ルナが無事に送り届けてくれるだろう。それだけが、唯一の救いだな。さあ、アイリーンが目覚める前に、やってくれ。
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