2、アイリーンと一緒にエレベーターに乗る。


なおも哀願するアイリーンの手を取りコクピットを降りる。
「行こう」

アイリーンとともにエレベーターに乗り込み、扉を閉じる。アイリーンは、状況がイマイチ把握しきれないらしく、俺とエレベーターのドアを交互に見つめるだけだ。

それに構わず、エレベーターを操作する。

「現状でのエレベーターの使用は、任務放棄、敵前逃亡と見なされる。退出しろ、ドロシィ2」

ずっとモニターしていたのだろう、作戦司令部からの通達。緊急時用の通話スピーカーは、特殊施設とは言え、安物を使っているようで、音割れが酷く、酷く無機質な言い回しに聞こえる。元々、感情などこもっていないのかも知れないが。

「繰り返す、現状でのエレベーター使用は・・・」
「うるせぇ」

9ミリ口径のボディピストルだが、スピーカーを黙らせるぐらいのパンチ力は持っているようだ。配線の短絡が、時折、配線を正常化させるらしく、何らかの声が聞こえるが、言語として認識することは出来ない。もう、取り返しはつかないな。

「アイリーン・・・君だけでも逃がしてみせる。すまないな、こんな事に巻き込んで」
アイリーンは何かを言いかけて、止めた。その顔は、少し沈んではいたが、喜色が見え隠れする不思議な表情だった。


「准将、カメラも破壊されました。」
「海兵隊を二個小隊向かわせろ。ヤツは錯乱し、所員を人質に取った」
「は?・・・しかし・・・」
「閣下の命令が聞こえなかったのか?さっさと伝達しろ」

ハスキーボイスと言うには魅力に欠ける、バスク・オムのしわがれ声に萎縮した通信担当官が、海兵隊へコールを始める。

「バスク・・・お前も手勢を連れて、出口を完全包囲しろ」

「は・・・しかし、たかがパイロットと、所員の娘1人。二個小隊でも多いかと・・・」
「相手がただの人間ならばな。海兵隊もテストだ。奴らの殺傷力が見たい」
「・・・了解しました。」



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