リプレイの読み方


テーブルトークのリプレイ記事、ないし、リプレイ本。と言うモノは、本来は、そのルールの世界設定や、ルール解説、そして何より、実際にプレイしている雰囲気を伝える。と言うのが、土台にあるものだと思ってます。

しかしながら、ルールの解説や、設定説明に終始するならば、それはさながら、物理の学術書のように、読むのに努力を要する類の本になってしまうことは、想像に難くありません。

テーブルトークRPGも、ゲームですから、いわば、プレイリポートであるリプレイを、読んでも楽しくないモノを、プレイしよう。などと思う人はいないでしょう。ですから、リプレイ本を読んでも楽しいモノにする。と言う発想は、素晴らしいものであったと思います。

しかし、そこに落とし穴もあった気がします。読んで面白い本という方向性の問題です。たとえば、もの凄い特撮と派手なアクションシーンがある映画も面白いですが、特撮もアクションシーンもないけど、ストーリーが良く出来ている映画もまた面白いものです。

本に転換するならば、優れた文体と描写力の本も素晴らしいですが、描写力が月並みでも、良く出来たストーリープロットをもった本も面白いと言うことです。

さらに、リプレイ本に変換するならば、確かに、凝った表現と綺麗な描写でつづられたモノも、読み物としては、面白いのですが、楽しくプレイしている雰囲気を伝えられるのも、また面白いのです。

この点に関しては、トーキョーN◎VAと、ソードワールドのリプレイ本が、もっとも適した例だと思います。N◎VAのリプレイ本は、表現の方を重視したもので、「猟犬達の午後」に至っては、もはや、リプレイと呼んで良いのか懸念するほど、小説よりです。対して、ソードワールドの方は、スチャラカ探検隊に代表されるように、プレイリポートと言う立場を頑なに守っています。

N◎VAのリプレイ本も読んでいて面白いですし、ソードワールドのリプレイ本も面白いです。

しかし、その立ち位置の違いは明確で、「このゲームは、こんなに面白いのだよ」と言うことを伝えようとしているソードワールドのリプレイと、1ゲームの1セッションを独立した読み物にしようとした。違い、と言えるのではないでしょうか。

商業主義の悲しさからか、一点集中し肥大化する傾向があります。つまり、リプレイ本のおもしろさを、読み物のおもしろさとして立脚したため、本来は、ゲームルールの二次商品であったハズのリプレイ本が、一次商品になりそうになった時期もありました。

また、読み物として立脚すると、キャラクターが注視され、独立する傾向があります。特に日本というか、アニメ、ゲーム好きには、ストーリーやシステム云々よりも、キャラクター単体を愛好する傾向が強いですから。N◎VAでは、ナミコ、メルトダウンの人気が高く、やがて、N◎VAのメルトダウンから、メルトダウンのN◎VAになってしまった感があります。(N◎VAに関しては、キャラクター性云々よりも、絵師の弘司さんの影響が高そうですが。)

キャラクターの一人歩きを懸念したのかどうかは分かりませんが、その気配が出始める(小説とかでました。連載終了後か、終了前かは分かりませんが)と、人気絶頂のうちに、スチャラカ探検隊は、その活動を終えました。

ゲームの雰囲気を伝えるのが仕事だったリプレイ本の一人歩きは、こんなプレイを、マスターとして、プレイヤーとしてやってみたい。と言う人を、ただ読むだけの観客に変えてしまった気がしなくもありません。


妙な例えですが、野球のルールを教えるのに、プロ野球の試合を観戦に行くことはあっても、ルールを教えるために、さよならゲームや、フィールドオブドリームスを見せる人はいないでしょう。

それと同じように、読み物として完成されたリプレイ本から、ゲームの運営や、シナリオの組み方を学ぼうとする人は減っていっても仕方ない。と思います。


どちらも、「テーブルトークってこんなに面白いんだよ」と言うのを伝える。と言うことから、スタートしたはずなのに、どこで、分かれてしまったのか。それは、リプレイに対する理想型の違いだとは思います。

けれども、プレイしている楽しい雰囲気を伝える。と言う、リプレイの土台を忘れてしまったのならば、崩落しても仕方がなかったのかも知れません。

ですから、受け手、読み手である我々も、ただ、それを読むのではなく、そこから、マスタリングの手腕。プレイヤーの反応(誘導やミスディレクションの設置基準になる)を見て取らなければなりません。。スポーツでもそうですが、見る事もまた、試合なのです。

最近ふと思うのは、三話ぐらいのショートキャンペーンのリプレイと、マスター側から、そのシナリオの発案から組み立て。そして実プレイでの、運用リポート(どこでミスをしたかとかも、ちゃんと見せる)、それから、プレイヤー側のリポート(リプレイの内容と近いですが、謎解きなどにどう対応したかなど、部分部分での詳細もしくは、最後の、相互評価を座談会風に載せるとか)

とか言うのだと、初心者マスターでも、シナリオ発案から、実運用までの参考になるかなぁと思うのですが。



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