ストーリーメイキング


究明と解決の違いで、ハードルを引き上げたような気もしますが、そんなことには、気にせず、シナリオメイクしましょう。ただ、より高いハードルを設定して、自分に磨きをかけるのは、決して悪いことではないですし、無駄にはならないはずです。


さて、物語は世に沢山あれど、大抵の物語を分解すれば、次の言葉に集約できます。

『悪い魔法使いにさらわれたお姫様を助け出す』

呆れてしまいそうですが、事実です。もちろん、このままでは、手垢で真っ黒ですから、姿を変えていますけども。映画のストーリーが、容易にファンタジーRPGシナリオに転換できるのは、骨子が同じなんですね。

たとえば、ブロークンアローだったかな。悪い魔法使いは、ジョン・トラボルタ。さらわれたお姫様は核弾頭です。ダイハードもまた、悪い魔法使いは、テロリストで、とらわれのお姫様は、人質です。また、方法も、救出するだけではなく、護衛する。と言うことも考えられます。映画のボディガードなんて、そうですね。

悪い魔法使い役も、人間だけでなく、自然災害や人災だったり、超常現象だったりするわけです。囚われのお姫様も、他者や無機物だけでなく、主人公自身がその役割を担っていたりします(脱出モノなんてそうですね、グリードでしたっけ、深海生物に占拠された豪華客船から脱出する奴。フロムダスクティルドーンも、捕らわれたのは自分自身でしたし)。

さらに、悪い魔法使い役を主人公にやらせることも可能です。列車強盗などは、莫大な現金と言うお姫様を、誘拐する事になるわけです。

いきなり、ストーリー、シナリオを作れ。と言われても、難しいのが実情です。そんなにパッと作れるなら、プロになってますしね。ですが、この骨子を頭の片隅においておいて、悪い魔法使いと、お姫様の配役をどうするか。と考えることで、作成のきっかけとなると思います。

配役が決まれば、目的や方法も自然と決まってくるでしょう。そうなれば、メインプロットは完成したも同然です。あとは、戦闘があるなら、戦闘のバランス調整。経験値の調整、報酬の調整。プレイ時間に余裕があるなら、ミスディレクションの設定。ストーリーギミックに凝るならば、ラストのどんでんがしの構想、手がかりを出す場所とヒントの調整、と、言うのが主な内容になります。

経験上、身内で、TRPGをやる場合、こったストーリープロットはかえって阻害となることも多いので、このくらい単純な方がやりやすいと思います。ただし、シナリオのどんでん返しは、PLにやるな。と思われたいならば、作るべきです。例えば、映画のボディガードも、いかにもなストーカー男が、犯人と思いきや、嫉妬が鬱積した姉が真犯人で、実行犯も意外と言える人でした。あのくらい出来れば、プレイヤーから賞賛されるでしょう。

まあ、いかにもなストーカー男は、ミスディレクションの方に入るかも知れませんが。


実例を挙げますと、悪い魔法使い役に、ゴブリン。さらわれたお姫様役に、村長を選んだとします。なぜ、ゴブリンは村長をさらったのか?。さらわれたのではなく、自分から行ったとしたら。ゴブリンと何らかの密約があるのか。と言う風に、広がっていくと思います。

ゼロから作るのは、難しいですが、ストーリーの骨子を作って、そこに配役を入れることから考えるのも手。と言うことです。他のやり方は、他所でも語られていると思いますので、簡単に。

出したいNPCやモンスターから考える。クトゥルフでは良くやる手です。どうしても、ツァトゥグァを出したい。ならどうしよう、ツァトゥグァは動かないから、PCを地下に落とすしかない。トンネル事故で、閉じこめられたが、地下への亀裂発見。そこは、ン・カイへとつながっていた。とか…速攻で発案した割りに、このネタ面白そうだな(笑)。

あまり推奨しないのは、先に色々な背景を作ってから、シナリオを作るパターン。普通のゲーム作りならば問題ないと思うのですが、テーブルトークでやると、PCの行動を規制できないので、シナリオが崩壊する可能性が高いです。背景にこだわりすぎて、解法が1パターンしかなくなる。と言うのも良くあります。


キャンペーンシナリオを作るとしても、骨子は同程度で、1つの障害を1シナリオとすることで、キャンペーンに出来ます。1シナリオで1つの手がかりを得ると言うスタイルです。テレビの連続ドラマがこのスタイルですね。

1つの骨子を一気にやってしまうのが、映画スタイルと言えましょう。


伏線とミスディレクション

ミスディレクション(誤りへの誘導)は、テーブルトークにおいては、いわば、時間伸ばしの手段です。脇道への誘導なので、当然と言えば当然ですが。

ですので、このミスディレクションの数だけ、プレイ時間は延長されていきます。あまりに短いのも困ったものですが、長すぎるのも問題です。ので、時間に余裕がある、次回の伏線を張りたい。と言うときに使用して下さい

厳密なミスディレクションではないのですが、情報収集のおりに、偽情報をいくつか混ぜると思います。

この偽情報をもとに、シナリオ組めば、偽情報から、伏線へと進化する訳ですから。伏線は張っておいて損はない。と言うのは、そう言うことです。


導入

人によって、凝る凝らないがはっきりするプレイヤーキャラクターの導入部分についてです。大別すると、受動(もしくは強制)型、能動型になります。

受動型は、強制型とも言えるように、事件事故などにより、強制的にグループ化してしまうものです。比較的手軽で、強引さを感じさせないので、自然なパーティー組みが出来るのでお勧め。手前味噌ですが、新世黙示録用に変更した私の「フェイタルエラー」も、交通事故で強制的にパーティーとして組ませてしまうパターンです。これだと、年齢性別職業など、プレイヤーの思惑を邪魔しません。

受動型の最大パターンは「君たちはもう知り合いで、冒険者のパーティーだ」としてしまう事です。現代物でこれをする場合には、特定グループに所属と言う形になります。取材チームだったり、同じ探偵事務所だったり。この事務所タイプは、必殺仕事人シリーズの様な元締めスタイルにすると、シナリオの導入が楽になります。元締め(探偵長や所長)から、仕事が回って来るというスタイルになるわけです。

このスタイルは、やや無理があるという事でしょうか。ですがまぁ、PCは初対面でも、PLはすでに面識があるので、気にしない人は多いです。

能動型は、特定のPCに、他のメンバーを捜させると言う形になります。例えば、探偵が依頼を受け、依頼をこなすために必要なメンバー(他のPC)を捜す。と言う事です。

このスタイルの究極は、各PCごとに、事件の発端があり、事件を追ううちに、他のメンバーと合流する。と言う形になります。ドラクエ4か5あたりを思い浮かべて下さい。

このスタイルの欠点は、熟練したプレイヤーが必要と言うこと。出番のないプレイヤーがヒマになると言うこと。マスターの手間が、PCの数だけ増えると言うことです。反面、ビシッと決まると、これ以上ないぐらい盛り上がります。

最初は、2グループぐらいに分けて、戦闘系グループの導入。調査系グループの導入とか、にした方が無難です。


忘れてはいけないこと。

さて、通例、シナリオ作りは、マスターの数だけ作り方があるものです。発端、導入、結末(あるなら、ダンジョンなど)だけを決めて、あとは全てアドリブ。と言う豪快な人もいますが、大抵の人は、一通りの道筋を決めると思います。

それは、小説や通常のシナリオに近い、一本道のシナリオであることが多いでしょう。盛り上がりポイントという演出も、作為の偶然というご都合主義が入っているかも知れません。

戦争、スポーツを問わないのですが、ここで、いったん、敵側の視点でモノを考えると言うことは重要です。また、妙な例ですが、現日本ハムファイターズの新庄選手が、阪神の野村監督時代。オープン戦ながら、投手をやらされました。これは、バッター心理だけから、モノを見るのではなく、投手心理からも、配球を読む。と言う教えだったわけです。

したがって、マスターの視点を捨て、自分がプレイヤーだったら、この状況にどう反応するか。と言うシミュレートをすることが重要となります。プレイヤーの素性が分かっている身内でのプレイならば、より一層、細かい予想がつくでしょう。

私は、その予想で、ミスディレクションを設定したり、想定外の場所を調査しないように仕向ける防御策などを考慮するわけです。今にして思えば、この作業が、私の主観をシナリオから消す作業だったのかも知れません。往々にして「これだと、NPCが出しゃばりすぎだな」とか、気づくのもこの時ですので。

ちなみに、現実生活でも、相手の立場に立って、出方を読む。と言うことができると、かなり優位に物事を運ぶことができます。一枚上手だ。の、この一枚は、相手の考え方なのですから。

しかし、予測を立てすぎて、予想が外れたときに、パニックになると言うは、相手の立場に立っているようで、自分の考えをごり押ししているに過ぎないので注意。まぁ、予測が外れた時点で、相手の立場になりきれてない。と言うことではあるのですが。



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