シナリオメイク実例


お恥ずかしながら、私のシナリオ作成の実例をお見せしようかと思います。可能な限り、詳細な点までお見せしようかと。また、プロの作ではないので、失態をも隠さず見せる予定です。


発案
私は、閃きを待つタイプです。なにか他の記事を書いていたり、映画やアニメを見ているときにひらめいたりします。私は、インスピレーションとは知識や経験の積み重ねがないと起こらないと思っていますので。もちろん、日々頭の片隅で、そのことについて、コチャコチャと考え、それに関連する知識を無意識に集積する必要があります。

また、私は、シナリオメイクで説明していながら、骨子から作ることはしません。大抵、オープニングシーンや事件の発端を思いつき、そこからシナリオへと広げることが多いです。

と言うのも、「悪い魔法使いがお姫様をさらう」と言う骨子だと、どうしても、最後は悪い魔法使いとの対決が無いと、盛り上がらないし、解決した気にならない。からです。よく言われることですが、クトゥルフの場合「来た、見た、逃げた」になりますので、最後の対決と言っても、姿を認識したら逃げる。と言うことになりがちですから。

では、せっかくですので、シナリオメイクのところで思いついた「地震でトンネルに閉じこめられ、地下世界を冒険する。」と言う発端から、広げてみましょう。クトゥルフ用シナリオとして考えます。


詳細
まずは、年代です。トンネルと言うことで、車を考えます。しかし、列車もトンネルを通るわけですから、年代は特に固定しないでも良さそうです。大規模なトンネルが1890年にあったかどうか分かりませんか、その辺は創作の嘘として割り切りましょう。また、PLも知らないでしょうし。

場所は、日本でも面白そうですが、ベーシックにするため、アメリカと設定します。ギャップを生むために、東海岸よりも、西海岸で事件を起こした方が楽しそうです。ロサンゼルス近郊としましょう。場所は容易に変更できますしね。

PCは、休暇の帰り、もしくは休暇に出かけるために、車ないし列車に乗っていて、地震に遭遇。とすれば、特に職業にも縛りは必要ないようです。部族の戦士とかはダメですが。警官にしても、休暇なり出張と言うことにすれば何とかなります。


目的
さて、地震でトンネルに閉じこめられ、亀裂をたどっていくと地下世界に出た。として、そこからシナリオの目的を考えなくては行けません。このシュチュエーションでは、脱出と言うか、生還するのが目的とするしかないようです。

ダンジョンチックに設定して、もろにお化け屋敷なシナリオにすることもできますが、他のルールではともかく、クトゥルフでは、それは救いのないシナリオになります。怪物が出るたびに、正気度チェックして逃げ回る。まさにお化け屋敷となるでしょう。他のルールならば、探索脱出型にして、敵をなぎ倒しながら進めばよいです。

クトゥルフでは、なにか目的を設定すべきでしょう。地震と言うことで、ドールを連想しました。また、クトゥルフコンパニオンのシナリオで、封印されたドールのシナリオ(古き印の付いた謎の水晶がドールの活動を止めていて、その水晶を引き抜こうとする魔術師との対決)がありました。それを利用することにします。

まだ若いドールの活動を休眠させていた謎の水晶が抜けかかっていて、そのせいで地震が頻発している。と言う理由にも出来そうです。


手段
抜けかけている水晶を再び差し込めば良いのですが、まだ若いと言っても、ドールはドール。巨大です。どうやって差し込むのか。考える必要があります。あえて設定せず、PLに発案させるというのも手法の一つですが、やはり、保険としてなにか一つは、手段を設定しておくべきでしょう。

もちろん、ゲーム中にプレイヤーが別の方法を発案したならば、そちらを優先すべきです。優れていればもちろん、例え劣っていても、プレイヤー発案を優先すべきです。たとえ、ロサンゼルスが全滅したとしても、それはそれで一つの物語なのですから。固定化された物語ならば、コンピューターゲームや小説を読めばよい。と言うことで。

さて、私は、PCだけでは、どうにもならないと予想しました。何回か使用したキャラならばともかく、作成したばかりのキャラクターには荷が重そうです。そこで、地下の住人グールたちと、協力して何らかの打開策を打ち出すことにしましょう。最終的な出口もグールが案内してくれることで解決できそうです。
(この段階では、方策が思いつかないので放置します)


イベント
一応の目的が想定できましたので、イベントを想定します。ゲーム、ひいてはシナリオを盛り上げるための小ネタですね。ピークは、ドールを見つけ、地震の原因がドールにあり、封印が解けそうになっている。と言うのをピークにする予定です。

とすると、ドールの発見から、再封印までをかなりテンポ良くしないと、興奮が冷めてしまう事が考えられます。これは、課題となるでしょう。

また、盛り上げるために、地下に入った当たりから、グールの姿を垣間見せ、敵か味方か。と言うようなプレッシャーをかけることにしましょう。他にも、地下に住む独立種族か奉仕種族を捜して、序盤は、地下世界の観光をさせるというのも手ですね。

んー、ミリ・ニグリとかあの辺の連中が、ドールを起こしたがっているとする事もできますが、そうすると、コンパニオンのシナリオに似すぎるしなぁ。襲われているPCをグールが助ける。と言うことで、和解させるきっかけにも出来るか。コレもまた課題として、放置します。

追記:2012年の天啓により、クトーニアンは水に弱い。との設定に気がつき、地下まで水を引き込む。と言うのが、ドラマチックで良いと思います。
よって、ドール>クトーニアンに変更。と言うか、地震起こすのはクトーニアンやっちゅーねん。

また、成体でも4000度までしか耐えられないので、ヨグ・ソトースやクトゥグァを召喚できれば焼き殺せるでしょう。召喚者も生きてないでしょうが。
さらには、地下探検モノの定番、火山の爆発で、マグマが流れ込む。でも良いでしょう…あ、地下世界の原住民とか出して、ターザン女とか出します?山本さん?。
ドリームランドの技術か、ミ・ゴの鉱物採掘基地がマグマの地熱を利用しているとかで、原住民が神殿扱いしている基地とか?

ワタシ的には、何らかの地上技術で岩盤を撃ち抜き、鉄砲水に追われながら…と言うインディジョーンズ的なのがお勧めかも。でも、マグマも良いなぁ…あ、採掘基地探検にした方が、トータルで楽かもなぁ…グールもミ・ゴと対立したくないしで、よそ者にやらせると。実は、マグマぐらいでは クトーニアンは死なないとか言うオチもあり(成体なら本当に死なない。と言うか、マグマの中で生活してるし。ただ、若いと高温には耐えられない)。苦悶のようにも、歓喜のようにも見えた。みたいな〆とか。

(しかし、この元記事いつ書いたっけ…2005年ぐらい?…頻繁にプレイしていれば、もっと早いんでしょうけどねえ…必要がないと閃かないわ…)


アイテム
登場する特殊なアイテムが必要かどうか、またお助けアイテムがいるかどうかもチェックが必要ですが、この段階では、シナリオ解決に必要なアイテムがいるかどうかだけ考えましょう。

解決に必要なのは、封印のクリスタルですが、これは半分ドールに埋まっているので特に必要はないでしょう。

追記:岩盤を撃ち抜くためのダイナマイト。もしくは、召喚のための魔道書。ドリームランドないしミ・ゴの技術による火山のコントロール施設など。


フェイズ進行
私は、シーンとフェイズで進行させることが多いです。例えば、地震発生から、閉じこめられ、亀裂を探索するまでをシーン1として、運営に必要な流れをフェイズとして分割するわけです。

分割したフェイズごとに、プレイヤーがやりそうな困ったことを想定して、その対処法を考慮しやすくします。また、小分けにすることで、そこでやるべき事が、小出しになっているので、運営が楽に出来るので。またポイントとなるべき情景描写もしやすいのですし。

また、シーンがいくつになるかで、だいたいの所要時間の目安になります。シーン5ぐらい行くと、5〜6時間はゆうにかかる長編になります。シーン3ぐらいで、中〜短編で、それでも、2〜3時間のプレイ時間でしょうか。


シーン1
トンネルに入ったところで、地震。開いた亀裂から地下に潜り込むまでです。このシーンで考えられるのは、地下に行く事を拒み、その場で救助を待とうとすることでしょう。

対処法として、車の場合、破壊された車からガソリンが漏れ引火。強制的に地下へ送り込むことにします。列車の場合、時代にもよりますが、蒸気機関車の場合、機関士が止めない限り、煙が立ちこめていきます。食堂車から火災が起こっても良いでしょう。コレで追い立てることにします。

また、この段階での注意点は、持っている装備についてです。バカンスに行く途中か、帰りの途中として、キャンプ用品や旅行道具、食料など持っていることにしても良いでしょう。明かりの確保が重要です。しかし、武器やダイナマイトなんかは当然持っているわけがありません。警官や探偵、テロリストなら別ですが。

また、亀裂への正当な論理性として、こうしたトンネルには、安全上出口がいくつか設置されているはずで、亀裂からその出口へ行けるはずだ。と言う理論武装することにします。

亀裂に入った時点で、もう一度地震を起こすなりして、亀裂を閉ざします。

フェイズ1
状況説明。プレイヤーたちに、現状を説明します。時代や国、場所などです。また、休暇で移動中であることも説明します。その際に、どういう休暇にするのか聞いておくことにします(日帰りと宿泊では荷物に差が出ますし、キャンプとホテル泊まりでも、持ち物に差が出ます)。

時代によっては、当時の風俗や社会情勢などをそれとなく教えることも良いでしょう。

フェイズ2
トンネルに入り、地震が起こったと説明します。導入の盛り上げとして、技能判定をします。成功すれば、特にダメージ無し。失敗したならば、軽いダメージを与え、大失敗ならば、車ならばPC脱出後、爆発炎上することにします。

トンネルは落盤して完全に塞がれていて、出口となりそうなのは、亀裂だけ。と認識させます。このまま救出待つと言う感じになりそうだったら、火災とかで追い立てることにします。

列車だと他の乗客、車だと他の人の扱いも問題となるところですが、事故でさっくり死んでもらうか、もの凄い偶然(作為とも言う)で、たまたま他に人がいない状態だった。と言うことしましょう。

フェイズ3
亀裂は、少し進むと、洞窟のようになっていて(当然壁は土)、崩落の危険は無いようです。若干の臭気はあるものの、下水道のような臭いで、ガスとか危険な臭いではありません。天然ガスには臭いがないそうですが。大丈夫そうだと、全員が洞窟にたどり着いたところで、亀裂をふさぎます。


シーン2
ここが懸案です。シーン2をどこまで設定するか。現時点では、ドールを見つけるまでを想定します。その間にやるべき事は、地下世界の観光、神話生物(最初は、敵意のないのがよい)との遭遇、それと、グールの監視にそれとなく気が付かせ、サスペンス感を出ししたいところ。

そして、ドールを発見して、ピークに。と言うのが理想です。発見に至る過程と、グールとの接触を考えると、シーンを分割した方が良いかも知れません。また、地下都市の規模と様式、情景描写をどうするか。と言う問題も浮かび上がりました。地下都市と言うのを止め、亀裂はドリームランドとの連結点であったことにします。

ランプイモリやブオポスなど、害意のない連中を出すことが出来そうです。見てくれは悪いが、人なつっこい連中を出すことで、緊張をほぐすことも出来そうです。ただし、ややこしくなるので、ドリームランドの地上には出ないことにしましょう。



シーン3
ここでは、設定の吐露をメインに組み立て、ドールをいかに再封印するか。と言うのを問題にします。

・ドールがいるのは、夢の国と現実の境界線上である。そのため、地震はどちらにも影響している。
・グールたちも何とかしたいと思っている。
・地震は、ドールの寝返りのようなもので起こっている。
・水晶柱を差し込めば、また休眠するはずだ。

追記
・クトーニアンは水弱い
・高温に強いと言っても限度がある
・地下水脈があるが、厚い岩盤で隔たれて手が打てない
・ミ・ゴの放棄された採掘基地になにかあるかも知れない

と言う点をグールたちから語らせるとしましょう。現時点で思いついたのは、水晶柱の上の岩盤を落として、その岩の重みで埋め込む。という方法。不可能では無さそうですが、いろいろと準備が必要そうです。

他にも、最初に誰かが差し込んだから、ドールは休眠しているわけですから、その最初に埋め込んだ道具なり、方法なりを再利用すると言うのも手ですな。その際は、ドリームランドの過去の文献などを調べると言う風に広げることも出来そうです。

追記
ダンジョン探索が一番管理しやすいので、やはり、ミ・ゴの採掘基地を調査する過程で、岩盤を割る。マグマを放出させる。クトゥグァを召喚する等、探索者に選択させるのが良いでしょう。採掘基地を探索することで、正気度チェックのポイントも稼げます。ランプイモリを捕まえて灯り代わりにするとか、ガグがうろついているとかでアクションよりにとか。

グールがミ・ゴの基地を探索しないのは、不可侵条約を結んでいるからで、放棄した施設とはいえ進入したら、あとで何を言われるか分からない。と言うことにすればよいでしょう。何十年も住んでいなくても、条約破りは、破りですから 。

ともあれ、決断のシーンでは、親グール派と敵対派に分かれてくれると、嬉しいところです。事が片付いたら、奴らは危害を加えるかも知れないとか。それこそ、原住民を襲うかもとか。



エピローグ
一番、恐怖感を与えられる場面であり、余韻を持たせることで、ひと味違うと錯覚させられるポイントだと思ってます。

無事に生還したPCが、家でくつろいでいると、ニュース報道で、世界各地で地震が頻発していると言うニュースが流れています。そして、最後にグールの言った、こういう場所はココだけじゃないんだよ。と言う言葉が、脳裏をよぎります。

と言うのがベーシックな終わり方だと思います。

他には、グールに賛同して、グールの仲間になるPCがいても良いでしょう。地上に必要な道具を取りに行くと言って、外に連れていって貰い、ドールを無視して、事件から逃げ出す。と言うのもアリでしょう。

追記
マグマ放出を選んだ場合、じつはクトーニアンはマグマの中で生活しており、殺せてないのではないか。と言う疑問に到達したところで、また地震がっ。と言うのも、綺麗なサゲかと思います。

 


推敲
大まかな形がまとまったので、再度チェックをします。論理矛盾や致命的な欠陥がないか。はもちろん、もっと良いアイディアが無いかをも考慮します。ドリームランドの地下とはいえ、情景描写をどうするか、どの規模の大きさにするのか。と言うのもまだ決まってないですね。

また、現時点では、小イベントが無設定なので、あと、三〜四回の正気度チェックのポイントは作りたいところです。
候補としては、ランプイモリ、ガスト、ガグ、などでしょうか。

(この時点で煮詰まっているので、しばらく放置して天啓を待つことにします)

追記
小イベントは、ミ・ゴの採掘基地で神話生物のと接触や、ミ・ゴなので脳の入った金属缶など候補に出来ます。ちょっとしつこくなりますが、グールや金属缶の中に、探索者の親族や、探偵の場合探していた失踪者がいるというのもアリでしょう。

 

概ね、形に出来たと思うので、実際に使用したいという方は、採掘基地のマップ作りと、グールやら地下住民の主要NPCなどを自作し、完成としてください。
………あーでも近年の程度を考えると、ダンジョンレベルデザインも指針というのも必要なのかなぁ…敵とアイテムの配置、構造とか…迷宮クロスブラッドとかで育ってると…必要だろうなぁ…でも、私も下手なんだよなぁ……


2012/11/10 ドールとクトーニアンを間違えていたので改訂。そりゃあ、ふん詰まる訳だわ。
 


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