サイコミュの話


サイコミュと言うと、ビット・ファンネルに代表される無線型と、その他の有線型に分類される訳ですが、そもそも、サイコミュは、サイココミュニケーターの略で、脳波コントロールシステムとなっています。

脳波の細かい解説は不可能ですので、概要を考えると、パイロットの脳波を、サイコミュ発信器が、増幅発信し、受信機、つまり、ビットやファンネルが、受信する。と言う形になるかと思います。

で、サイコミュの根幹にかかわる問題として、脳波の伝達による機械制御の限界があります。普通に考えて、一人の人間が、複数のモノを、同時にかつ、それぞれ別個の機動を思考する事は、まず不可能と言う事です。まぁ、それが出来るからニュータイプという言い方も出来ますが。

また、脳波は、個々人で、異なりますので、パイロットの特定周波に調整する事が必要となります。そのおかげで、混線することは無いと思いますが、精神波であるが故に、近い波形のパイロット同士では、精神の混濁が起こる可能性があります。得てして、ニュータイプは、感応力が高い為に、こうした精神波を拾いやすいと考えられます。

初期のサイコミュが、ただパイロットの脳波を増幅させ発信するだけの機械だとしたら、ハム無線の強力な電波で、受信障害が起こるが如く、他人の思考波が入り込んでくるという不快感に悩まされます。こうした側面に目を付けたのが、エンジェルハイロウかも知れません。ともあれ、ララァ・スンの初陣で、感応力がある人間が「ラ・ラァ」を聞いたのは、まぁ、拾いたくもない電波を拾ってしまったラジオと言う事でしょうか。

思考そのものでなく、名前が伝わったのは、脳波が混線しない為に、この周波は「ララァ」のもの。と言うことで、トレーサーがごとく、サイコミュによって仕組まれているからかも知れません。


ファンネルの制御を想像した場合、航空管制官が一番近いのではないかと思います。空港に進入してくる航空機を高度速度を脳内シミュレートして誘導する。分刻みの航空管制官ですら激務なのに、ファンネルの制御は、おそらく秒刻み。くわえて、MS本体の制御のみならず、MS本体による戦闘もこなすとなれば、それはもうヒトではないと言える気もします。

その為、複数の受信機を扱える貴重な能力者を損失しない為にも、少なくとも複座にして、MS本体パイロットとファンネル操者と分業すれば、かなり変わってくるかと。複座のキュベレイに、シャアとララァが乗っていると考えれば、それはもぅ。

もう一つの問題として、ファンネルの制御そのものが考えられます。脳波コントロールと言っても、パイロットがどうにかして操作を思考することが必要です。その場合の思考は、直接乗り込んでいるがごとく、操縦しているイメージなのか。はたまた、ミニカーで遊ぶが如く、全体を見渡し、直接手で動かしているイメージなのか。と言う事です。

普通に想像すれば、直接乗り込んでいるイメージ。だとは思うのですが、そうすると、1パイロット当たり1つのファンネルで限界となります。よしんば、複数制御したといっても、全てのファンネルが同じ動きをする事になります。

この問題を回避するために考えられるのは、コンピューターによる半自動にすることなんですが、このシステムは、インコムと呼ばれているので、却下ですかね。まぁ、書きますと、あらかじめ、制御パターンを入力しておき、チョイスする形となります。移動パターンB。射撃パターンDと言った命令を、サイコミュに乗せて伝えていく訳です。

イメージとしては、リアルタイムSLGや、ステトラジーゲームで、ユニットをクリックし、メニューをポップアップさせ、命令を出す。と言うのに近いかと。ああ、これを脳波でやれば、サイコミュで、コンソールで直接やるとインコムなのかも知れません。これならば、複数のファンネルを制御出来ますが、MS本体の操縦は、やはりムリでしょうね。

さて、基本構造の問題から、ハード的な問題に目を移しますと同時に、有線と無線型の長短を見てみましょう。

無線型は、ビット、ファンネルに代表されます。無線であるが故に、機動が制限されないため、機動だけを考えれば、かなりの驚異となります。

しかし、ビットはともかく、ファンネルはかなりの小型で、あの容量に、推進力、姿勢制御バーニア(アポジモーター)、さらには、推進剤のタンク。サイコミュ受信機(制御を含むとしても)、ビーム砲(実体弾では反動と弾倉の問題があります。)などを詰め込む訳ですから、どうしても、推進剤量はかなり少なくなりますし、ビームの出力も、砲長身がとれないので、低出力のモノになってしまいます。

どう考えても、量産機のビームライフル以下のサイズしかないファンネルに、上記のモノを詰め込む事は、不可能かと。実際のところ、ファンネルは五月蠅く飛び回るモノの、ちくちくとしたダメージしか出せないのかも知れません。

出力面を考えると、リフレクタービットの方が、有用性は高いと思われます。課題であろう、ビットへの射撃もビットとMS本体でレーザー誘導などすれば、クリアーできるかと。

推進剤のコトを考えても、ファンネルの物理的な稼動時間は短いものであろうとご指摘を受けました。確かに、ファンネル搭載機の運用を考えると強襲機に分類されるのかも知れません。ゲーマルクやサザビーなどは、モロに強襲機でしょう。が、キュベレイは、強襲というには、若干火力に難があると思われます。

対して、有線型は、サイコミュ受信機の設置が必要なく(有線で直結しているのですから)、受信機の大きさにも寄りますが、その分軽く、広く使えます。本体とつながっているので、電力関係はそのまま本体から供給出来ますので、ビーム兵器も、無線型よりも、高出力のモノが使えるでしょう。

ただし、有線であるがゆえに、機動の範囲に限界があり、また、変に動かすと、本体の機動にも問題が生じるということを考えますと、有線ビーム砲などの機動は、かなり限定されるのかも知れません。

どちらにしても、無重力で、高速で動き回るファンネルなどの制御は、直接制御でもかなりの困難を極めると思います。

サイコガンダムの拡散ビームも、サイコミュ制御であるという設定のようです。コレを考えるに、ビーム砲門をサイコミュで制御している。と考えるのが、一番素直でしょう。要は、内蔵、固定されたファンネルと考えると、分かりやすいかと。コレならば、ビームの出力問題や、ファンネルの稼動時間の問題をクリア出来ます。

ほぼ、全周にビームを撃ちまくる浮遊要塞のサイコガンダムは、味方への誤射を前提としているような機体ですが、拡散ビームがサイコミュ制御であると考えれば、誤射はかなり少ないのかも知れません。

さらに、リフレクタービットを活用する事で、雨のようなビームをかわしたと思ったら、背後からまた降ってくる。と言う恐ろしい兵器となります。ただ、問題は、ビームは距離を進むごとに威力が減退していくので、反射後のビームはかなり威力が落ちるのではないかという懸念があります。まぁ、サイコガンダムのビームならば、減退しても量産機のビームライフル並の威力はありそうですが。

サイコミュで、砲門とは言え、機体そのものを制御する。と言う考え方が、サイコフレームという、機体そのものをサイコミュで制御する事で反応速度を上げる。という発想につながったのかも知れません。


さて、サイコミュを語る上で、ほとんどの人が意識すらしていない使用法に、MSそのものをサイコミュで遠隔操作する。と言う使用法です。ガンダムXのビットとは、若干ことなります。

パイロットは安全な場所、母艦などで操作すればいいので、撃墜されても、人的被害は無いですし、パイロットが乗っていないのですから、期待の限界まで、加速度・反応速度は上げられます。最悪、敵艦に取りついたら、自爆という外道なコトも可能です。

感応力は女性の方が高い場合が多い(女の勘で、浮気がバレるのは、発信者(男)の精神の揺れをキャッチしているからだろう)のだが、女性は戦闘に適正が無い場合が多いし、身体面で耐Gレベルが男性より下がるのは仕方ない。耐Gレベルが低いと言うことは、MSの機動限界に直結する。

しかし、サイコミュ操縦ならば、そうした、身体面での制限はなく、ほとんどゲーム感覚で操縦出来、戦闘に適さないニュータイプをも活用出来ると思われます。



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