ドムを褒め称える


兵器の矛盾である機動力と防御力。この二つを両立させた名機がドムです。
巨躯でありながら、機敏な動きを見せて、ホワイトベースへ肉薄、ジェットストリームアタックという、さながら、分身の術のような技で、デビュー戦を飾ったドムに、心ひかれた方も多いでしょう。

しかし、ドムの開発時期を考えると、明らかに対艦(対ビッグトレー)用の機体でしょう。それはバズーカが主武装と言うことからも、明白です。ホバー走行で肉薄、360oという巨大なバズーカの一撃は、当たり所さえ良ければ、一撃でピックトレーを戦闘不能に追い込めたでしょう。

そう、グフがサムライの魂を具現化(接近戦、格闘戦を重視している。さながら、機関銃に対して切り込みをかけるサムライの様だ)したMSならば、ドムは忍者なのです。音もなく忍びより、大型艦を破壊する。まさに、忍者。

ホバー音も、歩行に比べれば遙かに静かだったと思います。が、現代のホバークラフトの喧しさを考えると、あまり差がないかも知れませんが。音紋照合するまでもなく、この喧しさと風はドムだ。と分かったかも知れません。しかし、歩行による腰部ユニットへの負担は、ほとんど無くなり、パーツ補給に難のあったジオンには、有り難いMSだったに違いありません。

また、ホバー滑走という移動方法は、パイロットの職人化をさらに加速したはずです。いくらコンピューターがある程度までは補正すると言っても、例外ばかりが発生する戦場で、ホバー滑走しながら戦闘し、あまつさえ射撃、格闘までしようというのですから、パイロットの負担は相当のモノだったのでしょう。

グフと同じく、かなりパイロットを選ぶ、機体だったはずです。それでも、グフよりドムが好まれたのは、その装甲の厚さと、スピードのためだったと思われます。B型グフよりは汎用性高いですし。

リックドムが開発された経緯には、ゲルググの量産が間に合わなかった。ということもあるでしょうがオデッサの敗戦後、宇宙へあがったベテランパイロットの多くは、ドム乗りでザクへ逆行させる、機種転換訓練をするより、リックドムを作った方が速いし、有効だったのかも知れません。

さらに、未だ戦力の大多数を、大型艦船に頼る連邦を相手にするには、強襲機というコンセプトは、予想以上に効果があったのでしょう。

しかし、オデッサ、ジャブロー以降、ジオンは防戦がメインとなります。ドムはその性格上、防御戦には、とことん向いておらず、その優秀な機体性能の割に、稼働期間の短い、恵まれないMSだったといえるでしょう。

MS戦が確立しておらず、また、こんなにも早く対MS戦が発生するとは思っていなかった、技術者や軍が、手探り状態だった一年戦争時代独特のMSなのではないでしょうか。


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