さて、地球連邦の経済を見ることで、軍隊の質と言うモノを考えてみましょう。
そもそも、スペースコロニーの建設は、増えすぎた地球人口の調節と、地球環境を休息させるために行われたハズ。となれば、公害の元である、重工業は当然、月やコロニーの産業として設定されていたはず。
が、密閉されたコロニーで、噴煙や酸素をバカスカ消費する重工業を本格稼働させるには、時間が必要ってなわけで、最低限の活動は、地上でも認可されていたはずです。とすると、莫大な利益を生む独占企業が誕生するのは目に見えているわけで、まず、貧富の差は、作られるべくして作られたのです。
と言っても、地球上では、産業活動が規制されているため、どちらにしても経済活動は停滞していきます。そうなると、コロニーに少しでも税金をかけることでしか、税収が得られなくなります。そのため、コロニーでは消費税率や、関税もかなり高めに設定されていたと思います。ライフラインの基本使用料に加えて、空気の使用料金(空気の浄化、生産、膨張するとヤバイので、冷却システム。あと天候管理などなど)もかかるハズです。
さらに。連邦政府のからくりとして、コロニーが完成すると、耐用年数があまりない。と言われ、次のコロニーへの移民が半ば強要されたりします。とうぜん、次のコロニーへの移民は借金(徴税で回収される)となります。なかば、奴隷扱いですねぇ。
さて、地球には残った人は、2種類です。裕福な階層と、極貧階層です。と言うのも、富貴な階層は「宇宙なんて…」と言う思想があったし、先祖伝来の土地を…とか言う人もいたでしょう。貧しい方は、宇宙までの旅費が払えなかったりして、行きたくともいけなかった人です。
アメリカへ移民したイギリス人も、中産階級(宗教的に迫害されていたピューリタンでもありました)がメインでした。
加えて、地球環境の休息という名目で、産業の縮小が行われます。こうした場合、まずダメージを受けるのは、町工場やなんかの中小企業。大企業に吸収されるか、倒産か…こうして失業率が上がっていき、ますます、貧富の差が開きます。
そのころには、コロニーで産業が出来るようになっており、元々、光熱費が無料に近い上、無重力が幸いして(重力がないために均質に混ざる。逆に沈殿、分離させるのは難しくなりますが)、高性能品が、安価で作れしまいます。ぶっちゃけると、月面上の鉱物岩石を打ち上げて、衛星軌道上で受け止め、ドラム缶に入れて、太陽光線を当ててやれば、勝手に精錬してくれるわけで、燃料ガンガン燃やして、精錬しなきゃならない地上とは、基本コストが違いすぎる。
そうしてくると、地上にも安くて質の良い宇宙製品が入ってきて「俺たちの仕事が無いのは、スペースノイドのせいだ」と言い始める奴が出てくる。大企業や政府にゃかなわないけど、民衆ならば…って手合いが。ネオナチの言い分の一つに「トルコ人就労者とドイツ人失業者の数か同じ。トルコ人を追い出せば、失業者はゼロだ」と言うのがあるわけで、それと同じ事が起こるでしょう。
まだ、この頃の地球連邦軍は、軍人になるなんて変わった人ね。と陰口を叩かれつつ、入隊していたことでしょう。士官の技量も高かったはずです。士官学校の門戸も狭いはずですから。逆に、市民階級では、マフィアに入るか、軍隊に入るか、ぐらいしか職は無くなっていたでしょう。
サイド3が、独立を宣言する頃には、連邦軍も人員を増やさなければなりません。となると、あぶれていた一般市民から徴募を始めます。市民の方も、他に職が無いから、選択肢が無く、入隊していきます。
こうなってくると、志気に雲泥の差が生じます。志願してきた人間は、決意と覚悟を持っていたでしょうが、選択権を持たされず、半ば徴用されてきた人間は、給料さえもらえれば良いわけで、少しでも楽をして、少しでも甘い汁を吸おうとします。
初代ガンダムで、アムロの生家を占拠していた連邦兵、08MS小隊の連邦兵など、ほぼ山賊化していた兵士は、貧民層の出自でしょうね。
対して、ジオン兵は、そのほとんどが志願兵で、軍人としてのプライドと、高い志気とモラルを持っていましたので、ジオン占領下では略奪や暴行は行われませんでした。何より、地球連邦からコロニーの自由を取り戻すと言う崇高な使命を背負っており、地球上の一般市民も、政府に抑圧されている同士に映ったのかも知れません。
連邦の市民は、侵略者として嫌ってはいましたが、コロニーに絡む利権(移民税や税率のからくり)を知るにつれて、ジオンへの賛同者も、少しずつ増えていったのではないでしょうか?。でなければ、砂漠に潜んでいたとはいえ、7年もの間、ロンメルはMSを維持できるでしょうか。
まぁ、どんな崇高な目的も、暴力という手段を用いた時点で悪なのですけどね。
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