EXAMの考察


追加補記
先だって、ブルーディスティニーの公式設定本を目にする機会があり、そこに、ジャーナリストのレポートという体で、EXAMについて少々語られておりました。細密な設定などは、語られていませんでしたが、サイコミュにて、ニュータイプを感知すると暴走する。等書かれており、やはりAIレベルであることに間違いはない模様。

一番大切なのは、この公式設定本では、「戦闘用OS」という言葉は、一切使用されておらず、戦闘用システムとなっていたこと。

どうにも、バンダイに委譲されてから、戦闘用OSと言われるようになった模様。そう思えば、戦闘用OSと解説されていたのは、バンダイ製ゲームばかりだった気がします。

さらに余計な一言を言うと、2002年ぐらいこの短文を書いてから、EXAMに対NT用戦闘OSと言う解説がされなくなりました(イヤイヤ、マジでマジで…と言いつつネタですよ?)。ガンダム戦記(初代)や、めぐり逢い宇宙までは戦闘用OSって解説ですから。まぁ、Gジェネは元からOSとは書いてないので、担当者の知識次第というのが実情と思います。
 



機動戦士ガンダム外伝ブルーディスティー(SS)に出てくる対NT用のモビルスーツOS。と言う事になっている代物で、公式設定の資料などに目を通したことがないので、妙な勘違いをしているかも知れないが、他のサイトを見て、少し気になったので、私のなりの解釈を。

OSと言う物は、乱暴な言い方をすれば「翻訳機」でしかない。直接マシン語で入力していた物が、MS−DOSとなり、より平易なWindowsになったとしても、直接操作ないし、起動を承認する人間を必要とする。

EXAMは、「ニュータイプの動きをコンピュータによってデジタル化し、これをOSとしてMSに組み込むことにより、オールドタイプもニュータイプと同等の動きをすることが可能になるシステムである。」と定義されるのが一般的なようだ。

MSのOSと言うのは、基本動作のサポートである。車で言うなら、エンジンの回転数や、ピストンのタイミング調節を行うプログラムと思う。昨今研究されている自動運転のプログラムの事ではない。厳密には、同じOS(と言うよりコンピューター言語)上で開発されたプログラムではあるが。

MSにおけるOSと言うのは、歩行時のバランスをとるなどの基本動作制御と思われる。左足をあげるには、右足に重心を乗せ、腕を振ることでバランスを保つ。着地地点の地形、地質などを考慮して、着地時の出力を決める。これをパイロットは、歩行モードにあわせて、ペダルを踏むだけで可能にしているのが、基本OSだと思う。

そこから先は、各種プログラムと呼ぶべきだろう。火器管制プログラム、回避運動プログラム。それらを統括し、総合的に利用しやすくするプログラムもあるだろう。つまり、EXAMは、戦闘管制プログラムであると言える。むろん、戦闘用OS、基本動作OSと個別に存在すると言う考え方もできなくもないが、通常OSと言えば、一番ベースとなる物を差すはず。

それ以前に、OSはおろか、動作制御プログラムを作る際に、ニュータイプの脳波を取り込んだところで意味はない。必要なのは「AMBACの際に、MSの手足をどのくらいの速さで振ったのか」とかそういったデータが必要なハズだ。

ま、知覚してからの反応速度を測ることに多少の意味はあるかも知れないが。しかしそれは、個人の能力であって、あまり意味のある行為とは言えない。

そもそも、ニュータイプのMS操縦に対する優位性という物は、両手の同時使用、つまり左右の脳が、均等にかつ高度に発育している事。超能力と呼べるほどの感応力と未来予測。そして、驚異的な反射速度である。つまりは、パイロットそのものの資質に起因しているのだ。

シャアの言うとおり「MSの差が絶対の差とはなり得ない」のである。それならば、人工ニュータイプである、強化人間を作った方が低コストだし、目的を達しやすい。しかし、クルスト博士はそうしなかった。強化人間は、人工ニュータイプであり、それを生み出すことは、ニュータイプ人口の増加につながることに気がついていたからだろう。

クェス・パラヤがその実例といえる。彼女は、初期段階の強化人間の手術のみを受けている。つまり、ニュータイプとして、覚醒間際の人間を、無理矢理開花させる技術となっているのだ。

なににせよ、ニュータイプの動作データを収集しプログラムとしてMSに搭載し、もっとも効率の良い旋回方法を運用できるようになっても、それを起動させる、つまり、スイッチを入れなければ、全くの無意味。ニュータイプ並(すくなくとも、ベテランエース)の反応速度と感応力を持っていなければ、無意味と言うことだ。

コンピューターが、パイロットないし自分(MS)の危険(敵意でも良い)を察知して、勝手に作動するならば、それはすでにOSではなく、AIであると断言できる。

EXAMの終着点
EXAMの開発を試みたクルスト博士の最終到達点は、無人MS。モビルドールやゼファー・ファントマシスの様な物だったと思われる。パイロットがいなければ、加速や急旋回は、機械の限界まで引き上げられる。

パイロットの命を軽視したシステムと言われるが、最終的には無人機とする研究であったのであれば当然といえよう。もしくは、パイロットそのものを、単なるインターフェイスとして見ていたのかも知れない。

EXAMはマリオンの意識を取り込むことで完成したと言われるが、私見から行けば未完である。

なぜならば、対ニュータイプ兵器としてならば、強化人間の方が手っ取り早く、かつ、安定して供給できる。それでも、クルスト博士が強化人間を良しとしなかった理由はすでに述べた。私見として、やはり、EXAMは戦闘管制プログラムが終着ではない。とするのが妥当ではないだろうか。

ともあれ、取り込んだのは、マリオン・ウェルチの脳波でない。クルスト博士は、当初よりコンピューターへの人格転移を狙っていたものであり、公式設定でどうなっているのか知らないが、EXAMの中に、マリオン・ウェルチの精神が逃げ込んだ。とするのは、いかがなものかと思う。

人の思考は、脳の電気信号による物であるのはもはや常識。それをコンピューター信号に変換するために、ヘルメットにコードをつけていたと思われる。脳のシナプス間を伝達している電気信号の事を脳波と呼ぶのですが、この脳波から、思考を読みとるのはまず不可能。

パソコンで、CPUのクロックを解析して、今、どんなソフトが使用されているか、判断を付けるようなものだと思います。ソフトを使っていることは分かるでしょうが、それがワープロなのか、ブラウザなのか、ゲームなのか、区別が付くのなら、私の誤りです。

私の考えでは、EXAMのマリオンは、AIに人格を移した。サイバーパンク的に言うなら、ジャックインしたまま、肉体の方が死んでしまい、データゴーストや電脳神となった状態だったハズだ。マリオンの場合、肉体が死んだのではなく、EXAM側に幽閉された状態だったのだろうと。

人格データを魂や精神と呼ぶことも可能ではあるだろう。クルスト博士もまた、データ化された思考に、意識が付随するとは考えていなかったのではないか。

一番の問題点は、パイロットに対して、EXAMは何らかの心理的影響を与える。と言う事実である。公式設定かどうか知らないが、パイロットの脳へ、過剰なデータを送り込むために、パイロットの脳に負担がかかる。と言う解釈がある様だ。

しかし、そんなことが可能ならば、操縦システムをすべてジャックイン方式(ケーブル直結で、脳で直接マシンをコントロールする。サイバーパンクでの定番操縦システム)にした方がよっぽど良い。

考えられる要因は、オカルト的な解釈となってしまう。自縛霊に影響されるように、マリオンの悲しみに囚われてしまう。と言うのが、一番筋の通った解釈だろうか。

ブルディスティニーにおいて、面白い考察がされていたことに気がついた。データゴーストのコピーを取ったら、データゴーストは増殖するのだろうか?。HDDにいるデータゴーストと、フロッピーにいるデータゴーストは同一人物なのか。引き裂かれた双子のように、これからの経験により、別人格となるのだろうか。

マリオン・ウェルチの場合は、感覚としては、マザーコンピューターにとって端末が増えただけの感覚であるようだ。BD1〜3。イフリート改、EXAMの積み込まれた機体で起こったすべのことを知っていたことから、それは明白だ。

マリオン・ウェルチの肉体と言うマザーコンピューター(随所で言うが、人間もバイオパーツで形成されたアンドロイドにすぎない)と、EXAMと言う端末を結んでいた物は何だったのだろうか。

タイトルのブルーディスティニーが示すように、精神世界に住まう者にとっては、世界は青い精神伝達物質つつまれた一つの世界なのかも知れない。どこにいても、つながっているのだと。EXAMは、機械的にその世界との門を開いてしまっただけなのかも知れない。


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