EXAMの子孫たち


ブルーディスティニーにおいて、EXAMの開発者、クルスト博士の亡命理由は、ジオンのMSの性能限界を感じて。とされている。しかし、通常考えて、MSの生産ラインをようやく整備した国家の機体が優れていると言えるだろうか。

1920年代、フォードの技術者が、アメリカ車は限界だ。日本へ行こう。などと思うだろうか?。

ガンダムの優位性も、その強固な装甲に起因することが大きい。ガンダリウムとも呼ばれるが、ルナ・チタニウムはその名の通り、月面で精製される金属であろう。ならば、月面に拠点グラナダを持つジオンの方が、入手し安いはずである。製錬技術が無いことも考えられるが、その名称からして、製錬技術は、ルナリアンが持っているものと思われる。

ジオンでは、MSを集団兵器と考えて、末端にまで行き渡らせるために、コストの問題上(製錬技術がルナリアンの手にあれば、特許使用料などでコストは下げられない)、ルナチタニウムをあえて外したと考えるのが妥当では無いだろうか。

そして、忘れがちであるが、ガンダムの優位性を立脚していたのは、教育型コンピューターの存在である。ジオンは、こうしたソフト面を熟練パイロットで補おうとした。反面、連邦は、短期間のうちに使えるパイロットを戦線に配備する必要があった。そのために、なるべく簡略化した操作方法を持ち、優れた機動制御プログラムを必要としていた。そのための教育型コンピューターと考えられる。

この教育型コンピューターは、ほとんど疑似AIに近い能力を有している。パイロットの操縦データだけでなく、敵の攻撃パターンをも学習していく。つまり経験値を積むことで、成長していくのである。ワープロの辞書が学習して、使用者に合わせていくように、成長していくMSだったわけだ。

教育型コンピューターの発想が、パイロットをサポートするコンピューターの開発につながったとも考えられる。ジオンで、クルスト博士が冷遇されていたのも、そんなことはパイロットの腕で補えば済む。と言うジオンの職人的な空気によるものだったのでないだろうか。

この段階で、お分かりいただけると思うが、クルスト博士が言った「ジオンのMSの限界」とは、マシンスペックではなく、それに付随するソフト面、つまりコンピューターの限界だったと考えるのが妥当ではないか。

本来、MSのソフトを開発していたクルスト博士が、ジオンのコンピュータースペックに不満があったとしても、なんら疑問はない。むしろ、連邦側にのみ、バイオコンピューターを搭載したMSが存在することも、その証明となるだろう(ジ・Oにも搭載されていた気がするが、ジュピトリスの面々も連邦軍は連邦軍)。

ランバ・ラルの発言で「正確な射撃だ。それ故、コンピューターに予測させやすい」と言うのもがある。ジオンの回避プログラムは、敵の射撃目標を予測させるだけのものだったようだ。プログラムされたこと以上は出来ない、従来型のコンピューターであることは予測できる。

疑似AIに等しい教育型コンピューターと言う、ジオンのコンピューターより数世代先を行っているコンピューターをクルスト博士は欲したのではないか。私はそう結論づける。

EXAMと言うMS管理コンピューターに端を発する、パイロット補佐コンピューターの発想は、後世に引き継がれている。いわば、EXAMと教育型コンピューターの子供たちである。

0087年のバイオセンサー。つまり、生体センサーは、その情報を処理するために、相応のスペックを持ったコンピューターが必要だろう。相性問題から言っても、バイオコンピューターが使用されている確率は高そうだ。

そして、0088年のALICEシステムに至っては、ほぼEXAMの直系、パイロット補助システムとしては、最終型といっても過言ではない。

時代は下り、コンピューターに意識を持たせる事に危険を感じたのか、F91では高度な演算マシンとして、本来のコンピューターのポジションで、バイオコンピューターが搭載されている。

この流れは、偶然だろうか?。

バイオコンピューターと言っても、DNAを使用したIC程度の物(2002年の段階で、トランジスタの機能としてもっとも適したDNAを持つシャケを作り、ICが作成されている)から、生体脳のシナプスをそのまま回路として使用した物(旧来のSFの定番設定)まで幅がある。

EXAMにバイオコンピューターが使用されているかどうかは分からない。おそらくは使用されていないだろう。それ故、EXAMは不完全であり、マリオンは意識を取り戻せたのだろう。

クルスト博士は妄執に囚われてはいたが、倫理観はしっかりしていた人物だったようだ。



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