殆どの文献で、「コロニーへの毒ガス使用は、一般兵は知らなかった」と言う設定になっているようです。PS2のギレンの宣伝ビデオでも、シーマは「知らなかった」と泣き叫びますし、ガンダムRPG(ホビージャパン)では、催涙ガスと伝えられていたとか。
多分、ジオン側の悪逆の罪を軽減するための措置なのでしょうが、かえって底を浅くするので撤廃して欲しいものです。兵士は知っていました。それでもなお、彼らは戦場へ行ったのです。
さて、催涙ガスと思っていたなら、使用した兵士には動揺が走ります。それは、上層部への疑惑となり、不信となり、反乱を招きます。
エノラゲイ(原爆投下した機体)の機長は、特殊な爆弾だと知ってました。たぶん、十分な説明を受けたはずです。下手に離陸に失敗したら事ですし、途中機体の事故だからと変なところで捨てられたら事ですし。投下準備をする係りも、基本的なレクチャーを受けているはずです。
試験的に使用した原爆と違い、ブリティッシュ作戦は、国家総動員の作戦。アイランドイフィッシュのみが、特別にガス攻撃を受けたわけではなく、他のサイドも軒並みやられています。そのため、総人口が半減したのですから。
そこまで来ると、かなりの規模の部隊に動揺と不信感が募ります。また、武人然としたエースたちにも、義なし。と離反の危険性すらあります。
また、催涙ガスとして、搬入したなら、ナニも知らない一般兵たちに乱雑に扱われる危険性もあります。まぁ、ガス弾だから、慎重に扱え。さして特別保管庫に入れる。と言う回避も可能でしょう。
しかし、頭の回る兵士ならば、密閉されたコロニーに、催涙ガスを投入する無意味さにはすぐに気が付きます。軍事施設に打ち込むのならともかく、コロニー全体に投与するのですから、催涙ガスじゃ無いことは察しが付くでしょう。
ですから、毒ガスを使用した作戦であることは、全員とは言いませんが、少なくとも士官階級の人間は知っていたはずです。それでもなお、戦場に赴いたのです。
歴史に残る虐殺と言う汚名、拭い切れぬ罪、それを犯しても、それを背負い続けても、コロニーの独立という理想に、殉じたのです。でなければ、20年にも渡り、戦い続けられるでしょうか?。自らの義を誇れるでしょうか。
そうした設定で描かれたのは、私の知る限り近藤和久氏の「MS戦記」だけです。
同じくガスを使用したティターンズの命脈を次ぐモノは無く、ジオンの志は引き継がれた。それは、あらゆる罪を背負ってでも、守りたいモノがある。その信念の違いではないでしょうか?。
植民地のごとく扱われ、奴隷のごとく見下げられる。自分の妻子に、少しでも良い思いをさせたい。楽にさせたい。と言う気持ちが、ジオン兵を支えていたのではないでしょうか。だからこそ、ジオン兵は、支配地では礼儀正しく、逆に連邦兵による略奪が目立ったと言います。
ガンダム作家、ガンダムゲームのシナリオ担当の方々。ジオン兵士は、罪を罪として受け止め、それでもなお、戦おうという勇士です。下手に同情して、知らなかったから無罪なんだ。と言うのでは、彼らに失礼です。
彼らは知っていた。それでも、彼らは戦場に行ったのです。その方が、より悲しく、より美しく、より勇敢だとは思いませんか?。
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