元来、電子機器の塊であるMSを水の中に鎮めようと言う発想からして、無理難題。現代の潜水艦のごときモノならばともかく、関節を持ち、人型であるMS。関節部からの浸水、漏水に技術陣は、頭を悩ませたであろう。
宇宙空間に出られるから、水の中も大丈夫。と言うものではない。宇宙用はせいぜいコクピットが完全気密になっているだけで、他の関節部が完全気密になっているとは考えにくい。その証拠に08小隊では、足首の関節に砂がつまって、パッキンを交換していた。ちなみに砂がつまって、動作が鈍くなるなら、水中に入るとどうなるのであろうか。コード類は絶縁がしてあるから大丈夫としても、モーター類、センサー類は全滅だろう。
ゴックやアッガイの伸縮する腕の防水対策を知りたいモノだ。加えて関節が有れば、装甲は薄くなり深々度潜行能力も低くなっていく。加えて、モニターによる可視戦闘であると言うことは、外光に影響される。宇宙での戦闘でも触れたが、人間の可視範囲は結構低い。水陸両用MSの活動範囲は、深度50がせいぜいと言ったところだろう。
それでもなお有効性が有ったのは、戦術の柔軟性と言える。目標が小さく、ハイドロジェットによる無音の高速移動。連邦軍は闇雲に爆雷をばらまくぐらいしか戦法がなかったはずである。それも、攻撃をうけたあと、ヒステリーのように爆雷をまくしかないのだ。いくらミデアが優秀な輸送機とは言え、積載量は艦艇に遙かに劣るはずである。連邦軍の輸送のメインも艦船で有ったはずだ。
まさに、第二次大戦のドイツUボートと、アメリカの輸送艦との対決のようだったのだろう。
そのため、ジオンの水陸MSの主眼は水中での運用になり、頭部を廃した形で、水中での移動速度の確保を優先している。また、腕部をクロー化している事でも、局地化された機体であることは自明。つまり、上陸作戦にもなんとか使えるレベルであり、上陸作戦の為の機体ではないと言うこと。要するに、対艦兵器の極みなのだ。例えるならば、A10サンダーボルト。なのでしょう。
対して、連邦軍はとってつけて改装したため、アクアジムやガンダイバーになったのでしょうか。私は、その運用目的にあると思います。連邦軍が求めたのは、艦船の護衛、基地の護衛だったはず。つまり、ここでも対MSが主眼とされていたのです。しかし、艦隊護衛とするならば、常時水中においておく事が必要で有ったため、あまり期待されて無かったはずです。
逆に、ジオンの港湾部の基地は限定されていましたから、潜水艦が寄港、補給できる場所を潰す方が有効だったはずです。と、なれば基地の破壊、制圧。地上戦です。つまり水中からの上陸戦を単機で行える、海兵隊のようなMSが要求されたのです。そのために、連邦軍の水陸両用MSは、地上戦を重視した、水にも潜れるMSとなったのです。
ジオンの水陸MSは、地上にも行けるMSであり、連邦の水陸MSは、水にも潜れるMSだった。と言うことでしょう。
ゴックのフリージーヤードは有効か
実は無効です。機雷というモノは、基本的に、鎖などによって係留されているものです。プカプカと、ただ浮かべているならば、流されて行ってしまいますから、防御の意味がありません。設置も深度を設定しているか、磁性を感知すると鎖が外れて浮かび上がる仕掛けになっているかでしょう。機雷に関しては、あまり詳しくないので、推測ですが。
地雷にも、接触性(つまり踏む)地雷だけでなく、振動感知や磁性感知、音響作動式など様々な種類があります。ジオンに潜水艦工廠を制圧され、水中での制海権を奪われて久しいからこそ、機雷設置と言う防御策を採ったはず。ならば、接触しなくとも、爆発する機雷があるのではないでしょうか。なぜならば、至近で爆発すれば、爆圧で十分にダメージを与えられる上、鳴子を鳴らしたのと同じ事ですから、隠密任務であるはずの潜水艦の目的は邪魔できますから。
そうした機雷ならば、全方位に感知するかも知れませんが、しかしそうすると機雷同士の磁気で誤爆する可能性があるので何とも言えません。通常の機雷ならば、下方にセンサー類は何もないので、モビルスーツならば、機雷の下側をくぐって行けば済むのです。鎖を避けながら行くのは難しいかも知れませんが、もともと隠密任務の水陸両用ですから、乗るのは特殊部隊員。操縦能力は突出しているはずでしょう。
なぜクローを選択したか
元来、汎用性(誤解されないように言っておきますが、MSは機体の汎用性はかなり低いです。武装選択による戦術の汎用性がMSの売りです)が売りのモビルスーツの腕をクローに換装すると言うことは、かなりの賭だったはずです。
それでも、なおクローを選択した理由は、いくつでも上げられます。まず、水中で使用できる武器は限定されている事。射撃兵器は、水中銃のような銛を射出するか、魚雷に限定されます。また、近接兵器では、水が抵抗となって、長柄武器や切るタイプの武器は使用が困難です。ナイフ程度の長さで、突く。それならば、魚雷を内蔵し、ナイフよりも強度のあるクローにした方が効果的かつ合理的。と判断したのでしょう。
ゴックタイプのクロー(ひっかき重視)よりも、ズゴックタイプのクロー(突き重視)の方が性能が良かったに違い有りません。ジオンのMSは、主に洋上艦の破壊を目的としており、引っ掻くよりも、刺突の方がダメージを与えられます。船底に穴の空いた船は、もはや鉄クズですから。
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