今は二人で楽しいと思っている。
逆にカルトアの城に、残されていた場合を考えると怖いくらいだ。
「結婚早々、夫に家出された妻なんて、笑い者だわ。」
「家出のつもりはないんだけど。」
大体、サラティーヌがお嬢様育ちなら、ジェフドはお城育ちの王子様だ。
自分一人、気を遣ってもらうのは腑におちない。
ジェフドは何事にも動じないような豪気さがある。
城暮らしでは気が付きにくいかもしれない。
ジェフドには窮屈なのだ。
王家ではなく、普通の騎士の家に生まれたほうが良かったのかもしれない。
ジェフドの才を見てもらうためには。
「カルトアは好きだ。」
いずれジェフドが治める国。
決して世継ぎの責務を放棄する気はない。
精神的に未熟な王であってはつけこまれる。
−愛する国を支えていきたい−
旅の空にあっても、ジェフドの頭の中にはカルトアがある。
守るべき故郷があるからこそ、旅に出たのだ。
乱世の王、およそ似つかわしくない役目をジェフドは務めることになる。
国を一つにまとめあげたのも、吟遊詩人として旅をしたのも同じ人物。
旅の途中、ジェフドは人の心を掴む術を覚えた。
信じあう大切さと共に。
<完>
今回は少々旅する二人を書いてみました。
ジェフドはともかくサラティーヌは大変苦労したでしょう。(笑)
何故、ジェフドは家事ができるのか?
簡単な料理は野営の基礎知識。
掃除は罰としてやらされたに違いありません。ジェフドのお父さんは躾に厳しい人でしたから。
洗濯は怠けて遊んでいたことがばれると叱られるので、仕方なく。
おまけに、ジェフドにとっては自慢の種のようです。
ある意味、とても働き者かもしれませんね。
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