ほんの近くでエリックとクリフは待っていた。
約束の場所と違う。
「随分、早かったたな。」
エリックがヴェスナーを呼び止める。
「いいのか、本当に。勿体無い。」
クリフもレギン家の豪邸というべき建物を見上げて言う。
「二人とも、ここまできてくれたの。」
「引き返すなら、まだ、間に合うぞ。」
エリックが、ヴェスナーに言った。
「もう、いいって。さあ、行こう。」
二人が呆れたようにヴェスナーを見つめる。
「馬鹿だな。御曹司が何を好んで特殊警察官に志願するんだか。」
警察内部でも、試験段階。
長期に渡る難事件解決を意図しているため、身体能力の老化がない有機サイボーグ。
脳移植で行われ、最後に生身の身体に戻れる
初の志願者が、ヴェスナー、エリック、クリフの三人。
「せっかく拾った命だからね。有効に使いたいんだ。」
新しく生きる道を歩きたい。
だからこそ、この職を選んだ。
「お互いの成功を祈ろう。」
ヴェスナーの配属先がわからないウィリアムが必死で探し当てたのは、一年後だった。
特定の者しか知らない事実を突き止めたのは、家の名を借りたのだろう。
上司から内密に連絡を受け、地球に戻ったヴェスナーが外にウィリアムを呼び出した。
「まったく、お前は。あんまりこういうことはやるものじゃない。」
一年前と変わらない兄。
触っても温かい。
「前と一緒だね。」
「最新技術だぞ。」
外見だけは普通と変わらない。運動能力と代謝機能はまさしく、人工的だが。
所詮、器を入れ替えただけで、中身は元のままだ。
「後悔してない?」
「そうだな。もうすこし年相応の顔にしてもらうべきだったな。」
本来の姿を模しているため、社会人に見えない。
それはそれで、利便性もあるが。
「ごめんなさい。もう、刑事さんなんだね。キャサリンが、兄さんの制服姿、格好良かったって。きっとがんばってるんだって言ってたよ。」
ヴェスナーは私服警察官だから、制服に袖を通す事は滅多にない。
あの頃には、すでに志願書を提出した後だった。
前であったなら?
やはり、現在の自分であったと思う。
「長生きするから、心配するな。」
多分、レギン家の誰よりも、この世にとどまるだろう。
二人の相棒と共に、宇宙空間を駆け回りながら。
未来へ続く道を切り拓くために。
スターライト・ウェイ<完>
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