捕虜とはいえ、餓死させるわけにはいかないから、キラにも食事は出してもらえる。
 アスランがトレイを運ぶ人間に、途中で出会い、代わってもらう。
 ガンダムのパイロット同士、気になるからという理由で。
 独房の扉を開けて入った時、キラはベッドの上に座っていた。
 その隣にトレイを置いて、アスランは聞いた。
「ザフトに協力する気あるのか。」
 キラは首を横に振る。
 やっぱりと思いながら、去り際、キラに囁いた。
「照明が消えたら、扉の外、左へ走れ。」
 振返らずにアスランが出て行く。
 キラは出かかった声を飲み込んで、見送った。

 一時間後。
 ふっと、艦内が暗くなる。
「何だ!トラブルか!」
「整備班、早くなんとかしろ!」
 艦内中がどよめく。
 キラが闇の中、飛び出した。
 ロックされていたはずの独房のドアが開いた。
 警備兵に体当たりをして、廊下を駆け抜ける。
「捕虜が脱走したぞ!」
 益々、混乱が広まっていった。

 キラがアスランの指示通り、左へ走り続けると、横から腕を捕まれた。
 手にライトを持ったアスラン。
「アスラン…!」
「しゃべるな。馬鹿。」
 さらに奥へと走る。
「二つ目の角を右に曲がれば、格納庫だ。」
 キラにライトを渡す。
 この騒ぎはアスランがキラを逃がすために仕組んだのだろう。 
「また迷惑を…。」
「ただの電気系統の故障だ。十分後には復旧する。いいな。それからラクスのことは罠だ。彼女はザフトの歌姫なんだぞ。それにお前を倒す場所はここじゃない。」
 どうせなら戦場で、自分の手で。 
「ありかとう。アスラン。」
 キラはアスランの手を握って、再び走り出した。
「まったく手間をかけさせる奴だ。」
 アスランは呟き、反対方向へ向かう。
 他の兵を見つけたところで、
「こっちに誰かいる!」
 わざとらしく叫んだのである。

 キラが格納庫に着いた時は、ちらほらと明かりが点き始めている。
 乗ってきたシャトルは、ジンの攻撃で損傷している。
 まさか修理してくれてるはずもない。
 発進ゲートに近い戦闘機に飛び乗った。
 人間の判別がしにくい今しか逃げるチャンスはない。
 指示もなく勝手に動き出した機体。
 再びキラはザフトの手から、脱出した。
 今度はアスランの友情によって。

 お互いに守りたいものが違う。
 何故、大切に思う心だけではいけないのか。
 彼らはまだ先の見えぬまま、彷徨を続けるしかなかった。




 キラの手引きをしたラクスが何らかのお咎めをうけるなら、アスランはどうなる!
 軍法会議で銃殺に決まってもおかしくないことばっかり、やってるのに。
 アスランのキラへの未練は利敵行為以外何物でもない、というわけで、今回の妄想。
 もしキラがザフトに捕まったら、アスランは絶対庇うよ。
「こいつ馬鹿だから、利用されてるだけなんだ。」って。(笑)
 で、キラには、
「イザークはお前のせいで、怪我したから仕方ないんだ。」と慰める。
 パパがお偉いさんでなかったら、アスランただじゃすまないよ、ホント。
 思えばキラは幸せ者。
 たまにはアスランに振り向いて〜。


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