2 ミクロの世界とマクロの世界

太字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容

授業の目次にもどる     実験の目次にもどる



アウトライン

1.気体とはどのようなものか
  【実験】気体は透明・・・H、O、空気、N、CO、NOを観察し、すべて透明であることを確認。湯気や霧、雲、煙などが気体かどうかを質問。

2.NO、浮遊粒子状物質の害・・・主にディーゼル自動車から排出され、空気を汚染していることを説明。

3.【実験】気体を見分ける・・・1.の5つの気体を見分ける。

4.気体の分子のようす
  【実験】水素は混ざる?・・・下の集気ビンに空気、上のビンにHを入れ、口を合わせて放置する。これが完全に混ざることから、気体分子は激しく熱運動していることを説明。この実験と平行して、水素シャボン玉の実験を行う。

5.液体と固体の分子のようす


授業の内容

 私たちが普段生活している世界をマクロの世界という。教科書やノート、机などがあり、外には山や川があって、さまざまな動物や植物が生活している世界である。

 一方、原子の世界をミクロの世界という。原子はあまりにも小さいくて、直接見ることはできないのだが、マクロの世界の物質を作っていることは確かである。そして、マクロの世界で起こっているいろいろな現象は、ミクロの世界のようすを考えると、しくみが見えてくることが多い。

・・・化学の疑問は原子が答える・・・

 これからしばらく、マクロの世界の世界で起こっているいろいろな現象について、なぜそういうことが起こるのかを、ミクロの世界から考えてみよう。

1 気体とはどのようなものか     
もどる

問1 次のA〜Fの集気ビンには、窒素、二酸化炭素、酸素、水素、空気、二酸化窒素、ほこりのいずれかが入っている。これらを見て、気体に共通することを述べよ。

  (気体は透明である。)

**コメント**
ほこりと各気体を見比べて、気体は(二酸化窒素のように色があっても)透き通っている、つまり透明であることを確認しました。

日常的に、透明という言葉は「無色透明」という意味で使われています。
生徒もそういう理解を持っていますので、例え色があっても、透き通っていれば透明と言うことを強調しました。そして、こんな話をしました。

「だから”透明人間”っていう題名は間違いなんだ。”無色透明人間”って言わなきゃいけない。ただの透明人間なら、赤いのや、青いのがいることになるからね。」

また、ここで、二酸化窒素は主にディーゼル車の排ガスから多量に排出されて、空気を汚していることを説明しました。それから、ディーゼル自動車から出される真っ黒いススは、見えるから気体ではなく、微粒子であること。この微粒子にゼンソクを起こす作用や、発ガン性があることを話しました。

資料は「顔 ディーゼル排ガスの健康被害を科学的に裏付けた 嵯峨井勝さん」’98,9
    「ディーゼル排ガス 生殖機能損なう毒性」’98,10,5  いずれも朝日新聞です。
*******

問2 次のものは気体と言えるか。

   霧   湯気   雲   煙

  (すべて透明ではないから、気体とは言えない。)
  (霧や湯気は”液体の”水の粒。雲は水や氷の粒。煙は、液体や固体の粒と気体の混合物。)

**コメント**
気体とまぎらわしいものを問題にしました。水の気体を水蒸気といい、それは透明であって、湯気や雲のように白いものではないことを説明して、次のような話をしました。

「蒸気機関車という言葉から、水蒸気って白いものだと思っている人がいるけど、そうではないんだ。蒸気は気体だから見えないものなんだ。それから、山が噴火したときなんか、テレビでアナウンサーが『真っ白な蒸気を吹き上げています』なんて言っているけど、テレビ局へ文句言いたくなるね。蒸気だったら見えないはずだから。」
*******

問3 上の5つの気体のうち、見ただけでは区別できないものを見分けるにはどうすればよいか。

 (火をつけてみる。)
 (水素・・・自分が燃える。 酸素・・・マッチを燃やす。 空気・・・マッチの燃え方がビンの外と同じ。 窒素・・・火が消えて、石灰水は濁らない。 CO2・・・火が消えて、石灰水が濁る。)

**コメント**
無色透明の5つの気体。見た目には全く同じでも、ちゃんと個性があることを知らせました。
この実験で、水素は自らが燃え、酸素は相手を燃やすという区別がはっきり分かります。

また、窒素は生徒にはなじみが少ないのですが、空気中に5分の4もあり、その中では火が燃えないことを説明しました。演示実験です。
*******

2 気体の分子のようす                       もどる
 気体の分子とは、どのようなものであろうか。次の実験で考えてみよう。

【実験】 図のように上に水素、下に空気を入れ、5分ほど置いておく。水素と空気は混ざりあうかどうかを予想しなさい。なお水素の質量は空気の約5分の1である。

┌───┐
│     │   【結果】
│ 水素 │
│     │    
(完全に混ざる。)
│     │
└┐  ┌┘
┌┘  └┐
│     │
│ 空気 │
│     │
│     │
└───┘

【おまけの実験】水素は軽い
 水素ガスが入ったシャボン玉を作って、飛ばしてみなさい。そのシャボン玉に火をつけてみなさい。

**コメント**
集気ビンに水素と空気を入れ、図のように重ねて5分間おきます。待っている間に【おまけの実験】です。水素発生器の先にガラス管を付け、その先に石鹸液を付けて、水素シャボン玉を作ります。

シャボン玉が適当な大きさになったとき、ガラス管をちょっと振ると、シャボン玉がガラス管を離れて、フワッと昇っていきます。

チャッカマンに火を付けて、上の方待ちかまえ、昇ってくる水素シャボン玉に火を付けると、パッと燃えて、見ている生徒から、歓声が上がります。けっこう速く昇っていきますから、シャボン玉を飛ばしてから、火がついたチャッカマンで下から追いかけたのでは、間に合いません。その、のろまな教員の動作に、生徒からまた笑い声が上がります。

こうやって、水素が軽いことを印象づておきますと、上の実験の予想としては、大半の生徒が「混ざるわけがない」という答えに手を挙げます。そこで、集気ビンの間にふたを2枚入れて上のビンと下のビンに分け、火を付けてみると、両方ともヒュッと音がして、同じように爆発するわけです。しめしめ。

注意
1.水素シャボン玉に火を付けるとき、水素発生装置に空気が混ざっていると、引火して爆発することがあります。水素を充分に発生させてから、この実験を行って下さい。

2.集気ビンに火を付けるときは、ふたを取ると同時に点火して下さい。あらかじめ、チャッカマンに火を付けておいて、ふたを取りながら、ビンの口に火を近づけるようにするとうまく行きます。
*******

 気体のミクロのようす・・・・(気体は分子がバラバラで、非常に激しく飛び回っている。)
                    (気体の分子どうしには引力がほとんどない。)

     気体分子の図(省略)

  常温での気体分子の速さ 水素分子 酸素分子

  衝突回数(0℃、1気圧) 水素分子 酸素分子

  気体が透明である理由・・・
(分子は非常に小さいもので、気体の場合、その分子がひとつひとつバラバラなので、光を反射しないから。)

**コメント**
「気体の分子がフワフワ浮かんでいるのなら、水素が上、空気が下では混ざらないだろう」と言って、気体の分子はビュンビュン飛び回っていることをイメージさせました。

分子の速さを数字で紹介し、分子どうしが絶えず衝突し合っていることにも触れました。
*******

3 液体と固体の分子のようす

問 液体や固体の中の原子、分子のようすを説明せよ。

 液体中の原子や分子のようす

 
 (液体の原子や分子には、引力が働いている。原子や分子は他の場所に移動できる。)

      液体の図(省略)

  固体中の原子や分子のようす

  (固体の原子や分子には、強い引力が働いている。原子や分子は他の場所に移動できない。)

     
固体の図(省略)

 ※液体や固体中の原子や分子の間に働いている引力は、
      電気的な力で、原子や分子の距離が近いほど
(強い)い。

**コメント**
授業時間の関係で、液体と固体については天下り的に説明してしまいました。

液体では、分子はお互いの位置関係を変えられることを「他の場所に移動できる」、、固体の場合は「他の場所に移動できない」と表現しました。

そして、イメージとしては、液体は学校の休み時間、固体は授業中のようすに近いことを説明しました。
*******
                               もどる