3 温度をミクロの目で見ると

太字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容

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アウトライン

1.【実験】アルコール風船・・・アルコールをポリ袋に入れ、お湯をかけて蒸発させる。アルコールが気体になると、大きく膨張する。このとき、分子がどうなったのかを考えさせる。

2.【実験】しょう油の拡がり・・・二つの大きなビーカーに冷水と、温水を入れ、両方にしょうゆを入れて放置する。温水の方が、速くしょうゆが拡散する。

3.温度を分子の目で見ると・・・以上二つの実験から、温度を上げるとは分子運動を激しくすることだと説明。

4.「肉を冷蔵庫で冷やす」とか「今日は暑い」など、日常的なことを分子運動で言い表すとどうなるかを考えさせる。

5.分子運動の分布をグラフから説明。

6.温度の上限、下限を考えさせ、絶対零度を説明。


授業の内容

温度の高いものと低いものでは、原子や分子のようすはどう違うだろう。

【実験1】アルコール風船

@ポリ袋にアルコールを少し入れ、空気をなるべく追い出して、口をしっかりしばる。
Aこのポリ袋に熱湯をかける。アルコールが沸騰して気体になるであろう。ポリ袋はどれくらい大きくなるか。
Bポリ袋を冷やしてみなさい。どうなるか。

【結果】

     (熱湯をかけると、ポリ袋が大きくふくらむ。) (図 省略)

  この時体積は約
(750)倍になる。同じことを水で行うと約(1300)倍、になる。

【考察】

なぜポリ袋がふくらむのか。ポリ袋がふくらんだときのアルコール分子のようすを上の図に書いてみなさい。

**コメント**
ポリ袋の中の液体のアルコールには、分子がぎっしりつまっている図を書き、それが気体になったときに分子がどうなるのかを考えさせました。

気体のアルコールの図として、多くの生徒は、分子が飛び散って、フワフワ浮かんでいるようなものを書きます。前の時間の復習をしながら、気体では分子がビュンビュン飛び回っていることを思い出させました。

T「お湯をかけると、アルコールの分子はビュンビュン飛び回るようになった、ということだね。温度が高くなると、分子の世界では、運動が激しくなると言われているんだ。」

T「ところで、気体になったアルコールのようすを書いたけど、アルコールの分子と分子の間には、何があるんだい?」
S「うーん、空気?」

T「袋の中から空気は追い出した。袋にはアルコールしかなくて、アルコールは丸く書いた分子。じゃあ、分子と分子の間は何だい?」
S「何もない」

T「そう、真空なんだ。ここには何もないんだ。気体はこんなふうに、真空だらけだ。液体や固体は分子がぎっしりつまっている。だから、ご飯を一口食べると、たくさんの分子が体に入ることになる。でも、空気を思い切り吸っても、体に入る分子はわずかだ。そのわずかな分子の中の、酸素という分子をつかまえて生きているってわけだ。

もし、気体もぎっしりと分子がつまったものだったら、どうだろう。1回空気を吸い込めば、たくさんの酸素分子が体に入るから、ご飯と同じで、1日3回息をすればよいかも知れないね。そうなったら、アクアラングなしで、半日は海に潜れるかも知れない・・・。」
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【実験2】しょう油の拡がり           もどる

別々のビーカーにお湯と、冷たい水を入れる。それぞれにしょう油を入れると、しょう油の拡がり方にどんな違いがあるか。それはなぜか。

  
(温水の方が速く広がる)

**コメント**
1リットルのビーカーふたつに熱湯と水道水を入れ、しばらく放置して、水を落ち着かせます。そして、しょう油をいったんペットボトルのふたにため、一気に両方のビーカーに入れます。

5分もすると、温水の方は上まで色が付いてくることが分かります。冷水は、下の方だけが茶色い色をしています。分子運動の速さの違いが分かる実験です。

この実験、しょう油を普通のしょう油差しから入れたのではうまく行きません。いったんふたにためて、一気に入れることがポイントです。
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温度を分子の目で見ると           もどる

 マクロの世界で[温度を上げる]ということは、 ミクロの世界では
(分子運動をはげしくする)ということである。[温度を下げる] ということは(分子運動を弱くする)ということである。

問1 次のような日常的なことがらをミクロの世界で説明しなさい。

(1)冷蔵庫で肉を冷やす。

**コメント**
T「肉を冷やすって、肉の分子をどうすること?」
S「分子の運動を弱くすること」

T「そうだね。じゃあ、冷蔵庫は分子の運動を弱くする機械だから”分子運動減速装置”だ。」
S「エーッ」

T「今日、お母さんが肉を買ってきて、テーブルの上に出しっぱなしにしておいたら、『お母さん、分子運動減速装置で肉の分子運動を弱くしておかないと、悪くなっちゃうよ』と言おうね。」
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(2)お湯をポットに入れておいたので、まだあたたかい。

**コメント**
T「まだ暖かいというところを、分子のようすで言って欲しい。」
S「まだ運動が激しい」

T「そうだね。水の分子運動がまだ激しくて、弱まっていないということだね。これから暑くなると、水筒に冷たい飲み物を持ってきて、体育のあとなんかに飲んでいる人がいるけど、そんなときはこう言おうね。『あー、分子運動が弱くてうまい!』」
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(3)「今日は暑いね。」

**コメント**
T「分子の世界のあいさつだ。『今日は暑いね』って、なんて言ったらいい?」
S「今日は分子運動が激しいね。」

T「何の分子運動?」
S「空気」

T「そうだね。『今日は、けっこう空気の分子運動が激しいじゃん』なんて、言ってみよう。」
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問2 熱い、寒い、冷たい、暖めるなど温度に関する言葉を使わずに、分子運動でそれらを表現して24時間生活しなさい。

**コメント**
T「人間の一生は長いんだ。1日ぐらい、分子のことを考えて生活してみよう。そうすれば、分子と仲良くなれるかも知れないよ。」
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問3 下のグラフ(省略)は73℃と373℃のヘリウムガス中に、どんな速さの分子が何個含まれているかをを表わしている。分かることをか条書きにせよ。

   (同じ温度でも、すべての分子が同じ速さで運動しているわけではない。)
   (温度が高い方が、速く動いている分子が多い。平均の速度が大きい。)

問4 温度の上限、下限について考えなさい。

(1)もうこれ以上に上らない温度(温度の上限)はあるか。

       (分子の速さに限界がないのなら、温度の上限もない。)

(2)もうこれ以下に下がらない温度(温度の下限)はあるか。

     (分子が止まってしまえば、それより遅くできないから、下限はある。絶対零度 −273℃)
   

**コメント**
光の速さが上限で、それ以上の速さはないことを知っている生徒もいます。でも、それは高校の範囲を超えていると説明して、(1)のような答にしました。

人間が作り出した最高温度として、約1億度。最低温度として、絶対零度より
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