4 三態変化

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アウトライン

1.【実験】食塩を加熱すると・・・試験管で食塩を加熱し、液体食塩を作る。このとき、食塩のイオンがどうなったのかを考えさせる。

2.三態変化と分子の運動・引力・・・蒸発、凝縮、凝固、融解、昇華と分子のようすを説明。

3.【実験】液体窒素で冷却する・・・酸素、都市ガス、水銀、サラダ油などを冷却。固体窒素を作る実験などを行う。

4.すべてのものは三態変化するか?・・・分子やイオンの熱運動と引力の関係で、三態が決まる。そこで、すべてのものが三態変化するかどうかを考えさせる。


授業の内容

【実験】食塩を加熱すると

 少量の食塩を試験管に入れて、ガスバーナーで強熱する。食塩はどうなるか。

【結果】

  (液体の食塩になる。)

【考察】
 なぜ上のような結果になったのか、ミクロの世界のようすを説明せよ。

 (食塩を加熱すると、食塩のイオンの運動が激しくなる。すると、イオンどうしの衝突が激しくなって、イオンの間のすき間が大きくなる。その結果、引力が弱くなって、イオンは他の場所へ移動できるようになる。つまり、液体になる。)

【感想】
**コメント**
ガスバーナーの炎で、液体の食塩が作れます。私は毎年、この実験を生徒にさせています。

実験のこつ
1.食塩はごく少量にします。試験管の底の丸い部分くらいの量です。
2.バーナーの火力は最大にして、内炎の先端が、きちんと試験管の底にあたるように。

注意
バーナーをはずして食塩が凝固しても、試験管はかなり高温になっています。食塩が固体になってからでも、紙を試験管の底に接触させると、燃え上がりますし、マッチを近づけると発火します。これらを生徒の前でやって見せて、やけどに注意するように呼びかけています。逆に、これらのことから、食塩が液体になるにはかなり高い温度が必要であることを示せます。

実験前に予想を聞くと、「焦げる」とか「パチパチはねる」、「どうにもならない」という答えが多数です。実験して、食塩が溶融することが分かったところで、上の【考察】を宿題にしました。これは今までの授業の復習も兼ねています。
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三態変化と分子の運動・引力     もどる

**コメント**
気体、液体、固体の分子のようすを図に書き、融解や凝固、昇華などの語句を説明しました。
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問1 加熱して分子運動が激しくなると、引力はどうなるか。

 (分子を加熱すると、分子運動が激しくなる。すると、分子どうしの衝突が激しくなり、分子間の距離が大きくなる。その結果、分子どうしの引力は小さくなる。)

**コメント**
分子運動が激しくなると、引力が弱くなることを、上のように説明しました。
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問2 次の現象をミクロの世界から説明しなさい。

(1)凝固

 (液体を冷却すると、分子運動が弱くなって、引力は強くなる。やがて、分子は他の場所へ移動できなくなり、固体になる。)

**コメント**
液体を冷却すると、引力が強くなって、その結果として、分子運動が弱くなると考える生徒がいます。冷却するということは、分子運動を弱くすることであることを強調しました。

固体の分子は相互の位置関係を変えることができないということを、「他の場所へ移動できない」と表現しました。
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(2)凝縮

 (気体を冷却すると、分子運動が弱くなり、引力が発生して液体になる。)

【実験】 液体窒素で冷却する          
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 液体窒素とは窒素ガスを約−196℃まで冷却して液体にしたものである。

【方法、結果】

(1)液体窒素を机の上にこぼしたときの様子、色、臭いを記録しなさい。

 結果1

 (液体窒素には色や臭いはない。机にこぼすと、小さな粒になって、ころころ転がりながら沸騰する。)

(2)常温で固体の物を−196℃まで冷却するとどう変化するか。観察したことを 記録しなさい。

結果2

 (花もテニスボールも、消しゴムも硬くなる。冷やしたテニスボールを机に落とすと、陶器のように割れる。)

(3)常温で液体である下の物質を−196℃に冷却するとどんな変化を起こすか。 またもし固体になったら、液体のときに比べて体積は増えたか減ったかを記録しなさい。

冷却すると固体になるか 体積はどう変わったか
結果3 (固体になる) 結果8  (ふえる)
アルコール 結果4 (固体になる) 結果9  (減る) 
灯油 結果5 (固体になる) 結果10 (減る) 
てんぷら油 結果6 (固体になる) 結果11 (減る) 
水銀 結果7 (固体になる) 結果12 (減る) 
**コメント**
体積が増えたか減ったかについては、それぞれの固体を液体に入れて、浮くか沈むかで確かめました。
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(4)酸素ガスと都市ガスは常温で気体であるが、これを液体窒素で冷却するとどうなるか。

冷却したときのようす
酸素ガス 結果13 (青い液体になる)
都市ガス 結果14 (白い液体になる)
**コメント**
液体酸素がたまっている試験管に、火のついた線香を入れるとパッと輝いて燃えます。火がついたまま、液体酸素中に落としても燃え続けますが、液体酸素は可燃物と接触させると爆発を起こすことがあると聞いて、液体酸素中に落とす実験はやらないことにしました。

液体酸素にネオジム磁石を近づけると、引き寄せられます。酸素の常磁性が分かります。

都市ガスの液体が入っている試験管の口のところに火をつけると、オレンジ色の炎を出して燃えます。手のひらで、液体部分を暖めると、炎が大きくなります。都市ガスの液体が残り少なくなった頃、ヒュッと音がして急に大きな炎が出たことがありました。空気が、試験管内に入り込んで、バックファイアーのような現象が起こったのでしょうか?
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(5)液体窒素をビーカーに入れておくと、ビーカーの周りに何が付着するか。アルミ缶に入れた場合はどうか。

ビーカーに入れた場合 結果15 (白い固体がつく)
アルミ缶に入れた場合 結果16 (液体ができて、したたり落ちる)


(6)液体窒素を試験管に入れて、アルミ管付きのゴム栓をする。アルミ管を真空ポンプのホースにつないで、窒素をどんどん蒸発させるとどうなるか。

結果17

 (シャーベット状の固体窒素ができる。)

**コメント**
液体窒素を真空ポンプで強制的に沸騰させ、蒸発熱で低温にして、固体窒素を作る実験です。

注意
1.試験管は観察しやすいように、大きめのものを使います。
2.試験管につけるゴム栓にはアルミ管を差し、ガラス管は使いません。以前、ガラス管を使っていて、管が割れて破片が真空ポンプに入り、ポンプを壊したことがありました。

3.シャーベット状の固体窒素が真空ポンプにが吸い込まれ、ポンプ内で急激に沸騰、圧力が上がって、ポンプからオイルが吹き出たことがありました。固体窒素がポンプ内に入らないよう、注意が必要です。
4.ポンプの能力が低くて、固体窒素が得られないときは、試験管を液体窒素で冷やしながらポンプで引くと、うまくいくことがあります。
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【考察】なぜ、上のような結果が出たのか。ミクロのようすを説明せよ。

**コメント**
実験後、以下の部分は宿題にして、生徒に考えさせています。分子のようすをしゃべりながら液体窒素の実験しているのですが、生徒にとっては難問のようです。
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(1) 結果2について

 (固体を冷却すると、原子や分子の運動が弱くなり、引力が強くなって、硬くなる。)

(2) 結果3〜7について

 (液体を冷却すると、原子や分子の運動が弱くなり、引力が強くなって、分子が移動できなくなるので、固体になる。)

(3) 結果9〜12について

 (液体を冷却すると、原子や分子の運動が弱くなり、すき間が小さくなるので、体積が減る。)

(4) 結果13、14について

 (気体を冷却すると、原子や分子の運動が弱くなり、引力が発生して、液体になる。)

(5) 結果8について

 (水を冷却すると、分子の運動が弱くなり、引力が強くなって、分子は他の場所に移動できなくなるので、固体(氷)になる。この時、水の分子は六角形に配列し、すき間の多い構造になるので、液体の時より体積が大きくなる。)

**コメント**
凝固や凝縮の説明として、”分子運動が弱くなったから固体になった”とか、”分子運動が弱くなったから液体になった”と書いてくる生徒がいます。私は、そういう簡単な説明ではなく、下線部の言葉を必ず入れるように指導しています。
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結果15と16の違いの原因を書きなさい。

 (ガラスは熱伝導が悪いので、ビーカーの表面は−196℃よりもかなり高い温度になっている。ところが、金属は熱伝導が良いので、缶の表面は−196℃近くまで冷えている。

従って、ビーカーの表面には空気中の水分や二酸化炭素が凍って、氷やドライアイスとして付着し、缶の表面には氷やドライアイスの他に、液体酸素や液体窒素ができる。)

参考
     水の融点・・・・・・・・  0℃
 二酸化炭素の昇華点・・・−78.5℃
    酸素の沸点・・・・・ −183℃
    窒素の沸点・・・・・ −196℃

結果19はなぜ起こるのかを説明しなさい。

 
(液体は何でも、蒸発するときに熱を奪う。この場合、液体窒素を真空ポンプで激しく蒸発させたので、熱が奪われ、液体窒素の温度が下がって、固体の窒素になった。なお、窒素の融点は−210℃である。)

 どんな物質でも加熱や冷却によって気体、液体、固体に変化すると思うか。それはなぜか。

 (熱で分解されるものは、三態変化しないが、他の物質は三態変化する。)

**コメント**
この問題には”物質はすべて原子や分子でできていて、それらの熱運動と引力の関係で三つの状態が決まるから、すべて三態変化する”と書いてくる生徒がたくさんいます。三態変化を分子レベルでイメージできているから、こういう答えが書けるのだと思いますが、実際には、砂糖などは液体にできません。実験して見せて、すぐ、こげることを確かめます。

このように、物質には熱に強いものと弱いものがあって、弱いものは熱で分解してしまうことを説明しました。そして、熱に対してなぜそのような違いがあるのか、それを追求するのも化学の役目だということを話して、まだまだ先があることを認識させました。
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