6 くっつく時には熱くなる、溶解のしくみ 太字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容 |
アウトライン
1.【実験】風を送ると温度は下がるか・・・乾いた温度計とぬらした温度計に風を送り、温度が下がるかどうかを実験。ぬれている方は、水が蒸発するために温度が下がることを確認。
2.原子や分子の結合・分離とエネルギー
(1)水が蒸発するときは、分子どうしが分離する。一般に、分子や原子が分離するときは吸熱し、結合するときは発熱することを説明。
(2)水は特に大きな蒸発熱を持っていることを示す。
3.溶けるってどういうこと?
(1)溶けたものは液が透明になり、ろ過しても、ろ紙に何も残らないことを実験。
(2)溶けるときに溶質である固体が、水の中で小さな粒になったから、ろ紙を通過するようになったことを想像させる。
(3)これは、固体の分子が水の中で分離することだから、溶解は吸熱変化になることを予測させる。
4.【実験】溶解するときの温度変化
(1)3種類の物質について、溶解するときの温度変化を実験。
(2)水酸化ナトリウムは溶けると発熱することから、溶解時には、分子やイオンが分離するだけではなく、水和が起こっていることを納得させる。
5.【実験】氷に濃硫酸をかけると?・・・水に濃硫酸を溶かすと発熱するが、氷に濃硫酸をかけると吸熱する実験を見せ、理由を考えさせる。
6.溶ける量の限度(溶解度)・・・溶解度の説明と再結晶の問題演習。
授業の内容
乾いた温度計 | 濡らした温度計 | |
風を送らないとき | ||
風を送ったとき |
【考察】
(1)乾いた温度計と濡らした温度計の値の違いを説明しなさい。
(ぬらした温度計は、風を送ると水が蒸発して温度が下がる。)
**コメント**
乾いた温度計の方も、温度が下がると思っている生徒がいます。
ぬらした温度計に風を送ると、どうして水の蒸発が速くなるのかと質問した生徒がいました。気液平衡を生徒全体に説明すべきかもしれません。
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(2)暑いときに風を送ると涼しくなるのはなぜか。
(体の表面から水が蒸発するから。体の表面の暖かい空気を吹き飛ばすから。)
原子や分子の結合・分離とエネルギー もどる
問1 蒸発するときに熱を吸収するのはなぜか。ミクロのようすから説明しなさい。
(液体の分子どうしの結合を切るために、エネルギーが使われるから。)
**コメント**
蒸発するときは、激しく動いている分子が、引力を切って気体になるという変化が起こっていることを思い出させ、エネルギーは引力を切るために使われていることを説明しました。
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問2 蒸発するときに吸収する熱を蒸発熱というが、次の物質のうち、もっとも蒸発熱の大きなものはどれか。
水 | エタノール | ヘキサン | プロパン | |
蒸発熱(kJ/g) | 2.2 | 0.85 | 0.34 | 0.43 |
**コメント**
水が特別大きな蒸発熱を持っていることを示しました。
夏、プールから上がって体を濡らしたままにしておくと、寒くなる原因が水の蒸発熱であることを話しました。
蒸発熱はkJ/molで表すべきでしょうが、molをまだ勉強していない段階ですから、kJ/gにしました。
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問3 原子や分子が結合するときには発熱するか、吸熱するか。
原子や分子が結合するときには(発熱)し、分離するときには(吸熱)する。
**コメント**
ビーカーに溶液を入れ、その中で原子や分子が結合した場合は、溶液の温度が上昇し、分離した場合は温度が下がることを図に書いて、説明しました。
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溶けるってどういうこと? もどる
食塩や砂糖が水に溶ける(溶解する)とき、ミクロの世界ではどんなことが起こっているのだろう。
問(1)食塩、硫酸銅、チョークの粉(炭酸カルシウム)を少し試験管に取り、水を加えて良く撹拌する。水に溶けたものと溶けないものの、見た目での違いは何か。
(水に溶けた物は透明になる)
(2)上の3つのものをろ過するとどうなるか。
(水に溶けない物は、ろ紙上に残る。溶けた物は、ろ紙を通過する。)
**コメント**
実際にろ過して、食塩水はろ紙を通った液も硝酸銀水溶液と反応すること、硫酸銅水溶液では青い色の溶液が、ろ液として出てくることを確認しました。
生徒の中には、食塩水をろ過すると、食塩が得られると考えている物もいますので、この実験は毎年演示しています。
ろ紙には小さい穴があいていて、そこを通れない物が引っかかることを説明しました。
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(3)(1)(2)から、物質が溶解するときは、ミクロの世界ではどのようなことが起こっているか。説明しなさい。また、溶解するとき液温はどんな変化をするはずかを答えなさい。
(溶解するときは、溶質のイオンや分子がバラバラになる。これは引力を切ることなので、液温は下がる。)
**コメント**
固体ではろ紙を通れない食塩や硫酸銅が、水に溶けると通れるようになるということから考えて、溶けるとは分子やイオンが分離することであろうと、想像させました。
そして次に、それが正しいかどうかを実験させます。
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【実験】溶解するときの温度変化 もどる
【方法】
(1)チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)、硝酸アンモニウム、水酸化ナトリウムを違う試験管に少しずつ取る。
(2)3本の試験管に、水を試験管の3分の1ほど加え、良く撹拌しなさい。それぞれの物質が溶解するとき、液温がどう変化するかを調べなさい。
【結果】
それぞれの物質が溶解するときの液温の変化を記録しなさい。
チオ硫酸ナトリウム(ハイポ)・・
硝酸アンモニウム・・・・・・・・
水酸化ナトリウム・・・・・・・・
**コメント**
はじめの二つは吸熱ですが、水酸化ナトリウムは発熱しますので、生徒は意外な顔をします。そして、バーナーで加熱しているわけでもないのに、試験管が熱くなることに驚きます。
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【考察】
(1)物質が水に溶解するときは、単純に原子や分子がバラバラになるだけだと言って良いか。
(溶けると発熱する物もあるので、バラバラになる変化だけではない)
(2)物質が水に溶解するとき、ミクロの世界ではどんなことが起こっているか。
(溶質の分子やイオンがバラバラになり、水分子と結合(水和)する。)
(3)物質によって、水に溶解するときに発熱するものと吸熱するものがある。なぜか。
発熱するもの・・・・固体のイオンや分子がバラバラになるときの吸熱量 < 水和による発熱量
吸熱するもの・・・・固体のイオンや分子がバラバラになるときの吸熱量 > 水和による発熱量
**コメント**
(2)(3)は宿題にしました。水和するようすは、副教材の「図説化学」に図が出ていますので、それを参考にするように指示しました。
しかし、その図は食塩が水に溶けるようすを示していたため、生徒には他の物質が溶けるときにも水和という現象が起こかどうかは分からなかったようです。
したがって、この問題に正しく答えた生徒は少数でした。(2)までは、こちらで説明して、(3)を宿題にすべきでした。
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【実験】氷に濃硫酸をかけると? もどる
@ ふたつの200mlビーカーの片方には氷をたくさん入れ、もう一方には水を入れる。
A 2本の試験管に濃硫酸を10mlずつとる。
B 氷の入ったビーカーと水の入ったビーカーそれぞれに、濃硫酸10mlを加えてよく攪拌する。そして、温度を測定しなさい。温度は上がるか下がるか。
【結果】
水 + 濃硫酸の温度変化・・・(温度が上がる)
氷 + 濃硫酸の温度変化・・・(温度が下がる)
【考察】
上の結果をミクロの世界から説明しなさい。
(氷に硫酸を入れると、氷が溶けて水になり、その水に硫酸が溶ける。このとき、氷が溶ける吸熱量の方が、硫酸が水和するときの発熱量より大きいので、温度が下がる。)
**コメント**
氷に濃硫酸をかけてかき回すと、−10℃近くまで温度が下がります。
濃硫酸は氷に溶けたのではなく、氷が溶けてできた水に溶けたことがヒントだと言って、ここも宿題にしました。
生徒の中には、0℃以下なのになぜ氷が溶けるのかと質問に来るものがいました。やはり、この問題は凝固点降下を勉強してからでないと、無理があるようです。溶解の問題と言うよりは、凝固点降下(寒剤)の問題にすべきでしょう。
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溶ける量の限度(溶解度) もどる
水などの(溶媒)に、食塩などの(溶質)を溶かしていくと、ある量以上は溶けなくなる場合が多い。限度まで溶質を溶かした溶液を(飽和溶液)という。
そして、溶媒に限度まで溶解できる溶質の量を(溶解度)といい、普通、溶媒100gに溶解できる溶質のg数で表す。溶解度は温度によって変化するので、この関係を表すグラフが(溶解度曲線)である。
(溶解度曲線 省略)
問1 次の計算せよ。なお、硝酸ナトリウムの60℃における溶解度は124、20℃では88である。
(1)60℃における硝酸ナトリウムの飽和溶液100g中には、何gの硝酸ナトリウムが溶解しているか。
(省略)
(2)60℃における硝酸ナトリウムの飽和溶液100gを20℃に冷却すると、何gの結晶が析出するか。
(省略)
問2 20℃の塩化カリウムの飽和溶液200gがある。水分を蒸発して150gとし、20℃にすると何gの結晶が析出するか。塩化カリウムの20℃における溶解度は34.2である。
(省略)