9 結合の3タイプ 太字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容 |
アウトライン
1.金属結合・・・アルミニウム原子が集まって金属結合するようすを説明。
2.【実験】金属の性質・・・電気伝導性、金属光沢、展性・延性を実験。それらの性質の原因を説明。
3.【実験】ナトリウムとその仲間(アルカリ金属)・・・金属光沢、柔らかさ、電気伝導性、水との反応を実験。「もんじゅ」について説明。
4.金属原子の配列のしかた・・・体心立方格子、面心立方格子、六方最密構造について説明。
5.共有結合・・・共有電子対、電子式、構造式、電気陰性度、分子の極性などを説明。
6.イオン結合・・・イオンの電子配置、周期表とイオン価数、組成式、化合物名などを説明。
7.まとめ(結合の3タイプ)・・金属結合、共有結合、イオン結合のまとめ。
授業の内容
金属結合 もどる
問 アルミニウム原子どうしが結合すると、金属のアルミニウムになるのだが、どのように結合しているのか。説明しなさい。
(Al原子が3個の価電子を放出して、金属結合するようすを説明)
【実験】金属の性質
(1)次の金属は電気を通すか。
銅、鉄、アルミニウム、鉛、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、水銀、金、銀、 5円玉(シンチュウ、銅と亜鉛の合金)、百円玉(白銅、銅とニッケルの合金)
(すべて電気をとおす)
**コメント**
学校にあるいろいろな金属を模造紙に貼って、それを黒板にマグネットでとめ、電気が通るとメロディーが流れるテスターを使って、この実験をします。
生徒はメロディーが流れるテスターに興味を持ち、また、どんな金属でも電気が通ることに意外な感じを持つようです。
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(2)いろいろな金属は外観上どんな特徴があるか。
(金属光沢を持つ)
(3)金属のかたまりをハンマーでたたいたらどうなると思うか。また、金属のかたまりの両端をつかんで引っぱったらどうなると思うか(銅線を柱にしばって引っ張ってみなさい)。
(展性、延性を持つ)
**コメント**
およそ1mの銅線を引っ張ると、20cmくらいは長くなることを見せます。
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【考察】
問1 金属にはなぜこのような性質があるのか。金属の構造から考えよ。
(1)について
(金属は固体でも液体でも自由電子を持ち、それが−から+に移動するため)
(2)について
(自由電子が光を吸収し、再び放出するため)
**コメント**
金属をきれいに磨くと鏡になること(昔の鏡)、今のガラスの鏡も裏に金属皮膜が貼られていて、それに顔を映していることを説明。
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(3)について
(金属イオンの配列が変わっても、自由電子による結合が保たれるため)
問2 金属には展性、延性という性質があるため、いろいろなものを作る非常にすぐれた材料になっている。もし、いま全ての金属が消えてしまったら、われわれの生活はどうなるか想像してみなさい。
(石器時代の生活しかできない)
**コメント**
金属は展性、延性という性質を持つので、いろいろな形に加工でき、有用な道具や機械を作れることを説明。文明を築くためには、なくてはならない材料であることを認識させました。
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【実験】ナトリウムとその仲間(アルカリ金属) もどる
周期表の同じ族に属する元素は化学的にも似た性質を持つものが多い。1族(アルカリ金属)の元素の性質を調べてみよう。
(1)リチウム、ナトリウム、カリウムの切り口のようす、柔らかさ、電気伝導性について実験したことを記録しなさい。
**コメント**
生徒を前に集めて、演示します。電気が通るかどうかはメロディーテスターで、柔らかさや切り口については、ナイフで切って見せます。
アルカリ金属の切り口は、すぐに空気と反応して光沢が失われてしまいます。それがこれらの物質の特徴ですが、何とかして多くの生徒に金属光沢を見せたいと思い、次のような実験を開発し、毎年演示しています。
【実験】ナトリウムの金属光沢を多くの生徒に見せる
(1)21×200の試験管に、1cm角のナトリウムを入れ、それが沈むくらいの灯油を入れます。
(2)バーナーの弱火でこの試験管を加熱します。灯油が沸騰するころ、ナトリウムが溶融し、まわりのサビがはがれ落ちて、水銀の玉のようになります。
(3)試験管をバーナーからはずし、16.5×165の試験管を入れます。溶融したナトリウムが大小の試験管の間にはさまれて拡がり、金属光沢が観察できます。
(4)片づけるときは、小さい試験管を抜いて、再び加熱し、ナトリウムをひとかたまりにしてから放冷し、試薬ビンにもどします。
*注意*
試験管は完全に乾いているものを使います。バーナーで加熱するときは弱火にして、灯油が突沸しないように注意して下さい。
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(2)ビーカーに深さ1cm程度の水を入れ、そこに米粒大のナトリウムの小片を入れて、すぐシャーレでフタをしなさい。そして、ナトリウムが水に浮くかどうか、水とどのように反応するかを観察しなさい。
反応が終わったら、フェノールフタレインを入れてみなさい。フェノールフタレインはアルカリ性で赤紫色を示す物質である。リチウム、カリウムについてもナトリウムと同様にビーカーの水と反応させる実験を行いなさい。最も激しく反応するものはどれか。
**コメント**
反応のおわりにパチッとはねることがありますので、シャーレでふたをしています。ただ、反応させる粒が大きいと、ビーカー内に水素が充満し、それに火がついて小爆発を起こすことがあります。
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(3)500mlのビーカーに水を入れ、試験管にも口にいっぱいの水を入れる。試験管の口に親指を当てて逆さまにして、ビーカーに入れる。リチウムをひとつピンセットでつまみ、試験管の口のところに沈めて反応させる。
リチウムが反応すると共に、気体が試験管の中にたまるであろう。試験管の中に気体がいっぱいになったら、試験管の口に親指を当ててビーカーから取りだし、親指をはずしながら気体に点火してみなさい。
**コメント**
ナトリウムでこの実験をすることが多いのですが、ナトリウムは水と反応すると溶融してしまい、ピンセットでつまんでいられなくなります。リチウムなら、水と反応させても、溶融しませんから、ピンセットでつまんだまま、発生する水素を試験管に集められます。
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【結果】
リチウム | ナトリウム | カリウム | |
外観 | (黒い) | (白っぽい) | (黒い) |
切り口 | (金属光沢) | (同左) | (同左) |
柔らかさ | 3 | 2 | 1 |
電気伝導性 | (あり) | (あり) | (あり) |
(*いずれも柔らかい金属で、ナイフで切れる。)
(2)水との反応
リチウム | ナトリウム | カリウム | |
反応のようす | 水面を走りながら反応 | 水面を走りながら反応 | 水面で炎をあげて反応 |
反応の激しい順 | 3 | 2 | 1 |
フェノールフタレイン | 赤紫色 | 赤紫色 | 赤紫色 |
(3)リチウムと水が反応して生成される気体は何か。
(水素)
【考察】 それぞれの物質は水と反応して、どんな物質になったのかを調べなさい。
(2Li + 2H2O → 2LiOH + H2)
(2Na + 2H2O → 2NaOH + H2)
(2K + 2H2O → 2KOH + H2)
「もんじゅ」がもらしたナトリウム
天然のウランには核分裂しない238Uが99.3%、核分裂する235Uが0.7%含まれている。このままでは、235Uの同位体が少なく、原子力発電には使えないので、235Uの比率を上げた「濃縮ウラン」が発電用に使われている。
原子力発電では、いろいろな放射性同位体が生成され、それが原子炉の中にたまってしまうことは前に述べた。中でもプルトニウムは猛毒で、半減期も長く、核兵器の原料にもなるやっかい物である。
このプルトニウムをうまく利用しようとして考えられたのが高速増殖炉である。高速増殖炉は、235Uやプルトニウムを燃料にして、それらが分裂したときに出るエネルギーで発電するとともに、発生する中性子を238Uに吸収させてプルトニウムに変えてしまう。だから、発電すればするほど燃料になるプルトニウムが増えるという、夢のような原発である。
しかし高速増殖炉「もんじゅ」に事故が起こった。使っていたナトリウムをもらしてしまったのである。
高速増殖炉には、金属ナトリウムが大量に使われている。金属ナトリウムは、中性子を減速させないので、効率よく238Uをプルトニウムに変えられるのである。もちろん、原子炉の内部は高温であるから、金属ナトリウムは水銀のように、液体になっている。「もんじゅ」でこれがもれたのは、2次冷却系であった。もれたナトリウムは空気中の酸素と反応して、燃えながら1000℃以上の高温になって、床に落ちた。床には鉄板が貼ってあったが、一部、その鉄板が溶けていたことが、事故後に確認された。もし、鉄板に穴があいて、下のコンクリートと金属ナトリウムが触れたら・・・・。コンクリート中の水分とナトリウムが反応して、水素が発生し、大爆発を起こしただろうといわれている。
**コメント**
「もんじゅ」の事故がいかに重大であったのかを説明し、核燃料サイクル構想と行きづまり、代わりに考えられているプルサーマル発電などを解説しました。
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金属原子の配列のしかた もどる
固体の金属を構成している原子は、下のように3次元に並んでいる。このように、原子が規則正しくならんでいる構造の構造の最も小さな繰り返し単位を(単位格子)という。(図 省略)
単位格子には次のような種類がある。それぞれの単位格子中に含まれる原子の数を計算せよ。
(1)体心立方格子
(2)面心立方格子
(3)六方細密構造
共有結合 もどる
問1 塩素原子どうしの結合のしかたを書きなさい。
問2 窒素原子どうしの結合のしかたを書きなさい。また、不対電子、共有電子対、非共有電子対とは何か。
**コメント**
原子どうしが共有結合するようすを、まず電子配置図(K、L、M・・軌道を同心円状に表す)で説明し、次に電子式で、最後に構造式で表す方法を解説し、次の問題を演習しました。
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問3 次の化合物の原子の結合のようすを、電子配置で表わしなさい。
HCl(塩化水素) NH3(アンモニア) CO2
C2H2
問4 塩素、窒素および問3の化合物を電子式で表せ。
(1)Cl2 (2)N2 (3)HCl (4)NH3 (5)CO2 (6)C2H2
問5 (1)下のそれぞれの原子の価標の数を答えよ。
H Cl N O
(2)上の価標の数を使って、次の物質の構造式を作れ。
Cl2 N2
NH3 O2
電気陰性度と分子の極性
問1 電気陰性度とは何か。
問2 次の分子では、電子はどんな状態か。
(1)HF (2)H2O (3)N2
問3 極性分子、無極性分子とは何か。その例をあげよ。
イオン結合 もどる
問1 MgとFはどのように結合するか。
**コメント**
Mg原子がMg2+イオンに、F原子がF−イオンになるようすを電子配置図(K、L、M・・軌道を同心円状に表す)で説明しました。
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**コメント**周期表からは判断できないイオン(主なもの)
第1族、2族、13族、16族、17族の主な原子がどんなイオンになるのかを考えさせ、イオン価数と周期表の関係を説明しました。そして、周期表からは判断できないイオンと多原子イオンを紹介しました。
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**コメント**問4 次の原子どうしの組合せで、どんなイオン性物質ができるか。例にならって、 イオン記号と組成式を答えよ。
それぞれの原子または原子団がどんなイオンになるのかを調べ、組成式を作る考え方を説明し、下の問題演習をしました。
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**コメント**
ここでは、金属結合、自由電子、分子間力、クーロン力などについて、結晶の図を書いて説明しました。
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