10 物質の分類

太字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容

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アウトライン

1.食塩(イオン性物質)とロウ(分子性物質)の固体・・・イオン結晶と分子結晶のミクロのようすを説明。

2.【実験1】ロウと食塩は電気を通すか・・・固体、液体、水溶液での電気伝導性を実験。その結果を説明。

3.【実験2】ロウと食塩の外観・・・さわった感じ、臭い、たたいたらどうなるかなどを実験。その結果を解説。

4.【実験3】ロウと食塩の融点・・・ロウは融点が低く、食塩は高いことを実験。その理由を説明。

5.【実験4】ロウと食塩の溶解性・・・ロウは油に溶けやすく、食塩は水に溶けやすいことを実験

6.フロン・・・・典型的な分子性物質の性質を持ち、人体に無害、不燃性であるため「夢のような物質」と呼ばれたフロンについて、実験をまじえて解説。代替フロンの問題点も説明。

7.共有結合の結晶・・・ダイアモンドと水晶を例に、性質と構造を解説。

8.水の性質と構造・・・分子量の割に融点や沸点が高いこと、イオンをよく溶かすことについて構造との関係を説明。


授業の内容

イオン性物質と分子性物質の違い   もどる

問1 これから実験で食塩とロウを使う。食塩はNaとCl、ロウはCとHの化合物である。構成原子から判断して、食塩やロウはイオン性物質か分子性物質か。

  食塩・・・
(イオン性物質 金属元素であるNaと非金属元素のClでできているから。)

  ロウ・・・
(分子性物質 CもHも非金属原子であるから。)

問2 食塩とロウの固体のようすを書きなさい。

      食塩              ロウ






【実験】ロウと食塩の性質と構造

【実験1】ロウと食塩は電気を通すか     もどる

 (ロウのような分子は、電荷を持っていないので、固体でも液体でも電気をとおさない。イオンは、固体では移動できないので電気をとおさないが、液体や水溶液では移動して、電気をとおす。)

問2 水にイオンが溶けていれば、電気が通る。次のものには電気が通るだろうか。また、電気が通ったとすれば、電流の大きさに違いはあるだろうか。

  水道水、牛乳、100%果汁、ポカリスエット、サイダー

**コメント**
100mlビーカーにそれぞれを取り、電極を入れて、100Wの電球がどれくらい明るく点灯するのかを実験しました。ここにあげた5つのものすべてに電気が通りますが、明るさが違います。

1位は牛乳、続いて100%果汁、ポカリスエット、水道水、サイダーの順で、牛乳が明るく点灯することに生徒は驚きます。牛乳にはカルシウムがたくさん含まれているからだと説明し、栄養価が高いことを強調しました。
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【実験2】食塩とロウについて、何も使わずに、見たり触ったりするだけで分かる性質をあげなさい。また、固まりをかなづちでたたくとどうなるか。   もどる

**コメント**
天日塩とロウソクを渡し、生徒にさわらせてわかることを記録させました。
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問3 ここで分かった性質のうち、次の二つをミクロの様子から、説明しなさい。

@ ロウはべたべたする

 (分子間力は弱い引力なので、さわると切れて、ロウの分子の一部が指につく)

A食塩の固まりをたたくと割れる

 (イオンの配列が乱れると、同種のイオンどうしが重なり合い、反発力が生まれて割れる)

**コメント**
イオンどうしの結合は、+と−の電気的な結合なので、割れてしまった破片を、もとと同じ配列になるように合わせれば、接着剤なしで結合するはずだと話しました。

続けて、イオンは1億分の1cmくらいの粒なので、すべてのイオンを割れる前と同じ配列にすることは無理だと説明しました。
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問4 次のものはイオン性物質か、分子性物質か。

  バター
・・・・(べたべたするのでイオン性物質)

  ガラス
・・・・(パリンと割れるのでイオン性物質)

  パラジクロロベンゼン
・・・・(くさいので分子性物質)

**コメント**
臭いのあるものは、常温で気体になっているということなので、固体の引力が弱い証拠です。引力が弱いのは分子間力なので、分子性物質だと説明しました。

また、それぞれが液体で電気をとおすかどうかを実験しました。
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【実験3】 食塩とロウを少し試験管に取り、バーナーで加熱してみなさい。簡単に溶けるか。また、それはなぜか。   もどる

 (食塩は融点が高い・・・クロン力は強い引力だから。)
 (ロウは融点が低い・・・分子間力は弱い引力だから。)

問5 アルコールと灯油はイオン性物質か、分子性物質か。

 (どちらも常温で液体なので、分子性物質)

**コメント**
常温で液体や気体のものは、分子性物質であることを説明し、灯油やアルコールが電気をとおさないことを実験しました。
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【実験4】食塩とロウを少し試験管に取り、水を入れて溶かしてみなさい。溶けるか。溶けにくかったら、バーナーで温めてみなさい。次に、食塩とロウを少し試験管に取り、灯油を入れて溶かしてみなさい。溶けるか。溶けにくかったたら、バーナーで温めてみなさい。   もどる


問6 イオンと分子は一般に、どのようなものに溶け、どのようなものには溶けにくいか。

  (イオン性物質・・・水に溶けやすく、油に溶けにくい。)
  (分子性物質・・・・水に溶けにくく、油に溶けやすい。)

**コメント**
水は分子性物質であるにもかかわらず、油に溶けにくく、イオンを溶かしやすいことを強調しました。水は変わり物です。
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 フロン     もどる

 フロンは正式にはクロロフルオロカーボンズという。クロロはCl、フルオロはF、カーボンはCを意味し、これらの元素を中心として構成されている物質をまとめてフロンと呼んでいる。そのうち、オゾン層破壊効果が大きいため、先進国では1996年で(途上国では2010年に)製造中止になった(なる)フロンは下のような物質である。(   )内はそのフロンの記号。

    F         F
    │        │
 Cl−C−Cl   Cl−C−F
    │        │
    Cl        Cl
 (CFC-11)    (CFC-12)

    F  F         F  F            F  F
    │ │         │ │            │ │
 Cl−C−C−F     F−C−C−F       F−C−C−F
    │  │        │ │            │ │
    C lCl        Cl Cl            F Cl
  (CFC-113)     (CFC-114)      (CFC-115)

問1 これらのフロンは分子性物質かイオン性物質か。また、どんな性質を持つと予測できるか。

  (分子性物質)
  (理由・・・構成元素がすべて非金属元素だから。)
  (   ・・・常温で気体または液体だから。)

問2 CFC−113は金属やICなどの油汚れを洗うために多量に使用された。今、これに代わって製造されているものの一つがHCFC−141bというフロンである。汚れた油が付いたガラス棒をHCFC−141bの中で洗ってみなさい。また、油性ペンの落書きが消えるかどうかも試しなさい。

   H   F
   │  │
 H−C−C−Cl
   │  │
   H  Cl
  (HCFC-141b)

  (ガラス棒に付いた油や、油性ペンの落書きを落とす。)

問3 ヘキサンやベンゼンなどという物質も油を溶かす性質を持つのだが、なぜフロンが選ばれるのだろうか。HCFC−114bとそれぞれの物質を実験台に少しこぼして、火をつけてみなさい。また、下の表も参考にして考えなさい。

物質名 分子式 毒性等
フロン 毒性が低い
ヘキサン 14 ガソリンの成分
ベンゼン 発ガン性あり
トルエン シンナー中毒になる


   (フロンは油汚れを落とし、しかも無毒で燃焼しないので「夢のような物質」といわれ、広く使われていた。)


 CFC−11やCFC−12などは、下の性質を持つので冷蔵庫やクーラーの冷媒として、あるいは発泡スチロールを作るときの発泡剤として多量に使われていた。

  CFC−11やCFC−12の性質
   ・たとえ漏れても毒性が低く、燃えない。
   ・冷蔵庫やコンプレッサーの油に良く溶ける。
   ・腐食性がなく、器具を傷めない。

 現在このフロンの代替品としてはHFC−134aなどが使われている。HFC−134aは下のような構造で、塩素を含まないので、オゾン層を破壊することはない。しかし、CO2の1300倍以上の温暖化効果を持つ問題になっている。

問4 HFC−134aなどに圧力をかけると液体になるので、スプレー缶につめて市販されている。このスプレーを噴射すると、ものの温度を下げることができる。スプレーすると温度が下がる理由を答えよ。
   F  F       
   │ │
 F−C−C−H
   │ │
   F H
 (HFC-134a)

 (スプレー缶から噴射されると、フロンは断熱膨張するため、温度が下がる。)

**コメント**
以上のように、フロンの性質は「物質の分類」で学習した知識を使って理解できます。授業で学んだことが、実生活に当てはまる典型的な例でしょう。

さらにフロンの特異的な性質として、
1.燃焼しない
2.人体に無害
である(化学的に安定である)ことを知らせ、ICなどを洗浄する溶剤や、クーラー・冷蔵庫などの冷媒として広く使われていたことを説明しました。

ところが、フロンはオゾン層を破壊することが分かったため、現在、その代替物が使われています。しかし、それとて、オゾン層を破壊する効果を多少とも持つ物や、オゾン層をこわさなくても強い温暖化効果を持つ物ばかりです。

そこで、最近、プロパンなどを冷媒に使う冷蔵庫が環境保護団体「グリーンピース」や、松下電器によって開発されたことを知らせました。
資料:「冷媒に炭化水素」毎日新聞、1998年6月20日
    「松下電器 冷媒に炭化水素」日本経済新聞、1999年2月21日

なお、この実験で使用したHFC−134aというフロンは「冷却スプレー」として、理科の教材屋さんから手に入れることができます。それから、HCFC-141bは普通、学校では手に入らないのですが、私はダイキンさんのご厚意により、特別に譲り受けました。この場を借りて感謝申し上げます。
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ダイアモンドと水晶     もどる

 ダイアモンドや水晶は次のような構造であり、(
共有結合の結晶)と呼ばれている。これまで、物質は、金属、イオン性物質、分子性物質の3つに分類できると勉強してきたが、ここに共有結合の結晶を加えて、4つに分類することが多い。

問 ダイアモンドや水晶はどのような性質を持つか。また、その理由は何かを説明しなさい。
@触ったり、たたいたりして分かる性質。

   (非常に硬い・・・すべての原子が共有結合で結合しているため)

A沸点や融点について

  (非常に高い・・・共有結合はもっとも強い結合だから)

B水や油に溶けるか

  (溶けない・・・共有結合はもっとも強い結合だから)

C電気を通すか

  (通さない)


水の性質と構造     もどる

問1 水は物質の4分類のうち、どこに属する物質か。

  (分子性物質)
  (理由:常温で液体であるから。非金属元素で構成されているから。)

問2 原子の質量は原子量として表すことができた。では、分子の質量はどうすれば計算できるか。水分子の質量はいくつになるか。

  (分子を構成する原子の原子量を合計すれば、分子の相対質量を表せる。)
  (水分子の相対質量は、1+1+16=18)

**コメント**
分子量をまだ説明してなかったため、ここで触れることにしました。

原子の相対質量はHが1,Oが16、Nが14・・・・。これは、H原子に比べO原子は16倍の質量、N原子は14倍の質量を持つことを表していることを復習します。

そして、H2OはH原子に比べ、18倍の質量になるはずだと説明して、分子量を理解させました。
*******

問3 次の表は、色々な分子性物質の分子式と、分子量、融点、沸点を表すものでる。空欄の分子の分子量を計算し、沸点との関係を考えよ。

物質名 分子式 分子量 融点(℃) 沸点(℃)
水素 (2) −259 −259
窒素 28 −210 −196
二酸化炭素 CO (44) −79(昇華点)
臭素 Br 160 −7 58
ヘキサン 14 86 −94 69
ヨウ素 254 114 183


   (分子量が小さいものほど、融点や沸点が低くなる)

**コメント**
同温では、分子量が小さいものほど、熱運動が激しいことを説明しました。
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問4 水は分子量の割には、融点や沸点が高い。この理由を説明せよ。

  (水分子はHが少し+、Oが少し−の電荷を持っている。このため、H原子と、となりの分子のO原子の間に水素結合と呼ばれる電気的な引力を持つため。)


問5 水は分子性物質であるが、食塩などのイオンを溶解させる。この理由を説明せよ。

  (溶質の+イオンは水分子のO原子と、−イオンはH原子と結合し固体から水溶液に引き出されるため。)

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