11 溶解と溶液の性質

字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容

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アウトライン

 1 「溶ける」とは・・・「溶ける」という言葉の意味を分析。溶解、融解、化学反応を「溶ける」と行っていることに気づかせる。身の回りに見られる溶解の例を考えさせる。

 2 【実験】食塩水と水を見分けよう・・・食塩水と水を見分ける実験を行う。溶媒と溶液の違いがよく分かる。

 3 【実験】水溶液の濃度と凝固点降下・・・凝固点降下度と水溶液の濃度の関係を実験。

 4 溶液の濃度と凝固点降下・・・モル濃度と凝固点降下度の関係の計算。

 5 沸点上昇・・・沸点上昇のしくみを解説。

 6 【実験】ナスと塩、ナスと砂糖(浸透圧)・・・ナスに食塩や砂糖を振りかける実験から、浸透圧を説明。

 7 気体の溶解度・・・ヘンリーの法則を説明。

 8 【実験】変な溶液(コロイド溶液)・・・牛乳や墨汁は不透明だから、溶解しているとは言えない。しかし、ろ過できないことから、沈殿でもないことを示す。

 9  【実験】透析、金コロイド、チンダル現象(コロイド溶液の性質)

10 コロイド粒子の種類と性質、【実験】凝析と豆腐づくり・・・ブラウン運動、疎水コロイド、親水コロイド、保護コロイドについて説明。水酸化鉄(V)コロイドによる凝析の実験と豆腐づくりの実験。

11 【実験】電気泳動とチキソトロピー(コロイド溶液の性質(2))・・・ベントナイトを使ったチキソトロピーの実験。紺青ゾルを用いた電気泳動の実験。

12 溶液の濃度の表し方・・・ppm濃度、モル濃度についての解説と計算。

授業の内容

1 「溶ける」とは              
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 日常使う「溶ける」という言葉は、どんな意味を持っているでしょう。化学的には、次の3つが考えられます。
(1)食塩が水に「溶ける」。

(2)食塩を加熱すると「溶けて」液体になる。

(3)鉄が塩酸に「溶ける」。

 これから学習するのは、言うまでもなく上の3つのうちの「溶解」についてです。まず、用語を確認しましょう。
 ある液体に他の物質(固体、液体、気体)が溶けてできた液・・・
 この時、溶かす方の物質・・・・
     溶ける方の物質・・・・

問 ふだんの生活で、溶解という現象はどんなところに見られるでしょう。例のように、「〜が〜に溶けている」とか、「〜に〜を溶かしている」というように答えなさい。各班ごとに相談し、5つ以上の答を書きなさい。
例 水に酸素が溶けている。食器の汚れを水道水に溶かしてきれいにしている。
 @

 A

 B

 C

 D

 E

 F

**コメント**
斑ごとに考えをまとめさせ、用紙に記入して回収しました。3クラスで出た答をまとめて下のプリントを作り、配布しました。
*******


レポート解説「〜に〜が溶けている」

 まず、溶けているかいないかをはっきりさせよう。これは次のように区別する。 
@本当に溶けている
 液が透明である。例え色があっても透けて見える状態・・・
Aコロイドとして溶けている
 牛乳のように液が濁っているが、沈殿しない状態・・・
B溶けていない
 液が濁っていて、放っておくと沈殿ができる状態

 しかし、私たちのまわりにある物は、いろいろな物質が混ざり合った物(混合物)なので@、A、Bのすべてに当てはまるものもある。例えばみそ汁。食塩の一部は@の状態でお湯に完全に溶けているが、みそはAやBの状態だ。みそ汁を放っておくと、みそが沈殿し、しかも、上澄みは完全に透明ではないことから分かるだろう。

 各班に「〜に〜が溶けている」という例を考えてもらった。以下はその回答であるが、@だけでなくAやBの状態も含まれていることを、あらかじめ頭に入れて読んでほしい。なお、(  )内は私のコメントである。

(1)飲み物編
・水道水に塩素が溶けている。
(殺菌のためだね。有機物を多く含む水に塩素を入れると、トリハロメタンという発ガン物質ができる。水道水には微量だがそれも溶けている。)
・ジュースやコーヒーに砂糖が溶けている。
(砂糖の代わりに人工甘味料が溶けているジュースもあるね。)
・インスタントコーヒーがお湯に溶ける。
(本物のコーヒーもコーヒー豆の成分のうち、お湯に溶ける物を溶かし出して飲んでいるんだ。お茶は何を飲んでいる?)
・水に二酸化炭素が溶けて、炭酸水を作る。
・栄養ドリンクに無機質が溶けている。
(無機質つまりミネラルだけではなく、ビタミンやブドウ糖なども溶けているね。)
(水道水、ジュース、みそ汁、スープ・・・と考えると分かるだろうが、AやBの状態のものを含めると、飲み物というのはすべて水に何かが溶けているものだといえる。カレーやシチューなど、どろどろした食べ物も同じだ。では、固体の食べ物は?)

(2)環境編
・雨に二酸化炭素が溶けている。
(雨はCO2が溶けているので酸性だ。さらに人間の活動によってできた窒素酸化物や硫黄酸化物がとけ込むと、酸性が強くなって酸性雨と呼ばれるようになる。)
・川の水に家庭排水が溶けている。
(たくさん溶けると、手賀沼のようにアオコが発生して、環境問題になるね。)
・海に食塩が溶けている。
 (雨は、空気中のチリなどを溶かして、空気をきれいにしてくれる。川は地上の汚れを分解しながら運び去っている。そして、海は汚れを沈殿させている。こうして、水は環境を浄化するはたらきをしているのだ。)
・船の塗料が海に溶けて環境ホルモンとして作用している。
(50mプールに塗料の成分が1滴溶けたくらいの量で、貝類に影響が出る。)
・湖沼にリンが溶けている。
(以前、合成洗剤にリンが含まれていて問題になった。)

(3)生物体編
・だ液にアミラーゼが溶けている。
(だ液や胃液、胆汁、膵液などにはアミラーゼなどの消化酵素が溶けていて、食べ物を分解している。)
・血液にいろいろな栄養が溶けている。
(吸収された栄養素は血液に溶けて、からだ中に送られている。)
・小便に不純物が含まれている。
(体内でできた老廃物は、血液に溶けて運ばれ、腎臓で小便に溶けて排泄される。自然環境と同じで、私たちの体内でも水が汚れを運び去っているのだ。逆に言えば、ダイオキシンのように分解されにくく、水に溶けにくいものは、なかなか排泄されず、いつまでも体内に残ることになる。)
・汗には塩が溶けている。

(4)生活編
・お風呂にバスクリンを溶かす。
・水に石けんを溶かす。
・洗剤が汚れを溶かす。
・絵の具を水に溶かして絵を描く。
・アルコール、シンナー、ベンジンがペンキを溶かす。
(分子性物質は分子性物質に溶けやすいという例だね。)

(5)その他
・塩化水素という気体が水に溶けたものが塩酸。

(6)これは違うよ
・水に水素と酸素が溶けている。
(水素と酸素が化学反応したものが水。溶けているわけではない。)
・塩がナメクジを溶かす。
(塩がナメクジの水分を吸い出しているのであって、溶かしているのではない。)
・水にセメントが溶けて固まる。
(セメントと水は一種の化学反応を起こして固まる。)
・車のフレームは鉄を溶かして形を作る。
(これは鉄の融解。溶解ではない。)
・消化液は食べ物を溶かす。
(どちらかというと、食べ物を分解する化学変化。)
・氷を水に溶かす。
(氷が水に溶けるときは、氷が融解している。)
・血液に酸素が溶けている。
(溶けていると言っても良いだろうが、酸素は赤血球に結合している)



2 食塩水と水      
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【実験】食塩水と水を見分けよう
 液体A、Bは食塩水か水のいずれかである。どちらかを見分ける方法をできるだけたくさん考え、実際に実験しなさい。この実験によって、「水」と、水に何かが溶解している「溶液」とのいろいろな違いが分かるであろう。

【結果】失敗した実験も含めて、試したことを全て記録しなさい。

結  果
見分ける方法 液体A 液体B



【感想】



             年  組   番 氏名

**コメント**
この実験によって凝固点降下や沸点上昇、溶解度、浸透圧など、いろいろな溶液の性質に気づかせることができます。
今まで、生徒が見つけた方法をためておいて、下のようなプリントを作りました。なお、今年新たに見つかったのは(32)です。
*******


塩水と水を見分ける方法
(1)味
(2)蒸発させる。・・・溶けてしまっても、なくなったわけではない。
(3)冷やすと塩が再結晶して出てくる。・・・溶解度は温度によって違う。
(4)電気を通す。・・・イオンを含む溶液は電気を通る。
(5)野菜を入れる。・・・塩水は浸透圧が大きいので、野菜はぐったりする。
(6)沸点を調べる。・・・水よりも食塩水の方が沸点が(
)い。
             (
沸点上昇
(7)凝固点を調べる。・・・水よりも食塩水の方が凝固点が(
)い。
             (
凝固点降下
(8)同じ体積で、質量を比べる。・・・食塩水は密度が大きい。
(9)じゃがいも、にんじん、ゆで卵、ピーナッツ、水に沈むプラスチックが浮く。インクを1滴入れる。
    ・・・密度の大きい食塩水は、浮力が大きい。
(10)さらに食塩を溶かす。・・・溶ける量には限度があるので、食塩水はあま                り食塩を溶かせない。
(11)蒸発する速さを比べる。・・・食塩水は蒸発しにくい。
(12)硝酸銀を入れる。・・・Clーイオンは塩化銀の沈殿を作る。
              (飽和食塩水では、沈殿が消えることがある)
(13)炎色反応を見る。・・・Na+の黄色が出る。
(14)亜鉛板と銅板を入れ、電池になるかどうかをみる。
      ・・・電池に使える溶液はイオンを含まなければならない。
(15)淡水魚を入れる。・・・淡水でなければ生きられない。
(16)たくさん飲ませる。・・・塩水は(濃いものは)死ぬ。
(17)電気分解する。・・・塩素ガスの臭いがしたら塩水。
(18)傷口につける。目に入れる。・・・痛かったら塩水(浸透圧?)
(19)水を入れる。
   ・・・カゲロウのようなモヤモヤが出る(シュリーレン現象)。光の屈折率      の違いで出る。
(20)硫酸銅を入れる。・・・Cu2+とClーイオンで、青緑色のイオンができる。
(21)石鹸水を入れる。・・・塩水では濁る(塩析)。
(22)鉄を入れる。・・・塩水はさびやすい(塩は触媒になる)。
(23)リンゴの切り口につける。
    ・・・塩水は酸化酵素(茶色にする触媒)の働きをおさえる。
(24)濃塩酸を入れる。・・・平衡の移動で固体の食塩が析出する。
(25)アルコールを入れる。
     ・・・食塩の溶解度が下がり、食塩の結晶が析出する。
(26)金属ナトリウムを入れる。・・・平衡の移動で固体の食塩が析出する。
(27)濃硫酸を入れる。・・・食塩水からHClが発生する。
(28)(27)に酸化マンガン(W)を入れる。・・・Cl2が出る。
(29)縄にしみこませて乾かしてから燃やす。
   ・・・塩水をしみこませたほうの縄の灰はくずれない(うばすて山より)。
(30)ろ紙片を浮かべる・・・速く沈んだ方が食塩水、
               食塩水はろ紙にしみやすい?
(31)試験管に入れて振る・・・食塩水は泡が消えにくい
(32)氷をたくさん入れる・・・水は0℃以下にならないが、食塩水は0℃以下になる。

これはダメ
(1)リトマス、BTB・・・塩も中性
(2)臭い・・・塩もなし
(3)ろかする・・・溶けている食塩もろ紙を通る
(4)塩化コバルト紙・・・食塩水にも水が含まれているため


3 溶液の凝固点降下        もどる

 水は0℃で凝固するが、水に何かを溶かすと(つまり水溶液にすると)0℃では凝固しなくなる。この現象はアルコールやヘキサン(石油の成分)、ベンゼンなどの溶媒にも見られるもので、(
凝固点降下)と呼ばれている。

【実験】水溶液の濃度と凝固点降下
水溶液の準備
 尿素溶液・・・水100gに尿素CO(NH2)20.1モルを溶かしたもの
ブドウ糖溶液・・水100gにブドウ糖C6H12O60.1モルを  〃
 食塩水・・・水100gに食塩NaCl0.1モルを    〃

問 それぞれの溶液を作るには、何gずつを水に溶かせばよいか。


【方法】
(1)300ml用ビーカーに氷を7分目と、食塩をひとつかみ入れ、水を氷の半分まで入れる。それを針金の撹拌棒で良くかき回しておく。
(2)ポリ袋に水をおよそ70ml入れ、図のようにビーカーの氷水で冷却する。
(3)一人が撹拌棒でゆっくりと氷水をかき回す。もう一人は冷却開始からの時間を計る。さらにもう一人がデジタル温度計を水に入れ、かき回しながら20秒おきに水温を測る。残りの一人はそれを記録する。
(4)水が凝固してから2分後まで実験を続ける。
(5)水100g(100ml)をメスシリンダーで測り、ビーカーに入れる。そして、問で計算した量の尿素をはかり取り、その中に入れて完全に溶かす。
(6)ポリ袋の中の氷を捨て、尿素溶液を3分の1ほど入れ、袋の内側をその溶液で濡らして捨てる(共洗い)。そして、残りの尿素溶液を袋に入れ、水と同じように実験する。さらに、ブドウ糖溶液、食塩水についても実験する。

【結果】
それぞれの結果をグラフで表しなさい。

   
(省略)

             年  組   番 氏名

**コメント**
この実験はカンタンに、しかも精度の良いデータが得られる方法です。溶液、氷水ともに常によく攪拌しながら温度を読むことがポイントです。
*******



4 溶液の濃度と凝固点降下        
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 溶媒や溶液を冷却したときの、温度変化を表すグラフを(
冷却曲線)という。
問1 前の実験で、水だけを冷却したときと、水に何かを溶かした液(水溶液)を冷却した場合の冷却曲線を書きなさい。また、それぞれの凝固点を求めよ。


凝固点
 水・・・・・・         ブドウ糖溶液・・・・・
 尿素溶液・・・         食塩水・・・・・・・・

問2 前の実験で使った溶液の濃度はいくらか。
 尿素溶液・・・


 ブドウ糖溶液・・・

 食塩水・・・


問3

  電解質とは何か・・・

  非電解質とは何か・・・


 溶液の濃度と凝固点の関係

溶液の凝固点がどれくらい下がるかということは(溶質)には関係せず
溶媒1000gあたり、溶質である(
分子)や(イオン)が(何モル
溶けているかに比例する。



問4 溶液を冷却すると、凝固し始めてから全体が凝固するまで、温度がだんだん下がってくる。なぜ温度が下がるのかを説明しなさい。ヒント:凝固し始めたとき、凍るのは溶媒だけである。(食塩水を凍らせても、始めに凍るのは食塩を含まない水である。)



問5 0.5mol/kgのショ糖水溶液の凝固点が−0.93℃であるならば、0.2mol/kgのブドウ糖水溶液の凝固点は何℃か。ただし、ショ糖もブドウ糖も非電解質である。 



問6 200gの水に尿素(分子量60)1.5gを溶かした溶液は−0.23℃で凝固し、50gの水にある非電解質1.35gを溶かした溶液は−0.27℃で凝固した。この非電解質の分子量を求めよ。



     年   組   番 氏名


5 沸点上昇        
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 水よりも食塩水やショ糖(砂糖)水の方が、沸点は(
)い。この例に限らず、一般に純溶媒と溶液の沸点を比べると、溶液の沸点の方が()い。これを(沸点上昇)という。
 
問1 水とショ糖水溶液では、条件が同じなら、水の方が速く蒸発する。なぜだろう。また、同じ温度では、水とショ糖水溶液のどちらの方が水蒸気圧は大きいと言えるか。



問2 水とショ糖水溶液の蒸気圧曲線のおよその形を書きなさい。








└───────────

問3 (  )内に適語をいれよ。
液体が沸騰する温度は、(
蒸気圧)が大気圧と同じになる温度である。今、1気圧で水とショ糖水溶液を加熱し、両方とも100℃に達したとする。この時の水の(蒸気圧)は大気圧と同じなので沸騰するが、問1で考えたようにショ糖水溶液の(蒸気圧)はそれ以下なので、沸騰しない。ショ糖水溶液を沸騰させるには、100℃よりももう少し高い温度が必要なのである。つまり、水に比べてショ糖水溶液の沸点は高いのである。

 6 浸透圧         
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【実験】ナスと塩、ナスと砂糖
(1)ナスを薄く輪切りにし、ポリ袋に入れてしぼってみなさい。どれくらい水が出るか。
(2)次に塩を適当量加えて良く混ぜてから、しぼってみなさい。どちらの方が水がたくさん出るか。
(3)ナスに砂糖を加えてしぼったらどうなるか、実験しなさい。
【結果】


 図のように、半透膜を境に、純溶媒と溶液を同じ高さに入れておく。そのまましばらくおくと、(
溶媒)が(溶液)の方に入り込み、液面の高さが変わってくる。この液面の高さを同じにするために必要な圧力を、浸透圧という。



半透膜・・・溶媒は通すが、溶質は通さないような細かい穴があいている膜。セ     ロハン紙や生物の細胞膜などにはこの働きがある。

  浸透圧の大きさも、一定量の(
溶媒)に溶解している溶質の(物質量)に比例している。

問1 病院で点滴するとき、大量の溶液を時間をかけて血管に入れるより、成分を濃縮して少量の液を短時間に注入した方が苦痛が少ないと思うが、なぜそうしないのか。



問2 逆浸透圧法という方法で、海水を真水にすることができる。これはどんな原理か。



7 気体の溶解度        もどる
(1)気体の溶解度と温度(圧力一定)

  (酸素、窒素、二酸化炭素などについて、温度と溶解度のデーターを示す。)


 気体は、温度が上がると溶解度は(
)る。


(2)気体の溶解度と圧力(温度一定)

ヘンリーの法則
 気体が一定量の溶媒に溶けるとき、溶解度は圧力に(
比例)する。


8 コロイド溶液        
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問1 塩化銅(U)を少量ビーカーに取り、水を加えて溶解する。別のビーカーに炭酸カルシウムを取り、水を加えて良く振る。溶解したものとしないものはどう違うか。

   溶解した・・・
透明になる

   溶解しない・・・
不透明である

問2 上の答から考えると、牛乳や墨汁は溶けていると言えるか?

    
言えない

【実験】変な溶液
  塩化銅(U)水溶液、炭酸カルシウムと水の混合物、牛乳、墨汁を別々の試験管に取る。そして、それらをろ紙でろ過しなさい。成分がろ紙上に残るか。ろ液は透明になるか。

【結果】
 溶けているものと溶けていないものの違い

物質 ろ過すると
塩化銅(U)水溶液
炭酸カルシウムと水の混合物
牛 乳
墨 汁



【考察】
 問1 結果を説明せよ。

 牛乳や墨汁は分子やイオンがバラバラではなく、ある程度の数が結合して粒子を作っている。これをコロイド粒子という。コロイド粒子はろ紙の穴は通る。

問2 次の言葉を説明せよ。
 コロイド粒子・・・・

 分散媒・・・

 分散質・・・

 ゾル・・・

 ゲル・・・


いろいろなコロイド

名称 分散媒 分散質
固体コロイド 固体 固体 色ガラス
液体 プリン
気体 木炭
液体コロイド 液体 固体(懸濁液) 卵白、ゼリー
液体(乳濁液) 牛乳、マヨネーズ
気体( 泡 )
エーロゾル 気体 固体
液体



 ・懸濁液・・・コロイド粒子が(
固体)のもの 
 ・乳濁液・・・コロイド粒子が(
液体)のもの
 ・泡  ・・・コロイド粒子が(
気体)のもの


9 コロイド溶液の性質        もどる
【実験1】透析
(1)200mlビーカーに、純水をおよそ150ml入れる。
(2)牛乳に食塩を溶かしたものをセルロースチューブ(半透膜)に入れ、チューブの口をしばって、ビーカー内の純水につける。牛乳はチューブの外に出てくるか。
(3)チューブをつけておいた純水を少量試験管に取り、そこに硝酸銀水溶液を入れてみなさい。これらの結果から、どんなことがわかるか。



【実験2】金コロイドの色
 金のコロイド溶液をごく少量取り、トルエンに溶かしてみなさい。何色か。また、金のコロイド溶液をスプーンなどに塗り、バーナーで加熱してみなさい。



【実験3】チンダル現象
 水、食塩水、硫酸銅水溶液、薄い牛乳、墨汁の各水溶液に横から光の筋を当ててみなさい。



10 コロイド粒子の種類と性質        
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問1 イギリスの植物学者ブラウンは花粉を水に浮かべて顕微鏡で観察していた。ある時、割れた花粉から小さな粒子が出てきて、それが水の中で不規則に動いていることを発見した。コロイド粒子にも同じような運動が見られ、ブラウン運動と呼ばれている。なぜこのような運動が起こるのだろうか?



問2 コロイド粒子どうしが、結合して大きな粒子になってしまわないのは、なぜだろうか?3つ答えよ。


 (1)コロイド粒子が同じ符号の(
電荷)を持っているため
  このようなコロイド粒子を(
疎水コロイド)という。

 (
疎水コロイド)は少量の電解質(イオン)を加え ると、表面の電荷が中和されて結合し、大きな粒子 になって沈殿する。これを(凝析)という。

  例:
水酸化鉄(V)のコロイド


 (2)コロイド粒子の表面を(
)分子がおおっているため

 このようなコロイド粒子を(
親水コロイド)という。

 (
親水コロイド)は多量の電解質(イオン)を加えると、表面の電荷が中和されて結合し、大きな粒子 になって沈殿する。これを(塩析)という。

  例:



(3)コロイド粒子の表面を(
水分子)がおおっているため
 表面をおおっているコロイド粒子を(
保護コロイド)という。
 このコロイドは沈殿しにくい。

  例:


【実験】凝析と塩析
(1) 凝析
 純水100mlを沸騰させ、そこに20%塩化鉄(V)水溶液10mlを加えると、次の化学反応によって、水酸化鉄(V)のコロイド溶液が生成される。
   FeCl3 + 3H2O → Fe(OH)3 + 3HCl
 できたコロイド溶液を10倍に薄める。それを約70mlずつビーカーに取り、飽和硫酸銅溶液を1ml加え、よく攪拌して放置しなさい。
【結果】



(2) 塩析(豆腐づくり)
 水に溶けている大豆のタンパク質にニガリ(Mg2+、Ca2+等を含む)を加えて固めたものが豆腐である。実験では、ニガリの代わりに、硫酸カルシウムを使う。ただし、豆腐づくりは単純な塩析ではないといわれている。
@ 一昼夜、水につけておいた大豆(1クラスで1.2kg)を、300mlビーカーに1杯取り、ここに水300mlを加え、1分間ミキサーにかける。できたものを呉汁(ごじる)という。

A この呉汁に水を300ml加え、強火で煮立てた後(ふきこぼれないように注意)、弱火にして80℃以上の温度で、数分間、こがさないように、かき混ぜながら煮る。

B 次に、煮た呉汁をさらしの袋に入れてこす。こし汁を豆乳という。袋に残ったものが、おからである。

C 硫酸カルシウム5gに水75mlを加えておく。

D 豆乳を再び75〜80℃に加熱する。

E 硫酸カルシウム溶液を良くかき回してから(濁っていても良い)、なべ全体に円を描くように加える。その後すぐ、おたまで豆乳を5〜6回強くかき混ぜて、豆乳と硫酸カルシウムを良く混合する。そして、そっと放置しておく(固まるまで絶対かき回してはいけない)。やがて、豆乳中のタンパク質が変性し、全体が固まって沈澱してくるであろう。これが豆腐である。
*市販の豆腐は、これを型に入れて少し水分を除き、水にさらしたものである。





11 コロイド溶液の性質(2)        
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電気泳動
コロイド粒子は正または負に(
帯電)しているため、溶液に電極を差し込んで電圧をかけると陰極または陽極に向かって、コロイド粒子が移動する。

【実験】紺青(こんじょう)ゾルの電気泳動
   0.5%ヘキサシアノ鉄(U)酸カリウム(K4[Fe(CN)6])水溶液20mlに1%塩化鉄(V)水溶液1mlを加えると、紺青ゾルと呼ばれるコロイド溶液を生じる。この溶液に電極を差し込んで、15V程度の直流電圧をかけてみよ。コロイドはどちらの電極に近づくか。コロイド粒子が持っている電荷は、正か負か。

【結果】
  コロイド粒子が移動した電極……

  コロイド粒子が持っている電荷…


チキソトロピー

【実験】
(1)ベントナイトと呼ばれる粘土を約10倍の水に懸濁させて、コロイド溶液(泥水)にする。これを大型試験管に20ml取り、そこに、0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液を1ml加えて撹拌し、放置しなさい。ゲル状に固まるであろう。試験管を逆さまにしてみなさい。ベントナイトは流れ落ちるか。
(2)次に、試験管を激しく振ると、このゲルはどうなるか。それを再び放置すると、どうなるか。

【結果】


 このように、ゲル状のコロイド溶液を、単に揺り動かすと流動性を持ったゾル状に変わり、それを放置すると再びゲル状に変化する現象をチキソトロピーという。
<チキソトロピーの例>

 (底なし沼、ボールペンのインク)

コロイドによる光の散乱
(青い空、赤い夕焼けの原因)



12 溶液の濃度の表し方        
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(1)%濃度、ppm

   1%とは・・・

   1ppmとは・・・

  したがって、1% =      ppm

問1 100gの水に10gの食塩を溶かした。この食塩水の濃度は何%か。また、何ppmか。



問2 手賀沼の水にはおよそ0.33ppmのリンが溶けている。手賀沼全体では何kgのリンが溶けているか。
  なお、手賀沼の水量は約5600000tで、1t=1000kgである。




(2) モル濃度 
   日常、溶液の濃度(どれくらい濃いか)は%濃度で表すことが多いが、化学ではモル濃度の方がよく使われている。

モル濃度とは
モル濃度はどんな記号で表わすか


問1(1) 2.0mol/l塩化カルシウム水溶液1.0リットル中には塩化カルシウムは何g溶解しているか。



(2)2.0mol/l塩化カルシウム水溶液を1.0リットル作りたい。どうすればよいか。



問2 0.1mol/l硝酸アンモニウム250ml中には何gの硝酸アンモニウムが含まれているか。



問3 0.5mol/l硫酸カリウム水溶液100mlを作りたい。どうすればよいか。