12 気体の体積と圧力、温度、物質量

字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容
 

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アウトライン

1 大気圧・・・1気圧が760mmHgであることを説明。10mの水柱と、10mの逆さコップを作る。731部隊の真空実験にも触れた。

2 気体の体積と圧力の関係 (温度一定で)・・・
【実験】気体の体積と圧力、気体は種類に関係なく体積と圧力が反比例することを実験。

3 気体の体積と温度の関係
・・・シャルルの法則を説明。

4 気体の体積と圧力、温度の関係
・・・ボイルシャルルの法則

5 理想気体と実在気体

6 気体の体積と物質量
・・・【実験】水素と酸素の反応比、同温・同圧・同体積の気体には同じ数の分子が含まれていることを実験。

7 気体の状態方程式


8 全圧と分圧
・・・【実験】カセットコンロ用ガスの正体

授業の内容

1 大気圧   もどる
我々は1気圧という大気圧の中で生活しているのだが、1気圧の大きさについて調べてみよう。

問1 ガリレオの弟子トリチェリーは水銀を満たしたガラス管を垂直に立てると、760mmの水銀柱ができることを発見した
(図 省略)。この結果から、1気圧という圧力は1cmあたり約1.03kg重の力がはたらいている大きさであることが分かったのだが、なぜか。なお、水銀の密度は13.6g/cmである。

 @底面積がScmで高さ760mmの水銀柱の体積を求めよ。

      (76Scm

 A@の水銀柱の質量を求めよ。

    (13.6 × 76S = 1033.6S およそ 1030Sg))

 B水銀柱の底面は1cmあたり、どのくらいの質量の水銀で押されていることになるか。

   (1030S ÷ S = 1030  1030g)

 Cもし底面積が違う管で実験したら、水銀柱の高さに違いは現れるか。

  (違いは現れない。)

問2 水銀ではなく水で柱を作ったら、1気圧でどれくらいの高さの水柱ができるか。

  (底面積を1cm、高さをhcmとすると、水の密度は1.0g/cmなので
     h × 1.0 = 1030
     h = 1030cm = 10.3m )

問3 コップに水を満たし、厚紙でふたをして、ふたを指でおさえながらコップを逆さまにする。おさえていた指をそっと離すと、ふたはどうなるか。

   ┌───┐
   │    │
   │ 水  │
   │    │
   │    │
  ──────

**コメント**
逆さコップの実験です。ふたが落ちないのは、大気圧がふたを持ち上げているためですが、水の表面張力と濡れも重要なはたらきをしています。まず、水の表面張力、これはコップの口とふたの間から水がこぼれ落ちたり、空気が侵入することを防いでいます。次にぬれは、ふたをコップに接着する糊の役目を果たしています。

授業では、表面張力やぬれには触れませんでしたが、コップの高さが10m以内であれば、これは成り立つはずだと説明しました。そして、校舎の壁を使って塩ビパイプで10mの水柱を作り、パイプの下端に厚紙をつけて、10mの逆さコップを作って見せました。
*******


問4 ジュースの空き缶に水を少し入れて加熱する。水が十分沸騰したら、火から下ろし、すぐに逆さまにして水に入れる。空き缶はどうなるか。

  (缶はつぶれる。)

問5 われわれの体の表面にも大きな大気圧がかかっている。しかし、われわれはつぶれてしまわない。なぜだろうか、下の文を読んで考えよ。

 また真空実験室で少年隊員は、身の毛がよだつような場面に遭遇した。ポンプで室内の空気を抜くことができる真空室に「丸太」※をいれ、少しずつ真空にして行くのである。
 外気圧と内臓圧の差が大きくなるにつれ、「丸太」の眼球、口腔、肛門など、およそ人間の身体の”穴”という”穴”から内臓がせり出そうとする。真空実験室の中で「丸太」の眼球は飛び出し、顔面は異様に膨れ上がりビーチボールぐらいの大きさとなる。全身の血管がみみずのように隆起し身体の各部位がゴムのようにのびる。ついに腸がそれ自体ひとつの生き物のごとく、にょろにょろと外へはいだしてくるのである。「実験開始5分後・・・7分後・・・9分後、ただ今00気圧」。実験室の外で隊員たちがこのもようをレンズのような目で観察し、8ミリ撮影器に収めていた・・・。 ( 悪魔の飽食より)
            
※ この実験は第2時世界対戦中に日本軍が満州で行なったもので、「丸太」とは中国人やロシア人の捕虜である。


2 気体の体積と圧力の関係 (温度一定で)     もどる
【実験】気体の体積と圧力
  気体を注射器に閉じこめて圧力をかけると、体積は小さくなる。その変化の仕方は気体の種類によって違うかどうかを実験する。

**コメント**
実験の前に、いろいろな気体を同じ体積、別々の注射器に入れて、同じ圧力をかけたとき、体積がどうなるかを質問。多くの生徒は、軽い水素は体積が一番小さくなると予想しました。
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【方法】
(1)注射器のシリンダーの直径をはかり、シリンダーの断面積を求めなさい。
(2)注射器に窒素、酸素、二酸化炭素、水素、空気のうちのいずれかの気体を20ml入れ、注射器の先にゴム栓をつける。
(3)この注射器をスタンドに垂直に固定し(注射器をあまり強くしめつけないこと)、ピストンに箱に入れたレンガを乗せる。そして、箱とレンガの質量及び気体の体積を記録する。
(4)窒素、酸素、二酸化炭素、水素、空気のうち3種類以上の気体について実験しなさい。

【結果】
 注射器のシリンダーの直径・・・

 シリンダーの断面積・・・

【考察】
 気体にかかる圧力は、シリンダー1cmあたりに加えられている力であり、この実験では、箱とレンガによる圧力と、大気圧の合計である。
@まず、箱とレンガがシリンダー1cmあたりに加えている力は
     箱とレンガの重量(kg重)÷シリンダーの断面積(cm) である。
A次に、大気圧は1cmあたり1.03(kg重)である。

@とAから、
気体にかかる圧力
   = 箱とレンガの重量(kg重)÷シリンダーの断面積(cm)  + 1.03(kg重/cm)  である。


気体の種類・・・

箱とレンガの重量(kg重)                        
圧力 (kg重/cm)
体積 (ml)
圧力×体積(mlkg重/cm)

気体の種類・・・

箱とレンガの重量(kg重)                        
圧力 (kg重/cm)
体積 (ml)
圧力×体積(mlkg重/cm)

気体の種類・・・

箱とレンガの重量(kg重)                        
圧力 (kg重/cm)
体積 (ml)
圧力×体積(mlkg重/cm)



(1)各気体について、圧力と体積の関係をグラフに表しなさい。



(2)気体は種類によって体積と圧力の関係が違うと言えるか。



【感想】



ボイルの法則

気体の体積(V)は種類に関係なく、圧力(P)に
(反比例)する。

 VとPの関係を数式で表すと

 
( V = a / P  または  PV = a )

問(1)上のデータ表に、P×Vの値を入れよ。

(2) P1の圧力で体積がV1である気体がある。この気体の圧力をP2に変えたら体積がV2になった。P1、V1、P2、V2の関係を数式で表しなさい。

  
( P1・V1 = P2・V2 )


3 気体の体積と温度の関係(圧力一定)     もどる

 色々な気体の体積と温度との関係を調べて見ると、これも気体の種類には関係せず、どんな気体も同じ変化をする事が分かった。例えば、0℃で10.0リットルの気体は気体の種類に関係なく、各温度によって下のような体積を示す。

温度(℃) −200 −100   0  +100
体積(l) 2.67 6.34 10.0 13.7

問1(1)気体の温度と体積のデータをグラフにしなさい。



(2)絶対0度とは何か。また絶対温度(T)と摂氏温度(t)とはどんな関係があるか。

 (気体の体積がゼロになる温度、つまり、気体の分子運動がなくなる温度。
  T = t + 273 )

(3)絶対温度目盛りで(1)のグラフを書き直しなさい。

シャルルの法則

気体の体積(V)は絶対温度(T)に
(比例する)。


(4)気体の体積(V)と絶対温度(T)の関係を数式で表しなさい。

  ( V = aT   または  V/T = a )

(5)次のデータから、V/Tの値を求めなさい。

温度(℃) −200 −100   0  +100
T(k)
V(l) 2.67 6.34 10.0 13.7
V/T


(6) T1の温度で体積がV1である気体がある。この気体の温度をT2に変えたら体積がV2になった。T1、V1、T2、V2の関係を数式で表しなさい。

  ( T1/V1 = T2/V2 )

4 気体の体積と圧力、温度の関係    もどる

ボイルの法則とシャルルの法則をまとめると次のようになる。

ボイル、シャルルの法則

気体の体積(V)は、圧力(P)に(
反比例)し、
絶対温度(T)に(
比例)する。

これを数式で表すと、

  ( V = aT/P  または  PV/T = a )

 圧力がP1で温度がT1の時、体積がV1であった気体を、圧力をP2で温度をT2にしたら、体積がV2になった。P1、V1、T1、P2、V2、T2の関係を数式で表しなさい。

  ( P1V1/T1 = P2V2/T2 )

問1 0℃、1atmの水素6gをある容器に入れたところ、0℃、2atmを示した。この容器の体積はいくらか。


問2 27℃、900mmHgで200mlをしめる気体の体積は37℃、620mmHgでは何mlか。



問3 ある気体が0℃、1atmのとき体積がVgであった。圧力を変えないで体積を2倍にするには、何Kにすればよいか。また、それは何℃か。



5 理想気体と実在気体     もどる

 ボイル・シャルルの法則が成り立つ気体は0K(絶対0度)になっても液体や固体に変化しない気体であり、なおかつ、0Kで体積がゼロになる気体である。このような気体を(
理想気体)と呼ぶ。
 一方、実際に存在している気体を(
実在気体)と言う。実在気体も、常温、常圧では理想気体を見なすことができる。

問 理想気体はミクロの世界からみると、どんな特徴を持つか。

  (どんな低温でも、液体や固体にならない・・・分子間力がない)
  (絶対零度で体積がなくなる・・・・分子に体積がない)

6 気体の体積と物質量(温度、圧力一定で)     もどる

 色々な気体を同温、同圧で、同じ体積だけ集めたとする。それぞれの中に含まれる分子の個数(物質量)は同じだろうか?

 分子は見えないので数えるわけにはいかない。化学反応を使って答を出そう。

問(1)水素分子(H)と酸素分子(O)は何個と何個で反応するはずか。


(2)同温、同圧で、同じ体積の気体は同じ個数の分子を含むと仮定する と、水素ガ スと酸素ガスはどんな体積比で反応するはずか。

【実験】水素と酸素の反応比
【方法】 (1)右図のような反応管に水をいっぱいに入れ、水槽に立ててスタンドで固定する。

(2)丸底フラスコに蓄えてある水素ガスを適量、 注射器に取り、反応管の下から管内に入れる。

(3)水素ガスの体積を読みとり、記録する。

(4)酸素ガスを同様に取り、反応管に入れて、その体積を記録する。

(5)反応管をいったんスタンドからはずし、空気が入らないように、手のひらで管の底をしっかりとおさえて管を逆さまにし、気体を混合する。

(6)反応管を再びスタンドに固定し(管の底を水槽の底から2〜3cm浮かせて)、電極に圧電点火器をつなぐ。

(7)管の底を水槽の底から2〜3cm浮かせたまま、一人がしっかりと反応管をおさ え、もう一人が圧電点火器を押して混合気体を反応させる。

(8)一回反応させた後、もう一度圧電点火器を押して、それ以上反応しないことを確かめる。

(9)残った気体の体積を読んで記録する。気体が少ない場合は、管を逆さまにして読む

(10)再び、反応管に水をいっぱいに入れ、水素と酸素の混合割合を変えて反応さ せてみなさい。

【結果】

水素の体積 酸素の体積 反応後の気体の体積 反応後の気体の種類 反応した体積比
(水素/酸素)


【考察】
 同温、同圧で同じ体積の酸素と水素に含まれる分子数についてどんなことが言えるか。


【感想】





  年  組  番 氏名         

**コメント**
この実験では、水素と酸素の体積比がきちんと2:1になるようなデータは出ません。ただ、反応が派手でおもしろい実験なので、毎年行っています。
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7 気体の状態方程式     もどる

 圧力と温度が一定の場合、気体の体積は含まれる分子数に比例することが分かった。

 分子数とは物質量(モル)のことなので、ボイル・シャルルの法則とこれを合わせると次のようになる。

気体の体積 (V)は、種類に関係なく圧力(P)に(反比例)し、絶対温度(T)に(比例)し、物質量(n) に(比例)する。


問1 比例定数をRとして、気体の体積と圧力、絶対温度、モル数の関係を数式で表わしなさい。(気体の状態方程式)



問2 どんな気体でも標準状態(0℃、1気圧)で1モルが22.4lになることから、R(気体定数という)を求めなさい。



問3 窒素7.0gは127℃、380mmHgのもとで何gの体積をしめるか。



問4 水素4.0gの体積が2.0atmのもとで、82gになるのは何℃のときか。



問5 0℃、1.5atmで酸素2.5ml中に含まれる酸素分子の数は次のどれにもっとも近いか。
   ア、 1016個 イ、1017個 ウ、1018個 エ、1019個 オ、1020個



問6 1molの質量がM(g)である気体がw(g)あり、圧力P(atm)、温度T(K)で体積V(g)を占めている。このとき、これらの間には(  ア  )という関係が成立する。これを変形するとM=(  イ  )のようになる。従って、1atm、57℃で、760mlの質量が2.4gである気体の分子量は(  ウ  )となる。

8 全圧と分圧     もどる

空気のように複数の気体が混ざりあった気体を(
混合気体)という。混合気体を容器の中に入れたときに示す圧力を(全圧)という。容器の体積を変えずに、ひとつの成分気体だけにしたとき示す圧力を(分圧)という。


空気
1気圧
100ml

    

酸素だけにする

酸素
1気圧、20ml

    ↓

もとと同じ体積にした時の圧力が酸素の分圧

酸素
0.2気圧
100ml


                            

ドルトンの分圧の法則

混合気体の(  )は、成分気体の(   )の(  )に等しい。

問1 次の計算をしなさい。
(1)容積60gの容器に水素0.5molとヘリウム2.0molを入れ、温度を27℃に保つと全圧は何atmになるか。



(2)このとき、水素の分圧は何atmか。



(3)ヘリウムの分圧は何atmか。



 この問題で分かるように、
  (分圧の比)と(
物質量の比)は同じになる。

問2 メタン(CH)9.6gと一酸化炭素(CO)5.6gの混合気体の圧力が1.0気圧の時、メタンの分圧は何気圧か。



【実験】カセットコンロ用ガスの正体
 カセットコンロ用ガスの質量、体積、温度、圧力を実験から求め、分子量を計算する。その分子量を手がかりに、ガスの正体をつきとめよう。

【方法】
@チューブのついたカセットボンベの質量を測定する。

A図のように水槽にメスシリンダーをセットし、チューブの先を水を満たしてあるメスシリン ダーに導き、450〜500mlのガスを補集する。この時、ボンベには水をつけないようにすること。そして、メスシリンダー内の液面を水槽の水面と一致させて、補集した気体の体積を読みとる。

Bチューブの水を良くふいて、ボンベの質量を測定する。

C水温をはかる。

D大気圧をはかる。

E下の表から、水蒸気圧を求める。



【結果】数値には必ず単位をつけること

   ボンベの質量(ガス放出前)・・・
   ボンベの質量((ガス放出後))・・・
   放出された気体の体積・・・
   水温・・・
   大気圧・・・
   水蒸気圧・・・

【考察】
(1)次の各値を計算しなさい。
@メスシリンダー内のガスの分圧


 A放出されたガスの質量


 Bガスの分子量


(2)カセットボンベのガスはCとHの化合物であり、下にあげた物質のいずれかである。分子量から考えて、どの物質だと思われるか。

CH(メタン) C(エタン) C(プロパン) C10(ブタン)
 C12(ペンタン) C14(ヘキサン)

(3)方法B中の下線部の理由を述べよ。



【感想】


**コメント**
使い捨てライターを使って同じような実験をしていた時期もありましたが、100mlほどのガスを出すのにずいぶん時間がかかりました。カセットコンロ用ガスボンベはガスの噴出量が多く、時間が短縮できるとともに、実験誤差も少なくなりました。
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問 下の記事によると、最近の冷蔵庫は10年前のものに比べて年間61824リットルの二酸化炭素を削減できるそうである。これは何kgか。気圧は1気圧、温度は27℃として計算せよ。なお、現在日本人一人が、1年間に排出する二酸化炭素は、平均で8900kgだといわれている。こういう冷蔵庫が普及することは、二酸化炭素削減にどういう効果を持つと思われるか。


**コメント**
気体の状態方程式を使う例として、このような問いを考えさせ、環境問題に触れました。
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