13 酸と塩基

太字は授業プリントに印刷した部分、( )は生徒が書き込む内容

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アウトライン

 はじめに・・・知っている酸と塩基を書き出す

 1 酸と塩基の性質・・・【実験】酸と塩基の性質、金属やサビを溶かす酸、タンパク質を溶かす塩基のはたらきを実験。

 2 化学反応式の作り方


 3 酸とはどんな物質か・・・アレニウスの定義を説明

 4 塩基とは何か・・・アレニウスの定義を説明

 5 酸と塩基の強さと電離度・・・【実験】強い酸と弱い酸

 6 水素イオン濃度とpH
・・・【実験】いろいろなもののpH

 7 酸性酸化物と塩基性酸化物
・・・【実験】リンの酸化物の性質、【実験】マグネシウムの酸化物の液性


 8 窒素酸化物と酸性雨・・・ザルツマン試薬を使って、部屋の空気にNOが含まれているかどうかを実験


 9 中和反応


10 塩の加水分解


11 中和反応の量的な関係


12 食酢中の酢酸の濃度を求める


13 中和滴定とpHの変化


はじめに    もどる
 塩酸や硫酸など酸性を示す物質を「酸」という。酸と呼ばれる物質の例を、できるだけたくさんあげてみよう。また、それらの酸を含むものの例も考えよう。
 「塩基」についても同様に、塩基と呼ばれる物質の名前、それが含まれるものの例をあげてみよう。

酸の例 含むものの例
クエン酸 かんきつ類
塩基とそれを含むものの例
※※コメント※※
酸やアルカリをどれくらい知っているか、できるだけたくさんあげさせます。4人一組で考えさせると、わいわいとにぎやかです。この作業によって、酸やアルカリと呼ばれている物質を思い出させてから、授業に入ることにしています。
※※※※※※※


1 酸と塩基の性質      もどる

【実験】酸と塩基の性質
(1)塩基はタンパク質を溶かす
   水酸化ナトリウム5gを200mlビーカーに入れ、水100mlを加えて溶かす。その液を指につけ、どんな感じかを調べなさい。実験後、指を水で洗うこと。さらに、ビーカーの中の水酸化ナトリウム水溶液に、ゆで卵、肉、髪の毛を入れて穏やかに加熱してみなさい。
 前の実験台から希塩酸(薄い塩酸)と水酸化ナトリウム水溶液を10mlずつ別々の試験管にとり、コマゴメピペットを2本用意して、以下の実験をしなさい。

(2)酸は金属を溶かす
   試験管に3mlくらいの希塩酸をいれ、その中に亜鉛板を入れてみなさい。気体が発生するであろう。試験管の口を親指でふさぎ、気体をためてから、親指を離すと同時に点火してみなさい。
   試験管に3mlくらいのレモン汁をいれ、その中にも亜鉛板を入れてみなさい。

(3)アルカリは酸のはたらきをとめる
   (2)の亜鉛が反応している塩酸の試験管の中に約5mlの水酸化ナトリウム水溶液を入れてみなさい。

(4)酸はサビを溶かす
    10円玉を実験台の上におき、そこに希塩酸をかけてしばらく放置した後、水洗してみなさい。10円玉にレモン汁もかけてみなさい。

(5)酸は大理石を溶かす
   希塩酸約3mlを試験管にとり、その中に大理石の小片を入れてみなさい。

(6)酸の味は?
    試験管に5mlの水を入れ、その中に希塩酸を1〜2滴入れて親指で口を押さえて良く撹拌し、指についた薄い塩酸の味を調べなさい。

(7)指示薬の変化
  @ビーカーに水50mlをいれて沸騰させ、巨峰の皮をいれて煮る。充分色素が水に溶けたら、それを2本の試験管に5mlくらいずついれ、それぞれに希塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を入れみなさい。
  A希塩酸と水酸化ナトリウム水溶液をリトマス試験紙につけてみなさい。
  B2本の試験管に水を3mlくらいいれ、それぞれにBTB指示薬を2〜3滴入れてから、希塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を少し入れてみなさい。
  C2本の試験管に水を3mlくらいいれ、それぞれにフェノールフタレインを2〜3滴入れてから、希塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を少し入れてみなさい。


【結果】
(1)水酸化ナトリウム水溶液中のゆで卵や髪の毛、肉はどうなったか。


  希塩酸ではどうなるか。


(2)希塩酸中の亜鉛はどうなったか。また、発生する気体は何か。


(3)水酸化ナトリウム水溶液を加えると、塩酸と亜鉛の反応はどうなったか。


(4)10円玉はどうなったか。


(5)大理石はどうなったか。


(6)塩酸の味は?


(7)それぞれの指示薬の色は?

巨峰の色素 リトマス BTB フェノールフタレイン
希塩酸
水酸化ナトリウム水溶液

【感想】


             年  組   番 氏名

酸と塩基のはたらき (まとめ)

 酸      塩基
酸味 苦味
何を溶かすか 金属
大理石
サビ
タンパク質
リトマス
BTB
フェノールフタレイン 無色
ブドウの色素 茶色がかった緑色
中和反応 お互いの性質を打ち消す
※※コメント※※
酸と塩基の性質をまとめて実験。水酸化ナトリウムが肉や髪の毛などを溶かすようすに、生徒は驚いていました。
※※※※※※※


問1 トイレの洗剤に塩酸が含まれているのはなぜか。

  (トイレの汚れは塩基性で、塩酸に溶けるから)

問2 カビキラーや浴室や台所のパイプ用洗剤には水酸化ナトリウムが含まれている。なぜだろうか。

  (カビやパイプにつまった髪の毛などはタンパク質で、それを水酸化ナトリウムが溶かすため)

問3 酸や塩基で色が変わる物質はたくさんある。身近なところにもそれらが応用されているのだが、次のものはどんな色に変化するだろうか。
 @消えるインク

※※コメント※※


※※※※※※※

 Aカメレオンペン

※※コメント※※
東急ハンズで見つけたペン。マジックインクのようなペンで、紙に書いたあと、「変色ペン」を塗ると別の色に変わる。さらに「復元ペン」をぬると元の色にもどる。
※※※※※※※

 B地図ペン

※※コメント※※
これも東急ハンズで見つけたペン。地図に印を付けるサインペンだが、書いて数日経つと色が消える。空気中のCOで酸性化すると消える指示薬が使われている。酸性紙に書くとすぐ色が消えてしまう。
※※※※※※※

 C色が消える糊

※※コメント※※
これも空気中のCOで酸性化すると色が消える指示薬を使っている。
※※※※※※※

 Dマロウブルーティー(ハーブティー)

※※コメント※※
水やお湯に溶かすと、鮮やかな青色のハーブティーになる。そこへ、レモンを入れると、きれいな赤いティーに変わる。おしゃれなハーブ。
※※※※※※※

 E赤ワイン

※※コメント※※
ワインが赤いのは、ブドウの皮の色素が酸性で赤くなるため。赤ワインにNaOH水溶液を入れてアルカリ性にすると、黒〜茶〜緑の色のワインになります。
※※※※※※※



2 化学反応式の作り方     もどる

まず、次の物質やイオンは覚えておこう。

(1)周期表の原子番号1〜20の元素

(2)次のイオン
Cu+ 銅(T)イオン Sn2+スズ(U)イオン Cu2+銅(U)イオン Sn4+スズ(W)イオン Fe2+鉄(U)イオン Pb2+鉛(U)イオン Fe3+鉄(V)イオン Pb4+鉛(W)イオン Zn2+亜鉛イオン Ni2+ ニッケルイオン Ag+ 銀イオン
OH− 水酸化物イオン   MnO4− 過マンガン酸イオン CrO42− クロム酸イオン  Cr2O72− 2クロム酸イオン SO42− 硫酸イオン  NO3− 硝酸イオン
CH3COO− 酢酸イオン   PO43− リン酸イオン NH4+ アンモニウムイオン CO32− 炭酸イオン 

(3)次の酸や塩基
 塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、
 酢酸(CH3COOH)アンモニア(NH3)

(4)ホンクルツー
 水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)、塩素(Cl2)

反応式の作り方

問1 塩酸とアルミニウムが反応すると、水素と塩化アルミニウムが生成される。この変化を化学反応式で表せ。
【第一段階】
反応物、生成物を化学式で表す。



【第二段階】原子が消滅したり、発生したりすることはないので、係数をつける。

※※コメント※※
物質の化学式を書くことと、係数を合わせることをはっきり区別することを教えないと、生徒は
 H2 + O → H2O
のような反応式を作ってしまいます。
※※※※※※※


未定係数法
 目算で係数がつけられないときは、未定係数法で係数を考えると良い。



問2 次の反応を化学反応式で表せ。
(1)炭酸カルシウムに塩酸を作用させると、二酸化炭素と水と塩化カルシウムが生成される。


(2)アンモニアと酸素を反応させると、一酸化窒素(NO)と水になる。


(3)酸化鉄(V)にアルミニウムを作用させると、鉄と酸化アルミニウムになる。


3 酸とはどんな物質か      もどる
問1 酸について次の問に答えよ。
@ 濃塩酸とアンモニア水を近づけるとどうなるか。このことから、塩酸についてどんなことが分かるか。

 (空中で塩化アンモニウムの白煙を生じる。アンモニアもHClも気体であることが分かる。)
 (塩酸は、HClという気体を水に溶かしたものである。)

A 氷酢酸(100%の酢酸)は常温では液体である。また、特有の臭いがある。 このことから、酢酸はどの分類に入るかを考えよ。

 (沸点や融点が低いこと、臭いがあることなどは、分子性物質の特徴。)

B 氷酢酸は電気を通すか。純水は電気を通すか。氷酢酸を水に溶かすと電気を通すか。

  (氷酢酸も、水も電気を通さない。両方を混ぜると、通すようになる。)

C 氷酢酸の中にマグネシウムを入れてみよ。水で薄めた酢酸の中にマグネシウム を入れてみよ。

  (氷酢酸はMgと反応しない。水で薄めた酢酸は反応する。)

D BとCの結果からどんなことがいえるか。

  (酢酸は分子性物質であるが、水に溶けるとイオンに変わる。そして、Mgと反応する力が出てくる。)

※※コメント※※
一連の実験で、酸とは分子性物質であるが、水に溶けるとイオンに変わり、酸としてのパワーが生まれることを示しました。
※※※※※※※

問2@ 塩酸、硫酸、硝酸、酢酸を水の中にいれたときの電離のようすを電離式で   表せ。
 塩酸


 硫酸


 硝酸


 酢酸


A 酸が水の中で電離したときに、共通することは何か。


このことから酸は次のように定義できる。

アレニウスの定義
  酸とは、水に溶けてH(略してH)を作る物質である。


4 塩基とは何か      もどる

問(1) 次のような物質が塩基性を示すものである。これらはイオン性物質か、分子性物質か。
 水酸化ナトリウム(NaOH)
 水酸化カリウム(KOH)
 水酸化カルシウム(Ca(OH)
 アンモニア(NH

  (アンモニア以外はイオン性物質)

(2)それぞれの物質を水に溶かしたとき、どんなイオンを生成するか。


このことから塩基は次のように定義できる。

アレニウスの定義
 塩基とは、水に溶けてOHイオンを作る物質である。


5 酸と塩基の強さと電離度      もどる

 酸や塩基にも強いものと弱いものがある。この違いの原因は何だろう。

【実験】強い酸と弱い酸
@ 塩酸は強酸、酢酸は弱酸である。1mol/lの塩酸と酢酸にそれぞれ大理石を入れてみなさい。反応の激しさに違いはあるか。

  (塩酸の方が反応が激しい。)

A 同じモル濃度の塩酸と酢酸に電極を入れて、電球を点灯させてみよ。流れる電流の大きさに違いがあるか。

   (塩酸の方が、明るい。)

問1 強酸と弱酸では同じモル濃度の水溶液でも、流れる電流の大きさが違う。理由を説明せよ。

  (塩酸の方は、水に溶けるとほとんどがイオンに変わる。電離度が大きい。)

電離のようす

   (図 省略)

電離度とは

同じモル濃度でも、強酸は電離度が(大きい)ため、溶液中に()イオンの数が多い。


問2 強酸と弱酸の例をあげよ。



強塩基と弱塩基
 塩基にも強いものと弱いものがある。

  強塩基の例
   NaOH、KOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2
      これらの水溶液には、大きな電流が流れる。
  弱塩基の例
   NH3、Cu(OH)2、Fe(OH)2
      これらの水溶液には、電流があまり流れない。

問3 同じモル濃度の水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水溶液では、どちらの方がイオンは多いか。電離度にはどんな違いがあると言えるか。

6 水素イオン濃度とpH     もどる 

水の電離 
  【実験】 純水がわずかでも電気を通すかどうかを、ためしてみなさい。

  【結果】

※※コメント※※
ごくわずかの電流を増幅し、小さいスピーカーを鳴らす装置で実験。イオン交換水でも、音が出る。
※※※※※※※


  【考察】なぜ上のような結果になるのだろうか。
    理由:水は一部
      
( HO → H + OH )
     のように電離し、( 
  )を作っているため。

水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度
 水素イオン濃度・・・(
1l )中の()イオンの物質量(モル)
           記号は(
[H]
 水酸化物イオン濃度・・・(
1l )中の(OH-)イオンの物質量(モル)
           記号は(
[OH-] 

水のイオン積
 純水1リットル中にH+イオンは(
10-7 )モル含まれている。

    ( [H] = 10-7mol/l )

 また、水酸化物イオンは(
10-7 )モル含まれている。

   
( [OH-] = 10-7mol/l )

 従って

   [H+] × [OH−] = 10-14mol/l 

溶液の水素イオン濃度
 水のイオン積は純水だけでなく、どんな水溶液でも成り立つ。この関係を使って、いろいろな水溶液の水素イオン濃度を求めてみよう。
問1 0.1mol/l酢酸の水素イオン濃度を求めよ。電離度は0.01とする。


問2 0.1mol/l塩酸の水素イオン濃度を求めよ。電離度は1とする。


問3 0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の水素イオン濃度を求めよ。電離度は1とする。


問4 0.1mol/lアンモニア水の水素イオン濃度を求めよ。電離度は0.01とする。


問5 0.2mol/l酢酸の水素イオン濃度を求めよ。電離度は0.01とする。


問6 0.05mol/lアンモニア水の水素イオン濃度を求めよ。電離度は0.01とする。


水素イオン濃度とpH
[H+]を次の式で計算した数値がpHである。

 pH=−log[H+]

*対数(log)の計算について
  log10X = 

  log(a×b) =
loga + logb

問7 問1から問6の水素イオン濃度をpHに直しなさい。log2=0.3とする。


pHと酸、塩基の強さ(まとめ)

   
(強酸         弱酸     中性      弱塩基          強塩基)
   ───────────────────────────────
pH 0                   7                      14


【実験】いろいろなもののpH

(1)水に溶けていないものはきれいなビーカーに入れ、水を加えてよく溶かす。水に溶けているものはそのまま試料にする。
(2)試料を万能pH試験紙につけて、およそのpHを調べる。次に、そのpHを変色範囲とするpH試験紙でより正確なpHを求めなさい。
(3)試験紙では良く分からない試料は、pHメーターで調べなさい。

【結果】

試  料 pH 試  料 pH
0.1mol/l塩酸
〃 酢酸
〃 NaOH
〃 NH3水

【感想】


             年  組   番 氏名

※※コメント※※
石鹸水や合成洗剤、サンポール、カビキラー、キンカンなどのpHを調べる。胃散がアルカリ性であることに、生徒は意外な顔をしていました。
※※※※※※※

7 酸性酸化物と塩基性酸化物     もどる

 我々が生活している地球の表面には地殻(岩石)、海、大気がある。この部分に一番たくさん存在している元素は(
酸素 )だから、他の元素は(酸素 )と化合した状態になっている場合が多い。
水、二酸化炭素、二酸化珪素などがこの例である。

 このように、酸素と結合した物質を(
酸化物 )という。これらの物質の性質を調べることによって、地殻や大気などを知る手がかりが得られる。

【実験】リンの酸化物の性質
リンを燃焼させて得られる酸化物の液性を調べよう。
@ 耳かき1杯の赤リンを燃焼さじにとり、点火して、集気ビンの中で燃焼させる。燃焼中、フタをかぶせ、白い煙(これがリンの酸化物)が逃げないようにすること。
A 燃焼が終わったら、少量の水をいれ、フタをして良くシェイクし、リンの酸化物を水に溶かす。
B 集気ビンの中にメチルオレンジを入れて、液性を調べなさい。

【結果】
リンの酸化物の液性・・・

【考察】
@ 赤リンが燃焼すると、十酸化四リン(P10)という酸化物が生成される。この反応を化学反応式で表しなさい。


A 十酸化四リンが水に溶けると、リン酸(HPO)という酸が生成されるため、溶液は酸性を示す。十酸化四リンがリン酸になる反応を、化学反応式で表しなさい。


【実験】マグネシウムの酸化物の液性
@ 集気ビンを良く洗い、少量の水を入れておく。
A マグネシウムリボンをピンセットでつまみ、バーナーで点火して、集気ビンの中で燃焼させなさい。この時発生する白煙が、マグネシウムの酸化物である。
B 燃焼が終わったら、フタをして、マグネシウムの酸化物を充分に水に溶解させる。
C 集気ビンの中にメチルオレンジを入れて、液性を調べなさい。

【結果】
マグネシウムの酸化物(酸化マグネシウム)の液性・・・

【考察】
@ マグネシウムの燃焼を化学反応式で表しなさい。


A 酸化マグネシウムが水に溶けると、水酸化マグネシウムが生成されるため、塩基性を示す。酸化マグネシウムと水の反応を、化学反応式で表しなさい。


第三周期の元素と酸化物、その液性

元素 Na Mg Al Si Cl Ar
酸化物 Na MgO Al SiO 10 SO Cl 反応しない
酸化物+水 NaOH Mg(OH) 水に溶けにくい 水に溶けにくい PO SO HClO
性質 強塩基性 弱塩基性 両性 弱酸性 弱酸性 強酸性 強酸性

問1 元素を金属元素、非金属元素に分けた場合、その酸化物はどんな性質を持つと思われるか。

   (金属元素の酸化物・・・塩基性)
   (非金属元素の酸化物・・・酸性)

問2 大まかに言って、我々が生活している環境である大気、海(水)、地殻はそれぞれ何性か。

   (空気・・・酸性、海・・・中性、地殻・・・塩基性)

8 窒素酸化物と酸性雨      もどる

 NOやNO、Nなど、窒素と酸素の化合物を窒素酸化物(常温では気体)という。これらの物質は、空気を汚しているもののひとつで、工場や車のエンジンなどから排出されている。これは水に溶けると硝酸を作る。

  ( 3NO + HO → 2HNO + NO )

 従って、空気中の窒素酸化物が雨に溶けると(
酸性雨)になる。また、人間が窒素酸化物を吸い込むと、気管支や肺を刺激し、ゼンソクや肺ガンなどの病気を作ると言われている。

【実験1】 ガソリン自動車の排気ガスとディーゼル自動車の排気ガスを大きなポリ袋に集め、その中に、ザルツマン試薬を入れてみなさい。ザルツマン試薬とは、NOで赤く発色するものである。

 (両方とも赤く発色するが、ディーゼル排ガスの方が赤色が濃い。)

【実験2】 ザルツマン試薬をビーカーに少量取り、そこにバーナーの炎を吹きかけてみなさい。発色するか。結果から考えて、NOはどこから発生すると思われるか。

 (発色する。NOは空気中のNとOが高温にさらされると、生成する。)

【実験3】 台所用のポリ袋にザルツマン試薬を2ml入れ、そこに部屋の空気を入れて反応させてみなさい。部屋の空気の中にNOは含まれているか。

 (わずかに赤くなるので、部屋の空気にもNOが含まれている。)

【実験4】 ポリ袋にザルツマン試薬を2ml入れ、それに自分が吐いた息を入れて反応させてみなさい。部屋の空気と吐いた息では、どちらの方にNOがたくさん含まれているか。

 (吐いた息の方が赤色が薄い。NOを吸収している。)


【実験5】 排気ガスと酸性雨
 大きなポリ袋にガソリン車の排気ガスとディーゼル車の排気ガスを入れ、それぞれに水50mlを入れてよく振って溶かす。この水溶液のpHをメーターで測定しなさい。

 (ガソリン排ガス・・・pH3.2、ディーゼル排ガス・・・pH3.0)

【実験6】 酸性雨と土壌
 100mlビーカーに土を40mlの目盛りまで取る。試験管に希硝酸(pHおよそ3)を10mlとる。ガラス棒で希硝酸を万能pH試験紙につけ、pHを調べなさい。次に、ビーカー内の土に希硝酸10mlを加え、ガラス棒でよく攪拌した後、万能pH試験紙につけてpHを調べなさい。

 (希硝酸を土に入れると、中性になる。)

*土が酸性雨を中和するしくみ

 (土壌のイオン交換作用を説明)

※※コメント※※
ザルツマン試薬を使って、今吸い込んでいる空気にNOが含まれていることを実験(【実験】3)。そして、私たちがNOを吸収していることを示しました(【実験】4)。これが健康に悪影響を及ぼすかどうかについては、NO濃度を測定してみないと何とも言えません。しかし、大きな道路沿いでは依然として深刻な問題です。

ザルツマン試薬・・・N−1−ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩 50mg
            スルファニル酸 5g
            リン酸 30ml
            以上を水に溶かして1リットルにする。
※※※※※※※


9 中和反応      もどる

 酸と塩基を混ぜ合わせると化学反応し、酸の性質も塩基の性質も消えてしまう。これを中和反応という。

【実験】 数本の試験管に4mlの濃塩酸を5本とる。はじの試験管から順に、水酸化ナトリウムを2個、4個、6個・・・と入れてみなさい。生成される食塩の量にはどんな違いが見られるか。また、反応後の試験管をさわってみなさい。発熱しているか。さらに、すべての試験管にマグネシウムリボンを入れてみなさい。反応するか。

【結果】

※※コメント※※
濃塩酸にNaOHの粒を入れるという激しい反応です。ゴボゴボという音とともに反応し、さわれないほど発熱します。そして、生成された食塩が白い沈殿になって現れます。その量は、加えたNaOHに応じて増えていることが見た目で分かります。
※※※※※※※


【考察】 塩酸と水酸化ナトリウムはなぜ反応するのか。説明しなさい。

 (図 省略)
 (HとOHはバラバラには存在できず、結合してHOをつくることを説明。)

 反応式


 ひとつの容器の中で、多量の(
)イオンと(OH)イオンは、分かれたまま存在することができず、結合して()になってしまう。中和反応が起こる理由は、これである。

問2 次の酸と塩基を混ぜ合わせたとき、どんな反応が起こるか。化学反応式で書きなさい。
(1)硝酸と水酸化カリウム


(2)硫酸と水酸化ナトリウム

10 塩の加水分解      もどる

 食塩(NaCl)や硫酸ナトリウム(NaSO)などの中和反応で生成されるイオン性物質を塩と呼ぶ。これらを水に溶かすと、何性を示すだろう。

【実験1】 炭酸ナトリウムを少量試験管に取り、水を加えて溶かす。試験管に入れる水は3分の1以下にすること。それより多いと撹拌しにくい。溶けたら、BTBを2、3滴入れてみなさい。溶液は何性か。
 【結果】


問1 炭酸ナトリウムはOHイオンを持ってないのに、水溶液は塩基性を示す。次の表を見て、理由を説明する文章の(  )に適語を入れよ。

Oと反応しない−イオン
と結合しない−イオン
大部分がHOと反応する−イオン
  〃  Hと結合する−イオン
Cl、SO2−、NO 左以外(CO2−,CHCOO等)
Oと反応しない+イオン
OHと結合しない+イオン
大部分がHOと反応する+イオン
  〃 OHと結合する+イオン
、Na、Ca2+ 左以外(NH,Mg2+等)


(理由)
 水に炭酸ナトリウムを溶かすと、(
CO2−)イオンと(Na)イオンが水の中に入ることになる。上の表を見ると、このイオンのうち(CO2−)イオンと()は大部分が反応してしまうことが分かる。
(反応式)

  (CO2− + 2HO → HCO + 2OH− 

この反応で、(
OH)イオンが生成されるため溶液は(塩基)性を示す。


問2 次の水溶液は何性を示すか。反応式を書いて説明せよ。
(1)酢酸ナトリウム


(2)塩化銅(U)


(3)塩化ナトリウム


【実験2】炭酸ナトリウムを少量試験管に取り、その中に薄い塩酸を2ml程度入れてみなさい。どんな変化が起こるか。

  (COの泡が出る。)

問3 実験2の結果を説明する文章の(  )内に化学記号を入れよ。
 炭酸ナトリウムと塩酸を混ぜると、(
CO2−)、(Na)、()、(Cl)イオンがいっしょになる。このうち、(CO2−)と()イオンは大部分が結合してしまう。結合してできた物質は(CO)であるが、この物質は大量にあると分解し(CO)と()になる。
従って、この反応の反応式は次のようになる。

問4 酢酸ナトリウムと塩酸を混ぜ合わせると、どんな反応が起こるか。反応式を書きなさい。


11 中和反応の量的な関係     もどる

問1 0.1mol/l硫酸150ml?とちょうど反応する0.3mol/l水酸化カリウム水溶液の体積を順に考えて求めよ。
(1)硫酸と水酸化カリウムは中和反応を起こす。この反応式を書きなさい。


(2)0.1mol/l、150mlの硫酸の中には何モルの硫酸分子が含まれているか。


m[mol/l]でV[ml]の溶液に含まれる溶質の物質量[mol]

         mV/1000[mol]

(3)この硫酸を中和させるのに、必要な水酸化カリウムは何molか。反応式から求めよ。


(4)(3)の物質量[mol]を含む0.3mol/?の水酸化カリウム水溶液は何?か。


問2 0.3mol/l硝酸12.0mlを中和させるのに必要な0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の体積を求めよ。



問3 水酸化カルシウム22.2gを中和させるのに必要な1.0mol/l塩酸の体積を求めよ。(ヒント 水酸化カルシウム22.2gは何モルかを計算し、反応に必要な塩酸のモル数を反応式から求める。)



問4 お酢10.0mlを中和させるのに必要な1.0mol/l水酸化ナトリウム水溶液は7.0mlであった。お酢はmol/lの酢酸水溶液だといえるか。



12 食酢中の酢酸の濃度を求める     もどる

 濃度の分かっている水酸化ナトリウム水溶液で食酢中の酢酸を中和し、その結果から食酢の濃度を求めよう。このような操作を(
滴定)という。

【方法】
(1)0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液でビーカーを共洗いし、100ml程度を取る。
(2)0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液でビューレットを共洗いする。そして、水酸化ナトリウム水溶液をビューレットに入れ、0目盛りを合わせる(ビューレットの先に空気が残っていないことを確認すること)。
(3)10倍に希釈した食酢でビーカーを共洗いし、50ml程度を取る。
(4)ホールピペットを10倍希釈の食酢で共洗いし、10.00mlを取り、コニカルビーカーに入れる。
(5)コニカルビーカー内の10倍希釈の食酢にフェノールフタレンイを2〜3滴加え、0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。
(6)3回滴定して、平均値を求める。

【結果】
 滴定値

第1回

第2回

第3回               滴定平均値

【考察】
(1)10倍に希釈した食酢中の酢酸の濃度[mol/l]を求めよ。


(2)食酢原液中の酢酸の濃度[mol/l]を求めよ。


(3)食酢1.00ml中の酢酸の質量を求めよ。


(4)食酢1.00lの質量を求めよ。食酢の密度は1.00g/mlとする。


(5)食酢中に含まれる酢酸の%濃度を求めよ。


【感想】

             年  組  番 氏名

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【実験】中和滴定とpHの変化

 塩酸や酢酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和さたとき、pHがどんな変化をするのかを調べる。

【方法】
(1)0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液をビューレットにセットする。
(2)0.1mol/l塩酸10mlをホールピペットでコニカルビーカーに取り、その中にpHメーターの電極を入れておく。
(3)塩酸の中に水酸化ナトリウムを少しづつ加え、加えた水酸化ナトリウムの体積とそのときのpHを右のグラフに記録しなさい。このグラフを滴定曲線という。
(4)0.1mol/lの酢酸についても同様に水酸化ナトリウムを加え、滴定曲線を作りなさい。

【結果】

  (グラフ 省略)

問1 中和滴定に使われる指示薬の変色範囲はしたのとおりである。塩酸と水酸化ナトリウムとの中和反応では、ちょうど中和するpHは7のはずであるが、なぜ下のような指示薬が使えるのであろうか。

   変色範囲(pH)
   メチルオレンジ    3.1〜4.5
   フェノールフタレイン 8.2〜10.0

 前のグラフから、次のそれぞれのpHになるまでに加えた水酸化ナトリウム水溶液の体積を読みとって考えなさい。

pH  3.5 7.0 9.0
加えたNaOHの体積


問2 酢酸と水酸化ナトリウムの反応では、メチルオレンジは指示薬としては使えない。理由を述べよ。


問3 次の組み合わせの場合の滴定曲線の概略を書き、使える指示薬を考えよ。
 @強酸と強塩基   A強酸と弱塩基   B弱酸と強塩基