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ベントナイトのチキソトロピー

                            

 ベントナイトという粘土の懸濁液(要するに泥水)にイオンを加えると、チキソトロピーという現象が見られます。チキソトロピーとは、静置しておけばゲル状に固まっているものの、揺り動かすと、動いている間だけゾルに変わって流動性が現れるという現象です。ベントナイト懸濁液の場合、添加するイオンは価数の大きな陽イオンが有効であることが分かり、失敗なくこの現象を観察できる方法を見つけました。

【準備】
『器具』 大型試験管、駒込ピペット
『試薬』 ベントナイト、0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液

【実験方法】
(1) ベントナイト10gを100mlの水に懸濁させる。
(2) 大型試験管に、この懸濁液を20ml取り、0.1mol/l硫酸亜鉛水溶液を1ml加えてよく混合する。
(3) 少し静置した後、試験管をゆっくり逆さまにしてみる。ベントナイト懸濁液はゲル化し、流れ落ちないであろう。(写真)
(4) 次に、試験管を正立し、揺り動かしてみる。ベントナイト懸濁液は、ゾル化し、流動するであろう。それを静置すると、再びゲル化するであろう。


【参考】
(1) ベントナイト懸濁液10gを試験管に取り、各種のイオンを含む水溶液を1mlずつ加えて、ゲル化するかどうかを実験しました。それぞれの水溶液において、ゲル化を起こした最低濃度は次のとおりです。おおむね、陽イオンの価数の大きなものほど、ゲル化には有効であるといえます。

水溶液の種類

ゲル化最低濃度(mol/l)

HCl

0.2  

KOH

0.4  

CuSO

0.02 

ZnSO

0.008

FeSO

0.008

Fe(SO

0.02 

Al(SO

0.006


(2) もがけばもがくほど沈んでいく底なし沼は、チキソトロピーの例です。しかし、地震の時に現われる液状化現象はチキソトロピーではないようです。これは、地震によって土壌粒子が密に詰まり、粒子間に保持されていた水分が押し出されるために起こる現象です。一度液状化を起こしたところでは、粒子どうしが密になっているため、再び液状化することはないそうです。

(3) ボールペンのインクは逆さにしても流れ落ちず、先のボールが動いているところだけ流動化するように、チキソトロピーを応用してつくられています。