WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎月1日、16日更新)
第4回 1977年 出典:77年11月29日「若いこだま」
DJ矢野顕子 ゲスト吉田美奈子(NHK第1ラジオ)
前半
矢野(以下A)「こんばんわ。矢野顕子です。今日のゲストは…」
吉田(以下M)「吉田美奈子です。」
A 「という方です。お待ちかねでした。まず、最初の曲は”フラッパー”から、いい曲
だね。いつ出たんだっけ?」
M 「去年(76年)の3月」
A 「ずいぶんいいLPだね。」
M 「そう?おかげさまで(笑)」
A 「それでは”かたおもい”という曲、聴いてみましょう」(「かたおもい」が流れる)
A 「”フラッパー”の中から ”かたおもい”でした。この曲、作ったのは私なんだけ
ど、どうだった?歌いづらかったでしょう?」
M 「いや、そんなことはない。可愛らしい曲で(笑)」
A 「でも、美奈子はいつも上手く歌ってくれるからさ、ホッとしているんだけど(笑)
歌詞が… 同じフレーズが出てこないじゃない。」
M 「ごめんなさい(笑)。去年、紀之国屋でコンサートやったでしょう?その時、ずっ
と”かたおもい”やってたんだけど、ボクねえ 1回もちゃんと歌えなかったの…
実を言うと」
A 「そんな、そんな。気にしないで、そういう曲なんだし。」
M 「曲の順列が難しいんだよね」
A 「歌い手の気持ちを考えていない(申し訳なさそうに笑)本当に歌詞が面倒だと、覚
えるだけで、苦労じゃない?それで、美奈子とか私とかあんまりノートとかに書い
てそれを忠実に歌い抜く!感じじゃないし、毎回聴きに来てる人って あっまた間
違った! とか言ってんじゃないか とかねえ」
M 「言ってるよ。結構、聴いてたりしてね。 あっ まちがえた とか小さい声が聞こ
えたりして、こっちもヤバイ ヤバイとか思ったり」
A 「いいじゃない!とか言ってやれば?(笑)」
M 「その場で、全く違う歌詞を作って歌って、これでいいんだ!って顔するの(笑)」
A 「そう、そう。(笑) それくらいじゃなきゃ、この世の中渡って行けないよ(笑)
次の曲は”さよなら”ですが、何んで さよなら なの?すごい愚問かな?(笑)
どういう風につくったの?」
M 「ま−いいじゃないの聴けば わかるんじゃない?」
A 「それでは聴いてみましょう。」(”さよなら”が流れる)
A 「”さよなら”でした。この曲いつ作ったの?」
M 「去年の…10月かな」
A 「去年、こういう気持ちだった?1年前は」
M 「そうそうそう」
A 「もちなおした?それから。今はどう?」
M 「今はもう…バカになってる。」
A 「こういう曲、書けない?今は」
M 「書こうと思えば、書けるよ。」
A 「これはさあ ”さよなら”を書いた段階では 本心でしょう?」
M 「さあ?どうでしょう?(笑)」
A 「ああ、そうか(笑)〜こう詞もかけるってうらやましいんだよね。」
M 「えー どうして。ボクはこういうのしかダメなんだよね。難解だと よく言われる
んだよね、詞が」
A 「難解だとは 思わないよ。」
M 「ボクって、作詞っていう感じより1行1行がコピーライトみたいなんだよね。1行
1行にみんな意味がある訳で それが集合している文章なの。だから、そういう感
じでみれば理解できるんだけど、作詞で、前後でみんな考えようとすると理解でき
ないんで、そのまま聴いたままで いいと思うけどね」
A 「そうねえ。あんまり詞の意味とか研究されたりとかすると…困るってことない?」
M 「あるよ。(笑)突然、意味ないこと言っても…まあ 自由ですけど。」
A 「いろんな人がいるし、いろんな人がいろんなこと言うし、(笑)ところで、この頃
曲書いてる?」
M 「書いてる。」
A 「来月、録音するんだって?」
M 「来月、LPをまた、そろそろ。シングルをまず、かためようかと」
A 「どんなLPになりそう?また愚問だけど。」
M 「楽しいのがいいからね」
A 「どういう楽しさがいいの?」
M 「例えば、テンポなんかにしても、日本ってテンポ早いものがはびこっているでしょ
う、歌謡曲にしても。海外のもの聴くと、気持ちいいテンポってね、日本のものと
比べるとずいぶんゆったりしているの。」
A 「そう言われれば、そんな気がするねえ」
M 「案外と日本ってね、せせこましいの。そういうテンポあんまり好きじゃないの。で
、何気なく聞いてて凄く体に合ったテンポ。そういうもの聞いてて楽しい感じ…自
然にキープできるのが、いいんじゃないかと」
A 「詞の方はどんな風になりそう?」
M 「詞がねえ 出来なくなってねえ これがもう!」
A 「みんなそうなんだよ(笑)詞は難しいからねえ…美奈子はさあ、書こうと思って書
く、詞を?」
M 「前はねえ、詞の方が先だったの。詞を先に書いて、メロディ、コードつけてたの
だけど最近、詞書けないからね、メロディ先に作って、いけないんだけど、あて
はめでね。山下くんのなんかのはね、みんなそう、あてはめで。それが、今では
自分にもね応用して(笑)汗かいてんの。(笑)」
A 「”フラッパー”の頃だっけ?山下くんが曲書いて、それで、家(うち)に来て(笑)」
M 「(笑)アッコちゃんちへ行ったんだ(笑)」
A 「それで、曲持ってきて、それに美奈子がパッパッとあてはめてって それ見て山下
が すごいな美奈子!天才じゃないか(笑)なんて言って…(笑) でも、その方
法でもあってればいいんじゃない?次の曲は”恋は流星”」
M 「さっき言った、ボクが1番心地良いテンポで作ったのね。」
A 「あっ 本当!」(”恋は流星”が流れる)
A 「”恋は流星”でした。これは自分で多重録音してたんでしょう、声を?」
M 「山下くんとボクとで、やってんの。」
A 「何個重ねたの?」
M 「12個だから、ディレイ(Delay)というのがあって。ちょっと遅らせて、移すって
いう奴で、24個」
A 「24!24人分 へえ〜」
以下 後半は次回へ
※次回は 後半を再録します。
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