WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜日更新)時々臨時休業
第8回 1980年 出典:「FMfan」80年11月24日号
特集「ニューミュージック叙情詩の世界−28」…吉田美奈子
〜文、インタビュー 三橋一夫氏
Q 「美奈子さんがゴスペルの魅力にとりつかれた経緯について」
吉田(以下M)「山下達郎はドウーアップが好きだから、その辺からゴスペルに入った
、みたいなところありますね。ほかには、レコードを買ってというほどのファン
は、あまりいないみたいですね。キャラメルママはゴスペル志向がありませんで
したからね」
Q 「黒人教会に潜入したときのことについて」
M 「ニュージャージーの教会で、名前が覚えにくいんですけど、たまたまニューヨー
クでクリスパーカーが友人なものでスタッフを見に行ったんです。その時、同じテ
ーブルにいた黒人がゴスペルバンドのギタリストだよ、と教えられてゴスペルにと
ても興味があって教会に見に行きたいんだけれど、と言ったんです。そしたら、東
洋人でゴスペルの話をする人なんかいなかったんですね。珍しく思われたんですね
、黒人は1回うちとけるととても親切にしてくれましてね、”あした土曜日で夜中
のミサがあるから、ピックアップしに来る”って言うんです。で、ホテルに来てく
れて突然、土曜日のミサというのに行くことなったんです。
始まるのは夜9時ぐらいで、明け方までやるんですけど、あまりに遅くなるのもい
けないんで12時ごろ引き上げましたけど、土曜のミサっていうのは黒ミサにちか
くて(黒魔術のよう)、一番目についたのが、真っ白な服の看護婦なんです。最初
リアリティを感じなかったんです。なんで看護婦がいるのか?ところがミサが進む
につれて、失神者が続出するわけです。それを抱えて裏に持っていくために看護婦
が……。
いったん入り込んではじけちゃった人は、もう全然もとに戻ってこれないんです。
たぶん神さまと話しているんでしょうけども。それで押さえつけて連れて行くのを
見て”もう怖くて怖くて(笑)”周りに子供たちがいるんですよ。タンバリンとか
パーカッションもって。とにかく、その巧みなことと、ドラムが10歳くらいの少
年なんですけど、すごく上手いんです。初めて土曜日のミサに行って、しかも1番
すごいところに行っちゃったわけでしょ、すごいし、こわいし、すばらしいし…。
やっぱり、ファーザー(神父、もちろん黒人)が説教してて、どんどん盛り上がっ
ていってファーザーが歌になってクワイアー(合唱)つけて。そこはピアノのしっ
かりした人がいなかったもんで、ほとんどがアカペラで。で、土曜日のミサの場合
は、クワイアーのゲストがあるんです。ほかの教会からクワイアーが何組か来て、
”次は何々地方の何々教会のみなさん”というと、その人たちが2,3曲歌って、
また引っ込んで、ほとんど全部、テープに録ってきました… 。
そういう教会というのは、 十字架は掛かっていま
すけど、キチッとしたキリスト
像 やマリア像はないんです。ステンドグラスにはそれらしい絵がありますけれど
も、白人の教会にあるようなものはないんです。それで驚いたんですけどね。飾
りつけが全くなくて、神様はいるんだけれども、禅というのは自分の中に神様を
見いだすものですね、割とあれに近い感じがするんです。
曲を作ろう思ったきっかけは、ローラニーロだったんです。彼女、大好き。彼女も
ブルーアイドソウル(青い目のソウル)でしょ。」