WEEKLY INTERVIEW 再録

 

(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業



   

 第9回 1981年  出典:新譜ジャーナル82年1月号
  またまた美奈子さん&山下達郎の対談、インタビュー
  「モンスターインタウン」についても話してます。 (PART1)

                      〜文、インタビュー 天辰保文

Q 「まず初めに、お二人はお互いの音楽に深く関わってきた。そこで、認めあうとこ
  ろを話して頂けますか?そして、最初の出会いについても教えてください」
吉田(以下M)「今回の”モンスターインタウン”ではブラスとストリングスを山下君
  に手伝ってもらったんだけど、簡単に言えば、山下君やボクがやってる音楽に適し
  ブラスやストリングスを書ける人がいないということね。言葉じゃ説明しにくいと
  ころってどうしてもあるわけで、それが同じようなマインドを持っている人だと、
  細かく説明しなくてもいい。」
山下(以下Y)「別に僕でなくてもいいわけ。他にアカデミックな教育を受けた人で、
  そういうマインドを持っている人がいればいいんだけどね、いないんだよね。」
M 「ギターというエフェクト(素材)があり、ピアノというサウンドがあり、それら
  がまとまると曲になるという音楽の基本的な発想があるでしょ。で、吉田美奈子の
  音楽には彼をエフェクトとして非常に欲しい。逆に、山下達郎が必要とする声がボ
  クには出る。だから、協力しあう、そんな関係ね。」
Y 「僕はコーラスが好きだし、売り物にしてきたんだけど、コーラスってのはいくつ
  かの必要条件がある。パワー、音程、それが正確だったらソロシンガーとしてやっ
  ていける。だけど、それに加えて一つのアンサンブル、お互いの声の質を統一しよ
  うとする努力がないとできないのがコーラスなんだよ。」
M 「二人が初めて出会ったのも、コーラスがきっかけなのよね。彼がシュガーベイブ
  にいた頃、ボクが久保田麻琴ちゃんにコーラス頼まれてて、その時にいい人がいな
  いねえって話がでたのね。シュガーベイブっていうバンドに大貫妙子っていうのが
  いるから一緒にやってみようかということになった。それで、最初にター坊とやっ
  ったんだよね。そして、ター坊からシュガーベイブを見に来ないかって誘われて行
  ったんだよ。」
Y 「僕は昔からこの人のファンだった。”扉の冬”は今でも日本のポピュラー音楽の
  中でいちばん好きなアルバムなんだよ。」
M 「最初は結構しおらしかったよ。(笑)それで、ター坊と村松(邦男)君と山下君
  と4人で一緒にユーミン(当時、荒井由実)のコーラスをやったのが、そもそもの
  はじまり」
Y 「それから随分一緒にやったね。他のふたりは音程とパワーが噛み合わないってこ
  とで、最終的に二人が残っちゃった。また、僕がこの人にずっと詞を頼むようにな
  ったのは、僕は具体的な世界って嫌いだから出来るだけ色のあるものをやりたかっ
  た。それに、当時の日本の音楽ってのは、僕が考えているものとは程遠いものだっ
  た。そんな中で、この人だけが僕が考えていたものに近いものを持っていた。 自
  分のフィルターの中で出てくる言葉、たとえば言葉の選び方次第でヴォーカルが微
  妙に変わってくる訳でしょ、それが今でもいいと思うからお願いしている。でも、
  詞に関して」は随分話し合ったし、この人に詞を頼んだ時、初めのうちは評判が良
  くなくてね。”何言ってるのかわからない、具体性がない”って言われてね。よう
  するにヒットパターンではない。今でもそれは必要ないと思っているし、口を突い
  てでてくるビートってものが僕らに必要なんだと思っている。」
M 「そう、一番大事ね。」
Y 「言葉にどれほど密接な結びつきがあるかってこと、それが内容とどんな結びつき
  を持ってるか、それからどういう内容が引き出せるか、それを判断すべきでね、た
  だ内容がいいというのであれば、何でも良いわけよ、とりあえずは」
M 「あとは耳にひっかかればいい。」
Y 「文章にした時の詞に関して言えば、抽象性は時には美徳とされることがあるでし
  ょ。”私は寝た”とか”私は起きた”というようなのは初歩的なことだとされてい
  る。でも、歌の世界では全然違う」
M 「逆に、少しでも抽象的なのは下等なものみたいに扱われている。」
Y 「誰にでも分かる内容を描き出せるわけはないんだよね。」

M 「活字になった一編の詞は、その活字だけでイマジネーションとかが暗黙のうちに
  あるわけでしょ。だけど、音楽ってのは、それにプラスされて音色ってものが付属
  するしね。それからイマジネーションが広がっていくんだけど、詞に限定して言う
  と、単純明快なものじゃないといけないという伝統みたいなものがあるのね。」
Y 「僕は男だから、そういうことを結構気にするのね。だけど、僕と同じ世代の女の
  人って、あきれるほど自信もってるね、みんな。その双璧がアッコちゃん(矢野顕
  子)と美奈子なんだけどね。」
  

NEXT
 


80-86index

HOME