WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第10回 1981年 出典:新譜ジャーナル82年1月号
またまた美奈子さん&山下達郎の対談、インタビュー
「モンスターインタウン」についても話してます。
(PART2)
〜文、インタビュー 天辰保文
Q 「今回の”モンスターインタウン”について話をきかせてください」
吉田(以下M)「根本は何も変わっていないし、新しいことをやったのでここを聞いて
くださいというようなところもない。その時にに身についている知識とか、その
時の心理的な動きが変化であって、その辺のことは言葉じゃ言えないですよ。た
だ、ブラスやストリングスが入っていなくて今回は入っているから一見派手な仕
上がりになっている。それを剥ぎ取った時点では何も変わってないと、そういう
風に逆に受け取ってもらえるとボクも嬉しい。」
山下(以下Y)「確かに派手だね。今回は演奏には参加してないので単純に見ちゃうん
だけど、この人にしては珍しく多彩なものになってる。」
M 「自分の好きなエレメントで、頭に浮かんだものを素直に出しちゃった感じなんだ
よね。だからいろんなタイプの曲がある。」
Y 「そうだね。でも、僕なんかが聴いてきたニューヨークのプロダクションのいいと
ころがものすごくでてる。色彩感っていうのかな。僕なんてこの歳になると、曲
調とか音づくりとか、フレーズとか、そういうのにはあまり興味ないのね。」
M 「テクニックは既に全部分かっちゃってるからね。内面的な作業だけだもんね。」
Y 「そんなところにすごく近づいてきた気がする。だから、ここまでくれば外国のも
のはもう必要ないんじゃないかなって、僕は最近すごくそういう気がする。言葉
だって日本語だしね。その辺のことがこの人には見えてきてるんじゃないかと。
それにしても、この人にしては五目味のLPじゃないかと思うね。」
M 「五目味は言い過ぎですよ。あがりを聴きなさいよ。(笑)」
Y 「あがりを聴くと、不思議とこの人のは全部一緒になっちゃう(笑)」
M 「最初の発想ってのは自分の中にある訳でしょ、それが紙に写されてミュージシャ
ンの手に渡たり、どんどん離れていっちゃうよね。で、最終的に最初の発想にひ
っぱり戻すのは自分の作業だし、それを絶対に責任を持ってやんなくちゃいけな
い。ボクはそれを極端に厳密にやるからね。その間にプレイバックしてるのは認
めたくない。君も途中の段階でのぞいただけだから、五目味じゃないかって発想
になるんじゃないかと思うんだけどね。」
Y 「僕は派手なものより地味なほうが好きなんだからさ。」
M 「はっきり言ってボクはバラードはいいよ。バラードのほうがあってる。」
Y 「でも、人はそう見ないですよ。ベテランの域に達したとかさ、そんな見方をした
がる。」
M 「ボクの場合は、それに印象で物事を判断するほうで、山下君は少し違う。黒人音
楽が好きなんだよね。黒人音楽ってのはパターンが基本だというのが確固として
あるわけ。だから、まだ、メロディが決まっていないと君は非常にパターンに執
着するのね。そこら辺のキラキラしたものってのは日本では一番だと思う。才能
あるなって思う。」
Y 「あまり言わないですよ、こんなことはいつも(笑)。絶対に僕を誉めたことはな
い。でも、自分がほめられないと気がすまない。(笑)」
M 「そんなことないですよ。別にほめられなくたっていいですよ(笑)。ただ、音を
つくってく場合、ボクは流行を気にしない。あまり世間に目をむく方じゃない。
君はもう博学で色々知っている。でも、そういう姿勢でいながら現代を生きてる
訳。だから、ボクが良い歌、悪い歌だという基準というのは、基本的な技術はと
もかくとして、結局マインドだということになる。声に説得力なければならない
し、声ってのは説得力があるものだと思ってるし、そういう気持ちで歌を唄って
るから色彩がでてくるんじゃないかと思う。
(以下 次回)