WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第11回 1981年 出典:新譜ジャーナル82年1月号
またまた美奈子さん&山下達郎の対談、インタビュー
「モンスターインタウン」についても話してます。
(PART3)
〜文、インタビュー 天辰保文
吉田(以下M)「それでね、日本ってのは、どうして歌に対する地位がこんなに低いん
だろう。」
山下(以下Y)「歌がいちばん難しいから、やりたがらないだよ。」
M 「まあ、それはいい解釈だよね。たとえば、アメリカの状況見てるとね、楽器やっ
てる人がソロアルバムを出すときは必ず歌が入るよね。歌が認められ時には楽器
を捨ててまで歌をやる。レイパーカーだって、ジョージベンソンだってそうだし
、他にもたくさんいる。そいう歌に対する重大さってのをすごくよくみてるのね
日本の場合、演歌を例外にすれば、歌に対して非常に軽薄な態度を示していると
思うのね。」
Y 「やっぱり、日本のポピュラー音楽の歴史ってのは洋楽が入ってからの歴史っての
はベンチャーズとアートロックだよね。」
M 「じゃあどうして、ビートルズがいいっていう人がいるの?あれは歌じゃない。ロ
ーリングストーンズだってそうよね。原語がわからなかったを理由に音ばかり聴
いたのかな」
Y 「そうなんだろうねきっと。だからそれに代わるような、要するに言葉をちゃんと
伴った形での日本のものがでてこなかったからさ。」
M 「結局、グループサウンズになっちゃったんだろうね。でも、グループサウンズに
も詞があって、歌が存在してたじゃない。とりあえず、その頃流行の音を一様に
していたから、それを省くと人気を集めていた個性といえば、その人のパーソナ
リティとか、歌があり詞があったからだよね、きっと。だけど、どうしてそれが
現代に至るまでにどんどんくずれてきちゃったんだろう。」
Y 「たとえば、音楽に対する日常性へのアプローチがアメリカとでは違うよね。それ
がギャップを大きくしてきた。そうとばかりは言えないかもしれないけど、たと
えば、歌声喫茶というのがあった。ダサイ!っていわれてるけどさ、あれは戦前
のものすごく一般的な日常だと思うんだよね。それに寮歌とか軍歌などが加わっ
て要するにユニゾン文化だったわけだよね。それがモダンなことだったわけでだ
よね、当時は。ところが戦争になってそうじゃなくなって、その代わりにでてき
たのがベンチャーズなんだよ。しかもそれは洋楽で、歌がなかった。森進一ぐら
いの歌唱力のある人がさ、ロックの世界にいれば話が違ってきてるんだよねきっ
と。それに、ロックンロールが如何に革命的かっていうと、それまであったもの
をぶち破ってでてきたっていうことなんだけど、そのキャンペーンが”悪い方へ
悪い方へ”きている。そうなると、新しいもの以外は価値が見出せなくなってし
まう。だけどそうじゃないんだよね。あげくに、文化の開けてないところで細々
とやられているようなのをひっぱりだしてきてさ、これこそ真に新しいだ!とか
紹介されてしまう。そうなっちゃいけないと思うんだよね。少なくとも僕は、こ
ういう言葉を使ってやってるんだから、自分の身体に見合ったようになっていく
までやっていきたいと思うし、だから、たとえばレゲエなんてのは僕には必要と
していない。」
M 「おもしろいとは思うよ。」
Y 「うん、面白いとは思うけど、それを特に自分でやりたいとは思わないしね。」
M 「ああいう風にやりたいとは思わないってことね。で、君は本当に努力型でさあ、
コツコツやっていく人間だよね。」
Y 「自分でそう思います。一見して他の誰とも違う、そして2日たったらまたその人
のその前とも違うってやり方は、本質的に僕には合わない。だから僕はいつも言
うんだけど、狩猟民族と農耕民族の違いだってこと。牧草地を求めてぐるぐる土
地を廻っていく人よりも僕は農耕民族に近い。あの山の向こうへ行ったことない
し、一生行くことないだろうけど、あの山にこういう雲がかかれば明日の午前中
は晴れて午後は雨だ、とかってことになるわけ。僕はそれに近いんじゃないかっ
て思う。」
M 「山下達郎と吉田美奈子の違いってのは、彼はとても努力家でね、口で偉そうなこ
とを言ってる時には黙々と何かやってるのね。僕は全然そういう努力のかけらも
ない。」
Y 「それはもう女性と男性の違いですよ(笑)。それにしても、いつかデュエットの
アルバムをつくりたいね。でも、負けるんだ男は、必ず(笑)」
M 「強いわよ女は。でもがんばりなさい(笑)」
〜おしまい〜