WEEKLY INTERVIEW 再録

 

(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業



   

 第12回 1982年  出典:「anan」6月25日号
   ペーター佐藤さんと美奈子さんとの対談、インタビュー
   美奈子さんの高校時代についても話してます。 (前半)

    対談前夜に、きっとミッドナイトエクスプレスの打ち合わせが電話
    で交わされたに違いない…と思わせるように、ふたりともファッシ
    ョンは決まっていた。どちらもモノトーン。お互いに、小脇にプレ
    ゼントを抱えてやってきた。男は花束を、女はレコードを、親愛の
    意を込めて手渡して…。


佐藤(以下P)「通りがかりに買ってきたんだよ。あんまりキレイだったから。」
吉田(以下M)「ありがとう。相変わらずペーターって気がつくのね。じゃ、これは
   お返し。(とレコードを贈る)」
P 「あれ、レコードくれるの。うれしいなあ。美奈子こそ気を遣ってくれたのね。
   いやあ、いいタイミングでした。花を買ってきてよかったな。」
M 「あれえー、ペーターいつからヒゲ生やしたのよお」
P 「やっぱり気がついたか。へへ、ほんの2週間前から。やっと生え揃ったとこ。
   日本画の先生みたいって言われちゃった」
M 「ヤダ!。似合わないよ。周りの反対にも、めげずに生やしてるんでしょう?」
P 「いや、別に反対されてないよ。ヒゲを生やすのは男の権利ですからね、ハハハ」
M 「ボクたちが初めて会った10年ちょっと前は、ペーターもロングヘアーだった
   ものね。」
P 「美奈子ほどじゃーなかったよ。あなたは腰のへんまで垂らしてたものね。今の
   そのヘアースタイルは芸術的だね。それ、毎日編んだりほどいたりするわけ?」
M 「20日に1回、結い直してもらうの。1センチ程、毛が伸びてくると形が崩れ
   てきちゃうから。」
P 「腰まである頃はさ、まだ高校の制服着てたんだよな。制服姿も結構似合ってた
   ね。」
M 「そうだ、ペーターも紅顔の美少年で、今より少し太ってて、直毛ロングヘアー
   だった。無口な芸術家って雰囲気で。忘れもしない、おぞましき運命の出会い
   …」
P 「よしなさい、よしなさい。恥ずかしいから言わない方がいい。」
M 「みんなビックリするよね。ペーターとボクが芝居の中で、デュエットしたこと
   あるなんて聞いたらね」
P 「だから話すのはよしなさいって言ってるのに」
M 「でも、今だったら言えちゃうよ。」
P 「東京キッドブラザースでクラーイ歌を歌っていたなんて?」
M 「そう、ペーターがミュージカルアクターだったなんてねえ」
P 「芝居もやるデザイナーだよ。”キッドブラザーズ”でポスターや舞台装置のデ
   ザイナーだったんだから。たまたま、役者が足りないからってナナハンにまた
   がり皮ジャンにサングラス姿で歌うハメになった。過激に暗い歌だったね。」
M 「そう。その舞台で一緒に歌った仲なんだよね。バックは松本隆、細野晴臣なん
   かがいた”エイプリルフール”だったし…」
P 「懐かしいけど、なんかすごく暗い過去ってイメージがして僕はあんまり思い出
   したくないの。」
M 「それからふたりは深い深い間柄になって…。」
P 「いや、なぜか僕はあなたの身柄引受人になってしまってね。僕のところから学
   校に通ったのでありました。何しろお母さんからもお願いされちゃったもんな」
M 「本当にお世話になりっぱなし。おかげさまで10代の終わり頃は、いろんなこ
   とを吸収できましたからねえ。」
P 「もの静かで、自主性のある大人びた娘ではあったよね。僕が描いてる絵を、あ
   とで何時間でも眺めてるような少女だった。」
M 「猫もいたし、いろんな人がしょっちゅう出入りしてた。居心地がいいところだ
   ったもの。まるでボク、猫になっちゃったみたいに住みついちゃったのよね」
P 「10年も前なのか、懐かしいなあ。まあ、美奈子とは切っても切れない縁があ
   るんだろうね。その後、僕はニューヨークへ行って6年以上会わなかったのに
   東京のレコード会社でバッタリ再会。今もこうして一緒に話してるもんね」
M 「初志貫徹というか、お互いに絵描きと音楽家としてプロになって再会した。(
   感慨深げ)」
P 「あなたのレコードジャケットを描くことになるとは…ね。」
M 「全然変わってなかったね、お互いに。変わってたのは髪型だけ。ふたりとも短
   くなっていた。」
P 「”小川宏ショー(註:古い!!もう古すぎるけど、原文通り)”のご対面番組
   みたいになってきた。ヤバイ!話を変えよう。あのね、僕、またしばらくニュ
   ーヨークへ行くことになったの。」
M 「えー。ボクも夏には仕事で行くから、あっちで会おう」
P 「うん。今から楽しみだね。仕事に関してはニューヨークって、システムがきち
   んとしてるから楽だね。反面、プロ意識を要求されるから、シビアだけど。そ
   れに、あそこは羞恥心を無くすことができるし、気取らなくていい。東京ばか
   りにいると感性も鈍ってきちゃうから、しばらく行くの。」
M 「日本だと東京あたりでも、目立っちゃいけないという教えがまだ息づいてる。
   おとなしく静かにしてる方が美しい、というような考え方がね。あそこでは目
   立たないことは逆に罪悪に近い。」
P 「僕ですら、ギンギンに派手な格好してディスコ行って踊っちゃうもんね。ニュ
   ーヨークなら。」
M 「ディスコだって、それぞれに個性を持ってるから集まる人がはっきり分かれて
   いて、行く時もどこへ行ったら1番楽しいかが、すぐ分かる。東京のディスコ
   はどこも同じ雰囲気だからつまらない。」
P 「ニューヨーカーは本当に踊るの好きだね。土曜日にいかにカッコいいナイトフ
   ィーバー(註:時代だなあ)を楽しむかってことだけ考えて、あとの6日間を
   黙々と働くってとこあるんだよ。」
M 「思った通りに主張し合って生きてるところがいいね。どんな時も人と人が夢中
   でしゃべり合ってるし、といって変な干渉やお節介をするわけでもないし。自
   由なんだよね、本当に」

       〜以下 次回 〜

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