WEEKLY INTERVIEW 再録

 

(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業


               
   

    第27回 出典:?
         1983年3月ころ(2回連続の1回目)
         アルバム「IN MOTION」について
         (今回は、今までのことや柔らかい話が中
          心、アルバムについては 次回)

                       インタビュー:真宮キミコ   


Q 「デビューして10年、LPも10枚ということで色々な面が変化していますけ
   れど、特に詞の世界や、詞にたいする姿勢は変わっていないように思うんです
   けれど、あるスタイルを持っているような」
吉田(以下M)「でも、最初からできたわけではなくて、ずーっとこうした方がいい
   んじゃないかって工夫していって、だんだんできてくるわけでしょう。テクニ
   ックが身についたり、ボキャブラリーが増えたり、いろんなことでモノを理解
   することが深くなったり。逆に切り捨てたりすることで、スタイルになって確
   立するんじゃないかなって思うんですけれど。そして好きなモノは変わってな
   いんです。だから一貫した感じがするんじゃないかと思うの。」
Q 「他の人の詞のように、何が何してどうとやらじゃなくて、この瞬間にこう感じ
   たとか。人間が登場しても、その人との絡みがどうのというより、美奈子さん
   がその人と会って瞬間感じたことが書いてある」
M 「あのね、自分はあまり動いてないんですよ、まわりが動いている。ボクはその
   場所に止まっていて、時間はどういう風に過ぎていくのか、どの道を行くのか
   どんな色になっていくのか、観察してるの。もちろん観察しているだけの情景
   描写じゃなくて、上っ面変わっていく街の色が、自分の気持ちとどうゆうふう
   につながって、どう気持ちが変化していくのかってことでできてるの。詞を書
   く時に、あまり人間を対象にしてはいないんですよね。ラブソングにしても 
   結果を「こうだ!」と押しつけるようなモノは書いていないと思うし、あまり
   断定するのは嫌いなの。不変的なモノってそうないと思うし、絶対変わらない
   ものってきっとあるんじゃないか、とも思うし。そこらへんで踏ん切りがつか
   ないのかもしれないけれど、断定はしたくないのね…。自分のためにかもしれ
   ない」
Q 「そういうところが無機質的というか、淡泊に感じて。人とつき合う場合もそう
   ですか?」
M 「一般的に言う”人付き合い”は悪い方ですね。だいいちボク、お酒飲まないん
   ですよ。お酒飲むパターンがないわけ。食事をするっていっても、仕事のない
   時は出かけないし。自分から電話をかけてお話するってこともないし、つき合
   いは悪い方ですね。」
Q 「詞にでてきている淡泊さは…」
M 「モノに執着はありますよ。好きなモノは集めたいと思うし、猫が好きだし、で
   猫と遊んでいるのが面白いわけ(笑)。人見知りの方なのね、きっと。気後れ
   があるの。知らない人が居ると”この人は楽しんでいるのかなあ”って…。日
   本人ってあまり表にださないでしょう。楽しくなかったら帰って欲しいんだけ
   ど、帰るということも言わない人が多いじゃない」
Q 「ええ、建前で」
M 「で、気を使いたくないわけ、でも気を使ってしまうわけ、どうしても。すごく
   疲れるのね。だから外へ出かけたくないの。」
Q 「だから、猫とか花瓶とか街だとか、モノが対象の詞が多くなるんでしょうか」
M 「うん、そうですね。見てるのが好きなんですね。部屋に居る時間が多いと、自
   分の好きなモノが対象になっていくし、そこからモノをみるようになるし…」
Q 「好きなモノが周りにあって、ホンネでいられないと…」
M 「あのねえ、ダメなんです。ウソとかつけないの。正直すぎるからって言われる
   んですけれどね。ダメなんです。ガンコだとか言われるけど、どうしてもそう
   なってしまうのね、結果的に」
Q 「山下達郎さんのLPに自殺のうたを書いたでしょう」
M 「自殺のうたを書いていない、人を殺すうたを書いてるの(HOT SHOT)
   」
Q 「ごめんなさい」
M 「(笑)シリーズで書いてたの。ハードボイルドものを1曲入れようって」
Q 「遊びで?」
M 「そう。ボクは面白がってる部分なんだけれど、実際手を下さない限り、心の中
   で心の中で誰かを殺したってかまわないわけよ。それを言葉にして罪になるか
   それが境目なんだと思うの。いちおう、カタチはあるから罪になる人もいるん
   だろうけれども。そういったところの遊びなの」
Q 「詞が音によく乗っていますね」
M 「だからよく言われるのは、あまり音に乗りすぎてるから印象がないって言われ
   るの。」
Q 「エッ!?」
M 「字が足りなかったり、余ったりすると耳にひっかかるでしょう、すごく単純な
   ところで。それがないわけよ、ボクは。リズムに乗っかりすぎてるから、詞が
   残らないって言われたことは何回かあるの。でもね、ボクも歌う人間でしょう
   、歌っててひっかかる言葉ってあんまりよくないと思う。それを効果的に使う
   のってあんまり好きじゃないわけ、ボク自身。できるだけその人が作ったメロ
   ディに添った日本語を探して書くのが当たり前だと思っているから、だからあ
   あいった詞になってくるわけ。だけど、いわゆる商業作詞家は、言葉をいかに
   ひっかけるって方に専念してるでしょう?ボクはそうじゃなくて、もっと総合
   的にモノを考えたいの。」
Q 「ニューヨークで録音もしてますし、美奈子さんというとニューヨークがでてく
   るんですけど。」
M 「”ライトゥンアップ”で。3分の1ぐらいニューヨーク。でも、別にニューヨ
   ークでなくちゃならないってことは別になかったんですよね。エンジニアが向
   こうへ行かなくちゃならなかったんですよね。一貫して同じエンジニアでやり
   たかったから、スケジュール合わせて、ミックスダウンもマスタリングもみん
   なやって帰ってきたということなの。」
Q 「ニューヨークがいいということではなかったんですね」
M 「うん、そういうことじゃないの。お金がかかるからね。自分でプロデュースし
   てるから、お金がどれくらいかかるかって判断つくよね。使いたいなっていう
   ミュージシャンは高いランクの人だし、それはテクニックで帳尻合わせるんだ
   けど。もちろん、日本で全部できれば、それに越したことはないし。クオリテ
   ィーの高さは個性だからね」    
  
   
  
  〜以下 次回〜

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