WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第28回 出典:?
1983年3月ころ(2回連続の2回目)
アルバム「IN MOTION」について
(今回は、アルバムについては)
インタビュー:真宮キミコ
Q 「たとえば、細野晴臣さんや山下達郎さんがアイドルのウタを書いているし、1
0年前に出てきた人たちがリーダーシップをとりつつある日本の音楽シーンを
どう思いますか」
吉田(以下M)「音楽シーンというわけではないけれど、その人の適性にあったもの
だったらどんどんやった方がいいと思うの」
Q 「あるシンガーソングライターがクローズアップされると、じゃあ今度は って
プロデューサーが曲や詞を依頼するのはイージーな感じがするんですけど」
M 「そういうシステムなんですよ、音楽業界っていうのは。それが当たり前なの。
商業作詞家や作曲家がマンネリになってきちゃって、もっと新しいモノが欲し
くなって、そうしたら自分でレコードつくっている人たちに向くことは、当た
り前のことなんですね。例えばマッチと山下達郎が出会ったら面白いと単純に
考えているわけです。で、山下達郎はマッチに曲を書いたら面白いと思えばい
いわけ。仕事ってそうなんですよ。頼まれればやっぱり関心は向くし、ボクだ
って今度、アンルイスのシングル「LUV−YA」の詞を書いてますけど、シ
ングルになった方がいいわけです。クレジットがTVにでるし、アンがボクの
詞を歌うわけで、それが面白いの。昨日「ヒットスタジオ」にアンが出てて、
歌ってたのね。歌詞間違えてたけど(笑)。ちょっと、アンの使わない言葉を
多く書いてもたのね。」
Q 「どうしてですか?」
M 「いろんなコトやってみた方がアンはいいじゃないかと思ったの。あの人とって
ってもいいものを持っているから。レコーディングにも立ち会って、プロダク
ションの人やレコード会社の人と話しながら、2番の方を1番に持っていった
方がヒット性があるって言われれば、「そうですか、じゃあそうしましょう」
って言って直すし。コーラスやってくれって言われれば、「そうですか、じゃ
あそうしましょう」って言い直すし。コーラスやってくれって言われれば、「
ハイ」って言って、「アンも一緒にやりましょう。」って、みんなでつくって
いって。そうすれば、いわゆる歌謡曲の分割されたシステムよりもいいモノを
アンは知るかもしれないじゃない。声をだすことだったら、どんどんやった方
がいいと思うから、それで彼女は成長するわけ。で、面白いでしょう?その方
が」
Q 「1番と2番をひっくり返されることに抵抗はありますか?」
M 「抵抗がないっていったらウソがあるけど、それが可能な場合はそうすればいい
と思うわけ。こだわって抵抗するようなモノでもないと思うの。1番だって2
番だって自分が書いたんですもん。ボクたちよりいろいろな人と仕事している
人たちだし、意見は聞けばいいと思う」
Q 「他人の意見を取り入れて、可能性を見出すんですね」
M 「その方が面白いでしょう。自分の世界だけで書いてたら、自分はこれでいいと
しか思えなくなるでしょう?それに他のコトを知るいいチャンスだし、それは
利用すればいいわけ」
Q 「何年も前、ロフトで、山下達郎さんとナマピアノ2台でライブを演った時に、
お客さんと言い争いをした場面があったんですよね。お客さんの1人がヤジを
とばしたんです、そうしたら美奈子さんが立ち上がって… 」
M 「うるさいって? (笑)許せないの!そういう人(笑)」
Q 「達郎さんもこわかったんですけど。」
M 「正義感強いから(笑)。そういう時、ガマンするの、しないのって問題じゃな
いわけ。ボクはウタを歌います。アナタは聞いていますっていうすごく単純な
発想から、気分悪いモノは排除したいわけ(笑)。誰だってあると思うの。で
、怒るときには怒らないとね」
Q 「それは対等なコミュニケーションですよね。おさえるコトがおかしいことなん
ですものね」
M 「おさえて”ハッハハハ”と笑っていたってしょうがないでしょう。不愉快なこ
とは不愉快なんですもん。他のお客様も不愉快でしょう。だからその場で解決
しなきゃいけないわけ。そうするしかないですよね。」
Q 「そこで誤解する人がいるかもしれませんね」
M 「たまたま、そういう場所でそうなってしまうから、ひろがってしまうんでしょ
うね。間が悪いの(笑)。お客様の中には、態度が悪くても吉田美奈子を聞き
に来てくれる人もいるし、だったらケンカすればいいと思うし、暖かい人には
あたたかくニコニコしてあげればいいと思うし、ホント単純なんです。」
Q 「今回のライブ盤”インモーション”で、なぜ拍手を省いたんですか?ライブは
状況が聞こえてくるのも面白いと思うんですけど」
M 「拍手は必要なかったから(笑)」
Q 「美奈子さんにとって?」
M 「ボクにとってゆうか、楽曲毎にこういう風に作りたいなあ、と思っているのに
拍手はいらなかったの。こじつけかもしれないけれど、あれは実際リズムはラ
イブのテープを基に作ってるわけだから、存在はあるわけですよね。エントロ
ピーがあるわけ(笑)。空気としてはライブを含んではいるんですけどね」
Q 「選曲はどうやってしたんですか」
M 「ライブの出来上がりと、こうしたら面白いというのに向いた楽曲を揃えたの。
楽曲をどういうふうに変えたら面白いかっていう発想なの。楽曲っていう制約
はどう編集したってあるじゃない。で、そのなかで壊すにはどうしたらいいか
っていう作業が面白いの。自由に発想したいのね、いろんなこと。やっぱりラ
イブでもオリジナルレコードでも不満があるわけ、こういう風にした方がって
いう。けれどボクだけで作ってるわけじゃなくて、楽器やる人たちや他にメン
バーがいるわけでしょう。いくらボクがアレンジして、こうやって欲しい っ
て話しても、演奏家はボクじゃないよね。だから、違う音がでてくるでしょう
。楽曲って、作り上げて外に出た時点で自分だけのモノではなくなるけど、最
終的な出来上がりで、また自分に引き戻すっていうことになってくるわけ。あ
とで聞いて楽しくなくちゃ面白くないでしょう」
Q 「バンドのメンバーに、曲のイメージや欲しい音をどうやって伝えるんですか?
」
M 「言葉で通じなかったなら、ボクが楽器を弾きます(笑)」
Q 「そうですね(笑)」
M 「それで、”何々みたいなの”を作るわけじゃないでしょう?で、スタジオミュ
ージシャンって”何々みたいなの”っていう言い方が一番通じるわけなんです
よね。あのー、自分からモノを発想する人たちじゃないから。おかしな言い方
で悪いけれど、別に差別している訳じゃなくてね。やっぱりボクは自分のモノ
を作ってるわけだから”何々みたいに”作って!とは言えないわけですよ。そ
ういう素材はないわけ。ある程度譜面に起こしてパート譜にして渡すでしょう
、それから音をだしてもらって”ちょっと待って”考えて”あなた!ここの音
は絶対いれないで欲しい”とかキーボードでテンション使ってバシッて弾いた
とき”いま8つ弾いてる”っていうとき”6つまでにして”とか、そういう言
葉でも随分できるわけ。そうやってコツコツ作業していくの。」
Q 「自分でプロデュースしても、すべて立ち会わない人もいると思うんですけど、
すべて立ち会うというのはポリシーですか?」
M 「別に人に任せて、ああいうレコード作ってくれたら任せた方が楽ですよね。予
算のことは気にしなくてもいいしね(笑)。クオリティの高いモノを作ってく
れる人がもしいたら、気持ちよく歌えばいいわけですよね。だけど、頼める人
もいないしね」
Q 「信頼できる人ですか」
M 「それは信じればいいだけなんだから、そこそこのモノができるだろうけど、自
分の作っている音が鳴っている限り、不満が残るのがイヤじゃない?」
Q 「ええ」
M 「そして相手にも悪いしね。誠意がないでしょう。だから自分で全部やってしま
ってるわけなの(笑)」
〜おしまい〜