WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第33回 出典:「ミュージックマガジン」89年5月号
”DARK CRYSTAL”のレビューと前作
”BELLS”について
(2回連続の1回目)
この5年間はレコード会社と契約せず、2年前に自主制作CD”BE
LLS”を発表した以外はフリーランスとして活動することが多かっ
たため、シーンの表面には現れてこなかったけれど、彼女は活動を停
止していたわけではない。それでも今回の新作は、待ちかねたところ
に届いた嬉しいプレゼントだ。
インタビューQ:今井智子
Q 「レコーディングはいつ頃始めたんですか?」
吉田(以下M)「去年の7月です。」
Q 「”BELLS”とはずいぶん、印象が違って驚いたんですけど、」
M 「基本的には同じですけど、”BELLS”は趣味のレコードだから(笑)」
Q 「これは商品としてのレコード?」
M 「うん。楽器が多いですから(笑)」
Q 「でも、一人で殆どおやりになってる」
M 「うん、コンピューターで」
Q 「商品価値はどういうところに」
M 「こじつければ(笑)。ただ”BELLS”は逆の意味で、レコードにする場合
、入りにくい楽曲が多かったでしょ。凄く長かったり、凄く短かったり。でも
それと同じものを作ろうとか違うものを作ろうとかいうことではなくて、シテ
ュエイションが違うだけ。あれは趣味で今度は会社がある。あんまりコンセプ
トがどうのとか、サウンドがどうのとか、考えてはいないですけど。この中に
もハチロクの曲がはいってたりするでしょ。”BELLS”は殆どハチロクだ
ったけど。”BELLS”は出さないつもりだったから」
Q 「でも、カタチにしたかった?」
M 「あれはモッタイナイという人が多かったんで(笑)。それで、じゃあ自主制作
で出そうかって。限定3000枚にしたのは、ちょうど制作費が”行って来い
”だっただけで、3000枚全部売れなくて、2500枚ぐらいしか売れなか
ったのね。あと500枚は好きな人たちや手伝ってくれた人たちにタダで配る
という。だから500枚分赤字(笑)」
Q 「それは再プレスして埋めようとは思わなかった?」
M 「思わないですね。もう、1コ終わっちゃうとすぐ忘れちゃうの(笑)。」
Q 「あれからここまでの間はプロデュースなどが多かったようですけど」
M 「プロデュースの仕事もやってましたし、人に楽曲を書いたりしてました。相変
わらずスタッフの仕事」
Q 「そういうスタッフワークと自分の仕事って、波みたいなものがありますか?」
M 「ないですよ。締め切りがあればやる というだけで(笑)。昨年4月に契約し
て、その時は何も考えてなかったですから、じゃ7月ぐらいに録る始めようと
いうことにして、6月に(曲を)作ればいいやって、逆算して作っただけで」
Q 「5年ぶりに契約したのは?」
M 「契約の話は前から来てたんです。最初は”ああまたか”って感じだったんです
が、アプローチの仕方が他の会社と違ってたんで。まず、吉田美奈子を確保し
てると便利だと(笑)。自分でもそう思う(笑)。曲は書くし、アレンジやる
し、プロデュースやるし、金の勘定もする、弁当の世話もする(笑)。それを
言ってきたから話を聞こうかなと。新しい会社(創美企画)だったし、新しい
切り口をって言ったから、創設当時のメンバーとして、良い前例をいっぱい作
ればやりやすくなるでしょ」
Q 「”BELLS”はあれはあれで完結したものとしても、あれがあってこの”ダ
ーククルスタル”に至るというものがあると思うんだけど」
M 「そうですか。一応ね、イントロは小細工してあるんですよ、”BELLS”か
ら。<スターボウ>のイントロで、ベルから始まりますよね。”BELLS”
の最後はベルで終わっているでしょ。で<スターボウ>のイントロで後ろの方
にフワッと出てくるコーラスがあるでしょ。あれは”BELLS”の中の<ウ
インド>のコーラスなんですよ。<ウインド>をCDでかけて、ハイハットの
トリガーにしてあって、ハイハットのゲートが開くと、あれはフッと任意で出
るようになってる。よ〜く聴くとどの部分かわかりますよ」
Q 「それは趣味の部分?」
M 「そうですね。でも自分でもニコニコするところがないと、ねえ。詞を書いたり
して当て字にするとか、そういうのと一緒です。自分のだからそうするという
んじゃなくて、何かもの作ってる人って、自分なりの楽しみがないといけない
し、それでニコニコ、陰でしてる(笑)」