WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第34回 出典:「ミュージックマガジン」89年5月号
”DARK CRYSTAL”のレビュー続き他
(2回連続の2回目)
インタビューQ:今井智子
Q 「それは趣味の部分?」
吉田(以下M)「そうですね。でも自分でもニコニコするところがないと、ねえ。詞
を書いたりして当て字にするとか、そういうのと一緒です。自分のだからそう
するというんじゃなくて、何かもの作ってる人って、自分なりの楽しみがない
といけないし、それでニコニコ、陰でしてる(笑)」
Q 「そういうのを、夜中一人でスタジオでやったりするの?」
M 「夜中じゃないですよ(笑)。レコーディングはだいたい午後2時ぐらいから夜
2時ぐらいまでですから」
Q 「昔みたいに1日36時間みたいなことは?」
M 「CMなんかだとありますけどね。あれはしょうがない。最近一番長かったのは
鈴木雅之が歌ってたCDのCM。ボクだけの場合は早いですからね。他の人が
いると」
Q 「余計手間取る?」
M 「親切になっちゃう(笑)。あの、やっぱり訳わかんないのって疎外感あるでし
ょ。可哀相だからできるだけ説明する、そうすると時間かかりますよね。今回
は4人だけでしたから。ヴォーカルトラック録ってる時は3人しかいない。す
ごく早いですよ。”BELLS”よりこっちの方が、セッションの人数は少な
い。山木(秀夫)くんと矢野誠と2人だけですからね、自分以外は。だから楽
器はこっちの方が多いですけど、自分の好きな音しか楽譜で書いてないですか
ら、より個人的ですよね。楽器の編成って言っても、殆ど3分の1ぐらいはデ
ジタルがカシャカシャ動いてるだけ(笑)」
Q 「ファンクとか言われるのはもう沢山?」
M 「ていうかね、昔はジャンルに入れてもらえなかったですからね。最近はファン
クって言葉が一般に浸透して、ファンクって言ってわかるんであれば、それで
も構わない。アヴァンギャルドが一番自由な音楽だと思う人が多いんであれば
アヴァンギャルドにして頂いた方がいい、そのくらいですね」
Q 「私がジャンルであると?」
M 「でもオリジナル書いてる人って、みんなそうじゃないの?」
Q 「ファンクと言われて納得するのは、どういう部分?」
M 「精神的なことだから(笑)。でもロックとかファンクとかいうのは、精神の問
題、マインドの問題ですよね。そういった意味で言いえてる。何をどうしなく
てはいけない、どうすべきだというのは何もないですから、楽しければいい、
と」
Q 「プリンスみたいに、プロデュースト、アレンジド、コンポーズドアンドパフォ
ームド バイとクレジットを並べたりするというのは(笑)?」
M 「ああいう自己主張、あれはファンクですけどね。あれがファンクのマインド(
笑)。でもあれは、できればボクは余りしたくない。今度のは書いてあるけど
、それは(聴き手の)世代が変わったから、仕方ない、書くか、って。前はア
レンジなんかは書いてないです。歌詞の下に作家名が書いてあったりするし、
アレンジャーが書いてないということはサウンドプロデューサーがやってると
いうことだから」
Q 「新しい世代のリスナーに向けてということを考えたりしますか?」
M 「それはないです。クレジットぐらいで(笑)。新しい世代が何をどうしてるか
全然知らないし、それをリサーチして、それで自分のやり方を変える気も毛頭
ないし。個性というのは、その人ができるだけその人だけでやった方が色濃く
なるわけで、それ、当たり前のことですから。その点、好き嫌いはっきりする
けど、その方が面白いし、リスナーが選ぶというよりこっちが選ぶというね。
何でもできるというより、これだったら絶対、という方がいいですからね、深
いし。それしかできないんじゃないかと」
Q 「ライブはやらないんですか」
M 「う〜ん、義務はないですけど(笑)。今年中にやってもいいかなって気がしま
すけど、でもミュージシャンがいないんですよ。コンピューターでやってるか
ら、余計ボクの色が濃くなってるけど、ライブはライブとして考えてもね。レ
コードにしても、機械でこういうことがもっと早くできたら、自分だけでやっ
てたと思う」