WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第20回 1996年 出典:11月30日東京、銀座
山野楽器で行われたアルバム「KEY」発売記念のトー
クショーで美奈子さんと萩原健太さんの対談形式のショ
ーで当日来場の方からの質問にも答えています。
5回シリーズのいよいよ最終回
萩原(以下H)「ミュージシャンで いわゆるソロのシンガーの人でも、真っ二つで
ですよね。カラオケ大好きで、ライブ終わった後でもカラオケ行く人いるしね
」
吉田(以下M)「ベースの岡沢章さんっているんですけど、あの人の18番は”浪花
節だよ人生は”」(笑い)
H 「あの、米米クラブのカールスモーキー石井って、あいつはもう歌えてりゃいい
って奴で」
M 「ああ、そう」
H 「ライブ終わったって、カラオケ行くんですよ、平気で」
M 「じゃ、もうちょっとライブで声量あってもいいですよねえ」(爆笑)
H 「大瀧詠一さんのフランク永井も笑えますけど(笑)」
M 「え〜 本当」
H 「すごかったですよ。もう十何年も人前で歌ったことない人のを聞いちゃいまし
たから」
M 「へえ 」
H 「しかも フランク永井」(笑)
M 「らしいなあ(笑)」
H 「ねえ。 さて、質問。CDでは打ち込みドラムですけど、理由はあるんです
か?去年たしか、ポンタ(村上秀一)さんが”吉田美奈子のバックでドラム叩
きたい”って言ってられましたよ」
M 「こないだ会った時も、挨拶の前に”何んでオレを呼ばないんだよ!”って言っ
てましたよね」
H 「昔、ポンタさんにBBキングが来日した時、コンサートプロデュースの仕事が
あって、日本のミュージシャンを共演させようって話があって”ポンタさん!
ドラムやってください!”って頼んだら、”オ〜 任せろ。絶対やるから!
マネージャーに言っといて”って言うから電話したら”無理です!”って(笑
)空いてません”だって」(笑)
M 「(笑)」
H 「あの人は意欲はあるんですけどね。スケジュール次第なんで(笑)でも、どう
なんですか? ナマドラム?」
M 「あ〜 ありがたいことにドラムに限らずいろんな楽器の人が一緒にセッション
やらせてくれって言ってくださるんですけど、じゃあ タダ に出来ないか(
笑)って。そういう訳にもできないんで、1回くらい”この指、とまれ”でド
ラムが5人くらいで(笑)ギターが10人くらいで(笑)ベースが8人くらい
いて(笑)面白いですね」
H 「入札制度とか、したりして(笑)」
M 「ホーンが30人くらいで」
H 「で、一番安い値段の人に任せるみたいに(笑)」
M 「(笑)もう、オーソリティーみたいな人ばっかりなんで、友達価格で演るのは
イヤなんですよ」
H 「美奈子さん、若いミュージシャン育ててくださいよ」
M 「スタッフは若いんだけど」
H 「ミュージシャンですよ、ミュージシャン。鍛えて。そんなヒマはないって、言
われてしまえばそれまでなんですけど」
M 「あの、やり方変えないとダメですね。若い人って事細かく言われて、良くなっ
てくるみたいで、ボク、何んにも言わない方なんで。言わないと、余計自力で
構成していかなくちゃならなくなるので、脱落する人は、そこで脱落するんで
すけど。その厳しさに耐えられないみたい」
H 「みんな?」
M 「口数がとても多くなっちゃったりとか。”あー こりゃダメだ!”とか」
H 「難しいですね。………質問にいきましょう。 年賀状くださいって人がいます
ね(笑) ダメです! 一度”笑っていいとも”に御出演されたことはござい
ませんか(笑)?って」
M 「それは ないと思いますよ」
H 「”ありませんでしたら、たぶんアンルイスさんと見間違えたんだと思います”
だって(笑)」(一同笑い)
H 「えー 萩原健太さんを初めとする評論家の方がときおり、美奈子さんの楽曲に
”神”とか”祈り”という言葉を使っています。この言葉の意味について、美
奈子さんは どう思っていますか?って質問です」
M 「言われる方は?どういう意味で使ってられるのか?健太さんは?」
H 「僕の場合は、さっき言ったような事ですよ。その視点が達観したようなところ
から 」
M 「ああ、天上の音楽という風に言われましたよね、上昇するようなんだって」
H 「あともう一つは、美奈子さんの中で、”扉の冬”の頃からずっともってる底辺
に ゴスペルという言葉で括られるんだけどね」
M 「スピリッチャルなもの」
H 「その”聖なるもの”と”俗なるもの”と一緒になった後のもの。ってあるじゃ
ないですか。たとえば、サムクックみたいに ゴスペルやめて、ポップミュー
ジックへ行って 悪魔の音楽と言われながらも、その中に”聖なるもの”があ
ったりとか、エルビスプレスリーがデビューの時みたいに、腰振って、猥雑な
音楽の奥底に平静を求めるみたいなものがあったりとか。美奈子さんの曲に、
そういうのを僕、感じたりするんですよ、向こう側にね。それで、そういう言
葉で”祈り”というか、すごくスピリッチャルな意味を感じるんです」
M 「そのメロディに言葉を持って、その声で波動を出す訳ですよ。その響きが、第
3の風というか、感性に触れるんじゃないですか?あの”第3の涙”というの
があって、”悲しい””嬉しい”以外の何か琴線に触れる言葉にならない感動
の響きってものがあるんですよ。そういったものに触れるんじゃないかって言
う人もいるんですよ。」
H 「ああ なるほどね」
( 〜この後、今後の事、コンサートの予定とかの内容について話があった〜 )
H 「ライブが終わった後はどうするんですか?」
M 「ライブが終わってから、来年1月に岩崎宏美さんのアルバムの中で3曲担当す
るんですよ」
H 「プロデュース?」
M 「プロデュース、作詞作曲、コーラスアレンジとか全部やるんです。2曲はある
んですけど、あと1曲書いてなくて、それをコンサート終わった後に、書かな
くちゃならなくて。あとマンションの理事長やってるんです。」(一同笑い)
H 「うおー」
( 〜この後、マンションの雨漏り修繕で、管理組合と交渉せねばならない など
の話があった 〜 )
H 「ここ数年、とてもハードワークに感じてるんですけど、このままアルバムやラ
イブをコンスタントに続けてつもりですか?順調すぎて、少しこわい気がしま
す。」(笑)
M 「こわいでしょう?(笑)とてもこわいんですよ。あの〜コンサートについては
ある番組でしゃべっちゃったんですけど、ホールのコンサートはやめようかと
思っているんです。どうしてかっていうと、手続きがすごく多いんですよ。も
ちろん、1本でやらなくちゃならないんですけど。当然、集まったスタッフは
何十人もいるわけで、”やれ照明どうやらなきゃ”とか”やれ音響装置はどう
した”とか音楽を楽しむ前に、くたびれちゃうんですよ。音楽って、もっと身
近で、もっとその上で楽しめるものじゃなかったかなって想いがあって、ここ
何年間か、トナカイのように(笑)12月にやってるんですけど、来年はクラ
ブで、地方のクラブでも1ヶ所に少なくとも3日間くらい滞在して”明日、何
時に集まろうか?”ってみんなで話しあって、すごくさりげなく音楽やれたら
いいなって考えがあって、例えば大阪なら、ブルーノートとかね、東京だった
ら、六本木のピットインとかね、そういうところで出来たらいいなと漠然と考
えてて、もちろんこれから、交渉していくんですけど」
H 「ピットインで1ヶ月くらいやるとか」(笑い)
M 「(笑)おおといのリハーサルの時、”じゃ、ピットインで1ヶ月”って本当に
ミュージシャンが言ってましたけど(笑)」
H 「おれなら、許します、ホールなくなっても。とりあえず、美空ひばり 新宿コ
マ公演みたいに。(笑)」(一同爆笑)
M 「25周年に”私のファンク道”って」(笑い)
H 「いいねえ!前半はお芝居やるんでしょう?」(爆笑)
M 「そうね(笑)」
H 「後半が歌謡ショーで」(笑い)
M 「(笑)」
H 「ということで、質問の半分くらいしか紹介できませんでしたけど、これで”お
ひらき”ということでありがとうございました。」
〜 おしまい 〜