WEEKLY INTERVIEW 再録
(毎週土曜or日曜更新)時々臨時休業
第51回
出典:「サウンド&レコーディング」
1990年12月号
吉田美奈子VS清水靖晃
(2回連続の2回目)
資料提供:三浦豊樹さん
Q 『今度の【GAZAR】には久しぶりの清水さんやビルラズウェルも参加していますね』
吉田(以下M)「久しぶりといっても、去年靖ちゃんのコンサートでボクがバックアップボーカ
ルをしているし… 。それにビルはいいアーティストだよね。」
清水(以下S)「まあ、基本的なタイプとしていわゆる違う肌合いの人なんだけど、共感ない
しすごく感銘するところあるよね。そうすると音楽は後についてくるんですよ。そういうと
ころに立って人を見ると、やっぱり音楽はどうでもいいなって思えてきますよね」
M 「音楽が人間より後ろにくるんでしょ。靖ちゃんは、前、ビルと仕事してたじゃない!で、ボ
クは実際ビルとセッションしたのは初めてなんだけど、その前から人間は知ってて、いつ
会っても”この人は素晴らしい”って思うよね。」
S 「ああいった恰好してるけど、すごくチャーミングな人なんだよね」
M 「すっごくチャーミング。すごくジェントルマンで。それにはっきりアイデンティティはあるし
ね。かっこよく乱暴だしね。情けなく気が弱い(笑)」
S 「すごく繊細なところがある。毎日一緒にいる人じゃなくてもさ、感触でわかりあえるみた
いな人っていいよね」
M 「ちょうど靖ちゃんがニューヨークにきた日がビルのダビングの日だったんですよ。で、一
緒にビルのスタジオにいって。あのスタジオもね、アーティストのスタジオって感じです
っごく美しいのね」
S 「性格が出てるよね」
M 「うん。まだできたてで、何にもないんですけど、ロフトでフロアがガラ〜ンとなってて、茶
色でペンキが塗ってあって」
S 「たぶん、あのまま何もなくて終わりだと思うんだけど」
M 「靖ちゃんが”ヘッドホンつけるの?”って聞いたら、”ううん。モニター小さくすれば大丈
夫”って(笑)。それでいいんだよね。」
S 「分かれてないんだよね。コントロールルームとスタジオと」
M 「だから部屋の端っこに、コーナーに向かってスピーカーとコンソールが置いてあって、そ
の向こうがガラーンとあいているわけですよ。そこで録るの」
S 「機械もね、新しいやつじゃなくてニーヴのさ」
M 「ニーヴのブロードキャストが置いてあって。24トラックのスチューダーが置いてあって、
アナログの。で、ラックをね、ふたりで見たらね、ちょっとはにかんで笑って”I
have no-
thing”って言ってたりするわけ(笑)。すごく可愛い人だよね」
Q 『向こうで起きた何か面白いエピソードってありますか?』
M 「え〜と、エピソード?」
S 「エピソードってのはだいたい言えるようなもんじゃないんだよね(笑)」
M 「レコーディングの日に靖ちゃんがマウスピースを忘れて(笑)、タクシーの運転手さんに
頼んで取りに帰ってもらったら、その黒人の運転手に”サックスプレイヤーがマウスピー
スを忘れたのか?”とか言われて(笑)」
S 「説教されたのかな?降りたら(笑)」
M 「いい人だったよね、あの人。まあ、最初がそれだったよね。あと、アートリンゼイをみん
なで見に行ったりね。アートがビッチビッチビッチビッチっていう歌詞を歌っているのを
見に行こうとしたら、ヒゲオヤジに会ったんだよね(笑)。ヒゲオヤジっていうのは、マイ
クマイニエリのことですけど(笑)」
S 「久しぶりだったね」
M 「すごく久しぶりだった」
S 「10何年ぶりだったけど、覚えてたね、あの人」
M 「覚えてるよお〜」
Q 『レコーディングにはどれくらい時間がかかりました?』
M 「時間でいくと、まずプリプロを抜いて10日間ベーシックトラックでロックアウトで、それか
ら4日間バックグランドヴォーカルで、そのあとライブアップ…アナログ使っているから、
スレーブからマスターの方に2ミックスにして入れちゃう作業に4日間かけて、2日間で
リードヴォーカル入れて1日アンビエントなんかを録って、「WARNING」のキーボード
入れを少しやって、それからビルのスタジオにダビングにいって3時間くらい…でもやっ
てるのは1時間くらいだよね。それでその次の日が靖ちゃんで、6時間くらい?それか
らミックスとシーケンスまぜて10日間ロックアウトして、あとマスタリング。全部で時間
的に言って390時間?400時間はいってない。PCー9800からMACへのシーケンス
データの移植も大丈夫。日本で全部やって、もう終わりの方はプログラミングは「パフォ
ーマー」でやっていたから。でも、フロッピーを持ってって”かかってちょ〜だい!”って言
って入れて(笑)」
Q 『御両人から見て、お互いをひとことで言うとどうなりますか?』
M 「とにかくボクは周りをぐるっと見て清水靖晃というミュージシャンは日本で一番才能が
ある人だと思っているのね。引っ張ってる人だなって」
S 「僕は吉田美奈子っていう人はね、日本で一番本物な人なんじゃないかなと思って(笑)
」
M 「ホンモノ?じゃあ、ニセモノは誰だろね?」
S 「ニセモノはね……とか言って(笑)」
M 「お互いに尊敬しあえるっていうのはやっぱり一番大事ですから、すごく尊敬できる人で
す。」
S 「ワタクシも…いや本当ですよ。(笑)」
M 「目を見ないよね」(爆笑)
※おしまい
清水靖晃さまとの共演を期待している私ですから、その時を待ってます。