ベネズエラ年表

その3

2004年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2005年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2006年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2007年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

 

2004年

04年1月

1.01 チャベス、今年が「革命の中の革命=モラル革命」の年になるだろうと述べる。

年頭演説のさわり:
 ベネズエラには、半世紀前から作られた汚職・腐敗の文化がある。それはCDを形成する人間が作った文化で、彼らはそれで豊かになった。まだ腐敗は存在するし、司法当局にはまだ民主行動党やCOPEIの力が及んでいる。この社会の骨まで染みついている腐敗という古い文化を、ベネズエラから根こそぎにするには、長い時間が必要だ。しかし、新たな最高裁判所法にもとづき国会が新しい判事を任命するので、これから変わっていくだろう。

1.09 Financial Times 紙,「市中銀行の国内債保有水準は飽和点に近づいており,政府が歳出必要額を全額調達し得る可能性は低い.中央銀行が国債を引き受ける場合にはハイパーインフレを引き起こすことになる」と報じる.(これは一種の脅しです。政府の資金減少はゼネストによるものであり、その後の動向はイラク戦争による原油高もあり順調に推移しています。積立金の取り崩しにより十分に対応可能です。またPDVSA剰余金の使途が明確になり、通常予算に限らない資金の弾力的運用が可能になった点は、今後有利に働くでしょう)

1.10 チャベス大統領、モンテレイでの米州諸国首脳会議からの帰途、ハバナに立ち寄り、フィデル・カストロ・キューバ国家評議会議長と会談。「フィデルとチャベスは、ラテンアメリカを不安定化させている2人だが、それは不正義と飢え、病気、不平等にたいしての不安定化だ」とのべる。

1.13 全国選挙評議会,国際オブザーバーの監視の下で署名の確認作業を開始.当初の予定は30日間.

1.15 チャベス大統領が議会への施政方針演説。FTAA反対でブラジルとアルゼンチンとの共同を強化すると明らかにする。「この三国関係は悪の枢軸ではない」と皮肉った。

1.26 OASとカーター・センターのメンバーが確認作業に立ち会う。カーターは、「個人的な意見としては、全国選挙評議会は適切な決定を下すだろうし、その後の政治的な帰結も受け入れられることになるだろうと思う」と語る。

1.31 ベネズエラ政府の保有外貨準備高,112 億㌦に減少.またマクロ経済安定化基金 (FIEM)の積み立て残高は26 億㌦.いっぽう1~3 月に支払い期限が到来する対外債務は元利合計8.5 億㌦であり,数字上は外貨準備高やFIEM 資金の取り崩しにより対応可能.

1月 ベネズエラ人のドルへのアクセスが制限される。ボリーバルの交換レートを固定。このあと闇市場では公定レートの80%にまで低下。

1月 チャベス、貧困追放のための「キリスト計画」を提唱する。独立200年を迎える2021年までに貧困をゼロにしようとするもの。

1月 ワシントンの米州経済評議会、クーデターの首謀者の一人グスタボ・シスネロスに「最優秀指導者賞」(Prestigious Excellence in Leadership)を与える。

 

04年2月

2.03 El Universal 紙,石油公社のこれまでの損失額が40 億㌦に上ったと報じる.

2.04 92年のクーデター未遂事件の12周年を記念するデモ行進及び集会.MVR,PODEMOS,PPTが主催.チャベス演説.「我々はボリバル革命の戦士であり、単なるクーデター画策者とは全く異なる.1992年2月4日は、IMFとプント・フィホ体制に反旗を掲げるものであった。ボリバル革命は国民自身によって推進されている」

2.09 ベネズエラ政府,固定管理相場制の実施から1年で,通貨ボリーバルの17%引き下げ.1ドル=1,920ボリーバルとなる.並行市場では1ドル=3,200ボリーバルまで下がる.原油生産施設拡大へ向け、PDVSAへの資金導入を誘導する措置と連動。

2.11 ロドリゲスCNE委員,当初の予定日である13日には暫定結果を発表できないと表明.

2.12 PDVSAのアリ・ロドリゲス総裁,5年間で総額370億ドルを投じ,原油生産量を拡大する計画を発表.

04年2月13日 有効署名の最終確認が延期

2.13 有効署名数確認の結果を発表する期限.CNEは調査を完了できず2月29日に発表を延期すると発表.

2.13 OAS及びカーター・センター,署名の確認作業は初めての試みであり、選挙開票に比べ複雑な作業のため,遅れはやむをえないと説明。双方に冷静な行動を呼び掛ける.同時に「作業の透明性も大事だが,国民の意思は技術的な問題よりも優先されるべき」と述べ、暗にチャベス派による濃厚な点検作業を批判する.

2.13 チャベス大統領がテレビ演説.「署名確認の結果、大統領罷免国民投票が召集されても構わない.我々は罷免国民投票に臨み、勝利することになろう」としつつ,「提出された署名簿には、偽造されたものなど数十万人分の無効署名が含まれている.なかには死んだ人間やコロンビア人まで入っている。偽りの投票が認められれば最高裁への提訴も辞さない」と述べる.さらに「野党側の中には、デモを利用して流血事態を発生させようとしているものがまぎれている」と警告.

2.13 ヘスス・アルナルド・ペレス駐仏大使が新外相に就任.外務省の機構改革と外交的プレゼンスの増強に努めると語る.

2.13 メキシコのホルナダ紙,米国の政府系機関「民主主義をめざす全国基金」(NED)からベネズエラヘ,昨年だけで80万ドルの資金が提供されたと報道.資金の受入先はCTVなど反政府派の中核組織.

2.13 モンテレイで米州サミット,ブッシュとフォックスは「大統領信任投票の早期実施」に賛意を表明.ブラジルのルーラ大統領,「先鋭化を避け、CNEの信頼性を確保しなければ、内戦が勃発するであろう。重要なのはどちらの勢力が勝利するかということではなく、ベネズエラが国家として新たなスタートを切るために選挙の環境を整えることである。チャベス大統領を支援しよう」と呼びかける.

2.14 反大統領派は国民投票実施の決定が規定日数から大幅に遅れていることに抗議.署名審査結果の早急な発表を求めるデモを実施.首都警察調べで26万人が参加.反発するチャベス大統領支持派も大規模なデモ.

2.15 ピーター・デ・シャゾ米国務次官補,ベネズエラを訪問.選挙当局は嘆願書を無効にする技術的操作を使うべきではないと発言.また「民主主義のための基金」は政府支持組織にも渡されているとする.チャベスは直ちにこの発言を否定.

2.16 米国務省,カラカスで米関連施設に対して近日中にテロの可能性があると発表.

2.17 チャベス,米国がリコール投票要請署名に対し数十万ドルを提供していると述べる.「ワシントンはただの野党活動ではなく,政府転覆のたくらみに対して援助している」と非難.「02年クーデターの引きがねとなった虐殺事件にブッシュ政権が責任がある」と発言.情報公開法によって米国政府から得た文書を引用する.

2.19 チャベス大統領,ガイアナを公式訪問.ジャグデオ大統領と社会経済分野における二国間協力関係を中心に協議.

2.24 全国選挙評議会(CNE)カラスケーロ委員長,署名の有効性の判断基準を発表.反政府側委員二人は決定に際し棄権.

2月決定 署名者欄(氏名、身分証明書番号,生年月日)は本人が直接記入すべき.「複数の異なる署名者欄が同一人物の筆跡で記入された署名用紙は有効性に疑義があると判断し、これらの署名を異議申し立てプロセスに付す」

2.24 CDは「合法性を失った国家権力が下した命令に抗議を開始するよう呼びかける.OAS及びカーター・センターは最後の段階まで国際オブザーバーとしての活動を継続する意志を表明.

2月27日 署名暴動(フィルマソ)の始まり

2.27 カラカスで第12回G15首脳会議が開幕される.政府首脳としてキルチネル、ルーラ、ウリベ、パターソン・ジャマイカ首相、ハタミ・イラン大統領及びムガベ・ジンバブエ大統領の6カ国に留まる.チャベスは「ネオリベラリズム型経済政策は、先進国で完全に適用されたことがないにも拘わらず、先進国はこの「自殺の処方箋」を我々に勧めている。大衆は目覚め、立ち上がり、闘わなければならない」と演説.

2.27 反政府勢力,G15構成国の代表者に賛同要請デモ.(首都警察発表,一説では数千人)が参加.国家警備軍(GN)などの国軍兵士(約11,000人)が会議場への侵入を阻止.首都警察の発表では約30万人とされるが、実際は2万人程度に止まり動員力の低下を示す。

2.27夜 一部の反政府勢力が首都区の高速道路及び幹線道路を封鎖.抗議行動の参加者と国軍兵士との衝突により2人が死亡し52名が負傷.治安部隊3人も負傷.

2月28日

2.28 政府支持者が大規模集会.政府側は200万人以上、PMは約12万人と発表.(写真を見ると首都警察の発表が信用ならないものであることはたしか.政府発表も真偽のほどは分らないが…).

2.28 チャベスが打ち上げ集会で演説。「ベネズエラに存在するのは自由な国民と主権に基づく国であり、誰も介入することはできない。今後、反政府勢力の言葉を鵜呑みにしてベネズエラを侵略しようなどと考えるのなら、ベネズエラ産原油は一滴たりとも輸出されない」と述べる.また米国民にたいして、「自分たちの政府がベネズエラの内政問題に干渉しないよう要求してほしい」と呼びかける。

2.28 バルキシメト(ララ州)、バレンシア(カラボボ州)、マラカイボ(スリア州)など全国各地で道路封鎖行動.軍・警察との衝突により47名が負傷(CD発表).

2.28 メンドーサ・ミランダ州知事、CDを代表して平和的な抵抗を続けるよう呼びかけるコミュニケを発表.内容的には「平和的」よりも「抵抗を続ける」方に重点.

 

04年3月

3.01 西カラカス地区で,覆面をした青年らが幹線道路などを封鎖.国軍に石やビン,花火などを投げるなどし,国軍は催涙ガスやゴム弾で応戦.

3月2日 選管、要求署名は法定数に届かずと発表

3.02 アメリカの内政干渉を糾弾する数十万人のデモ行進。

3.02 全国選挙評議会のカラスケロ委員長,署名の暫定集計結果を発表.初期確認で確定された署名は183万人分で,投票実施に必要とされる240万人には満たない.署名のうち140万は無効と確定.確定されなかった110万人分について再度調査中で,このうち60万人以上が有効となれば,投票の可能性はまだあると述べる.

疑問票の内訳 CNEのいう「疑問票」116.9万のうち,不正と思われるのが75万,身分証明の不確実な者34.5万,署名と指紋が合致しないもの2.0万,その他の誤り5.3万となっている.これら百万以上の署名を判定するため,最終結果は25日に持ち越される.

3.02 OAS及びカーター・センター,「国民の善意は普遍的な原則として受け入れなければならない」とし、03年「五月合意」の尊重をもとめる。さらに「署名簿が同一人物の筆跡で記入されていても、その人物が法的に特定できれば、異議申し立ての対象とはならない」とし,「二月決定」の廃棄を要求.

3.03 CDのマルケス政治委員(MAS),CNEが発表した暫定結果を拒否する.いっぽう、OAS・カーター・センターの提案したCNE委員との対話については受け入れるとする。これに対してプロジェクト・ベネズエラ党(PV)は,「異議申し立てに臨むことは、国民投票要求署名の確認作業における不正なプロセスを受け入れることになる」とし、CNEとの交渉を拒否.

3.03 野党の暴力デモが続く.全国で死者八人,負傷者数十人.三百人以上が逮捕される.テレビ各局はこれを「政権の独裁化と弾圧強化」と報道.国際的な介入が必要と訴える.

3月4日 米国が介入示唆を開始

3.04 数百人が道路をバリケード封鎖し,警官隊と対峙.この衝突で女性一人が射殺される.当局は,「何者かの発砲があった」と声明.2月27日以降,抗議行動に参加して死亡した者は全国で10名(カラカスで8名)、逮捕者400名以上、負傷者1,000名以上、行方不明者5名(CD発表).

3.04 ミロス・アルカライ国連代表部大使,デモ参加者7人を射殺した政府の弾圧作戦に抗議し辞任.ワシントンのベルナルド・アルバレス大使は,米国は反政府暴力集団に対する支持を止めるべきだと声明.後任の国連大使にはPCVのフィルミン・トロ・ヒメネスが任命される。

アルカライ辞任の弁: 全国選挙評議会は事態の解決策を示す代わりに,すべての解決策に対して問題を差し挟んでいる.
民主主義と
人権が否定されるような状況の中で,人間としての尊厳を擁護するという任務を遂行すべき国連代表部大使として,代表の任を務めることはできない.

3.04 米南方軍司令部のジェームズ・ヒル司令官,ベネズエラについて,「強権体制に向け漂流し,やっかいな事態になっている」とのべる.

3.05 ランヘル副大統領,逮捕者に対する虐待を否定.暴力集団の拘留は秩序の維持のため必要だったと強調.

3.06 反政府勢力,CNE発表に抗議し政府の弾圧に抗議して最大規模の集会.参加者は約30万人とされる.

3.06 ブッシュ米大統領,「国民投票要求署名の(確認)プロセスの正当性を確保する」と発言.ベネズエラ介入の構えを見せる。

3.07 チャベス大統領が定例テレビ演説.2月末起きたアリスティド前大統領の失脚事件は米国のしわざと批判.「同じことをベネズエラでもやろうなどと,考えない方がいい」と米政府に警告.もし米国がベネズエラを侵攻すれば,「ベネズエラには“100年戦争”を始められるだけの力がある。同盟国や友好国もいる.ベネズエラの石油は二度と米国民には渡らない」と強調.

3.08 CD代表者,最高裁選挙法廷に「二月決定」は不遡及の原則に違反するとして異議申し立て.(確かにそういう側面はありますね。常識的に考えれば、署名というのは代筆で済ますものではありませんが)

3.09 エル・ナシオナル紙が世論調査を発表.現政権の政治システムを軍民独裁政権とするもの56%,ボリバル革命政権とするもの13%,カストロ共産主義政権とするもの8%,民主主義政権とするもの8%,危機の解決策はチャベス辞任とするもの57%,国民投票の実施とするもの25%,チャベスの留任とするもの14%.国民投票が実施された場合罷免に賛成するもの67%,反対するもの16%,分らない16%.(エル・ナシオナル紙報道の客観性は、すでに完全に失われていることが良く分かります)

3.09 ペレス外相,ブッシュ発言に関し論評。「ブッシュ大統領の懸念が民主主義の強化という信念にもとづくものであれば歓迎するが、米国がハイチのように行おうとするなら、当然のことながらお断りする」

選挙法廷と憲法法廷の角遂

3.15 最高裁選挙法廷,反政府側の提訴を認め,CNEが無効とした87万人分の署名について有効性を認める判断を下す.

最高裁の部会 最高裁は、憲法法廷及び選挙法廷を含む6法廷から成り(構成判事の数は、憲法法廷が5名、それ以外の法廷は3名)、これらの上位に大法廷(全20名の判事から構成される)が存在する.大法廷以外の各法廷間に権限の競合関係はない.
選挙法廷は,構成判事3名のうち2名が反政府寄り.憲法法廷は,構成判事5名のうち3名が政府寄りとされる.

3.16 最高裁憲法法廷,与党による本件管轄権の移管を求める訴えを受け、選挙法廷に対して罷免国民投票に関する審理を行わないよう命じる.

3.16 チャベス大統領,アリスティッドを拉致したとして米国軍を非難.沈黙を守ったままのOASの対応を批判.ハイチの新政権を承認しないことを改めて強調するとともに、「アリスティッドのためにベネズエラは門戸を開いている」と述べ受け入れの意向を表明.

3.17 バレロOAS大使,「OASはハイチの歴史的な状況下にあって、無能さを露呈した」と非難.

3.18 OAS人権委員会(IACHR),ベネズエラにおける人権状況を報告.「新憲法が完全には適用されていない、三権の独立性の欠如、中央政府に権力が集中している、武装市民グループに対する不処罰が存在する、ジャーナリストやマスコミが攻撃の対象となっている、行政部門の軍事化が進み、国軍の役割が強化されていること」を懸念材料として列挙.

3.23 最高裁長官イワン・リンコンと最高裁憲法法廷,選挙法廷の決定を無効とする.

3.26 CNE,野党37議員に対する罷免国民投票を求める有権者の署名の暫定集計結果を発表.2議員が罷免国民投票の確定対象となる.他に疑問票の如何により対象となるのが12議員.

3.29 最高裁選挙法廷,憲法法廷による一連の判決を拒否.本件管轄権は選挙法廷にある旨改めて確認.大法廷に対して、憲法法廷との間に存在する管轄権の問題を解決するよう求める.

3.29 コスタリカ外務省,03年3月17日以降,コスタリカに亡命者の身分で滞在しているカルロス・オルテガに対し,国外退去を勧告.オルテガがマイアミの反政府集会で、「ベネズエラ政府関係者を権力の座から一掃するために、秘密裡に活動を行う」と発言したことに対する措置.オルテガ議長は、CNNのインタビューに対して、「コスタリカ政府の要請を受け入れるつもりはない」と語る.

3.31 最高裁憲法法廷,本件管轄権を選挙法廷から憲法法廷に移管する旨決定.

3月 クーデター参加の二人の前陸軍将校が,米国に潜伏していたことが発覚.ベネズエラは、二人の引渡しを米国政府に要請.

3月 失業者対策として「見つめなおそう計画」(Vuelvan Caras)が発足。100万人の雇用創出により失業率を1/3に減らそうとするもの。

 

04年4月

4.01 米国のヒル南方軍司令官,米上院議会でベネズエラ情勢およびチャベス政権の評価に関し証言.

ヒル証言: チャベスは大統領の立場を利用して貧困層の支持を獲得し、国民一般の権利を徐々に奪っている.ベネズエラ社会はチャベスが独裁を継続する限り、分断状況が続くだろう。ポピュリズム自体は脅威ではないが、過激なポピュリズムは脅威になり得る。チャベスの場合は、南米地域の安全保障に関して最も深刻な懸念となりうる

4.01 コスタリカ外務省,「オルテガ氏が他国に安全な居場所を確保するまで、国外追放するような措置はとらない」と発表.退去勧告はうやむやのままに終わる。

4.04 ランヘル副大統領,ヒル司令官の証言に反論.

ベネズエラには専制主義的な政府は存在しない。外国の軍隊の一幹部が、選挙を通じて選出された民主的な大統領について批判することは容認できない。
我々は社会変革や新経済モデル、新たな形式の国民参加をめざしている。それをポピュリズム(大衆迎合主義)と勝手に評するのは、米国政府の中に定着したネオリベラリズムに基づいたものである。

4.11 民主的調整グループ(CD)を中心とする反政府勢力,02年4月の政変における犠牲者追悼集会.CDのナルバエス人権委員長は,「政府は発砲事件の真実を隠蔽し、国民に忘却を訴えている。検察庁や内務司法省科学・刑事犯罪捜査機関(CIPCC)は、何の責任も果たしていない」と批判.

4.11 政府支持者,「真相を究明し、不処罰に反対する」というスローガンの下に,現場となったジャグーノ橋まで行進.「クーデター犠牲者の遺族全国連盟」(ASOVIC)は,外務省を訪問し、米国政府の関係者に対する刑事調査を開始するよう申し入れる.

4月12日

4.12 最高裁選挙法廷,全国選挙評議会(CNE)の2月決定,3月2日暫定発表の効力を差し止め.CNEに対して約87万の疑義署名を有効とするよう命じる確定判決.

4.12 最高裁憲法法廷,選挙法廷に対して、国民投票に関する問題の審理を中止するよう命じ、管轄権を選挙法廷から憲法法廷に移管する旨の確定判決.

4.12 「勇敢な国民同盟」党(ABP)のサンブラーノ書記長,「CNEが選挙法廷の判決を遵守しなければ,選挙法廷はOAS外相協議を召集するよう要請すべき」と述べた。

4月13日

4.13 ランヘル副大統領,「国民投票を扱う権限は,憲法法廷に独占的に付与されている.そもそも,反政府側が本来の所轄機関であるCNEにおいて問題を解決せずに,最高裁に訴えるのは,誤った方法である」と批判.

4.13 CNEがコミュニケを発表.「①選挙法廷が下した判決は、国民投票の管轄権を憲法法廷に移管する判決の後に発表されている.②この問題は憲法上の権利に係っており,憲法法廷に従うべきと理解する.③従って今回の選挙法廷の判決は完全に無効であり、選挙権力の独立性を侵害するものとかんがえる」と述べる.

4.13 チャベス大統領復権2周年を記念する「ボリバル革命に連帯する第2回世界会議」が開催される.エボ・モラレス(ボリビア),ラファエル・アレグリア氏(ホンジュラス)、ニディア・ディアス(エルサルバドル)らが参加.

4.13 チャベス,復権2周年記念行事で演説.「ブッシュ米政権は3年前の発足時から、ベネズエラの民主的政権を打倒しようと画策してきた。我々は彼らの内政干渉を認めない.ハイチのアリスティッド前大統領は米国の罠によって政権の座を追われた.OASや国連等は何も任務を果たさなかった.我々はクーデターの産物であるハイチ新政権を今後とも認めない」

4.13 コロンビア上院議会,ベネズエラに対する米州民主主義憲章の適用をOASに要請する決議案を採択.「米州民主主義憲章の適用」とはリオ条約の発動を意味し、制裁・封鎖・武力介入までも含む。かつてアルベンス時代のグアテマラに対し、54年OASカラカス総会が憲章適用を決議した。

4月14日

4.14 米国大使館,チャベス発言の内容は事実無根であると否定.

4.14 ペレス外相,「コロンビア上院議会の決議は甚だしい内政干渉」と批判.

4月15日

4.15 コロンビア外務省,「上院決議の如何に関わらず、ベネズエラとの関係は国連憲章に明記されている原則に基づき維持される」と声明.

4.15 ランヘル副大統領,コロンビア上院決議の背景には,ボゴタに亡命中のペドロ・カルモナと米国政府が関与していると述べる.

4.15 ベネズエラ国会,コロンビア上院議会の決議を内政干渉として拒否.国防・安全保障委員会が、コロンビアにおける軍拡の実情を調査するようもとめる.また米国とスペインの両議会に対して、コロンビアへの武器販売及び贈与に関する情報を求める.

4.15 米上院外交委員会所属のビル・ネルソン上院議員(民主党),ベネズエラを訪問.ペレス外相、グティエレス国会第一副議長、アリ・ロドリゲスPDVSA総裁、反政府側の指導者、OAS及びカーター・センターの代表と会談.

4月16日

4.16 チャベス大統領,米州民主主義憲章を盾にベネズエラを攻撃する米国に対抗して、米州機構に「米州社会憲章草案」を提示。尊厳ある生活権として貧困問題の解決、文盲一掃などがうたわれる。チャベスは、「米州民主主義憲章を適用すべき最初の国は、自らの国民の権利を蹂躙している米国であろう」と述べる.

4.18 チャベス大統領,「スペイン軍のイラク撤退という決断は勇気あるものである。サパテロ新政権が国際社会との関係を改善してくれると期待している」と述べる.

4.18 ネルソン上院議員,「ベネズエラ政府関係者がFARCに避難所を提供しているという多くの証拠がある.ペレス外相との会談は緊迫したものとなった。ベネズエラ政府を米国に敵対する政府と見なす時が訪れるかもしれない」と語る.

4.19 ランヘル副大統領,ネルソン上院議員の発言を受け、「米国の指導者や上院議員の中には非常に横柄な人々がいる」と批判.いっぽう「ベネズエラ政府は米国と民主的で相互尊重の関係を望んでいる」と語る.

4.20 ガビリアOAS事務総長,「米州民主主義憲章の適用をめぐる議論は,政府レベルで要請があった場合に限られる」と述べる.

4.20 カラスケーロCNE委員長,先月発表した暫定結果に基づき署名の検証結果を報告.有効署名は191万(プラス8万筆),無効な署名は37万,異議申し立てに付される署名数は119万となる.5月下旬に疑義票への異議申し立て,6月初めに結果発表を行うとする.

4.21 異議申し立てプロセスへの参加をめぐり,CD内に議論.正義第一党(PJ)、プロジェクト・ベネズエラ党(PV)、「勇敢な国民同盟党」(ABP)及び急進大義党(LCR)は当初,選挙法廷判決の尊重を理由に,異議申立てへの参加に反対.

4.21 チャベス、遺伝子組み換え農作物に対する反対の意思を表明、作付けを中止させる。これはモンサント社による事業で、計画では20万ヘクタールもの畑に遺伝子組み換え大豆を作付けすることになっていた。さらにチャベスは、遺伝子組み換え作物の栽培そのものを禁止、モンサントに在来のキャッサバを作付けするようもとめる。また在来品種を保存するための大規模な種子バンクを創設すると述べる。

4.25 チャベス、テレビ演説でメルカル1周年に言及。「メルカル組織網は、ベネズエラ軍兵舎の胸元から生まれた。軍は通りに出て、自らを捧げ、彼らの持つ科学技術、人的資源、交通の手段と食料貯蔵の設備を使い、事業を楽にしてくれた」とかたる。また、「ベネズエラには、自然・政治・社会的な災害に備えた食料貯蔵がなかった。そのことを、飢えによって私たちを負かそうとした者達から学んだ」と感謝する。

4.27 CD,異議申し立てプロセスに参加することで合意.LCRは不参加をつらぬく.

4.29 OAS及びカーター・センターがコミュニケを発表.異議申し立て期間中,カーターとガビリアが訪問するなどオブザーバーとして協力する意向を示す.「CNE・政府・反政府組織が行ってきた努力を評価する。異議申し立てプロセスは既に提示され、国民は署名を再確認し、あるいは署名を取り消すことができる」とのべる.

4月 国会、新最高裁判所法を可決。最高裁判事を20人から30人に増やし、最高裁判事の任命が単純過半数で可能となる。

 

04年5月

5月10日 コロンビア雇い兵による要人暗殺計画

5.10 ベネズエラ治安警察(DISIP)と内務省科学・刑事犯罪捜査機関(CICPC),カラカス郊外バルータの邸宅(別報では、首都区エル・アティージョ市のダクタリ農場)で88名のコロンビア人を逮捕.残りの50名を追跡中と発表.チャベス大統領は、彼らがクーデターを起こしチャベスを暗殺する予定だったと述べる.

国営テレビによる詳報: 
最終的に126人のコロンビア人が拘束された。いずれもコロンビア準軍事組織に属しており、邸宅内で待機するよう指令を受けていたという。拘留されたコロンビア人の証言によれば、彼らは50万コロンビア・ペソで雇われた。仕事の内容は国家警察基地を襲撃し、武器を奪うことにあった。予想される武器の量は、民兵3千人を組織するほどのものだったという。
この邸宅の所有者は
ロベルト・アロンソとグスタボ・シスネロス。アロンソは亡命キューバ人で、野党「民主主義ブロック」(Bloque Democratico)の指導者の一人。女優のマリア・コンチータ・アロンソの兄弟にあたる(といっても知りませんが)。シスネロスはキューバ系ベネズエラ人でメディア界の帝王。02年クーデターのフィクサーとされる。

5.10 ガビリアOAS事務総長、「コロンビアのパラミリタリーが存在しているのであれば、それはパラミリタリーとして活動を行うためである。その他の理由によるものではない。米州諸国はパラミリタリーの侵入を断固として拒否しなければならない」と語る。

5月11日

5.11 ロドリゲスDISIP長官、「反革命プラン」と称する文書が発見されたと発表。民主的調整グループ(CD)及び民主的ブロック(BD)などの関与、コロンビア・米国の参加についても言及しているとされるが、詳細は発表されず。

5.11 ガルシア・カルネイロ国防大臣、「要人抹殺リスト」なる文書が発見されたと発表。ランヘル副大統領、カルネイロ国防大臣、リンコン内務司法大臣、カベージョ前副大統領らの名があげられていたとされる。

5.11 反政府マスコミ、今回の事態は政府側の自作自演であるとのキャンペーン。

5.12 チャベス大統領、国家安全保障会議において発言。「今回発見されたパラミリタリーは氷山の一角に過ぎず、全国に警戒防衛体制を敷かなければならない」と強調。

5月12日

5.12 軍事裁判所、チャベス殺害計画に関与していたとして、ヘスス・ラモン・カストロ国家警備軍大佐、ペドロ・ピコ・ゲレーロ空軍大佐、フランシスコ・ハビエル・ニエトGN大尉、ヘスス・ファリアス・ロドリゲスGN大佐らを逮捕。軍事謀反罪、反乱扇動罪の容疑で起訴。さらに昨年の連続爆破事件の容疑者フェリペ・ロドリゲスや、ネストル・ゴンサレス・ゴンサレス陸軍少将(退役)などとの関連を追及。

5.12 バレロOAS大使がOAS常設理事会で経過説明。コロンビア人の行動目標は、①チャベス大統領の暗殺と内戦の惹起、②戦闘機の略奪、③スリア、ヤラクイ、ミランダ、モナガス各州における準軍事活動の展開、④国民投票署名の点検プロセスの妨害などであった。このため3,000人の要員を訓練する予定であった。

5.12 シャピーロ米大使、ランヘル副大統領及びペレス外相と会談。「コロンビア人グループと米国政府を結びつけようとする試みを断固として拒否する」と表明。

5.13 バウチャー米国務省報道官、米国政府の関与を全面的に否定。米国武官のベネズエラ軍事施設からの撤退要請に遺憾の意を表する。

5.14 コロンビアのバルコ外相がカラカス訪問。ベネズエラ側は「コロンビアのカレーニョ陸軍司令官が事件に関与している」疑惑に関して憂慮を表明。

5.14 チャベス大統領、「ブッシュは6月の法王との会談時に、イラク人虐待について許しを請うべきだ」と語る。

5.18 最高裁組織法案が議会で成立。政府の最高裁に対するコントロールの強化を目的とする。

5月26日 ノリエガの恫喝

5.26 ノリエガ米国務省西半球担当次官補、「政府側が国民投票を拒絶すれば、極めて深刻な事態となる」と警告。リオ条約適用の可能性を示唆。

5.26 チャベス大統領、「ノリエガの発言は米国側に立たない者を敵とする帝国主義的な、旧態依然として馬鹿げた威圧である」と反論。外務省は、「米国の新たな干渉攻撃は、ベネズエラ政府による報復を免れ得ない」と表明。グティエレス国会第一副議長は、「ノリエガ次官補は、植民地時代が終焉したにも拘わらず総督の如く振る舞っている」と批判。

5.27 チャベス大統領はメキシコを訪問し、第3回ラテンアメリカ・EU首脳会議に出席。帰途キューバに立ち寄り、カストロと会談。

首脳会談での発言: 米国は世界に睨みを効かす保安官を気取り、その他の国を見下し、侵略し、叩きのめす権利があるように錯覚しているが、こうした態度を拒絶する。原油価格が高騰した原因は、国連及び国際法を無視し恣意的かつ一方的にイラク侵略を行ったブッシュ大統領にあり、OPECにはない。

5.27 政府、拘留されたコロンビア人のうち未成年者9人をコロンビアに送還。

5月 中央銀行,第1四半期のGDP成長率を前年同期比29.8%と発表.原油高を背景に昨年同期の27.8%減をとり返す.石油産業は前年同期比72.5%,非石油産業は18.9%の成長となる.外貨準備高は213億6,600万ドルと前年比で43.8%増加.

 

04年6月

6.03 CNE有効な署名総数が245万1,821筆となり、全有権者数の20%である243万6,083を超えたと発表。

6.03 チャベス大統領、大統領罷免投票の実施を受け入れるとテレビ演説を通じて表明.

6.03 全国選挙評議会(CNE)、署名の対象となった議員14名中9名(すべて野党所属議員)について罷免国民投票を実施することを発表。ほかの5議員は有効署名数が不足。

6.08 CNE,8月15日に大統領の罷免の可否を問う投票を行うとの最終決定を発表.罷免が確定した場合は30日以内に大統領選を実施することになる.議員の罷免投票は秋までずれ込む見通し。

6.09 MVR、全国指導部26人を選出。チャベスが議長兼書記長に就任。本格的な政党作りに乗り出す。国民投票に向け、これまでの「アヤクチョ支援組織」に代え、「マイサンタ全国選挙対策本部」(CNM)を発足させる。自治体レベルの運動組織として、選挙対策支部(UBE)が設置される。

マイサンタ運動の柱: 「罷免ノー、チャベス・シー、憲法シー」をメーン・スローガンとする。ララとチャコンが組織の中心に座る。
150万人が身分証明書を入手。約1万3,000人の医師により、延べ1,700万人が医療を受ける。僅か1年間で125万人が字をおぼえる、などチャベス政権の実績を大いに宣伝する。

6.13 「アロー・プレシデンテ」におけるチャベス発言。我々が闘うのは反政府勢力ではなくジョージ・ブッシュである。ベネズエラにおける真の反政府勢力とは、CD、AD或いはCOPEIではなく、世界で最大の権力を有している米国政府である。

6.18 チャベスとグスタボ・シスネロスがティウナ基地内で会談。カーター元大統領が同席。チャベスはシスネロスによる表敬訪問であったとする。(少なくともこの時点で、カーターもチャベスも反政府派の中心人物をシスネロスと見ていたということになります)

6.24 ノリエガ米国務次官補が上院の外交委員会で証言。「投票を混乱させるような試みがある場合には、国際社会は許さないだろう」と述べる。

6.25 CDが国民投票に向け全国統一本部を立ち上げ。代表にミランダ州知事メンドーサ、AD書記長ラモス・アルップ、MAS党首ムヒカ、COPEI幹事長ペレス・ビバス、CTV書記長コバ、FEDECAMARAS会長ムニョスなど13名。

6.29 ベネズエラ国会、ノリエガ証言は「ベネズエラの選挙権力の独立性、透明性及び信頼性」を侮辱するものであるとの非難決議を採択。

6月 全国選挙管理委員会が構成を変更。チャベス派が多数を獲得。

6月 カーターの斡旋でチャベスとメディア王シスネロスが会談。「憲法上の手続きを尊重し、ベネズエラ政府とメディアの間の将来の対話を支援する」とする停戦合意を行う。ベネビシオンは反チャベス派のナポレオン・ブラボによる政治トークショー「24」を打ち切る。

 

04年7月

7.05 独立193周年記念式でチャベスが演説。国軍強化、軍民間の団結促進、国民による国家防衛を安全保障の三つの柱として掲げる。

演説のさわり: ベネズエラは真の独立、祖国及び主権を獲得するために再び歩み出した。国民は6年の間、クーデターや陰謀計画、帝国主義的な侵害、脅迫、経済、政治、軍事及び社会分野におけるサボタージュ、報道合戦、テロリズムなどのすべてに耐えてきた。
帝国主義者による戦争と侵略を終了させ、弱者に対する権力者の蹂躙を止めさせるために、我々はこのベネズエラから、国民の主権と国家の平等、そして国民の自決という不可侵の原則を尊重するよう要求する。

7.09 CD、暫定政権の基本政策となる「国家コンセンサス計画」の概要を発表。「国民和解と国家再建」を柱とし、国民参加、国民合意、地方分権を訴える。具体的政策内容では、「ベネズエラ石油公社(PDVSA)を救済し、再建のための土台を築く」ことがうたわれる。

7.12 キトで第15回アンデス共同体(CAN)首脳会議。チャベスは米国とのFTAに強い懸念を表明。ALBA(米州ボリーバル代替統合構想)を提唱。

要旨: 米国とのFTAはアンデス諸国を帝国主義の犠牲者とし、地域統合を危険に晒す。世界一の大国と別々に統合プロセスを進めるのは適当ではない。
現在進められている統合プロセスはネオリベラル的なものであり、貧困、空腹及び不公平を解決するものではない。FTAをまったく拒否するものではないが、その速度を緩めるようCAN加盟国に求めたい。

7.25 CD、「社会正義と民主的平和のための国民合意」を発表。「暫定政権」の運営方針について明らかにする。①予備選挙で暫定大統領の統一候補を擁立する。②この候補は「国家コンセンサス計画」に基づいて行動する、③この候補は2006年の大統領選挙には立候補しない、などをさだめる。

7月 ベネズエラのエネルギー鉱業省、チリ資本の鉱山会社にスリア州ボクシでの炭鉱開発を許可。当地の先住民バーリ族は開発を拒否し闘いを開始。バーリ族は長年にわたり、ベネズエラ領内での自治を要求してきた。この間の紛争においては、一貫してチャベスを支持してきた。

7月 シルクロス・ボリバリアーノス、諸闘争を通じ25万組織、250万人の会員を擁する組織に発展。街角に「チャベス・ノセバ」(チャベスは辞めない)のスローガンが鳴り響く。

7月 各種世論調査で、リコール支持が54%に低下。3月の調査では66%がリコール支持だった。一方チャベス支持は3月の28%から41%に増加。1240万人の有権者のうち態度未定者は4.2%にまで減少。

 

04年8月

8.07 チャベス大統領、米国がベネズエラの内政問題に干渉する場合、米国に対する石油輸出を停止する可能性を示唆。

8.08 チャベス支持派の大デモがカラカス市内で展開される。チャベスはこのデモを評して、「人類を解放したキリスト、南米の解放者であるシモン・ボリーバル、ラテンアメリカの全国民から発せられる反対の声である」とのべる。

8.09 シャピーロ米大使、「米国は、ベネズエラを安定した石油供給国の一つであると確信している。ベネズエラ国民は大統領罷免国民投票の結果如何に拘らず、米国が石油を輸入することを期待しているはずであり、我々もベネズエラが石油を米国に輸出することを望んでいる」と述べる。

8.14 カーター元大統領,「投票の秘密は守られるだろう。大統領反対勢力が結果を先取りしてコメントすることは不可能だ」と言明.

8月16日 チャベスが圧倒的に信任

8.16午前3時42分 CNE委員長フランシスコ・カラスケロが,暫定的な公式発表.罷免反対が500万票(58%)と過半数を占めた。一方、罷免賛成は42%。投票者は同国史上最高の約867万人(有権者約1390万人)に達し、投票率は約62%だった。発表に先立ち、選管の幹部5人のうち2人が結果に対して不支持を表明。

8.16午前4時頃 チャベス,大統領府の「国民バルコニー」に姿を現し、支持者に応える.

チャベスの第一声: ベネズエラの新しい民主主義が世界に示された.ホワイトハウスに対する、ラテンアメリカ、カリブ人民の自由の勝利だ。世界は敬意をもって我々を見ることだろう.アメリカ主導の新自由主義に対抗し、先住民、農民、子供たちのために今後も貧困と不平等に立ち向かう。

8.16 早暁 反対派はアルタミラ広場で集会。不服従とデモを呼びかけるが参加者は200人たらず。そこにオートバイに乗ったグループがやってきて街路を封鎖。武器を取り出し発射した。女性一人が死亡し、かなりの負傷者が出た。そしてまたもや鮮やかな映像!がテレビに映し出された.

8.16 反大統領派は、「巨大な不正が行われている」と主張.「民主的調整グループ」のラモス幹部は、会見で「選挙に不正があり、結果を受け入れられない」と語る.

8.16 カーター元大統領,「不正の証拠は見つからない。不正があったとする議論は説得力がない」と言明.同時に,「投票そのものがベネズエラの問題を解決することはない」と述べ,チャベス大統領と反対勢力との和解を強く求める.

8.16 アメリカ政府,「投票の第一段階は比較的平穏に進んでいる。米州機構とカーター・センターが、迅速で一貫した集計が行われたと報告したことを評価する」とし、「国民投票に際してのベネズエラ国民の忍耐と平和的行動に賛辞」を送る。

8.16 チャベス大統領の記者会見。罷免否決の結果に異議を唱える野党勢力を無責任な行動と非難。敗北を認め、対話の呼びかけに応えるようもとめる.

会見要旨: この国の改革は新しい段階に入った。新しい民主主義経済の誕生だ。我が国は市場への安定供給を保証する。我々は1バレル=50ドルになることを望んではいない。現在日産260万バレルの産油量を、今後5年間で、500万バレルに引き上げる。

8月17日 チャベス節の炸裂

8.17 チャベス、CounterpunchのTariq Aliとインタビュー。

要旨: 私はマルクス主義革命の独断的な仮定を信じない。我々がプロレタリアの革命の期間に生きているとは思わない。我々は私有財産の廃止や階級のない社会を目指しているのだろうか? 
私はそうは思わない。我々はこの国の現実を見て、あなたが貧しい人々を助けるために、何かできないのかと考えているだけである。彼らこそ労働を通して、この国を豊かにしてくれた人々である。富の社会的再分配などありえないという考え方があるが、私は受け入れられない。我々の上流階級は税金を払うことさえ嫌う。それは、彼らが私を嫌う理由である

8.17 カーター元米大統領率いる国際監視団、チャベス勝利の結果を認める.米国務省のケーシー報道官代理は、ベネズエラの国民投票結果について「不正が行われたという兆候は見られない」との見解.

8.17 米国務省スポークスマン,「これはチャベス政権が乗り越えなければならない広範なプロセスの第一歩に過ぎず、国民投票の次に来るべきものは、ベネズエラの全ての政党が受け入れられる、政治危機の解決策を提示することだ」と述べる.

8月18日 

8.18 チャべス大統領,La Jornada紙(墨)との単独インタビュー.

発言要旨: 国民投票に勝利したのは,選挙に向け1000万人の人々の関心をあらたに呼び起したためである。その背景には、一年で150万人に読み書きを教え、20万戸の住宅を準備し、土地を持たない人々に250万ヘクタールの土地を与え、貧困層への融資を三倍にした実績がある。
私は投票による国民の審判を8回受けている。このうち、2回は大統領選挙、4回が国民投票である。私は忙しい。頭のおかしな人間に関わっていられない。これ以上、いっさい妥協の余地はない。

8.18 ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場,前日と変わらずの1バレル=46ドル挟む.罷免要求が否決され、原油供給に対する不安感が後退したのが背景。

8.19 チャベス、「バリオ・アデントロ」は制度的なもの、国の保険システムに変わりつつあるとし、国家の基本的制度として段階的に整備すると述べる。医師確保については、医学部の規模を倍増させるほか、キューバに500人の教育・研修を依頼。

8.21 全国選挙管理委員会(CNE)、反対派の再集計要求に従って一部再集計。3日間にわたる監査結果を受け,不正は認められなかったと発表する。米州機構(OAS)と米カーター・センターはCNEの発表を受けて記者会見。両者共同の再確認作業でも「不正はなかった」とし、チャべス大統領派の勝利を認め,「不正」を主張する反対勢力の主張を退ける.

8.23 チャベス、国民投票後初めて「アロー・プレシデンテ」に出演。当面の課題を①最高裁組織法に基づいて最高裁判事を早期に選出。②「放送の社会的責任に関する法案」の成立、とする。「革命の中の革命が開始された。そこでは、正直さと犠牲が要求される。国民投票の結果を受け入れない反対派とは話し合いの余地はない。私腹を肥やすことだけを求める者は出て行けばいい」と述べる。

8.23 アメリカ国務省は,米州機構などによる「監査結果を受け入れる」と声明.

8.24 ラミレス・エネルギー鉱山大臣、石油価格の安定を図るためにはイラク駐留米軍の撤退が必要であるとして、米国の外交政策を強く批判する。

ラミレス発言要旨: 現在のイラク情勢は中東地域の不安定な情勢の原因となっている。米国はイラクやベネズエラなど諸外国のエネルギー資源を厚かましくも独占しようとしている。石油価格を安定させるための最善策は、イラクから米軍を撤退させ、アラブ人自身に石油を管理させることである。イラク人自身が石油問題の解決について決定すべきである。
OPECは石油市場安定のために努力してきており、6月には日量200万バレルの増産を行い、8月には更に50万バレルの増産を決定した。この結果、OPECの石油生産能力は限界に達しつつある。

8.26 OAS常任理事会、投票結果を受け入れるよう呼びかける決議を採択。

8.26 1週間後に任期切れを控えたパナマのモスコーソ大統領が,ポサダ・カリレスら4人のテロリストに「人道的理由」から恩赦の決定.「彼らをベネズエラかキューバに引き渡した場合、彼らに死刑が宣告されるだろう」と述べる.

8.27 ベネズエラ政府,パナマ政府が4人の「テロリスト」を赦免したことに抗議し,在パナマ大使を引き上げると通告.ランヘル副大統領は「テロに対する戦いについて世界中のコンセンサスができているとき、テロで断罪されている人間を赦免するとは理解できない.米国はテロリストに対し言動が矛盾している。ポサーダとアル・カイーダと何が違うのか分からない。マイアミが彼らを受け入れるなら、アメリカはこの上ない責任を負うべきである」と糾弾.

8.27 大統領の認証式。チャベスは「国民のためにボリーバル革命を推進する」と宣言。

8.30 FEDECAMARASの臨時総会。チャベス大統領の対話の呼びかけに応じる決定。政府がFEDECAMARASとベネズエラ労働者総連盟(CTV)の正当性を認めることを条件とする。

 

04年9月

9.01 新しいカラカス駐在米大使としてブラウンフィールドが着任。

9.02 CD、対話開始の条件として(a)国民投票の不正疑惑に関する調査とCNE委員の刷新、(b)政治犯に対する特赦、民主的な組織に対する迫害の中止、(c)PDVSA従業員の労働権の回復、など9項目のアジェンダを要求。

9.02 CNE、26日に予定されていた地方選挙を10月31日に延期すると発表。

9.03 ランヘル副大統領、条件の有無に関わらず、CDとの対話を求めるつもりはないと言明。FEDECAMARASなど市民組織との対話にはふくみを残す。(議会に議席を持つ政党なのだから、議会で「対話」すればよいわけです。それこそが民主主義でしょう)

9.08 チャベス大統領、条件付の対話に応じるつもりはないと述べ、FEDECAMARASの提案を拒否。

9.14 カベサ国会財政委員長、2004年のGDP成長率が12%に達する見込みと発表.これはラテンアメリカ地域で最高の率.

9.17 アプーレ州グアスドゥアリートで、ベネズエラ国軍兵士ら6人がコロンビアの麻薬密売組織に殺害される.カラカスから600キロ南東、コロンビア国境沿いのアプーレ州では、一週間に14人の軍人・民間人が殺害される。ベネズエラ政府はコロンビアとの国境地帯の警備を強化.

9.17 ベネズエラ与党、大統領の制限なしの連続再選を可能にする憲法見直し作業に着手.

9.19 チャベス大統領、与党議員が計画した大統領の多選制度を拒否。「ルイス・ベラスケス・アルバライ議員の提案は善意から出たことではあるが、私はそれには与しない。このような提案は、政府の民主的なイメージに疑いを産む」と述べる。

9.21 CD、地方選挙への対応をめぐり紛糾。レデスマ「勇敢な国民同盟党」(ABP)党首、ベラスケス議員(急進大義党(LCR)、オヘダ「唯一つの国民」党(USP)書記長、アルフォンソ前ベネズエラ食品工業会議(CAVIDEA)会頭などは、「透明性を伴った選挙の実施が保証されなければ、有権者に棄権を積極的に呼びかける」ことで合意。CDと袂を分かつと発表。

9.22 チャベス大統領、軍服姿でアプレ州現地を視察。コロンビア当局と国内反対勢力を非難。「この武力衝突はベネズエラ国内の問題ではない。ゲリラ、麻薬取引、武装グループ、殺し屋などが国境の向こうからきている。反政府勢力が殺人という手段を使って自分の政府を攻撃している。責任はコロンビア政府がとるべきだ」と語る。さらに「米国軍が向こう側にいる限り、暴力行為は続くだろう」と米国も批判.

9.23 民主連携(CD),国民投票の総括をめぐり,もとの5つの組織に分裂.

9.26 ハバナで、キューバ-ベネズエラ共同委員会の第5回会合。健康福祉、教育、スポーツ、農業など15分野における116協力プロジェクトが承認される。キューバの石油需要の3分の1をベネズエラが最恵条件で供給。年に10万人の人的交流が行われている。ベネズエラのエネルギー鉱山相ラファエル・ラミレスは、両国の通商は05年度に10億ドル近くになるだろうと発言。カストロは「この会合は、キューバ経済が破壊しつくされることを避けるために不可欠のものだ」と感謝の挨拶。

9.27 ベネズエラはキューバのハリケーン被害に対し食料、医薬品、飲料水、電気関係プラント、建設用の機器と機材など、2000トンの救援物資を積んだ船2隻と飛行機一機を送る。

9.29 コロンビア国境沿い、アプーレ州で、男女一人ずつのベネズエラ人の死体が見つかった。これで、先週末から合わせて14人が死体で見つかったことになる。殺されたのは軍人と石油技術者など民間人.

9.30 アメリカとベネズエラ、麻薬との戦いに関して協力する協定に再調印。アメリカは警察、裁判、検事の人材養成に向け、年間440万ドルをベネズエラに供与する。

9.30 オルテガ・ディアス第6検事、SUMATEの代表者2名に対する逮捕状を請求。SUMATEは反政府系NGOで、国民投票の際に出口調査と称して、罷免成立の情報を垂れ流した。アメリカの反共財団NEDの財政支援を受けている。

 

04年10月

10.01 ベネズエラ検事総局,民間テレビ局「グローボビジョン」の幹部、アルベルト・ラベルとギジェルモ・スロアガの二人に対して,02年クーデターを扇動した容疑で調査することを決定.二人は蜂起の後カルモナと会い、「情報政策を検討」したという。当局によれば、今後クーデター事件関連で「元閣僚」など約400人の関係者が召喚される予定。

10.04 パウエル米国務長官、「大統領罷免国民投票は過去のことであり、ベネズエラとの関係が改善することを期待している。我々は異なった見方を有しているが、協力のあり方を模索している」と発言。ランヘル副大統領は前向きと評価する。

10.11 チャベス大統領、石油輸出の代金を受け取っている中銀が、正規の方法で為替差益を計算していないとし、「中銀が独立した組織であることは確かだが、国に対する債務は、最後の1セントまで払ってもらうのが筋だ」と述べる。

10.12 チャベス支持者、「コロンブスは先住民を大量に殺害した男だ」と非難し、カラカス市内のコロンブスの銅像を引き倒す。

10.16 カラカス首都区長官ペーニャ、公正な選挙が期待できないとして、立候補を辞退する。同様の理由で立候補を取り止める候補者は30名以上に達する。選挙での完敗を見越し、その影響を回避するためと見られる。

10.28 ブラジルのドルマ・ロウセフ鉱業エネルギー大臣がベネズエラを訪問.キューバとベネズエラのエネルギー大臣との会合を持ち、支援策を検討する.「キューバは深刻な問題を抱えており、我々はそれを解決するための支援をすることが出来る」と述べる.

10.31 22の県知事選挙をふくむ地方選挙.棄権率は平均50.37%、野党支持勢力の多くが棄権に回る。MVRをはじめとする与党が、20の州知事選挙で圧勝.フアン・バレートが首都区長官に当選。ミランダ県知事選でも、MVR候補が反政府派に残された最大の大物エウヘニオ・メンドサ現知事を破る。さらにこれまで過半数のポストを握っていた野党は、工業州のカラボボでも敗れ、2州の知事を得るにとどまる.

10.31 市長選でも与党が全市長ポストの約7割を獲得。カラカス(リベルタドール市)ではベルナール市長が74%を獲得し再選を果たす。

 

04年11月

11.02 グスタボ・シスネロス、貧困克服のための政府との対話を支持すると声明。

11.03 ミランダ州知事選挙.激戦の末,与党のディオスダド・カベージョがCOPEIのエンリケ・メンドサ現知事に競り勝つ.32万5196票対31万36票.カベージョは前の副大統領で,チャベスの「後継者」とされる.

11.06 チャベス、リオ・デ・ジャネイロでのリオ・グループ・サミットに出席のあと、ドミニカ共和国を訪問。レオネル・フェルナンデス大統領とエネルギー協定に調印。

11.07 チャベスがドミニカ訪問のあと突然のハバナ訪問。車椅子のカストロ議長と8時間半にわたって会談。ブッシュ再選後の情勢分析、コロンビアとの関係改善が会談の主要テーマとされる.カストロ議長は会談について、「転倒事故の後いちばん良い夜になった」と述べる。(カストロは前月、講演会場で転倒してひざを強打。手術を受けた)

11.09 チャベス大統領、コロンビアのカルタヘナを訪問しウリベ大統領と会談。「我々はFARCを支援していない。コロンビアの和平を望んでいる。北の某国の虚言を信用しないでほしい」と発言。ベネズエラ国内に非合法組織が侵入すれば、如何なるグループであっても、強硬姿勢で臨む姿勢を示す。

11.12 地方選勝利を受けて、「ボリーバル革命のための高級レベル・ワークショップ:新たな時代・新たな戦略地図」が開かれる。チャベス大統領、ランヘル副大統領、閣僚、与党側の州知事及び市長等が出席。国民(参加型)民主主義モデルの確立、大統領選挙に向けた新しい選挙戦略、新経済システムのための生産モデルの確立、新たな国軍戦略の確立などが検討される。

11月19日 アンデルソン検事暗殺事件

11.19 02年のクーデター取り調べを担当していたダニロ・アンデルソン検事(38),車に搭載した爆弾の犠牲となって死亡.アンデルソンはジャグーノ橋発砲事件、キューバ大使館襲撃事件など重要事件を担当し、容疑者400名の取り調べを率いてきた。チャベスは「石ころの下まで探せ」と命じる.(日本なら「草の根を分けても」でしょうか?)

11.19 サンホセのイベリア・サミットから急遽帰国したチャベス大統領は,「政府の改革プロセスに対抗するとのメッセージだ.それを受け取った上で、我々の変革を数倍にして返そう」と呼びかける.

11.20 内閣の一部改造。ペレス外相が辞任し、ロドリゲスPDVSA総裁が新外相に就任。PDVSA総裁はラミレス・エネルギー鉱山相が兼任することとなる。

11.22 チャベス大統領,訪問先スペインのコンプテンセ大学で講演.「アスナール退陣で、スペインはもはやベネズエラの不安要因ではなくなった」と述べ,クーデターへのアスナールの関与を示唆.またIMFを「自由の名のもとに貧困を米州に拡げるものであり、悪の国際金融組織だ」と非難。

11.22 ランヘル副大統領,元警察関係のイバン・シモノビッチ,マラカイボ空港でマイアミ行きの飛行機に乗るところを捕まえたと発表.アンデルソン暗殺の有力容疑者とされる.

11月23日

11.23 アンデルソン検事暗殺に関連したとされるアントニオ・ロペス・カスティージョ弁護士、警察との銃撃戦で死亡。警察側にも一名の死者。当局によれば、「身分証明書の提示を求めたところ発砲した。弁護士の車には銃と手榴弾が見つかった。自宅を捜査したところ、C-4型プラスチック爆弾が見つかった。さらに弁護士名義の「傭兵コース証明書」(米国)も発見された」

11.23 国家国防会議が開催される。ランヘル副大統領、リンコン最高裁長官、ロドリゲス検事総長及び国軍幹部が出席。公職者に対する防衛対策を含め、今後のテロ対策について協議。

11.23 ヘセ・チャコン内相、「仮説の時期は終わった。間もなくニュースを発表するだろう」と述べる。

11月24日 スペイン前政権のクーデターへの関与

11.24 スペインのミゲル・アンヘル・モラティーノス外相、チャベス発言に関連して、「アスナール前政権がベネズエラのクーデターを支援した」と発言。野党は「前政権と前首相の名誉を損なうもの」と外相の辞任を求めるが、政府は拒否。

スペイン社会党筋の情報: カラカス駐在大使が大統領就任直後のカルモナと会見。暫定政府を支持する用意のあることを表明した。この会見には、アメリカ大使チャールズ・シャピロが同席していた。

11.24 スペイン訪問中のチャベス,「アスナールの支援は間違いなく行われた。スペイン大使が米大使の指示を受けクーデターの扇動者に会ったはずだ」と発言.保守党党首のマリアーノ・ラホイはチャベス発言を否定,「この国を去る前に、大口の非難をやめること」と非難し、ベネズエラにETAのテロリストがいる事実を説明するようもとめる.

11.24 ランヘル副大統領、「スペインはあのクーデターに関与していた。事実上、新政権を祝福するために駆けつけた」と述べる。

11.24 ニューズデイ紙、02年クーデター事件に関するCIAの秘密文書を暴露。ベネズエラ系アメリカ人のエバ・ゴリンジャー弁護士が情報公開法によって入手したもの。事件5日前の日付の、CIAが政府高官に向けた秘密文書は,アメリカ政府がクーデターの詳細を事前に知っていたことを示している.しかし02年4月16日、アリ・フライシャーは「アメリカは事前に情報を得ていなかった」と答えている。

4月6日付けのCIAの文書: 軍の反政府勢力、高官の不満分子、非急進派の役人などが結集し、早ければ今月にも、チャベス大統領に対する反乱を組織するだろう。軍の行動を引き起こすために、共謀者は反対派のデモによって騒乱を広げていくだろう。

11.25 ベネズエラ当局,アンデルソン検事の殺害捜査に関連して、元上院議員のアイデ・カスティージョとその妻を拘束.このほかCICPC、DICIPの元捜査官などが逮捕される。

11.26 チャベス大統領、リビアを訪れた後ロシアを訪問。10万挺のAK47オートマチックと40機の軍用ヘリコプター(MI-35)の購入を決める.さらにF-16に代えてMIG-29戦闘機を購入することも示唆.

11.26 首都圏警察(PM)のヘンリー・ビーバス元長官及びラサロ・フォレーロ前長官が、エルサルバドル大使館に亡命申請。二人はジャグーノ橋発砲事件を指揮したとして殺人罪で訴えられている。

11.27 ブッシュ政権は抗議の意思を表明。米国務省報道官は「ベネスエラがこうした武器を購入する際には隣国に相談すべきである」と述べる。(コロンビアはベネズエラに相談しただろうか?)

11.27 コロンビアのホルヘ・アルベルト・ウリベ国防大臣、ベネズエラがロシアから武器を購入したことについて、「どの国でも国防のために武器を購入することは合法である」とのべる。(この言動から、チャベスが9日のボゴタ訪問時に武器購入を示唆したことがうかがわれる)

11月 政府、バリオ・アデントロ計画にキューバ人医師13千人、ベネズエラ人医師1100人が参加していると発表。250万家族、1千万人に対し2200万件の診療を行ったとされる。給料は月200ドル。

11月 エクアドルの首都キトで「西半球国防相会議」が開かれる。ラムズフェルド米国防長官は、「対テロ戦争」を口実にして、中南米諸国が安全保障機能を軍のもとに結集し、米軍とのつながりを強化するよう提案した。中米7ヶ国(グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、コスタリカ、ニカラグア、ベリーズ、パナマ)はこれに賛同。これに対しアルゼンチン、ブラジル、チリなど南米諸国とカナダは反対。

 

04年12月

12.02 ロドリゲス検事総長、憲法第336条に基づき、02年8月の最高裁憲法法廷判決(クーデターに参加した4軍指令官らの免訴)の見直しを要請。

12.03 エルサルバドル政府、元首都警察幹部の亡命申請を拒否。二人はエルサルバドル大使館を出たところをオルテガ・ディアス検事に捕らえられ、CICPCに連行される。

12.08 ベネズエラ議会,「ラジオとテレビの社会的責任に関する法律(Resorte)」を承認.監督機関が治安の悪化、犯罪、戦争等を教唆するような放送であると判断した場合には、放送停止措置や放送資格の取り消し措置が適用される。野党だけでなくOAS・米州人権委員会も反対の意向を表明。米州報道協会(SIP)はこの法律を「猿ぐつわ」だと非難.野党側は抗議のために黒いハンカチで口を覆う。

12.08 チャベス大統領は、ペルーのクスコで行われた第3回南米サミットに出席。

12.09 アラグア州マラカイで、コロンビア人警察官と見られる4名がスパイ容疑で拘束される。拘束された警察官はベネズエラに潜入した麻薬密売人ウィルメル・アントニオ(通称「Jabon」)の追跡捜査を行っていたと釈明。22日に釈放され、コロンビアに帰国。

12.09 コヘーデス州知事ヤネス(チャベス派)、総合的な農村開発の促進を目的として、16の私有地に対して収用措置を適用。土地所有者との交渉委員会を設立。8名の州知事がヤネス知事と会合し、「ラティフンディオに反対するコヘーデス宣言」を採択。モナガス州、ヤラクイ州でも私有地に対し収容手続きを開始。

12.12 チャベス大統領、キューバの軍事訓練バスティオン2004に合わせ公式訪問。米州自由貿易協定(ALCA)に対抗して経済協力の戦略的連携を進めることで合意。「米州ボリバル代替構想」(ALBA=Alternativa Bolivariana para las Américas)と名づけられる。チャベスは「ALCAは死んだ。これは国民の希望と未来にとって真の脅威だ」と述べる。

12.13 新たな最高裁判事12名、退職した判事の後任5名及び代理判事32名が選出される。

12.14 ハバナのカール・マルクス劇場でチャベス訪問10周年記念式典。チャベスがキューバを賞賛する演説。

兄たる国キューバと同じ道を進むベネズエラの革命は幸運である。我々もここ数年間で、僅かながらもキューバが獲得してきた成果を手にすることができた。
自分はこの10年間に11回キューバを訪問しているが、それ以前も、統合、平等、正義を夢見るラテンアメリカの若者として、カストロ議長の著作を刑務所で繰り返し読んだ。そのお陰で革命理念がまとまった。

12.14 コロンビア警察当局は、FARC幹部のロドリゴ・グランダ(通称「Canciller」)をノルテ・デ・サンタンデール州ククタで逮捕したと発表。

12.15 ブラジルで第27回メルコスール首脳会議。コロンビア、エクアドル、ベネズエラの3ヵ国をメルコスール準加盟国とする。チャベスは「政治分野の協力のない経済だけの統合では未来がない」とし、メルコスールとアンデス共同体を統合する「南米諸国連合」(UNASUR)を提唱。

12.15 ウリベ・コロンビア国防相がベネズエラを訪問。国境地域における麻薬取引の問題の解決に向けて両軍の連絡を強化することで合意。

12.22 チャベス大統領、中国を訪問。「これまで訪中が遅れたが、今では盟友とまで呼べるようになった」と述べる。

12.23 ロドリゴ・グランダ、コロンビア検察に証言。カラカス首都区内で何者かに捕捉された後、車でククタ市まで連れて来られたと述べる。コロンビア当局は誘拐の事実を否定。

ロドリゴ・グランダ誘拐事件: コロンビア警察当局がカラカスにエージェントを送り、誘拐作戦を展開。買収されたベネズエラ警察官が誘拐を実行。コロンビア側は、100万から150万ドルをこのために支払ったといわれる。

12.24 チャベス、北京大学で講演。「ソ連に80年間存在したのは社会主義ではなく、社会主義構想の退廃であった」と批判。そのいっぽう、「資本主義の枠内ではボリーバル構想を実現することは不可能であり、資本主義から離脱しなければならない」と述べる。

12.29 ロドリゲス外相、「我々の課題は、伝統的な取引先である米国への石油供給を減らすことではなく、国内の石油供給力を高めることである」と述べる。

12月 04年末までに、13,392のメルカルと102のストアが建設された。メルカルの食料売り上げは一日4,160トンにまで増大した。それに加えて最近建てられた31のスーパーメルカル、12,500のメルカリートス〔Mercalitos〕(小さいメルカル)、そしてメルカルと共同して運営する数百の協同組合店を傘下に入れ、PdVSAの次に大きい政府企業、ベネズエラで最大の食品供給組織網である。地域と地元の生産者からの購入比率は、全体の40%にまで達した。

04年 PDVSA内に社会開発基金(Fondespa)が創設され、売り上げの一部が、政府・議会を経ることなく社会開発にまわされる。翌年には中央銀行内に移設され、国家開発基金(Fonden)と改称。

 

2005年

05年01月

1.03 FARC、グランダ拘束事件に関しホームページを通じ声明。「グランダは、12月初めカラカスで行われた第2回ボリーバル国民会議に出席し、その後カラカス滞在中に誘拐された」と述べる。(これも嘘で、偽造パスポートを使って、それ以前からベネズエラ国内に潜入していた)

1.03 グランダの弁護士、「グランダはベネズエラ国籍を有し、数年前からベネズエラに居住していた。12月13日にカラカス首都区内でコロンビア当局の指令を受けた何者かに誘拐された後、コロンビアまで連行された」と発表。(これも嘘で、彼はベネズエラ国籍を持たす、偽名で生活していた)

1.05 ベネズエラ政府は、「農地の利用と所有に関する政令」を公布。政情不安のため遅れていた農地改革(Plan Zamora)が実施される。初の本格的な農地改革の行動として、巨大私有農場と遊休地に対する牧畜農場の査察を開始。

1.06 国会はグランダ事件に関する特別調査委員会を設置。チャコン内相は、グランダがベネズエラ領内で拘束されたことを裏付ける証言があると発言。

1月7日 農地接収の開始

1.07 ロドリゲス検事総長、グランダ事件の本格調査開始を命令。

1.07 フェルナンデス・ダロ元国会議長、2004年7月9日付官報を通じてグランダにベネズエラ国籍が付与されたと発表。(これも嘘で、グランダは数年前からカラカス市内で偽名を用い生活していたが、グランダ本人がベネズエラ国籍を取得した事実はない)

1.07 コヘデス州のエル・チャルコーテ農場が、最初の立ち入り検査の対象に選ばれる。ジョニー・ヤネス知事は、1万3000ヘクタールのうち3500ヘクタールは国有地だと主張。無秩序状態を終わらせると同時に、必要な者に余った土地を与えるものであり、私有地の権利は尊重されると説明。

チャルコーテ農場: アグロフローラ土地会社の所有する農場。この会社はイギリスのVestleyグループが所有し、コへデスのほかにもベネズエラ国内で農場を経営している。土地なし農民が占拠行動を行っていた。
農場側はヤネスが会社の所有地にいる不法侵入者を退去させると決定したことについては歓迎。遊休地や国有地の所有については否定。

1.08 地方当局、軍隊、警察がエル・チャルコーテ農場の立ち入り調査を行う。農場を占拠した土地なし農民グループは、土地から退去させられることを恐れて、農場への道路をブロック。政府の活動を拒むが、警察は侵入農民を排除し調査を実行。

1.09 政府の機構改革。「基幹産業鉱業省」および「観光省」が設置される。現行のエネルギー鉱山省は、鉱業部門を新設される基幹産業鉱業省に移し、名称を「エネルギー石油省」に変更する。

1.10 チャベス大統領、全国数千人の農民と大統領への支持を約束した18州の知事の見守る中で「政令」に署名。命令に従わない地主に対しては強制執行することがふくまれる。チャベスは、「大土地所有との戦いはボリバル革命に不可欠なもの」と演説。

チャベス演説の要旨: 60年代初めの農地改革は寡占層に手をつけなかったために失敗した。今もなお人口の5%以下の大地主が国土の80%の土地を所有している。土地法制定以来、政府は農業に対する融資を3倍にし、土地を分配してきた。しかし土地利用を調査し、大土地所有を取り除かなければ、農地改革は完璧とは言えない。我々は大土地所有に対する闘いに命をかけている。

1.11 ベネズエラ農牧畜業者連盟(Fedenaga)、チャベス大統領が地主に対して「常軌を逸した冷酷な攻撃」をしていると非難。この政令は憲法違反でその有効性を司法に問うと発表。テレビ主要五局、主要新聞のほとんどが農地改革に反対するキャンペーンを開始。

1.12 内務省当局、グランダは偽造書類により国籍を取得したため、ベネズエラ国籍は無効と発表。

1.12 ウリベ・コロンビア国防相、グランダの拘束に結びついた情報の提供者に対して報償費を支払ったことを認める。しかしグランダの身柄拘束はコロンビア領内で行われたと主張。

1.13 チャコン内相が捜査の中間発表。①タチラ州GN内の誘拐恐喝対策班(GAES)の軍人5名が、カラカスでグランダを拘束した後ククタ市まで連行し、コロンビア警察に引き渡した。②彼らはコロンビア当局から100万~150万米ドル相当の報奨金を受け取った。

1.13 ベネズエラ外務省、OAS事務総長候補として、インスルサ・チリ内相を支持すると発表。

1月14日 チャベス、グランダ事件に慎重姿勢

1.14 チャベス、国会で教書演説。「現政権の任期は残り2年となったが、神が望むのなら更に6年間継続することになろう」と述べる。

2004年度実績: 2004年第3四半期の経済成長率は前年同期比20.8%増となった。べネズエラは現行の外貨準備高(240億ドル)で対外債務の支払いが可能な数少ない国のひとつである。
石油収入を原資とする経済社会開発基金(FONDESPA)が創設され、20億米ドルの資金は国内開発プロジェクトに充当されている。「バリオ・アデントロ計画」による診察件数は7,600万件に達した。「メルカル計画」は、900万人に食料品を低価格で提供した。「ロビンソン計画」(識字率向上計画)、「リーバス計画」(中等教育促進計画)及び「スクレ計画」(高等教育促進計画)の受講生は計384万人に達した。

1.14 チャベス、国会演説の中でグランダ拘束事件に触れ、「二国間関係に深刻な影響を及ぼすことがないよう望む」としつつ、「コロンビア政府が事実を認め、謝罪するまで、貿易協定や合意の履行を一時的に中止する」と述べる。同時に、「ベネズエラがゲリラの聖地というのは誤った情報である。我々はコロンビアの国内問題に関与することは望んでいない」とする。

1.16 ベネズエラ外務省、「国際法規を侵害したコロンビア警察と、ベネズエラ軍人を買収した責任者が追及されることを望む」とのコミュニケを発表。コロンビア政府は、「コロンビア警察はベネズエラの国家主権を侵害していない」とのコミュニケを発表。

1月18日 ライスの介入示唆

1.18 ライス次期米国務長官、米国上院外交委員会で行われた次期国務長官承認公聴会において証言。対ベネズエラ武力行使を示唆。またキューバやイランのような「圧政の砦」に対しては妥協のない外交を展開すると述べる。

ベネズエラ関連発言: ベネズエラ政権とカストロ議長との密接な関係を承知している。チャベス政権は、近隣諸国にとってネガティブな勢力となっている。こうした振る舞いは西半球では容認できないことをチャベス大統領に表明するために、他の国と共に行動を起こす可能性がある。米州民主主義憲章の署名国は同憲章の内容を実践することについて保証しなければならない

1.18 リンカーン・チャフィー上院議員(共和党)、ライスが「国民の多数の信託を受けた元首を攻撃するいっぽうで、多くの非民主的な国家を支持している」と発言。諸国家の評価に関する二重基準が国際的信頼を損ねていると批判。

1.18 ウリベ大統領はベネズエラの非難に対し、「左派のリーダーとテロリストは区別すべきだ」と語る。

1月19日

1.19 ランヘル副大統領、「ライス発言は帝国主義国が使う伝統的なものだ。米国が民主主義という言葉を使うのは民主主義を攻撃しようとするときだ」と批判。ロドリゲス外相は、「米国のエネルギー需要を満たすために石油を増産する計画がある」と述べ、「最低限、両国が尊重し合い干渉しない関係を要求する」と発言。

1.19 ベネパル製紙会社、労働者の要求に応じ国有化される。同社は03年のロックアウトに参加した後、破産し、そのまま操業を停止していた。労働者は工場を占拠し操業を再開しようとしたが、経営者は施設を売却すると脅迫していた。チャベスは新会社に融資を与え、製品を教育省が購入するよう指示。

1月20日 コロンビア、ベネズエラがゲリラをかくまっていると非難

1.20 コロンビア政府、ベネズエラは国内にゲリラをかくまっていると非難。カラカス駐在コロンビア大使のバルガス・ラミレス、ベネズエラに潜伏していると見られる10人のコロンビア・ゲリラのリストをロドリゲス外相に提出。

1.20 ヘセ・チャコン内相、国会特別委員会において証言。ゲリラがベネズエラ国内に入れば「神が命ずるままに」捕らえるとし、コロンビア側からの要請を受け次第、ラミレス大使の提出したリストに基づくコロンビア・ゲリラの調査を開始すると述べる。

1月21日 議会など、「主権侵害」と反発

1.21 ベネズエラ外務省、コロンビアから関連文書を受理し、内務・司法省に提出したと発表。

1.21 ベネズエラのアリ・ロドリゲス外相、コロンビアとの関係を断絶すると言明。最高裁長官のイバン・リンコンは、コロンビアによるグランダの逮捕は「明らかな主権侵害」であるとの見解を示す。

1.21 ベネズエラ議会、「国家主権の擁護及び国際法の遵守に係る合意」決議を採択。コロンビアの行動は主権侵害だとし、国際ルールを尊重するよう要求した。

1.21夜 キューバのペレス外相、カストロの密命を帯びベネズエラを訪問。グランダ事件につき緊急協議。カストロはハバナで「両国が関係を修復するための仲介となる用意がある」と表明。

1月22日 カストロ・ルーラの説得

1.22 ベネズエラは重大な主権侵害として外交・経済関係を中断。ボゴタ駐在の大使を召還し、昨年20億ドルに達した両国間の通商取引を停止する。

1.22 駐コロンビア米国大使ウィリアム・ウッドは、ウリベ政権を「100%」支持すると述べる。

1.22 ルーラ・ブラジル大統領の特使として、ガルシア大統領外交顧問がベネズエラを緊急訪問。グランダ事件について協議。

1月23日 米国が対立を挑発する

1.23 ヒメネス独裁政権打倒57周年記念集会。チャベスがライス発言について批判。

ライス次期国務長官はベネズエラやラ米の事情に対して相変わらず無知のようである。チャベス政権はネガティブな勢力であるそうだが、我々の勢力は帝国主義国家に対して「NO」と言う勢力であり、FTAAを否定し、米州ボリバル代替統合構想(ALBA)を推進する勢力である。その意味で我々はネガティブであることに誇りを持っている。
しかしながら、世界の中で真の意味で最もネガティブな勢力は米国である。02年、米国が背後で画策したクーデターによって、ベネズエラは打撃を受けた。昨年8月に実施された大統領罷免国民投票など、米国による攻撃は確実に今後も続くと思われるが、我々の平和に基づく民主的な革命を潰すことはできないだろう。

1.23 おなじ演説で、チャベスは「コロンビアの態度は国際法を侵害しており、両国の友好関係を蹂躙するもの」と非難。テロリストかどうかの問題と、主権侵害の是非は別問題だと主張。

1.23 米国務省、南米諸国に文書を送る。「コロンビア政府が建設的な姿勢を維持しているのに対して、ベネズエラ政府の発言は、責任をコロンビア政府に負わせるものである」とし、ベネズエラがゲリラとの関係を絶つよう呼びかけることをもとめる。

1.26 コロンビアのアラウカ州と境を接しているアルト・アプーレで、「ベネズエラの主権をコロンビア武装勢力から守る」ため、ボリバル自由軍(FBL)が創設される。チャべス大統領はゲリラの支援は全く必要ないと述べて、この組織との距離を明らかにし、さらに武装を解除して政府の社会プログラムに参加するよう呼びかける。

1.26 アンデス共同体(CAN)のバグネル事務局長がベネズエラを訪問し、ロドリゲス外相と会談。外相協議の根回し。

1.27 ロドリゲス・ベネズエラ外相及びバルコ・コロンビア外相の会談がペルーで実施。ベネズエラは解決の条件として謝罪をもとめるが、コロンビアはこれを拒否。

1.28 コロンビア政府、問題解決のためウリベ大統領がベネズエラを訪問すると発表。ベネズエラはこれを肯定的に評価するコミュニケを発表。

1.29 中国の曽慶紅副主席がカラカス訪問。ベネズエラと中国、石油輸出の互恵的拡大で合意。

1.30 ポルト・アレグレのWSFに出席したチャベス、1万2,000人以上の聴衆を前に演説。「私は日に日に確信を深めている。資本主義モデルを真に乗り越えるのは社会主義モデルを通じてのみである」とし、新しいタイプの社会主義、「機械とか国家とかではなく人間を最優先する人道的な社会主義」の建設を訴える。

1.30 チャベス、論文の中で「“第二第三のベトナムを”というスローガンは誤っており、ボリビアでの武装闘争は現実的条件がなかった」とゲバラを批判。

1.31 チャベス、ポルトアレグレからブエノスアイレスに回る。PDVSAが米CITGO社所有の8つの精油所を売却(国営企業体からの排除)する可能性を示唆。米国のオイル・マーケットへの依存度を減らす戦略の一環とされる。OPECベネズエラ代表イバン・オレジャーナは「国益にかなわない契約はすべて再交渉の対象となる」と言明。(これらの精油所でベネズエラ人は一人も働いていません。彼らは1セントの利益も与えてくれません。彼らはベネズエラに税金を払いません。これは経済帝国主義です。)

1.31 本国に召還されていたボゴタ駐在ベネズエラ大使サンティアゴ・ラミレス、コロンビアに帰任。

1.31 (あの)ウニベルサル紙のミシオンに対する世論調査。メルカル計画には64.7%、ロビンソン計画には57%、バリオ・アデントロに対しても54%が支持。

1月 PDVSAの首脳人事。PDVSA総裁は管轄官庁であるエネルギー石油省の大臣が兼任することとなる。

1月 Sierra de Perijaの鉱山からPaso del Diablo川に汚水が流れ込む。大量の魚が死ぬなど深刻な環境汚染。Sierra de Perijaでは石炭開発が進み、04年にはブラジルのCompanhia Vale do Rio Doceが参加。「Carbosuramerica」が創設される。さらに西部海岸に新港を建設し、ベネズエラとコロンビアの石炭輸出を集中させる計画も進行。

 

05年02月

2.01 米国のマクレラン大統領報道官は、チャベスの精油所売却発言に対し「重大な懸念」を表明。現在、ベネズエラ石油生産の約半分が米国向けとなっている。一方米国の石油輸入先の15%がベネズエラからとなっている。

2.02 チャベス、政権発足6周年に際し、総括演説。1999年 制憲議会および憲法の誕生の年、2000年 第五共和国の確立の年、2001年  大統領授権法に基づく法律制定の年、2002年 反革命勢力が台頭した混乱の年、2003年 革命に対する攻撃の年、2004年 革命に向けた国民の大勝利の年、と定義する。さらに2005年及び2006年は経済及び社会分野で大躍進する年と位置づける。

2.03 チャベス大統領、アルゼンチンを訪問。キルチネル大統領と「地域の経済発展を推進し貧困を撲滅するため、南アメリカの一体化のプロセスを推進する」共同声明。アルゼンチンが新設したエネルギー会社「Enarsa」と、ベネズエラの石油会社PDVSAの協力協定に調印。チャベスはCNNやUNVISIONに対抗するテレビネットワーク「テレスール」の創設を提案。

2.02 チャベス、訪問先のアルゼンチンで、「共通の敵である米国に対して、ラテンアメリカ・カリブ反帝国主義戦線を結成しよう」と呼びかける。

2.05 フェリペ・ロドリゲス国家警備軍(GN)中将(退役)がカラカス首都区で逮捕される。国軍兵士殺害事件(2003年2月)、当地コロンビア総領事館及びスペイン対外協力庁事務所に対する爆弾爆破事件(同年2月)、テレポート・ビル爆破事件(同年4月)等に関与したとされ、03年11月に逮捕令状が出ていている。

2.06 チャベス大統領、カストロとの50時間の会談。カストロはおそらく、対米関係の激化を前提としてコロンビアとの関係修復を促したものと見られる。

2.07 西半球担当国務次官補ロジャー・ノリエガ、CNNテレビに出演。「米国とベネズエラの人々は、ロシアとの武器購入契約が地域を不安定にする可能性を憂慮(concern)する。その武器が最終的にコロンビアのマルクス主義ゲリラに渡る心配もある」と発言。ベネズエラの駐米大使ベルナルド・アルバレスは、「率直に言って不作法に聞こえる」と反発。ロシア政府は、アメリカの懸念は「根拠なく偏向的」と批判。

2.08 国務省アダ・エレリ報道官、ベネズエラのロシア武器購入はこの地域を「不安定にする影響」があり、さらに「武器はベネズエラ国内で活動しているFARCの手に入る可能性がある」と語る。

2.08 ロシアのラヴロフ外相は、「ロシアとベネズエラ間の軍事協力は国際協定の枠組みを超えたものではない。ベネズエラ政府の目的は国軍装備の近代化であり、米国の恐れには根拠がなく偏向的ものである」と語る。

2月11日 チャベス暗殺計画の存在

2.11 カストロ議長、キューバ当局の得た情報を元に、「チャベス大統領の暗殺計画が存在する」と示唆。「事件が起きれば米国にすべての責任がある」と述べる。

2.11 チャベス大統領、米政府高官が武器購入問題で干渉発言したことに答え、「内政干渉を止め,他国の主権を尊重することを学ぶよう」求める。

2.11 カラカスのウィリアム・ブラウンフィールド米国大使、ベネズエラのソ連製武器購入について、「透明性を欠いていない限りアメリカ政府は問題にしない」と言明。購入契約の内容が不透明であるとの疑念を表明。

2.11 「タル・クアル」(Tal Cual)紙のテオドロ・ペトコフ、「アメリカはベネズエラを含めどの国に対しても、誰から買ってはいけないとか、誰に売ってはいけないとか言うべきではない。アメリカがこの地球上で最大の武器供給国なのだから」と語る。(ペトコフも、まだ腐りきってはいないようです)

2.13 ランヘル副大統領、「武器購入は米国との関係ではなく、ベネズエラ人民と国家機構への憂慮(concern)の表現である。米国製の武器を購入すれば、米国はこれ程までに懸念しなかったろう」と述べる。

2.14 ルーラ大統領大統領とチャベス大統領がカラカスで会見。戦略的な協力関係を確認する協定を締結。PDVSAとペトロブラの開発協力協定に調印。ベネズエラ空軍のブラジル戦闘機の買い付けについても話し合い(Embraer戦闘機は技術的に高度ではなく、基本的には練習機とされる)

2.14 チャベス、「武器をもって米国を侵略するようなことはない。懸念しないでほしい」と述べる。

2.15 ウリーベ大統領がカラカス訪問。チャベスと6時間近く会談。両国関係を修復し前進させることで合意。ロドリゴ・グランダ問題に決着。ウリベは、「テロリズムとの闘いのためには思慮深さを伴う密なコミュニケーションが要求される」と述べる。

2.17 ベネズエラ中銀、2004年のGDP成長率は17.3%に達したと発表。

2.20 チャベス大統領、定例ラジオ番組で、「米国が私を抹殺しようと計画している」と発言。「いかなる試みも、米国への石油輸出の削減をもたらすだろう」と警告。ロドリゲス外相は、「武器購入は旧式の装備を近代化するためのものであり、軍拡は噂に過ぎない」と否定。

自分が暗殺されるようなことがあれば、責任はブッシュにある。国内で反政府暴動が勃発すれば、革命を潰す理由ができ、米国の軍事侵攻が可能となるだろう。しかし、その影響は南米全域に拡大するだろう。ブッシュは暗殺計画を承認する前に、これら予想される結果を吟味するべきである。

2.21 国務省のバウチャー報道官は、「これまで聞いたこともないほどの突飛な非難と馬鹿げた発言」と反論。

2月23日

2.23 ロドリゲス外相、「大統領暗殺の可能性について警告した国内諜報機関の情報を蔑ろにはできない」と述べる。(ノリエガ・エレリ発言が攻撃の前触れだった可能性? ニカラグアにおける“ミグ搬入”疑惑を参照されたし)

2.23 ベネズエラ全土で水害。44,825世帯、220,340名が被災。死者62名、行方不明者60名を出す。

2.23 ベネズエラ西部のスリア州で、先住民バーリ族の500人が、炭鉱の撤退をもとめ操業を防害。この炭鉱はチリ資本の多国籍企業。

2.24 モラ第64検事、カラカソ事件に際しプラン・アビラ(国軍の出動命令)を発動したペレス元大統領に、逮捕令状を請求。要請を受けたゴメス判事は逮捕状を発行。

2.25 ベネズエラ内務省、メリダ州を中心とする豪雨で62人が死亡し、62人の行方不明者が出ていると発表。

2.26 カラカスで「社会債務問題に関する第4回米州首脳会議」が開催される。「米州社会憲章」を確立することをめざす。

米州社会憲章: チャベスがケベックのサミットで提案したもの。ネオリベラリズムの下でのグローバリゼーションに対抗し、社会開発問題を優先課題とし、米大陸の諸国民が人間らしく生きるための制度的保障を骨子とする。

2.26 チャベスが「米州債務サミット」で三時間にわたり演説。①社会的債務の根本的な解決は、資本主義モデルの枠内では困難だ。②これまで社会主義を掲げた各国の実践があるが、社会主義の体制はいまだかつて実現したことがない。③21世紀にこそ社会主義を構築していかなければならない。
そして個人的意見と断りながら、WSFでの演説同様に「人道的社会主義」を強調。教育、住宅、医療面など貧困層支援を重視するベネズエラの改革の成果を紹介。政権を支える諸組織で社会主義が大いに議論されていると述べる。

2.28 国家反逆罪などで起訴されていたカルロス・オルテガ、変装し偽名でカラカス市内に潜入中に逮捕される。(捕えられたときの姿がサダム・フセインにそっくりだったことが話題になる)

2月 MVR、党員数が120万に達し、ラテンアメリカで最大の党になったと発表。

2月 ニコラス・マドゥーロ国会議長、チャベス発言を受け、社会主義についての国会議論を開始すると述べる。

 

05年03月

3月1日

3.01 チャコン内務司法大臣、オルテガは亡命先のコスタリカから昨年8月に密かに帰国していたと発表。これによれば、オルテガはコスタリカを脱出し、バハマを経由して、海路でファルコン州から侵入したとされる。

3.01 ベネズエラ海軍のアルマンド・ラグナ司令官、米軍の小規模な艦隊がキュラソー沖で発見され、現在監視中たと報告。この海域での米艦船の航行について、従来慣行となっていたベネズエラ海軍への事前連絡はなかった。ただし米艦隊はルーチンの手順を実施しているだけで警戒の必要はないと付け加える。

3.01 MVR幹事長のウィリアム・ララは、米軍艦船の突然の出現は、ベネズエラ国民に「脅威を引き起こす作戦」の一環であると述べる。

3月2日

3.02 チャベス大統領、バスケス大統領就任式に出席のためモンテビデオ訪問。ウルグアイとのあいだに二国間エネルギー協力包括協定をむすぶ。ベネズエラはウルグアイに日量4万3,800バレルの原油・液化ガスの輸出を保証する。

モンテビデオにおけるチャベスの発言: 米州自由貿易協定(FTAA)は米国による植民地主義であり、帝国主義に他ならない。それはすでに”死んでいる”。そして南米には新しい統合計画が成長している。
我々はアルゼンチン及びウルグアイと石油同盟を創設した。ベネズエラは世界一の石油埋蔵量を有しており、100年間も北に輸出し、南には輸出してこなかったが、今後はそれが変化していくだろう。

3.02 ロジャー・ノリエガ国務次官補が上院外交委員会で証言。ベネズエラに対する直接攻撃を当面断念する内容。

ノリエガ発言の要旨: アメリカの努力にもかかわらずチャベスは敵対的な姿勢を続けている。①中央集権化に向けたチャベスの尽力、②米州を不安定にしようとする勢力との怪しげな関係、③外国製の武器購入計画、などが懸念要素となっている。
最近の武器の購入は、それらが最終的に武装グループの手に渡る危険性、周辺諸国に軍拡がもたらされる危険性をはらんでいる。
当面の対応としては、①「非チャベスの政治的勢力が存続できるように、ベネズエラの民主的要素を支援」する。②ベネズエラ周辺国家で、「チャベス大統領の不安定化工作に対抗する良心的勢力」の強化を目指す。③これらにより米州の安定と安全と繁栄を確保する。

3.03 カラカス首都区第49刑事事件裁判所、オルテガCTV議長に対し、犯罪行為の煽動・市民暴動・虚偽の証言の3つの罪状について検察の起訴を受理。「祖国に対する反逆」罪での起訴は認めず。

3.04 チャベス、「我々は21世紀において新たな社会主義を発明しなければならない。資本主義は持続可能な発展モデルではない」と発言。メルコスールの統合モデルを「資本の強制と商業主義の論理に服従すること」であると批判。

3.04 ブラウンフィールド大使、「米国にはチャベス大統領暗殺計画は存在しない。ベネズエラとの石油貿易を妨害する意図は米国側にはない」と述べる。ゼーリック米国務副長官は、「ベネズエラが石油の対米禁輸を実行すれば、その不足分はアフリカやアジアから十分輸入できる」と発言。

3.04 通貨ボリーバルを12%の切り下げ。1ドル2.15ボリーバルとし輸入抑制を図る。

3.05 チャベス、インドのシン首相と共同声明を発表。国連憲章と国際法が世界平和の中心的原則であるとし、「非同盟運動が多極的世界で主要な極となるため再活性化する必要がある」と強調。チャベスはインドの安保理常任理事国入りを「弱い国々、第三世界の利益になるだろう」と支持する。

3.05 インド訪問中のチャベス大統領、「私は共産主義者の良き友人であり、フィデルの兄弟であるが、共産主義者ではなく愛国主義者である。過去の社会主義を修正し、21世紀に合った形で活性化させねばならない」と述べる。またOPEC原油価格は1バーレル40~50ドルで安定するだろうと述べる。

3.05 ランヘル副大統領、「米国によるチャベス大統領暗殺計画の証拠については明らかにできない」としつつ、シャピーロ前米国大使が在任中に、「米国政府はチャベス大統領の命が狙われている可能性があるとの情報を得ている」と述べたことを紹介。

3.07 ブラウンフィールド米国大使、ランヘル副大統領の発言が事実であることを認める。

3.07 ラミレス石油相、「現在米国に輸出している石油を別の市場に輸出することは、それ程困難なことではない。ベネズエラ政府とPDVSAは然るべき決断を下す用意がある」と発言。

3.09 チャベス、訪問先のフランスで、「米国政府による暗殺計画は事実である。彼等にとって唯一の解決策は、ウーゴ・チャベスを殺害することである。もしアメリカがラテンアメリカあるいはベネズエラを攻撃すれば,アメリカへの石油輸出を停止する」と述べる。

3.09 ライス国務長官、チャベスの発言は馬鹿げた告発であると反論。

3.10 ガルシア・カルネイロ国防相とチェメゾフROSOBORON輸出公社社長、ロシア製の多目的ヘリの10機購入契約に調印。1機1億2,000万ドルといわれる。内訳は、MI‐26T:1機、MI‐17V5:6機、MI‐35M:3機。今後さらにヘリ23機の契約も予定される。

3.11 最高裁憲法法廷、クーデター関与軍人4名に対する最高裁大法廷の判決(02年8月)を無効とする決定。この決定を受け、ロドリゲス検事総長は調査の再開を命じる。

3.12 イランのモハンマド・ハタミ大統領がベネズエラを訪問。OPEC会議を控えて原油価格の高値安定化の戦略共闘を協議。OPECにおける協力の強化で合意。これまで協定破りの常習犯だったベネズエラが生産割当てを厳格に守ることで、石油価格の高止まりが続く。

核問題での合意: チャベスは「イランは他の国と同じく、独自の原子力エネルギーを開発する権利を持つ」とし、テヘランの原子力技術開発政策への支持を表明。両大統領はアメリカの攻撃を強く批判し、いかなる圧力にも一致して対処するとした。

3.13 ベネズエラのポルラマールで第1回ベネズエラ・ブラジル二国間経済ラウンドが開かれる。

3.14 ベネズエラ土地院(Inti)、4つの農場のほぼ11万ヘクタールの遊休地を「公有地」とし、そこに住み着いている農民に所有権を認める。

遊休地と公有地: この土地はこれまでイギリス企業Agropecuaria Agrofloraに属するとされてきた。今回の決定は、持ち主がその所有権を2001年土地法の要求に対応して証明できなかったために生じた。2004年上半期までに60万ヘクタールの私有地が同様の方法により公有化されてきた。Intiの総裁は、線引きされていない土地がまだ800万ヘクタールあるとしている。
今回の決定により、同じくベネズエラ中央草原にあるピニェロ、ボルヘ、サンス、エル・チャルコーテの農場への影響が予想される。このうち最大のものはピニェロで8万ヘクタール、牧畜と同時に動植物がよく保存されているためエコツアーの対象になっている。

3.17 チャベス大統領、米国との友好関係を維持したいと強調。その上で、米国による軍事侵攻または要人暗殺事件がおこれば米国向け原油供給を即時ストップすると述べる。

3.18 アリ・ロドリゲス外相とアメリカのウィリアム・ブラウンフィールド大使が会見。大使は半年前に赴任して以来最初の政府高官との会談となる。

3.20 チャベス、「アロー・プレシデンテ」で予備役・国家動員司令部を創設すると発表。キンテロ・ビロリア前国軍統合本部(CUFAN)議長を初代司令官に任命。

我々は非対称戦争に備える必要がある。米国による侵攻や攻撃があった場合には、神聖な国民主権を擁護し石油を守るためにベネズエラ全土でゲリラ戦を挑む。国家防衛の強化のため、大統領の直轄下に予備役・国家動員司令部を創設する。司令部は直接政府に所属し、4軍全ての予備兵の調整を行う。

3.22 アリ・ロドリゲス外相、チャベス政府の成果として貧困の救済対策を強調。ベネズエラは米国を含めいかなる国に対しても脅威でないとのべる。

3.23 ラムズフェルド米国防長官、「ベネズエラが外国製武器を購入すれば、西半球地域にとって好ましいことにはならない。この点について真剣に懸念している」と述べる。ロジャー・パルド・マウレル西半球問題担当次官補は、「現在、チャベスは、ラテンアメリカでハイエナ戦略を使って、もっとも弱い社会的問題を抱えた国を選んで、地域を不安定化させている」と非難。

3.23 国家土地院(INTI)、土地法に基づいて英国系会社の所有するコヘデス州エル・チャルコテ牧場を接収、地元農民への分配を開始する。この牧場は約130平方キロ。英国のVesteyグループが1920年より所有していたが、土地登記上の法的不備があったとされる。

3.26 ライス米国務長官がワシントン・ポスト紙とのインタビュー。「誰もベネズエラとチャベスの敵になることは望んでいない」と語る。ロドリゲス外務次官は「米国がチャベス政権に対し敬意をもって接する限り、ベネズエラも米国に対し同様の敬意を払うであろう。今般のライス長官の立場を歓迎する」と表明。前代未聞の外交戦はベネズエラ側の勝利に終わる。

3.29 ベネズエラ南東部のシウダ・グアヤナで、ベネズエラ、ブラジル、コロンビア、スペインの4か国首脳会議。治安、通信、エネルギー、域内貿易の強化、コロンビア和平への協力支援などを確認。席上チャベスは、言論の自由などが侵害されているとする米国の発表を非難。

3.30 スペインはベネズエラに10機の戦闘機、10隻の戦艦を売ることが決まる。ウリベはこれをコロンビアの安定化に貢献するものと歓迎。

 

05年04月

4.01 オタイサ国家土地開発庁(INTI)長官(退役陸軍大尉)、「我々が米国と有している絆は、政治的にも歴史的にも非常に結束したものであるが、(戦争に臨むためには)我々は米国人を敵として見なすよう備えなければならない」と述べる。

4.04 Sierra de Perijaの先住民(Bari, Yukpa、Wayuu)代表数百人が、石炭採掘に反対するデモ。「我々の弓と矢はここにある。鉱夫がやってくるならいつでも使える。我々の土地のために死ななければならないならば、我々は死ぬ」と宣言。参加者のほとんどはチャベス支持者で、赤いベレー帽やバンダナをつけていた。「同志チャベス」との話し合いをもとめ大統領宮殿に向かうが機動隊に阻止される。

4.04 デモにはいまや環境運動家となったダグラス・ブラボも参加。「Sierra de Perijaのたたかいは、自主独立の大衆運動がグローバリズムという新たな環境の中で復活した何よりの証である」とコメント。

4.05 ブラウンフィールド米大使、オタイサ発言に遺憾の意を表明。「我々は、両国政府の相違を解決するために協力する用意があり、尊重し合うポジティブな関係に向けて努力していく」と述べる。

4.05 外務省がコミュニケを発表。「オタイサ発言は個人的なものであり、ベネズエラ政府はあくまでも両国間の関係改善を目指している」

4.07 野党・透明党のホルダン議員、「政府は予備役司令部を政治的に利用しており、その目標は現行の国軍を破壊することである」と批判。ADのラモス・アルップ書記長は「チャベス大統領は、全国民を巻き込んでベネズエラの軍事化を進めようとしている」と批判。COPEIのリベロは、「国家防衛ではなく、革命擁護を目的とする武装組織は、民主主義社会での存在を正当化できない」と批判。

4.08 チャベス大統領は、「第4世代戦争・非対称紛争に関する第1回フォーラム」において、オタイサ長官の発言を、「米国に対する憎悪を煽動するもの」として否定。 

4.10 チャベス、定例テレビ番組で、「非対称戦争はチャベスの異常な頭に存在するだけだと批判する者もいるが、自分には帝国主義者が我々を攻撃することに対する責任はない」と述べる。(これではオタイサのどこを批判したのやら…)

4.10 訪日中のウリベ大統領、「ベネズエラは(テロ・麻薬密輸対策に対する立場を)再考するのか、或いは孤立化するのかの何れかにつき決定しなければならない」と発言。

4.12 ベネズエラ最高裁、FARCのフアン・ホセ・マルティネス・ベガの身柄をコロンビア司法当局に引き渡す採決。ベガは麻薬・武器不正取引容疑により拘束されていた。

4.13 チャベス大統領、「ウリベが語ったとされる内容は間違っている。ベネズエラは国際社会から孤立していないし、これからも孤立することはない」と述べる。コロンビア政府は「ウリベは滞日中ベネズエラについては一度も言及していない」と釈明。

4.13 クーデター打倒3周年記念日。予備役司令部の発足式が行われ、2万人の予備兵が出席。

4.15 「チャベス罷免要求署名簿」がインターネット上で公開され、政府行政機関が人事の判断基準として使用していたことが判明。チャベスは名簿をただちに抹消するよう指示。(MVRのルイス・タスコン議員のホームページに、身分証明書の番号を入力すると、該当者が罷免投票をもとめる署名簿に署名したか否かを確認できるようになっていた)

4.19 チャベス大統領は、発行から400年を記念して、セルバンテスの「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」を100万部無償で配布すると発表。

4.22 ベネズエラ政府、米国との軍部交流計画を無期限に中止すると発表。米軍関係者5名が、15日以内にベネズエラの軍施設を離れるよう通告される。米国政府は「両国の軍部間の友好的な関係が継続されることを望む」と表明。

4.25 チャベス大統領、米軍事顧問団の受け入れ中止を発表。「米軍関係者の一部が反チャベス・キャンペーンを行っていることを突き止めた」ためとされる。

4.25 チャベス、メルカル計画2周年に当たり、「私たちが食糧を生産し、蓄積し、貯蔵し、輸送し、商品化し、店に出す能力は主権であり、食の安全確保であり、人々にとってきわめて重要である。メルカルはベネズエラ民衆の食の主権を回復する為の発射台である」と述べる。

4.25 コロンビアのウリベ国防相、上院に国防報告を提出。ベネズエラの武器購入を名指しで批判。「最近のベネズエラによる外国製武器の調達は、アンデス諸国内の軍事的な不均衡を助長するものである。何故戦略的に重要な数種類の武器を購入するのかという明確な理由付けがない」と批判。

4.26 ライス国務長官のラテンアメリカ4カ国(チリ、ブラジル、コロンビア、エルサルバドル)訪問。ブラジル、チリではベネズエラに対する批判を引き出せず。「ベネズエラとの良い関係を望んでいるが、懸念も抱いている」と大幅なトーンダウン。

4.27 チャベス大統領、コロンビアのウリベ国防相の批判に反論。「コロンビア・プランのために軍備が増強され、米軍部隊までが存在するが、我々は一度もコロンビアに異議を申し立てたことはない。ウリベ政権の全高官に対して、平静さを取り戻すよう呼びかけたい」と述べる。

4.27 ランヘル副大統領、「ウリベ国防相の見解は卑劣であり、容認し難い内政干渉である。また、米国が行っている反ベネズエラ・キャンペーンに追従したものである」と批判。

4.27 ベネズエラが「通常兵器の調達の透明性の確保に関する米州協定」を批准。

4.28 チャベス大統領、最低賃金の引き上げを発表。5月1日より一ヶ月160ドルから202ドルに、26%引き上げる。

4.29 ルーラ、ライス米国務長官との会談を受け、「二国間の問題は今後良い方向で進むことを確信した」と述べる。

4.29 チャベス大統領は、ライス米国務長官の南米訪問に関連して、「ベネズエラを隔離する米国の帝国主義政策は完全に失敗した」と述べる。

月 徴税監督局(SENIAT)掘削、生産、精製を行う外資系石油会社に対し、法人税率を従来の34%から50%に引き上げる旨通告。シェルに対し1億3千万ドル、ハーベスト社に9千万の追徴を命じる。

4月 ベネズエラ政府、外資系石油会社に対し、PDVSAが60%以上の株式を保有する合弁会社へ6カ月以内に移行するよう通告。01年の新炭化水素法に基づく措置とされる。仏トタルなど2社は移行に難色を示す。米エクソンモービルは、権益をスペインのレプソルに売却し撤退。

4月 キューバとベネズエラが包括的な協定を締結。

4月 ホルヘ・ジョルダーニ〔Jorge Giordani〕企画開発大臣、第二次メルカル計画を発表。メルカルを政府の財政援助から引き離しつつ、物価の暴騰、投機に対する問題解決に着手する。

計画の柱としては、①外国の食料資源に対する依存を下げ、国の食主権を増大する。②さらなる投資を可能にする環境を整備し、内発的発展を促す。③産業からの直接購入を奨励する。このため貯蔵空間と配給・輸送組織網の創設と発展を促進。

4月 農業供給・サービス公社、国内三ヶ所に大規模な冷凍倉庫(総額2,600万ドル)を建設することを決定。そのほか各地に農産物貯蔵施設を建設。物不足による投機を防ぎ、流通業者の市場独占にメスを入れる。

4月 市場調査会社Datos、メルカルと最低賃金の増加によって、人口84パーセントの購買力が33パーセント拡大されたとの報告を発表。

4月 土地・農業開発法が改正される。5千ヘクタール条項は廃止される。

05年05月

5.01 カラカスでのメーデーの行進に、UNTに組織された100万以上の労働者が参加。「ベネズエラ労働者はボリバル社会主義を築き上げる」のスローガンを掲げる。CTVに組織された行進は数千人にとどまる。

5.01 チャベス、昨年に引き続き、最低賃金を26%引き上げると発表。

5.03 マイヤーズ統合参謀本部議長、米軍の現状評価を議会に報告。ニューヨーク・タイムズによれば、「米軍部隊と兵器がイラクとアフガニスタンに集中していることで、他の潜在的な軍事紛争に対処するペンタゴンの能力が制約を受けている」とブッシュ政策を批判。制約要因の主たるものとして「精密兵器の備蓄の減少と予備役部隊の緊張」を挙げる。

5.11 サンパウロで南米アラブサミットが開催される。南米とアラブ地域の経済関係強化を目的とする。ルラ大統領は、「発展と社会正義を勝ち取るため、具体的な手段をとりたい」と語る。チャベス大統領は、「帝国に挑戦するアラブ・南米前線」の創設を提唱。

5.29 ALCASA労働組合の指導者エドハル・カルデラ、「私たちが掲げる共同経営は、搾取を深める武器にはならない。共同経営の制度が、労働者の権利を取り除く為に利用された、欧州の悲しい物語を繰り返してはならない」と語る。

5.29 中南米諸国向けの24時間放送テレビ局「テレスル」が試験放送を開始。

5月 調査会社の世論調査によれば、47.9%のベネズエラ人が「社会主義政府」を望む一方、25.7%が資本主義を支持している。チャベスは、無回答の人々が25%近くおり、思想的な攻勢を強めなければならないと語る。フェデカマラスは、「社会主義か資本主義かの選択ではなく、両方の制度の優秀な点を採用すること」と発言。

5月 (あの)ウニベルサル紙の世論調査。チャベス支持者の75%が社会主義への移行について否定。

5月 内発的開発計画がスタートする。

5月 南米・アラブ諸国サミットが開催される。米国の意に反してブラジル、ベネズエラ主導で行われ、「南南関係」発展に画期的な意義を付け加える。

5月 ポサダ・カリレス、米国に密入国し、不法入国の疑いで逮捕される。キューバ機撃墜の犯行当時、ポサダ・カリレスはベネズエラ国籍だった。

05年06月

6.15 ベネズエラの医師数百人が、「もうキューバ化はたくさんだ」のプラカードをかかげ、キューバ医師の追放と給与の増加を要求して行進。

6月17日 政府、内務警察(DISIP)の再編計画を発表。この発表は、拘留中の麻薬密売人がDISIP工作員に賄賂を贈り、逃亡する事件の発覚後に行われた。DISIP内は汚職がはびこっているとされる。

6月24日 ブラウリオ・アルバレス州議会議員に対する暗殺未遂事件。直後にホセ・グレゴリオ・リバスに対しても狙撃。アルバレスとリバスは、エセキエル・サモラ全国農業調整委員会(Canez)の指導者。

6月24日 チャベス、7月から国軍兵士の給与を50~60%上げると発表。「貧困層を救うための社会革命には国軍兵士の力が必要だ」と強調する。

6.25 PDVSAの石油化学子会社ペキベンを、PDVSA傘下から切り離し、ベネズエラ石油化学公団(CPV)を設立。国内の石油化学産業の活性化、石油化学製品の国内供給強化のためとされる。

6.29 ベネズエラ東部海岸のプエルト・ラ・クルスでカリブ海15カ国の首脳会談。合弁事業「ペトロカリベ」の創設で合意。出席16国のうち14がサイン。米国の圧力を受けたバルバドスとトリニダード・トバゴは合意文書への署名を留保。

ペトロ・カリベ: ベネズエラは創設準備金として5000万ドルを拠出。カリブ諸国は各国にPetroCaribeを創設する。PDVSAの子会社PDV-CARIBEが、仲買を通さず直接各国に石油を供給。これらの措置により、加盟国はバレルあたり6ドル程度安く石油を購入できる。

6月下旬 サンタ・マリア大学の学生3人の殺害事件。その中の2人は軍諜報部(DIM)に殺害され、3人目は科学・刑事犯罪捜査機関(CICPC)の一員に暗殺された。

6月 ロシアからヘリ10機、総額8100万ドルの買い付け契約に署名。

6月 ベネズエラ政府軍幹部、米国によるチャベス暗殺計画の存在を確認。

05年07月

7.02 ヘッセ・チャコン〔Jesse Chacon〕法相、DIMとCICIPの捜査を陣頭指揮。幹部7人ををふくむ26人を拘留。チャベス、「この革命は未だ返さなければならない借りがある」と述べ、「責任がある者達は入獄しなければならない。彼らには殺人に対する最大の刑罰を課さなければならない」と強調。

7月3日 人権オンブズマンのヘルマン・ムンダライン、政府に対し、全国・地域・地方レベルで警察再編成の過程に着手するようもとめる。

7.05 政府は、DIMの廃止と政府直属の新しい機関の創設を含む構造改革計画を発表。

7.12 為替違反法案が成立。不正な外貨取引を禁止し、厳しい罰則を課す。為替の管理強化を狙ったもの。

7.13 チャベス大統領、国軍は「ボリバル主義革命の心臓そのもの」であるとし、「ボリバル主義、反帝国主義、愛国主義、民族主義、地域統合主義、反植民地主義、そして解放のための新たなベネズエラのモーター役」となるよう要請。

7.18 ロサリオ・カスティージョ・ララ枢機卿、チャベスは「独裁者」で、選挙は「パントマイム」だと批判する。これに対しチャベスは“山賊”、“偽善者”、“パリサイ人”とやり返す。

7.18 ダグラス・ブラボ、チャベスは「ネオリベラル」で、その石油政策は多国籍企業に制せられていると批判。

7.19 中銀改正法案が議会で承認される。石油輸出による外貨の中銀への売却方式を変更し、外貨準備から一定額を政府の投資計画や債務返済向け基金に確保することを認める。これによりPDVSAのドル建ての収入が、中央銀行を通さずに開発基金に直接組み入れられることとなる。

7.19 ベネズエラ鉄鋼協会(IVES)、上半期の粗鋼生産量は236万トンで前年同期比10.0%増と発表。自動車会議所(CAVENEZ)、上半期の自動車販売は前年同期比85.0%増の9万7,571万台と発表。

7.20 アメリカ下院、24日に放送開始予定のTelesurに関し、「独立のテレビ・ネットワークを作れば、反米・反自由の言動が広がる」とし、ベネズエラ人に「正確で客観的な」情報を提供するための措置を可決。チャベス大統領は、もしアメリカが妨害する場合は、これに「反撃」すると警告。

7.24 南米大陸規模でニュースを配信するテレスール社(南米テレビ)が発足。ベネズエラ51%のほか、アルゼンチン20%、キューバ19%、ウルグアイ10%の政府出資。

7月 チャベス、米国がベネズエラ侵攻を計画しているとし、「バルボア演習」の存在を明らかにする。

7月 徴税監督局(SENIAT)、脱税の疑いでシェブロン社を捜索し書類を押収。またOSAを締結し操業を行っている19社で、過去5年間の未納税額が30億ドルに上ると発表。

7月 (あの)ウニベルサル紙の世論調査で、チャベス支持率が61%。ただし大統領選挙でチャベスに投票すると答えた人は41%(しかも4月の49%から激減!)

7月 リマでCAN(アンデス共同体)の第16回首脳会議が開かれる。チャベス大統領は、アンデス諸国の石油公社からなるPetroandina(PetroCaribeのアンデス諸国版)の創設を提案。

05年08月

8月初め フィナンシャル・タイムズ紙(イギリス)、“翳りゆく米国の影響力と増大するチャベスの影響力”への懸念を表明。

8.01 シカゴ・カブスの主砲サミー・ソーサ、バットをチャベスに贈る。チャベスは「このバットでホワイトハウスにホームランを打ち込む」と語る。

8.04 石油会社32社のうちレプソル、YPF、ハーベストなど8社が、新炭化水素法に基づき、既存の作業協力協定(OSA)の改定で同意する。企業形態をPDVSAが資本参加するジョイントベンチャーに変更することとなる。PDVSAは資本の51%を所有する。ラミレス石油・資源相は、併合をためらうシェブロン、シェル、ペトロブラスなどに対し、「年末までに契約が変更されなければ、操業は停止されることになる」と牽制する。

8.07 地方行政区議会選挙。関心の低さから投票率は30%にとどまる。チャベス派が当選者の8割を占める。

8.07 ベネズエラ、米国麻薬取締局との協力も中止することを決定。DEAがスパイ活動をしているとして当局者の外交特権を取り消す。米国は、ベネズエラを麻薬との闘いを行なっている国として認定することを取り消す。

8月8日 カラカスで第16回世界青年学生祭典。世界144カ国から1万5000人の若者が参加。チャベスは「米国の軍隊が侵略してきても、確実にベネズエラが勝つ」と宣言。「社会主義こそが唯一の道だ」と述べる。

8.14 ルラ大統領がベネズエラを公式訪問。エネルギー分野や軍事面での関係を強化する「戦略協定」に署名。ペトロブラスとPDVSAが共同でペルナンブコに製油所を建設するほか、石油探査で協力することなどで合意。またブラジルの鉄鉱山会社リオドセが、ベネズエラで鉄鉱石やアルミニウムなどの共同開発を進めることとなる。

8.15 ブラジル紙、航空機メーカー、エンブラエルがベネズエラ空軍に、戦闘機約20機を納入することで交渉中だと報じる。

8.15 ラムズフェルド米国防長官がパラグアイとペルーを歴訪。チャベス政権の孤立化をはかる。ボリビア政情不安にキューバとベネズエラが関与していると非難する。チャベス大統領は「世界を破壊しているのは米帝国主義だ」と反論。

8.18 PDVSA、今後7年間で合計560億ドルの投資を行うと発表。石油生産能力を580万B/Dに引き上げる計画。75%は自己資金で賄い、残りは国内外企業の参加を見込む。

8.20 キューバとパナマ、昨年8月以来断絶していた国交を回復。ハバナでの調印式にはカストロ、トリホス大統領のほか、ベネズエラのチャベス大統領も列席。

8.21 チャベス大統領、「アロー・プレシデンテ」をキューバから生中継。カストロをゲストに5時間近い“トークショー”を演じる。二人は揃って緑色の戦闘服姿で登場。チャベスは、「恥もなく国際テロリストをかくまう政府と、これ以上外交を続けるのは難しい。米国がポサダの即時引き渡しに応じなければ、断交を検討する」と語る。

8.22 パット・ロバートソン師、宗教テレビ番組でチャベス暗殺をあおる発言。ロバートソンは宗教右派団体「クリスチャン・コアリション」の創始者で「テレビ伝道師」として知られる。ブッシュ政権の基盤である宗教右派の指導者で、個人的にもブッシュと親交が深い。

ロバートソン発言の主な内容: チャベスはベネズエラを「共産主義の侵略とイスラム過激主義の発射台にしようとしている。…膨大な量の石油を支配し、米国を脅かしているこの人物(チャベス)は、我々南部の人間にとって危険な敵だ。
…我々には彼を排除する能力がある。その能力を行使する時が来た
と思う。…“米政府によるチャベス暗殺説”があるが、それが本当なら実行すべきだ。…秘密工作員に仕事をさせれば簡単だ。戦争よりよほど安くつく。2000億ドルの戦費はいらない。

8.23 マコーマック報道官、「私人の見解であり米政府の政策ではない。不適切な発言だ」と語る。ラムズフェルド国防長官も「暗殺は違法。国防総省はそんなことはしない」と弁明。

8月23日 チャベス大統領、「米国の貧困層に安価なガソリンを直接提供したい」との意向を示す。PDVSAは、傘下のCITGOを通じ、全米で1万4000のガソリンスタンドを所有している。中間業者が「投機や消費者からの搾取」を行わなければ、現在の半額でガソリンを提供できるとされる。番組に出演したジェシー・ジャクソン師は、計画の詳細について協議する考えを示す。

8.24 ロバートソン、謝罪声明を出す。

8.24 ベネズエラで「テレスル」が放送開始。チャベス大統領は「テレスルは政府や系列に依存せず、自由に統合への道筋をつくることができる」と語り、同テレビが中南米やカリブ海諸国の団結を促進する役割を果たすとの考えを示す。

8.28 チャベス大統領、「一国家元首の暗殺を公に呼びかけるのはテロ行為だ」とし、ロバートソン師を米国内で告発すると表明。また、ベネズエラの石油をアメリカ国内の貧困層に安価で提供する計画を明らかにする。

8月 チャベス、「ソ連や東欧の社会主義の崩壊の後に14年間続いてきた防衛のときは終わった。いま、マルクスとともに社会主義がふたたび出現する」と語る。(ただしウニベルサルの記事からの引用)

05年09月

9.01 チャベス、閉鎖・休業企業の接収について触れ、「ボリバル革命において排除されるのは資本主義である。これは革命である。これは社会主義である」とのべる。 (チャベスはおそらく労働者による生産管理を社会主義の核心において考えている)

9.15 チャベス大統領、国連総会特別首脳会議で演説。4分の制限時間を超えて20分以上語り続ける。

チャベス演説の要旨: 米国流の新自由主義と資本主義が人々に不平等と悲劇をもたらした。…我々は米国の新世界秩序を必要としていない。…テロとの闘いは必要だが、それを、違法な軍事攻撃の言い訳にしてはならない。ファルージャで起きたことは何だ。私の暗殺を主張する宗教者までいる米国こそテロ国家だ。
…国連は米国から引き揚げねばならない。国連本部はニューヨークにあるべきではなく、「道義に基づく力を持つ国際都市」に置かれるべきだ。そのような都市の建設を進めなければならない。

9.16 チャベス大統領、米ABCテレビの番組「ナイトライン」に登場。米国が「ベネズエラ侵攻」を計画していることを示す「文書の証拠」を入手したと発表。この侵攻作戦は「バルボア」と呼ばれ、空母や軍用機の投入も想定されている。

チャベス節: ベネズエラから80キロのキュラソー島(オランダ領)では、米軍兵士が上陸し、米空母が発着訓練や機動演習をしている。これも「バルボア作戦」の準備の一環だ。
我々は侵略当日に何機の爆撃機が飛んでくるか、何隻の空母が派遣されるかなどの情報を握っている。すべて証拠はある。100年にも及ぶ戦争になるだろうが、我々は準備している。

9.30 ブラジリアで「南米国家共同体」(CASA)設立会議が開かれる。南米12カ国首脳が出席。南米統合に向け、大陸ほぼ全域をカバーする自由貿易圏の創設に向け準備を開始することで合意する。チャベスは、南米諸国がアメリカに外貨準備を預けているのは馬鹿げていると述べ、地域的な国際金融機関設立を提案する。

9.30 CASA首脳会議に参加したチャベス、「ルーラの提案した方式は不十分で、過去において失敗したアンデス共同体と変わりない。これでは統合実現は2200年になってしまう」と批判。Casaでなく南米共和国統合(Unasul)を名乗るよう主張。

9月 ポルトアレグレで南米諸国首脳会議(CSN)が開かれる。チャベスは文盲の一掃と医療の無料化を統合の目標に付け加えるよう提案。(新藤による。CASA設立会議との異同は不明)

9月 マクロ経済安定化基金(FEM)法を改正。FEMへの入金義務を財政黒字の20%にまで抑える。

9月 ベネズエラ政府、自国製の拳銃を開発し販売すると発表。口径9ミリの回転式拳銃で名称は「RRR」、「革命的な即答」という意味のスペイン語の頭文字。チャベス暗殺を提案したパット・ロバートソンの宗教団体の頭文字でもある。

 

05年10月

10.02 CASA首脳会議に参加したベネズエラ代表団、ブラジル政府と協議。ペトロブラスとPDVSAが折半出資で、ペルナンブコ州に重質油用の精油所を建設することで合意。ペトロブラスはマリン油田から、PDVSAはオリノコ油田からそれぞれ重質油を持ち込む。原油処理能力は日量20万バレルとされる。またベネズエラ沖の海底ガス田開発に22億ドルを投資することでも合意。

10.05 チャベス大統領、「ブラジルもアルゼンチンもすでに核開発を行った。われわれも核の平和利用に向けた研究に取り掛かる」と発言。

10.08 国立土地協会、大企業の所有する農地の接収を開始。年内の接収予定対象は50農場、総面積約50万ヘクタールに上る。

べスティ社: 最初の接収対象となった。イギリスの精肉企業で、その子会社が所有するラマルケセナ農場(約8500ヘクタール)が接収された。ベスティ社側はベネズエラの地裁に提訴。

10.12 米国のテレビ伝道師パット・ロバートソン、「チャベスは核でアメリカを脅かしている。彼は911のあとビンラディンに資金提供し、イランから核物質入手を試みた。いつか、我々は核兵器を眼前にするだろう。それはベネズエラの核だろう」

10.12 ベネズエラ政府、アマゾン地域で活動する宣教師らに国外退去を命じる。チャベス大統領は彼らが、CIAに機密情報を流していると非難。この宣教師はマイアミに本部を置く福音派教会の一派で、「ニュー・トライブ(新部族)・ミッション」と呼ばれる。ベネズエラには地元スタッフを含めて160人が滞在。

10.15 先住民プイナレ族の代表はこの決定を非難する声明。

10.19 チャベス大統領がフランス訪問。シラク大統領、ドビルパン首相と相次いで会談。ドビルパン首相は「両国関係は非常に良好で、今後南北問題、教育、エネルギー、国防などすべての面での発展を期待している」と述べる。

10.28 ベネズエラ、キューバに続いてラテンアメリカで二番目の「文盲一掃の地」であることを宣言。

10月 イベロアメリカ首脳会議。チャベスは、奇跡計画などにより南米の白内障患者600万人を10年間に9割削減するよう提案。

05年11月

11.04 アルゼンチンで米州首脳会議。ブラジルなどメルコスル加盟国は、米主導の米州自由貿易地域(FTAA)交渉再開に否定的姿勢を貫く。

11.04 OAS首脳会議の会場となったマルデルプラタで、イラク戦争や経済のグローバル化に反対し、ブッシュ米大統領の訪問に抗議するデモ。サッカーの英雄マラドーナ、アドルフォ・ペレス・エスキベルらが呼びかけ。デモにはボリビアのエボ・モラレスも参加。集会に参加したチャベス大統領は、「FTAAは死んだ!われわれアメリカの民衆がFTAAを葬った」と宣言。「新自由主義と帝国主義に反対する民衆が結集するこの集会が、真の米州首脳会談だ」と付け加える。

11.05 米州首脳会議、FTAA交渉の再開についてブラジルなど5カ国が慎重姿勢を崩さず、両論を併記した首脳宣言を採択し、閉幕。議論は物別れに終わる。

11.14 ベネズエラ、メキシコ両国政府、双方の大使を本国に召還。チャベスがフォックスを「アメリカの犬」などと批判したため。

11.24 スペインのミゲル・アンヘル・モラティーノ外相、「チャベスはラテンアメリカにとって問題でもなく不安定要素でもない。問題なのは不安定な傾向をもたらす経済、社会、政治状況である」と述べる。

11.29 野党3政党が選挙ボイコットを宣言。アメリカ国務省のショーン・コーミック報道官は、「ベネズエラ国民は自由で公正な選挙を行う権利がある。しかしいまこの権利が大きな危機にさらされている」と警告。

11月 ベネズエラ政府、コロンビア国内に反チャベスの動きがあることを明らかにし、この陰謀に関する一連の書類をコロンビア側に手渡す。ベネズエラの元軍人が、コロンビア政府職員とボゴタの軍施設の中で会談し、陰謀を企てていたとされる。

11月 ベネズエラ、200万人の予備役確保を目指し新規予備兵の大量訓練を開始。今後、男女をふくめ予備兵を200万近くまで増強する予定。チャベスは、現在の8万挺の銃のほか、さらに10万挺を入手するとし、さらに、カラシニコフ・ライフルを国内生産するための施設建設を検討。

05年12月

12.01 ホルヘ・ロドリゲス全国選挙協議会長、「選挙は実施する。何らの制度的危機は起こっていない」と語る。ニコラス・マドゥーロ国会議長、野党の選挙ボイコットに対し、「彼らが167の議席を与えてくれるなら感謝して受け入れよう」と述べる。

12.03 カラカス市内で工場を狙った爆弾2発が爆発。チャベス大統領は、「いかなる攻撃とその意図をも撃退するため」、軍に「警戒態勢」を命じる。

12.04 ベネズエラ議会選挙。野党の選挙ボイコットにより棄権率が75%に達する。与党「MVR」が167議席中117議席を獲得。残りの53議席も、チャベス大統領の変革プロジェクトに参画している独立系の党や個人が占める(PPT10、PODEMOS19、共産党8など)。野党は「この選挙で民主主義がほとんど死滅し、議会は一党独裁になった」と声明。(ただし投票率は、2000年の同じ選挙の27%と大きな差はない)

8人の共産党下院議員: ①Roberto Hernandez Diluvina、②Cabello German Ferrer、③Oscar Figuera、④Edgar Lucena、⑤Chiche Manaure、⑥Omar Marcano、⑦David Velasquez

12.07 チャベス大統領、アメリカの低所得者層を支援するため、灯油を市価の60%で供給することを決定。米国内におけるベネズエラ系の石油販売会社Citgoが、ブロンクス地域住民に石油の提供を開始。4月1日まで、約3万立米の燃料を売ることになる。ボストンではケネディ家が主宰する非営利組織「シチズン・エネルギー」が配給を代行。

12.09 モンテビデオで第29回メルコスール首脳会議。ベネズエラの正式加盟が承認される。1年後にメルコスール議会を設置することでも合意。アンデス共同体との関係や対外共通関税の扱いについての明確な方針は確定せず。政治判断による見切り発車の色彩が強いとされる。

12.14 元CTV議長カルロス・オルテガに懲役16年の判決。犯罪幇助、市民反乱、不法ドキュメント所有の罪を問われる。

12.16 ブラジルのレシーフェで、ルラ大統領とチャベスによる会談。PetrobrasとPDVSAのジョイントによる精製所建設が合意される。

12.18 サンタ・マルタでシモン・ボリバルの死去175周年の式典。ウリベ大統領とチャベス大統領がともに出席。両首脳はベネズエラの石油をアジアに輸出するためのパイプラインの建設について検討することで合意。

12.18 ウリベ大統領、上記式典後の記者会見で、コロンビア国内でチャベス大統領に対する陰謀があったことを明らかにする。「コロンビアは武力で民主的な政府や兄弟国に対する武力的陰謀を許さない」と述べる。

12.22 ベネズエラ司法、アンデルソン判事を殺害した元警官3人に30年の刑。他の実行犯2人は米国に逃亡。

12月 ベネズエラとキューバ、米州ボリーバル代替構想(ALBA)にもとづく社会経済統合プロジェクトに調印。アメリカ主導の米州自由貿易協定(ALCA)に反対する立場を明らかにする。

 

2006年

06年01月

1.10 カトリック教会の指導者、数十億ドルの石油収入を使いながら貧困問題に向き合っていないとし、チャベスを非難する。政府統計によれば、05年に貧困者の比率は47%から37%に下がったが、依然8千人の児童・成人が街路に放置されており、麻薬を使い売春をしている。

1.12 米国、スペインからベネズエラへの軍用機12機の輸出問題について、ラテンアメリカの安定を損なうと批判。米国製部品を使った軍用機の輸出を行うべきではないと主張。

1.13 スペインのマリア・テレサ・フェルナンデス・デ・ラ・ベガ副首相、「我々はベネズエラと契約をした。これは果たさなければならない」と述べ、米国の批判を拒否。輸出しようとするのは攻撃力を持たない民間レベルの機体であり、米国の出方しだいでは欧州部品で代替することもできると反論。

1.15 チャベス大統領、「貧困は減少し始めている。今後5年間であらゆる形の貧困に終止符を打つ」と宣言。「Mision Negra Hipolita」を提起する。全国にわたるコミュニティごとの委員会が、浮浪児を保護し、医療や教育を与えるもの。チャベスは教会に対し、「批判はすることは良いことだが、共に働いてもらえれば、こんな良いことはない」と協同を呼びかける。

1.16 チャベス大統領、聖職者グループがコロンビア国境地域に出かけ、コロンビアの民兵組織に資金を渡したと非難。カトリック教会の公式謝罪を求める。

1.17 アモリン伯外相、米国とキューバ、ベネズエラ、ボリビアとの対話にブラジルが仲介をすると提案。米国は直ちに提案を拒否。

1.18 ブラジルで、ルーラ大統領、チャベス大統領、キルチネル大統領の3か国首脳会談。ベネズエラの天然ガスを送るパイプラインの建設について合意。総延長は約7千キロメートルに及ぶ。また「南米統合の理念」にもとづきモラレス次期大統領へ「即時支援」することで合意。

1.21 ベネズエラとアメリカ両政府、麻薬対策に関する二国間協定を再開することで合意。

1月21日 ブラジルとベネズエラ政府、軍用輸送機「Casa 125型」の共同製造で合意。

1.29 カラカスで「世界社会フォーラム」が開かれる。歌手のハリイ・ベラフォンテが、俳優ダニイ・グローバー、黒人作家コーネル・ウエスト、農民運動の指導者ドロレス・フエルタなどを率いてベズエラを訪問。貧困根絶プログラムを実施している地域を見学。ベラフォンテはチャベスに対する尊敬の意を表明すると同時に、ブッシュを「世界最大のテロリスト」と非難する。

1.29 チャベス、イラクで戦死した米兵の母シンディー・シーハンさんとテレビ番組に出演。ブッシュ政権の対イラク政策を厳しく批判。

06年02月

2.01 ベネズエラ当局、6人のベネズエラ軍人がアメリカ大使館員と協力してスパイ活動をしていたと発表。チャベス大統領は、米大使館付きのジョン・コリア海軍武官を「ペルソナ・ノン・グラータ」と特定し、出国を命じる。米国務省は報復措置として米駐在ベネズエラ大使館のジエニ・フリアス参事官の追放を発表。

2.02 ラムズフェルド国防長官は、「ベネズエラには石油の大金を持ったチャベスがいる。たしかに彼は民主的に選ばれた。しかしヒットラーもそうだった」と語る。これに対してランヘル副大統領は、同長官を「兵器のセールスマン」と皮肉る。

2.03 国防総省、4年ぶりの「国防計画見直し報告」で、「将来的に、米国およびその同盟国に対して敵対的な道を選択する可能性がある国」としてベネズエラを挙げる。「ベネズエラの大衆迎合の権威主義的政治が、ラテンアメリカの政治的不安定を招いている」と述べる。

2.05 チャベスは「ブッシュ大統領こそヒトラー以上の大量虐殺主義者だ」と反論。大衆集会では、「ロシアから購入した10万挺のカラシニコフでは足りない。100万人の男女のための武器を装備する必要がある」と演説。

2.08 ラミレス・エネルギー石油大臣、中国に対する原油の輸出量を3倍、1日あたりの原油輸出量を30万バレルに拡大すると述べる。

2.10 チャベス大統領、ブッシュ大統領を「狂人」と非難。「アメリカの大統領の座には狂人がいる。世界中に核爆弾を投げることのできる危険な狂人だ。あの視線、あの傲慢さ、あの歩き方を見て欲しい。自分が世界の所有者だと思っている」

2.14 トマス・シャノン中南米担当国務次官補が、ベルナルド・アルバレス駐米大使とワシントンで会談。ブラウンフィールド大使は、会見の内容を発表するとともに、「両国の対話が始まった」と言明。

2.16 チャベス大統領、イギリスのブレアー首相を「恥知らずで不道徳、帝国主義の駒」と非難。ブレアーが「ベネズエラ国際法規を守るべきであり、キューバは真の民主主義を実践すべきだ」と発言したのに反撃したもの。

2.16 ライス国務長官、下院で証言。「チャベスはラテンアメリカの民主主義にとって危険な挑戦者だ」と発言。「チャベスによる干渉政策に対する予防戦略として、積極的に反チャベス統一戦線を呼びかけている」と証言。

2.16 ベネズエラ軍のカルロス・エレラ・ヒメネス大佐、「これまで150万人のベネズエラ国民が、必要なときには武器を取って戦う予備兵として登録された」と発表。また「ベネズエラが想定する戦闘は、イラクのように外国の攻撃に対して、全ての国民が立ち向かうタイプのもの」と述べる。

2.18 チャベス大統領、ライス国務長官によるのベネズエラ非難発言に関連して、「米国が一線を越えれば、ベネズエラ産原油を手にできなくなることを知るべきだ」と語る。アメリカは輸入エネルギーの15%をベネズエラに依存している。

2.20 ブッシュ大統領、エネルギー問題に関して演説。「米国に敵対的な国が石油を政治的に利用する可能性がある」と指摘する。

2.22 PDVSA、米国で発行済みの社債を買い戻す計画を発表。ラミレス石油・鉱山相は「国営会社PDVSAの情報が米証券取引委員会に知られることは国益にならない」と述べる。

2.22 ヤラクイ(Yaracuy)州警官3名が行政警察によって逮捕される。テロ計画を企てていたとされ、高性能爆薬C‐4が押収された。

2.22 国防委員会、兵役義務制の採用について検討を始める。軍は「いかなる攻撃も撃退できるよう軍備を強化する。もし国が侵入を受けた場合はゲリラ戦争となり、民兵集団がカギとなる」と述べる。

中南米主要国の軍事力

 

メキシコ 28.4億ドル 19.3万人
キューバ 6.92億ドル 10.1万人
エクアドル 6億9千万ドル 5万7千人
ペルー 8億7千万ドル 10万人
ブラジル 142億ドル 29万人
チリ 21億ドル 8.7万人
ベネズエラ 15億米ドル 7.9万人

 

2.22 カラカス大司教ホルヘ・リベラート・ウロサ・サビーノ、枢機卿に任命される。

2.24 ブッシュ、在郷軍人会総会で演説。イランを支援する国としてシリア、キューバ、およびベネズエラを挙げる。

2.25 ベネズエラ航空当局(INAC)、アメリカのコンチネンタル、デルタ航空の乗り入れを全面禁止し、アメリカン航空の便を半分以下に制限すると発表。相互・平等主義の原則に基づく「相互措置」だとする。95年に米連邦航空局がベネズエラ航空便の乗り入れを禁止したことに対する報復。(その後実施を延期)

2.28 米国上院委員会で、ネグロポンテ米国家情報長官が証言。ベネズエラがイランおよび北朝鮮との関係を今後強化するとの見方を示す。また米国防情報局のメ-プルズ中将は、ロシアなどからの武器輸入について懸念を表明。ベネズエラは南米全土やメキシコ湾まで軍事行動を拡大する機能を備えたと警告する。

2月 リオのカーニバルで、ベネズエラ石油公社(PDVSA)の資金援助を受けたビラ・イサベル(サンバ学校)が優勝。

06年03月

3.01 ベネズエラのメレンテス財務相、対外債務の対GDP比を現在の約30%から25%にすると発表。ブレイディ債の買い戻しなどにより、上半期で47億ドルの対外債務を解消するなどを柱とする。これにより年間利払いが6億ドル減少する見込み。

3.03 ベネズエラ・ブラジル・アルゼンチンの三国、「南米グラン・パイプライン」構想の実現に向け総額920万ドルの調査費拠出で合意。

3.06 マラカイボ油田のあるスリア州で、「スリアのための独自の方向」と称するグループが「個人の権利と自由企業システムの保証」をもとめ住民投票を計画。チャベス大統領は「アメリカの支援を受けた分裂策動だ」と非難。

3.06 国土防衛隊のフアン・アルベルト・エルナンデス将軍、兵士のグループがキューバの軍事訓練に参加していることを明らかにする。軍が指導する計画では、200万人以上の国民が予備兵に登録し、土曜日を使って訓練に当てる。

3.08 米国務省、人権年次報告を発表。「ベネズエラ政府は、メディア活動の自由を制限し、野党の政治活動に圧力を加えている」と述べる。ベネズエラ、キューバ、中国はこの報告に対し厳しく批判。ベネズエラのランヘル副大統領は、「これはトイレット・ペーパーだ」と述べる。中国は電話盗聴、不法逮捕、イラクなどでの軍事作戦と一般市民の殺害について指摘。

3.12 チャベス大統領、国旗の図案を修正すると発表。

3.08 ベネズエラ議会、チャベス大統領の要請にもとづき紋章法を改正。ガイアナ州を象徴する11番目の星を加える。また「自由と不屈」を表す白馬が従来右を向いていたのを左向きに改める。

3.09 アメリカの有名な歌手ハリー・べラフォンテ(78才)がベネズエラを訪問。チャべス大統領とのテレビ対談で、「ブッシュは世界最大のテロリスト。数百万のアメリカ人が、チャベスの行っている革命を支持している」と語り、さいごに「ビバ、レボルシオン!」と叫ぶ。ベラフォンテとともに俳優ダニー・グローバー、プリンストン大学コーネル・ウエスト教授などが訪問。

3月中旬 ベネズエラのカベサ財務相、貧困、極貧率が石油スト直後の80%から39・4%に改善されたと発表。

3.21 チャベス大統領、エルサル選挙でFMLNが勝利した市に対して、安価な石油を供給する協定に調印。

3月22日 ニューヨークタイムズ、「カラカスは左翼の新しいメッカになっている」と報道。ベラフォンテ、反戦活動家シンディ・シーハンらが相次いで訪問し、「ラテンアメリカを席巻してきたネオリベラリズムの政策に対抗」するベネズエラを注目していると述べる。

3.23 チャベス大統領、ボリビアの首都ラパスで起きた2件のホテル爆弾事件に関して、「米国がモラレス政権の不安定化工作を始めた」と述べる。

3月 ルイス・カブレラ・アギーレ退役海軍少将が率いるベネズエラ市民軍、市民約200万人に対するゲリラ戦のための軍事訓練を開始。アントニオ・ベナビデス中佐が責任者となり、トンネルの作り方やナイフ、投石機、ピストルの使い方、カムフラージュの技術などを教える。

3月 クラドック南方軍司令官、「チャベスは過激な大衆迎合主義を輸出して、ペルーやニカラグアの大統領選挙にも影響を及ぼしており、ラテンアメリカの不安定要因となっている」と非難。

06年04月

4.03 ブラジルからの空軍用練習機購入計画が挫折。チャベスは、アメリカの横槍によるものと非難。

4.04 ベネズエラ政府、石油大手の仏トタルとイタリア炭化水素公社(ENI)がベネズエラで運営する2油田を管理下に置く。ENIはベネズエラに賠償を求める考えを示す。これに対しラミレス・エネルギー・鉱業相は「我が国の法律を守らない企業は国内に存続してほしくない」と非難。

4.06 ベネズエラの石油メジャー各社、ペンディングになっていた税1億8200万ドルを支払うことで合意。この契約改定により、政府が決定権を持つ企業となる。

4.07 ウィリアム・ブラウンフィールド米大使、カラカス南郊の貧民街で開かれた慈善イベントに参加。少年野球チームにスポーツ用具をプレゼント。地元当局者を名乗る人物が「入場は許可されていない」と同大使の入場を阻む。あきらめた大使が車に乗って引き返そうとしたところ、現場にいた群衆が「アメリカ人は出て行け」などと叫びながら、タマゴ、タマネギ、トマトなどを投げつける。大使はその地域を退去するが、オートバイの集団が約20分その車を追跡しボディーを叩くなどの乱暴。

4.07 米国はベネズエラ政府に責任があると非難。こうした「野蛮行為」が続くなら、ワシントンでのベネズエラ外交官の行動を制限すると警告する。チャベスは「ミスター・デンジャー(ブッシュ大統領のこと)、私たちを脅迫しないで欲しい。私たちは今度の事件とは無関係だ」と反論。カラカス市当局は事件への関与を否定。「大使の退去を要求したのはコミュニティだ」と声明。

4.09 チャベス大統領、カラカス駐在のウイリアム・ブラウンフィールド米大使が挑発的活動を続けるなら追放するかも知れないと発言。「もし、あなたが挑発を続けるなら、カバンを用意しておいて欲しい。ペルソナ・ノン・グラータとして、あなたをここから放り出すから」

4.12 ペルーと米国との自由貿易協定(FTA)がワシントンで調印される。

4.18 米国が6500人の海兵隊員を動員しカリブ海で軍事演習。「地域友好国との訓練であり、麻薬・テロ・人身売買との戦いの一環である」と説明。これに対しチャベス大統領は、「ベネズエラとキューバに対する脅迫である」と述べる。

4.19 コロンビア情報機関がウーゴ・チャベス大統領を殺害する陰謀を持っていたことが発覚。ベネズエラはコロンビアに「陰謀」の調査を要求。ウリベ大統領は、中心人物とされる現ミラノ領事のホルヘ・ノルエガを召還し事情を聴取。

4.20 チャベス大統領、「コロンビアとペルーはアメリカとの自由貿易協定を結んだことにより、CANを殺した。いまやCANはエリートと多国籍企業を利するだけだ」として、脱退を宣言。また「メルコスールも根本的改革をおこなわなければ、CANと同じような運命をたどるだろう」と警告。

4.21 トレド大統領、「アメリカと自由貿易協定を結んだから、CANが“死んだ”との見方は共有できない」とし、チャベスの脱退発言について、再考を求める。エボ・モラレス大統領もCAN残留を要請。

4.21 ペトコフ、次の大統領選挙にチャベスの対抗馬として立候補すると発表。ペトコフは前年に「二つの左翼」という本を出版。ルーラ、キルチネル、ラゴスら南米左翼首脳と、チャベス・カストロを対立させて描き、中流市民の支持を得ていた。

4.22 反チャベス派が治安の悪化に対する抗議行動。ベネズエラは、コロンビア、エル・サルバドルに次いで、ラテンアメリカでは三番目に殺人の多い国で、05年に1万件の殺人があった。専門家は実際はそれよりも多いとしている。

4.25 ベネズエラ政府、アンデス共同体(CAN)から離脱すると発表。ペルーとコロンビアが相次いでアメリカとの自由貿易協定を締結したことに反発したもの。

4.25 ボリビアのモラレス大統領、ペルーのトレド大統領が、米国との自由貿易協定調印を結んだことを非難。「ペルーのみならず全ラテンアメリカの先住民を裏切った」と述べる。ペルー政府はモラレス発言に強く抗議。

4.26 チャベス大統領、ペルーとコロンビアが米国との自由貿易協定を考え直すなら、アンデス共同体(CAN)からの脱退を撤回すると発言。エボ・モラレス大統領の残留要請への対応。

4.26 サンパウロでアルゼンチン、ブラジル、ベネズエラの大統領が会談。ベネズエラ、ブラジル、アルゼンチンを結ぶ1万2000キロ、総工費200億ドルのガス・パイプライン建設で合意。地元集団、ボリビア政府筋の一部、国際環境団体は、この計画が汚染や森林破壊、先住民の生活破壊をもたらす可能性があるとして批判。

4.26 ベネズエラ、ニカラグア国内に合弁会社Albaを創設。サンディニスタの統治するマナグアなど50以上の市に、優遇条件で石油を供給することとなる。チャベスは調印式にあたり、オルテガへの支持を繰り返し表明。

4.27 ガルシア候補、チャベスがエボ・モラレス大統領とともに、米国との自由貿易協定に反対していることを、「恥知らず」と非難。

4.28 チャベス大統領、ペルー政府の抗議を拒否。ガルシア候補がホワイトハウスの代弁者であり、「腐敗し、恥知らずで、心底からの泥棒のイカサマ師」であると非難。ガルシアを守ろうとするトレド大統領を「同じ淵の中のワニ」だと発言。「もし悪魔の仕業で、セニョール・ガルシアが大統領になった場合は、ベネズエラはペルーとの関係を維持しない」と警告。ガルシアは、「胃袋いっぱいに石油があれば何でも言える」とかわす。

4.30 ペルー政府、「ペルーに対する執拗で明白な内政干渉」に抗議するため駐ベネズエラ大使を引き上げ。ベネズエラのウィリアム・ララ情報相は、トレド大統領を、アメリカの「おしゃべりな操り人形」、「オフィス・ボーイ」と発言。

4.30 ハバナでカストロ・チャベス・モラレスの三国首脳会談。相互補完の経済協力を定めた「人民貿易協定」(TCP)に調印。エボ・モラレス大統領、訪問先のハバナでALBA参加を表明。これにより、キューバやベネズエラからの優遇措置を受けて、大豆、コカの葉、穀物などを輸出できる。ベネズエラはボリビアに対し、石油化学を学ぶボリビア青年5千人の奨学金を送り、また開発プロジェクトに1億ドルを提供する。

4月 チャベス、女性の家事労働を生産活動と認め、貧困家庭の専業主婦に対して最低賃金の80%を年金として支給する。

06年05月

5.04 ベネズエラ当局は、東部ヤラクイ州の農地1154ヘクタールの接収の補償金として、12のスペイン系製造業グループに310万ドルを支払うことで同意。

5.05 チャベス、「吸血鬼に噛まれるままではいけない。官僚主義と腐敗、エゴイズムを排しなければならない」と述べ、腐敗との「厳しい戦い」をベネズエラ人に呼びかける。「国際的透明性」組織の発表では、ベネズエラは69位から130位に後退。

5.07 チャベス大統領、米国が「カリブ海に、持っているあらゆる空母、艦隊を置き、我々を脅そうとしている」と非難。「我々は山に、地区に、市外に籠り、攻撃に抵抗する。その準備はできている」と述べる。

5.10 PDVSAと中国船舶工業公司、中国船舶重工集団公司、共同でタンカー18隻を建造することで合意。

5.10 ブラジルのルーラ大統領、チャベスが南米、特にボリビアとの関係に介入することに対し「不快感」を表明。アモリン外相は上院外交委員会で、「(南米諸国への介入が)南米の統合に悪影響を与えることを、誤りない形で伝えた」と答弁。

5.10 グアテマラのオスカル・ベルシェ大統領、「チャベス大統領の干渉は、中米の指導者にとって我慢できない」と言明。エルサルやニカラグアなどで左翼野党が首長を握る市町村に、優遇条件で石油を提供するなどの行為が内政干渉に当たるとする。

5.11 チャベスがバチカンを訪問。シモン・ボリバルの肖像画を贈る。ベネディクト16世は、「宗教教育の余地のない教育改革計画への懸念」を示す。これまでチャベスはキリストを「革命的」であると称える一方、ベネズエラ国内の教会を、改革に反対する「ガン」だと批判してきた。

5.14 チャベス大統領、「もし米国がベネズエラを攻撃した場合、誰にも石油が渡らない。原油価格は100ドル以上に達するだろう」と述べる。

5.15 アメリカ政府、ベネズエラをテロ対策非協力国と認定。武器禁輸の措置を声明。

5.15 アメリカの複数の国務省高官が、ベネズエラへの武器禁輸を行うことになるだろうと言明。ベネズエラがテロに対する戦いに協力せず、コロンビア・ゲリラへの支援を行っているためとする。

06年06月

6.03 カラカスの郊外に、独立系映画の制作を推進する映画制作施設が作られる。総工費は900万ドル。チャベスはハリウッドによる文化的支配に抵抗する拠点と強調。

6.27 米議会付属の調査機関GAO5、ベネズエラが原油禁輸措置を発動した場合の影響を調査し発表。アルバレス駐米大使は、ベネズエラが石油輸出を停止するという仮定そのものがばかげていると批判。

06年07月

7.01 ガンビアの首都バンジュールでアフリカ連合(AU)首脳会議。チャベスがゲストとして参加。エネルギー資源国有化へ向け、アフリカと中南米の連携強化を呼びかける。

7.04 メルコスール加盟国による首脳会議がカラカスで開催される。4カ国の大統領のほか、ボリビアのモラレスがオブザーバー参加。

7.05 チャベス、独立記念日の演説でメルコスール加盟国による防衛体制構築を提唱。関係各国は応ぜず。

7.08 Sumate、12月の大統領選挙でチャベスに対抗する候補者を擁立するために予備選挙を施行すると発表。スマテが米国の資金供与を受けていることから有力候補とされたテオドロ・ペトコフは選挙への参加は見送るとする。

7.08 コロンビア・ベネズエラ間の天然ガス輸送パイプランが着工される。建設費用は2~3億ドルとされ、PDVSAがこれを負担する予定。ベネズエラへの天然ガス輸送開始は07年5月頃の見通し。

7.12 PDVSAの米国子会社Citgo、米国内の約1万3,100ヶ所の給油所の内約1,900店舗に対し、ガソリン供給を停止すると発表。PDVSA側は、これを純粋に技術的理由によるものと説明。

7.20 ベネズエラ共産党の第十二回大会が開かれる。約千人の代議員と三十数カ国の外国党・組織の代表が出席。「ボリバル革命の推進を」「国民の権力を擁護しよう」と訴える。カレラ議長は「PCVはもう死んだといわれてきたが、今も生き生きと存在し、たたかっている」と述べる。あいさつにたったランヘル副大統領は、大統領選で有権者の過半数に当たる一千万票を獲得しようと呼びかける。

7.21 アルゼンチンのコルドバでメルコスルの首脳会議。チャベス、モラレス、カストロが出席。

7.29 イラン訪問中のチャベス、「いかなる条件下でも常にイランを支持する」と語る。

7.27 ロシアを訪問中のチャベスとプーチンが両国の関係強化をうたった協定に調印。ロシアがスホイ戦闘機24機、軍用ヘリコプター53機などの武器をベネズエラに供与することで合意。イワノフ国防相は、協定の軍事部門が総額10億ドルを超える大型契約となることを明らかにする。(BBCは30億ドルと報道)

06年08月

8.09 最大の油田マラカイボを抱える、スリア州のロサレス知事が野党統一候補に名乗りを上げる。(ロサレスの支持組織「スリアの進むべき道」はスリア州の完全な自治を主張してきた)

8.24 チャベス大統領、中国を訪問し胡錦濤国家主席と会談。オリノコ油田の共同開発に関する合意文書に調印。チャベスは対中輸出を日量15万バレルから50万バレルに拡大したいと述べる。

06年09月

9.15 チャベス大統領が非同盟諸国首脳会議出席のためキューバ訪問。「発展途上国銀行(南の銀行)」設立を提案。

9.21 チャベス大統領、国連総会の一般討論の場で演説。ブッシュ大統領を名指しして8回「悪魔」と呼ぶ。会場はチャベスの演説に拍手。ボルトン国連大使は「我々にはほかに仕事がある。コメントする問題ではない」と述べるにとどまる。

チャベス演説の要旨: ブッシュは帝国主義者の代表である。帝国主義者は彼らに反対する人々を過激派と見る。彼らに反対する人は急速に増えているので、彼らは自分以外のすべての人間が過激派に見えてしまう。しかし本当の過激派は米国自身である。チリを思い起こそう。キューバを思い起こそう。そしてその犯人、たとえばルイス・ポサダが今どうしているか、私を殺そうとした人間が今どうしているか思い起こそう。
彼らの道具であった国連はこのような状況の下で瓦解した。これをわれらの道具として再建しよう。そして国際連合の基本原則に則った平和な世界を築き上げよう。ベネズエラは安保理常任理事国の特権を排し、事務総長の役割を強化することを求める。国連本部を南の都市へ移そう。

ハバナで開かれた非同盟運動首脳会議は新たな時代の幕開けのために力を与えた。再び我々は新たな勢いを伴った非同盟運動を開始した。帝国主義の脅威からこの惑星を守るために。

9.23 チャベス大統領、マドゥロ外相の拘束事件を非難。マドゥロは、外交旅券を提示したにもかかわらず、ケネディ国際空港で入国管理当局に1時間以上、不当に拘束された。

9月 野党候補ロサレス、一部協同組合の乱脈経営に関連して、「チャベス派は施し物に依存している貧困者-寄生虫に支配されている」と非難。後に参謀のレオポルド・プチが発言を否定。

10.03 チャベス大統領、「ラムズフェルドはセルベルス、戦争の犬だ」と語る。(セルベルスはギリシャ神話に出てくる地獄の番犬)

06年11月

11.08 チャベス、米中間選挙に言及。共和党の敗北はイラク政策に反発した国民な投票の結果であり、道徳的見地からみてブッシュ大統領は早期に辞任すべきだと語る。

11.30 ロシアの最新鋭戦闘機Su-30MK2の第1号機がベネズエラに到着。

11月 RCTVをはじめとする民間テレビ局は、①チャベス派によって投票結果が操作される可能性が大きい、②反チャベス派幹部のラファエル・ポレオは、「ウクライナのオレンジ革命のように、不正選挙に怒った国民が街頭を埋め尽くし、政権交替が実現される」と予言。③国防軍は反政府派とともに蜂起すべきであると呼びかける。

06年12月

12.03 大統領選挙。チャベスが63%を獲得。野党の統一候補マヌエル・ロサレス(スリア州知事)を大差で破り三選される(新憲法下では二回目)。ロサレスは36%にとどまり、敗北を認める。

12.04 チャベスが勝利宣言。「これは出発点であり、新しい時代の始まりだ」と述べ、「革命の中の革命」(トロツキー)を訴え、与党勢力を結集した新政党「ベネズエラ統一社会党」(PSUV)の結成を呼びかける。

12月 ウィリアム・R・ブラウンフィールド元米国大使、「米国政府はチャベス当選阻止のため反対派に数百万ドルを投下した」と告白。

12月 共産党は新党路線を歓迎しながらも、統合過程をめぐっては慎重な態度。多数者革命の立場に立ち、保守派の一部もふくめ国民の大多数が結集しうる「反帝統一戦線」の形成を先行させるよう逆提案。

12月 政府、経済実績を発表。極貧困世帯は、98年の21%から10.6%に半減。最低賃金は米ドル換算で5.6倍、失業率は11・3%から9・6%に低減。

 

2007年

07年01月

1.03 ホルヘ・ロドリゲス、ランヘルに代わり副大統領に指名される。チャベスは「息子が父親に対するのと同様の敬意と愛情を」ランヘルに捧げると言明するが、辞任の詳細には触れず。

1.08 チャベスが新閣僚の就任式で演説。電話通信会社CANTV(91年に民営化)や、電力会社の国有化などをすすめる法案を国会に提出すると述べる。また石油メジャーが進めているオリノコ川流域の超重質油開発を国家資産とすべきだと語る。

1.08 ランヘルが辞任の会見。「政府からは去るが、革命から去るわけではない」と言明。なお首都区スクレ市長のホセ・ビセンテ・ランヘル・アバロスは彼の息子である。

1.10 チャベス、三期目の大統領に就任。就任式で「21世紀の新しい社会主義」の建設を宣言する。

チャベスの就任演説のポイント: ①ベネズエラ革命の移行期は終わった。これからは21世紀型社会主義の実現を目ざす。②革命は社会主義へと永続的(トロツキー)に移行するだろう。③これからの革命の推進力は「共同体権力」である。それは、革命の現場での直接民主主義を目指す。④社会主義統一党がこれらの運動を指導するだろう。

1.13 イランのアハマディネジャド大統領がカラカスを訪問。発展途上国支援のための基金設立で合意。

1.31 議会、二度目の「授権法」を採択。チャベスは18ヶ月間にわたり、国会の審議を経ずに法律を制定する権限を認められる。

チャベスはこの授権法を行使して国家警察の組織改正、石油部門の民間会社や通信・電力会社への国家介入、予備役や退役軍人に対する緊急事態の際の動員法制化、など計67本もの大統領令を出したとされるが、目下詳細不明。

1月 政府、最大のテレビ局RCTVの放送免許を更新しないとの態度を明らかにする。ヒューマン・ライツ・ウォッチ、カーター・センター、ジャーナリスト保護委員会などが、いっせいにこの措置を非難。世論調査では人口の70%が放送中止を望んでいないとされる。

07年02月

2.01 ベネズエラ政府、オリノコ川流域の超重質油開発事業について、PDVSAが出資比率を六割以上確保し、みずから操業すると発表。シェブロンやエクソンモービル、英BP、仏トタルなどに対し同意を迫る。シェブロンなど各社はこの提案に同意するが、エクソンモービルは石油開発事業を断念し、資産をベネズエラ政府に譲渡すると発表。

2.28 ベネズエラ政府、外貨取得申請の国家管理を強化する。手続き遅れによる生産停滞で企業が悲鳴

07年03月

3.09 第一回南米エネルギー首脳会議がベネズエラ北部のマルガリータ島で開催され、南米全12カ国が参加。「エネルギー資源に関する主権の行使」を宣言。

3.09 チャベス大統領がアルゼンチンを訪問。キルチネル大統領と会談し、経済、技術協力などに関する新たな協定を締結する。

3.09 チャベス、ブエノスアイレスで「中南米統合と反帝国主義」と銘打った集会に出席。南米歴訪中のブッシュ米大統領(この時点ではウルグアイに滞在中)を「レイム・ダック」と批判する。この集会は人権団体などが組織したもので、二万人以上が参加する。

3.10 アルゼンチンのフェルナンデス内相は米政府の抗議に対し、「アルゼンチンは主権を持ち、訪問者の自由を認める国だ」と反論する。

3.20 カベサス財務相、自国通貨ボリバルの切り下げ計画はないと言明。国内消費の喚起のため、3年以内に付加価値税(VAT)を撤廃すると述べる。

3.22 バーンズ米国務次官、「アルゼンチン政府が集会へのチャベスの参加を認めたのは過ちだ」と抗議する。

3.23 アルゼンチンのフェルナンデス内相が駐米大使と会見。「ブッシュ大統領の歴訪中に、こうした集会が行われたのは正しいことではなかったと思う」と釈明する。これに対しタイアナ外相は、「(フェルナンデス発言は)受け入れられない。アルゼンチン政府にとって正しいことは表現の自由を尊重することだ」と反論する。キルチネル大統領もこれに同調。

3.25 チャベス大統領、中国への原油輸出量を2012年までに現在の約6倍の1日当たり100万バレルに引き上げると発表。

3.27 チャベス、政党一本化案を提示。ポデモス党(PODEMOS)、皆のための祖国党(PPT)、ベネズエラ共産党(PCV)など主要政党からは反発の声があがる。

3月 チャベス、16の大規模農場が接収されたことを明らかにする。これらの土地は農地改革計画にもとづいて再分配される予定。

3月 欧州と北米からの海外需要に応え、露天掘り炭鉱の生産が拡大。総輸出額の12%を超えるに至る。政府は欧米籍の鉱山会社との契約を遵守すると発表。これに伴い環境汚染が深刻となり、先住民から強い抗議の声。フェリア環境天然資源相も増産反対の立場を明らかにする。

07年04月

4.12 チャベス大統領、クーデター5周年記念式典で演説。世界銀行に対する債務を完済したと発表。またベネズエラが債務の一部を肩代わりしたことで、アルゼンチンがIMF債務を完済できたと強調。ベネズエラが「他国を支援する金融センターになった」と述べる。

4.19 第一回南米エネルギー首脳会議、「マルガリータ宣言―南のエネルギー統合の構築」を採択。「南米諸国同盟」(UNASUR)の創設で合意。バイオ燃料をめぐるベネズエラとブラジルの「対立」は、チャベスが「諸国民の生活に否定的影響を及ぼさない限り、バイオ燃料に反対しない」と述べることで決着。

4.21 米連邦裁判所、ポサダ・カリレスを保釈する決定。ベネズエラのマドゥーロ外相は「国際法に対する米国のクーデターだ。ブッシュ政権はこのテロリストの共犯者だ」ときびしく批判。

4.28 「米州ボリバル代替構想(ALBA)」第五回首脳会議がベネズエラ西部のバルキシメトで開かれる。キューバ、ニカラグア、ベネズエラ、ボリビアの他、六カ国(エクアドル、ウルグアイなど)がオブザーバー参加。

チャベスの開会演説: ALBAは諸国民の熱情から生まれた。ALBAではどの国も平等だ。資本主義のもたらす貧困や圧制から日ごと離れゆく異なる世界を作ろう。そのためにエネルギー資源や医療、教育分野などでの協力関係を強化しよう。ベネズエラは石油代金の一部をALBAの事業推進の基金に積み立てる。中国も「大戦略基金」(60億ドル)の設立に合意した。

4.29 ALBA首脳会議、「利己的な民族主義ではなく、諸国民間の広範な連帯」にもとづき、域内の変革を生み出すとする「共同宣言」を採択。チャベス大統領、ALBA加盟国のキューバ、ボリビア、ニカラグア3カ国とハイチに対し、石油を半額で供給すると発表。

4.29 ALBA首脳会議にあわせ開かれた「第一回社会運動集会」、ALBAの原則を支持するとした最終文書を採択。挨拶に立ったチャベス大統領は、「国民不在のALBAはALBAではない。諸国民を団結させるのは大統領ではなく、自覚にもとづく諸国民自身だ」と強調する。

4.30 チャベス大統領、国際通貨基金(IMF)と世界銀行から脱退する意向を表明。正確には世界銀行の仲裁組織である投資紛争解決国際センター(ICSID)からの脱退。

07年05月

5.01 ベネズエラ政府、オリノコ川デルタ地域の重質油地帯で国際石油資本が参加する四つのプロジェクトが、PDVSAの全面管理下に入ったと発表。チャベス大統領は「石油主権を完全に回復した。21世紀型社会主義のための真の国有化だ」と強調する。オリノコ地帯は、2千億バレルの重質・超重質油を埋蔵する世界最大級の油田で、生産能力は60万バレルとされる。

5.27 ベネズエラ最大の民放テレビ局RCTV(ラジオ・カラカス・テレビ)へのチャンネル割り当て(2チャンネル)がはずされる。チャベス大統領は、「RCTVは国家に対する脅威であり、放送免許を更新しない」と発言。RCTVは衛星とケーブルによる放映を継続。

各テレビ局の平均視聴率: 反政府系RCTV:35から40%、ベネビシオン20から25%(このチャンネルは中立系に分類されているが、メディア王グスタボ・シスネロスの所有する放送局であり、4月クーデターのときに果たした役割は十分に反政府的であった)、政府系のVTV15から20%、最も反政府的なグロボビシオン:10%など。

5.28 RCTVに代わる放送免許が政府系の「ベネズエラ社会テレビ放送」(Televisora Venezolana Social:略称TVes)に与えられる。テベスの発音は、"Te ves"(あなたが映る)に通じる。

5.29 政府当局、米CNNとベネズエラのニュース専門局グロボビジョンを強制捜査。通信情報相は、これらの放送局がチャベス大統領の暗殺を教唆していると発言。チャベス大統領とアルカイダの関係を連想させるような映像を流したとしてCNNテレビを起訴する。

5月末 この1ヶ月で570万人がPSUVに入党の申し込み。党は政治綱領を広めるための「促進者」2万5千人を組織し、勢力拡大を目指す。

07年06月

6.02 親米反共派学生がRCTVへのチャンネル割り当て廃止に抗議しデモ。警官隊に白バラをささげるなどのパフォーマンス。親チャベス派は、「免許を戻すな」(No volverán!)と叫び対抗。

6月 米系石油会社二社(エクソン・モービルとConocoPhilips)、オリノコ流域での操業権をヴェネズエラ政府に渡すことを拒否。

6月 チャベスは「もしオリガルキーが脅しや操作、不安定化国策で我々をとめることができると思っているなら、それは大間違いだ。彼らは工場でも学校でも、真に政治的な人民による反撃に会うだろう」と批判。

チャベスのグラムシ論: チャベスは演説の中でグラムシを引用。真に歴史的な危機が発生するのは、何かが滅びつつあるのだが、未だ滅び終えていない時、それと同時に、何かが生まれつつあるのだが、未だ生まれ終えていない時である。このとき変革のヘゲモニーを握るのは階級的陣地としての“歴史的ブロック”である、と述べる。最後は「社会主義の祖国(Patria, socialismo)か死か、ベンセレーモス!」と締めくくる。民衆は「次の陣地はグロボビジョン(4月クーデターを主導したテレビ局)だ!」と唱和する。

07年07月

7.02 イランを訪問中のチャベス大統領、「カラカスとテヘランは協力して多極化した新しい世界を創る」と語る。

7.03 チャベス大統領、ブラジルとパラグアイの両国議会が早期に加盟を承認しなければ、メルコスルへの加盟申請を取り下げると示唆。

7.03 チャベス、この4年間でエクアドル、ペルーとの貿易額が5倍、コロンビアとも3倍になったと強調。「反ベネズエラのキャンペーンがいくら強まろうが、われわれは国民と経済の新しい統合へ前進し続ける」と述べる。

7.13 チャベス大統領、憲法改正法案を発表。

7.15 米国のバーンズ国務次官がウルグアイ、チリ、ブラジルを訪問。「キューバとベネズエラは、民主主義が統治するこの大陸において例外だ」と発言。これに対しOASのインスルサ事務総長は、「民主主義は今もベネズエラでしっかりと生きている。同国を孤立させる策動はばかげている」と批判。

7.16 放送免許の更新を拒否されたTV局「RCTV」が、ケーブルTVおよび衛星放送として放送開始。

7.17 エクアドルのホルヘ・アルバン資源相、ベネズエラとの協力により一日あたり最大30万バレルを処理可能な精油所を建設すると発表。

7.20 チャベスとオルテガ大統領、15万バレルの生産能力を持つ「ボリーバルの至高の夢」精油所の建設で合意。この精油所はレオン近郊に建設され、アルバ・ニカラグア社(ALBANISA)が運営に当たる。

7.20 キューバのカストロ議長、ブラジルをEUや米国の利益代理人だと批判。背景にブラジルがベネズエラのメルコスール加盟に反対の立場をとり続けていることへの苛立ち。

7.23 チャベス、「社会主義都市」の創設にあたりテレビ演説。「よこしまな資本主義の考えと戦い、アメリカ帝国主義と戦い、ボリーバル社会主義の理想を実現する」と宣言。

社会主義都市: 実態としては環境に配慮した労働者向けのニュータウンのようで、住宅難を解決するためのミシオン・ビジャヌエバ計画の一環となっている。当面の予算は約2億ドルと意外に控えめ。第一号がカラカス郊外北部に建設されるカミノ・デ・ロス・インディオスで、最終的には4~5階建てのアパート4280棟が建設される予定。

7.24 チャベス、恒例のテレビ番組で、「われわれを攻撃しに来た外国人(記者)はこの国から排除されなければならない。これは国威の問題だ」と述べる。

7.25 チャベス、ホンジュラスのロドリゲス枢機卿(テグシガルパ大司教)を”帝国主義者のピエロ”と非難。ホンジュラス国会はチャベスに謝罪を求める決議。

7.26 チャベス、「第6の権力」の創設を呼びかけ。現存する五つの権力-行政、司法、立法、公民、選挙裁判所に加え、人民権力を加えるというもの。また私有財産を尊重しつつ、社会主義経済への変革を保証するための経済改革を呼びかける。

人民権力: その母体としては、各地の民衆居住地区に形成された住民委員会(連合町内会規模)が措定されている。地域ボスに支配される議会に対抗し、革新自治体首長を草の根から支え、地域民主化の推進力をなっている。

7.26 VAMOSのラファエル・シモン・ヒメネス代表、「ラジオ・ウニオン」の討論会に参加。「大統領の無期限再選に反対し、チャベス支持者らも含む広範な戦線を生み出す」と述べる。ADのビクトル・ボリーバル委員長は、「政治権力の交代、表現の自由、自由な教育、大学の自立、更に国軍の諸機関において、根底となる民主主義の原則が損なわれる」と非難。新時代党のアルフォンソ・マキナは、「権力の行使を手にした者の虚栄心を満足させるだけの改革である」と非難。

7.27 チャベス派の週刊誌「テマス」、「チャベスが立候補するとしても、それは民衆に選択肢を与えるだけのことである。大統領になるかどうかを決めるのは選挙であり、無期限というのはチャベスの勝利を暗黙の上に了解しているからに他ならない」と反論。

7.28 野党勢力が「憲法改正を阻止するための広範な戦線」の形成を呼びかけ。勇敢な国民同盟党〔ABP〕、新時代党〔UNT〕、民主行動党(AD)、キリスト教社会党〔Copei〕、正義第一党〔PJ〕、ベネズエラ社会組織前進運動党〔VAMOS〕、社会主義運動党〔MAS〕などが結集。

7.31 チャベスの盟友バドゥエルが国防相を辞任。チャベス路線を間接的に批判。

7月末 ホルヘ・ロドリゲス副大統領、テレビ番組「Diálogo Abierto」で野党に反論。「憲法改正は公平、平等及び公正を促進する。野党はありえない独裁について批判しているにすぎない」とかわす。

07年08月

8.06 メルコスールへの正式加盟を目指すベネズエラのチャベス大統領、アルゼンチンを訪問。アルゼンチン債の購入やエネルギー投資で関係強化をうたう。

8.08 チャベス大統領、チャデルトン元外相を駐メキシコ大使に任命。メキシコとの2年ぶりの関係改善への意思を強調。

8.17 ワシントン・ポスト紙、チャベスはオイルダラーで「改革」を進め、独裁者への道を固めつつあると報道。

8.19  チャベス大統領、米インターネットによるカストロ議長の危篤・死亡報道を否定。

8.22 ベネズエラ議会、憲法改正に関する第一回審議。342条のうち33条を改正し、大統領の無制限再選や”21世紀の社会主義”化などを盛り込む。

8.31 チャベスがウリベにFARCとの人質交換交渉の仲介を提示する。

8月 チャベス、憲法に対する33の変更点を提案。議会に憲法改正案を提案すると発表。提案によれば、大統領の再選は「ベネズエラ国民が望む限り」無期限で認められ、任期は6年から7年に延長される。「継続的な再選は大統領にのみ許される」とし、無期限の再選が知事や市長らにも適用されるべきであるとする意見を拒否。

8月 チャベス、公務員の給与制限を示唆。「我々は“巨大な給料”と闘わなければならない」と述べ、1万4000ドルの月給を受け取っていた国営通信会社CANTVの旧社長を例に挙げる。

8月 チャベス、5つの所有形態を憲法で認めると発表。五つの形態とは、①公共(政府諸機関の専有)、②社会的(全体としての国民所有)、③集団(特定の社会集団による所有)、④複合(いわゆる第三セクター)、⑤民間をさす。

07年09月

9.06 ALBAを構成する4カ国がマナグアで会談。ALBA銀行の設立について基本合意。世界銀行と国際通貨基金(IMF)に対する依存関係から脱却し、社会・経済発展において互いに助け合うことを目的とする。加盟国は経済・社会発展のための優先事項を定めることができる。

9.06 キューバのフェリペ・ペレス・ロケ外相は、ALBA銀行について、「私達が団結して行動すれば強大な勢力になれる。それは机上の理論ではなく、私達の諸国に利益を与える確固とした計画である」と述べる。

9月 UNTのスターリン・ペレス議長(C-CURA派)、200万人の組合員に対し、PSUVへの入党を訴える。このため職場・地域で拡大運動組織の結成を促す。

UNT内には親チャベスのFSBT(労働者ボリーバル社会主義勢力)=ハコボ・トレス・デ・レオン派と、労働運動の自立を訴えるC-CURA(階級的・統一的・革命的・自主的な道)=オルランド・チリーノ派の二つの潮流があり、しばしば対立する。このほかにも三つの分派があるといわれる。

07年10月

10.14 カストロ議長、チャベスのTV番組「こんにちは、大統領」に電話出演。順調な回復ぶりを示す。

10.15 キューバ訪問中のチャベス大統領、キューバでの石油探査など14協定などに調印。

10.23 カラカスで憲法改正に反対する学生数千人がデモ。一部は警官隊と衝突する。

07年11月

11.01 カラカスで憲法改正反対を叫ぶ学生と警官隊が衝突。(10.23に次ぐもの)

11.02 国会、憲法改正法案を可決。大統領の無制限連続再選や労働時間の短縮(1日6時間労働)など盛り込む。

11.08 第17回イベロアメリカ首脳会議(22か国)、サンチアゴで開幕。”社会的結合”を中心テーマとする。

11.10 イベロアメリカ首脳会議閉幕式。スペインのサパテロ首相がチャベスのアスナール前首相非難に謝罪を求める。フアン・カルロス国王はチャベスを指差して”静かにしろ!”と発言。(youtubeを見る限りでは、カルロス国王は間違ってはいない、確かにチャベスはうるさい。とはいえ国王も大人気ない。ルール上で言えば一応は謝るべきだろう。しかしチャベスも反省すべきである。まぁラテンだな)

11.14 チャベス大統領、イベロアメリカ首脳会談でのスペイン国王の”黙れ”発言に謝罪を要求。

11.15 チャベス大統領、「平和目的のために核開発する」と発言。原発のことをさしているようだ。

11.25 ウリベ大統領がチャベスによるコロンビア革命軍との人質仲介交渉を打ち切るようもとめる。チャベスはウリベに反発し、相互関係を凍結すると表明。

12.02 憲法改正案、国民投票で小差で否決される。チャベスは、「さしあたりの敗北だ」としつつ、「われわれは何も失っていない。責任の追及はしない」とのべる。そして「もっと成熟し、自分たちの社会主義を建設し続けなければならない」と語る。

12.21 キューバでペトロカリベ首脳会議が開会、チャベスが220億ドルの投資を表明する。

12.26 チャベスがFARCとの人質解放交渉が成立したと表明、コロンビアも作戦を承認していた。チャベスの調停を受けたFARCが6人の人質を解放。

12.28 南米開発銀行「バンコデルスル」が発足、ベネズエラを主に7カ国が共同設立する。

 

2008年

1.04 ベネズエラ沖のカリブ海で小型旅客機が墜落、乗客乗員18人が死亡する。

1.05 チャベスが内閣を大幅改造、人心を一新し「21世紀の社会主義」建設を志向

1月 コロンビアのウリベ大統領、「左翼ゲリラをテロリスト扱いしないで反乱分子と見るべき」とするチャベスの要請を拒否。この後両国の関係は悪化。

1.28 アルタグラシアで誘拐犯4人が逮捕、30人以上の人質が解放される。

2.08 ヨーロッパと米国の裁判所がPDVSAの海外資産差し押さえを命令。ベネズエラはこれに反発。

2.12 ベネズエラ国営石油会社がエクソンモービルへの原油供給停止を発表。

2.13 食料不足が深刻化、サバネタ市で住民らが食料品店を襲撃する。

2.21 ベネズエラ西部でサンタバルバラ航空機が墜落、乗客・乗員46人が全員死亡。

3月 コロンビアがエクアドル領内潜伏中のFARC幹部を越境攻撃し虐殺。チャベスはただちに軍をコロンビア国境沿いに配備。(詳細はコロンビア軍の越境攻撃事件およびエクアドル年表を参照)

4.04 ベネズエラがセメント産業の国有化を宣言、大手企業を抱えるメキシコが非難する。

7.22 チャベスがモスクワ訪問しメドベージェフと会談。協力強化を確認する。

7月 FARCの人質となっていたイングリッド・ベタンクールが解放される。コロンビア軍特殊部隊が実力で奪還したことになっているが、実際はチャベスの仕組んだ出来レースといわれる。

7.11 ウリベがベネズエラを訪問し、ベタンクール解放について報告。その後両国の緊張は若干改善に向かう。

8月 チャベス、最大手の民間銀行(スペイン人の所有)を国営化する計画を発表。

8月 メキシコ資本のセメント会社「Cemex」、ベネズエラが違法な手段で現地会社を国有化しようとしているとし、世界銀行に仲裁をもとめる。

8月 政府、食料価格統制を緩和する。急速な需要拡大により一部の食料が品不足となり、インフレ傾向におちいっていた。

9月 政府、家庭用燃料の卸売業者とガソリンスタンドの国有化を承認する。

9月 ロシアとベネズエラ、石油・ガス協力協定に調印。

9月 ロシアの軍用機がベネズエラを訪問。引き続き11月には、ロシア軍艦船がカリブ海上でベネズエラとの合同訓練を行う。

9月 ボリビアでCIAによる政府転覆の動き。ベネズエラはこの陰謀に加担したとしてカラカス駐在の米大使を追放。米国も同様の報復を行う。

10月 ベネズエラの最初のテレコミュニケーション衛星が、中国から打ち上げられる。

11.23 一斉地方選挙。野党連合はカラカス市長など大都市の選挙で勝利する。知事選ではチャベス派が22知事のうち17知事を確保。

11月 ロシアとベネズエラ、核の平和利用に関する協力協定に調印。

12.01 ロシアとベネズエラがカリブ海で軍事演習。

 

2009年

1.14 ベネズエラとボリビアがガザ侵攻に抗議しイスラエルとの断交。

1.29 自動車組立工場で籠城スト、警官の発砲で2人死亡、6人が負傷する。

2.12 カラカスで反チャベス派の学生らが集会。無制限の再選の可能性をふくむ憲法修正案に抗議する。

2.15 国民投票。大統領や州知事などの再選制限を撤廃する憲法改正案が承認される。

2月 大統領の再選規定を改正する国民投票が行われる。再選禁止規定廃止の提案が承認される。これによりチャベスの2012年以降の出馬が可能になる。

3.19 国内最大手銀行のバンコ・デ・ベネズエラが国有化される

3.21 政府予算を当初比6.7%削減、付加価値税を12%に引き上げる。

4.06 チャベス大統領が来日、オバマの「核兵器なき世界」を評価、対米改善に意欲をしめす。

4.18 トリニダード・トバゴで米州首脳会議、オバマとチャベスら反米首脳が関係改善

5.15 穀物最大手カーギルの製麺工場など生産拠点数ヶ所を価格統制違反を理由に収用。ほかにも価格統制逃れの精米工場に軍を派遣し国家管理下に置く

5.21 鉄鋼関連企業6社の国有化が発表される

6.22 アメリカとベネズエラが大使関係復活で合意。

7.03 ラジオ240局の放送免許を取消し。

7.21 ホンジュラス暫定政権がベネズエラと外交関係を断絶、大使館員の退去を命令

7.28 ベネズエラがコロンビアとの関係を凍結。駐コロンビア大使を召還すると発表

7月 コロンビア、麻薬根絶作戦のためとして、米軍のコロンビア軍基地使用を許可。

8.10 エクアドルで南米諸国連合首脳会談、コロンビアの駐留米軍増強を巡り紛糾

8月 コロンビア政府、ベネズエラがFARCに武器を供給していると非難。チャベスはコロンビア軍が国境地帯を徘徊していると反論。

9.10 チャベスがメドべージェフと会談、南オセチアとアブハジアの独立承認を表明

9.11 レプソルが大規模なガス田を発見、推定埋蔵量6000億立法㍍

9.13 チャベス大統領が「平和利用」核開発を表明、ロシアが技術協力

11.24 イランのアフマニネジャド大統領がベネズエラ、ブラジル、ボリビアを歴訪。

11月 米国とコロンビア、軍事基地の長期使用に関する協定を結ぶ。チャベスは「コロンビアのパラミリタリーが暴力行動を強化している」として、国境地帯に1万5千人の兵を配備。

2010年

1.08 チャベス、ベネズエラの通貨ボリーバルの17%切り下げを発表。1ドルが2.15から4.3ボリーバルに。奢侈品の輸入に関しては50%の関税を課す。これにより石油輸出の利益押上げを狙う。

1.11 生活必需品の価格監視を強化、不当値上げで70店を営業停止。

2.08 電力不足でベネズエラ政府が全土に非常事態宣言。カラカス首都圏で隔日4時間の計画停電実施。国民に10%の節電をもとめる。

2.18 ベネズエラで歴史的干ばつ。政府が水道使用量制限と超過罰則料金制度を導入。

4.02 ベネズエラとロシアがオリノコ川流域油田開発、原発プラント開発で合意

6.10 ベネズエラでダム水位が上昇し、半年ぶりに電力供給制限が解除される。

7.16 チャベス大統領、ボリーバルは毒殺だったと主張。死因を究明するために、国立霊廟にまつられているの遺体を発掘させる。

7.22 コロンビア、ベネズエラがFARCの活動黙認と批判。チャベスはコロンビアとの断交を発表。

8.10 コロンビアとベネズエラの両大統領がサンタマルタで会談、国交回復で合意

8.23 ベネズエラ南部ボリバル州の金鉱で崩落事故、6人死亡、軟弱地盤違法採掘

9.26 ベネズエラ国会議員選挙、チャベス与党の統一社会党が過半数を獲得。

10月 ベネズエラの爆弾テロ犯ラウル・ディアス・ペニャが脱獄。米国に逃亡する。ディアスは、2003年2月スペイン通商事務所とコロンビア領事館で爆発物を爆発させた。

12.10 ベネズエラを大規模な水害が襲う。38名の犠牲者を出し、被災者が13万人、国土の40%が被害を受ける。

12.14 コレア・エクアドル大統領がカラカスを訪問。チャベスと共に被災地を視察する。

12.15 コレア大統領はベネズエラからコロンビアに移り、カリでサントス大統領と合流し共に被災地に飛ぶ。この機会に両国とも相互に派遣する大使の信任状を受領し、約210ヵ月ぶりに、外交関係を全面的に復活した。

12.17 議会は第三次の授権法(Habilitantes)を採択。新議会では与党が2/3を失うことから、駆け込み申請をしたというのが真相とみられる。

12.30 ベネズエラ中銀が通貨ボリバルを切り下げ、1ドル=5.3ボリバル

2011年

1.05 9月の総選挙で選出された議員による新議会が発足する。

 

2012年

9月 ベネズエラ、OASの下部組織である米州人権法廷(CADH)からの脱退を宣言。爆弾テロ犯ラウル・ディアスを擁護する判決に抗議し、この機関が米国寄りの二重基準で動いていると非難。しかしOASそのものへは残留すると表明。

2015年

総選挙で野党が勝利。政府提案がことごとく否決され、行政が麻痺状態に陥る。

アメリカ、ベネズエラを「国の安全保障への脅威」とみなす大統領令を発布。

2016年

8月 米国裁判所、ネストル・レベロル内相を麻薬組織との関連で告発。

11月 米連邦裁、マドゥロ大統領の妻シリア・フロレスの2人の甥が、麻薬密売で有罪と判決。

2017年

1月 ドミニカでCELAC総会。出席した大統領は、33か国のうち12か国にとどまる。大きな4つの国(ブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビア)が不参加。

2月14日 米政府、ベネズエラ副大統領を麻薬組織と関係あると告発。

3月 最高裁、国会の権限を自らのものにするとの判決。

4月1日 民主統一会議(MUD)は総選挙の早期実施をもとめ、波状的な抗議行動を開始。「ププトフ爆弾」(糞尿を詰めた壜)や「ペンキ爆弾」を治安部隊にたいして投げつけるなど、過激化の様相を呈する。

4月 野党の抗議行動が西部の、メリダ州、ララ州、スリア州にも拡大する。カラカスでは連日デモが続く。

4月24日 野党は「大ピケット」を実施。首都の主要な高速道路の区間を封鎖する。

4月26日 米州機構、ベネズエラ問題に関する外相会議の開催を決定。アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、米国など19か国が賛成した。これにたいしベネズエラ、ボリビア、エクアドル、ニカラグアなど10か国が反対。

4月26日 ベネズエラ政府は米州機構からの脱退を表明。

5月3日 マドゥロ、憲法改正のための制憲議会(ANC)を招集すると発表。500人の議員は、選挙ではなく社会セクターなどから選ばれるとする。MUDは総選挙を遅らせるための策略とし提案を拒否。

5月4日 ボルヘス国会議長がアルマグロ、トランプ政権のマクマスター国家安全保障問題補佐官、マイク・ペンス副大統領と相次いで会談。

5月5日 チャベスの写真を踏みつけ銅像を倒すなど、抗議行動のチャベスへの怒りがむき出しになる。

5月5日 エンリケ・カプリレス、国軍兵士85人が抗議行動への「弾圧」に反対して逮捕されたと語る。与党指導者カベジョはただちにこれを否定。

5月6日 ベネズエラ司教会議、憲法制定会議は民主主義にとって危険だとしてこれを拒否。

5月8日 米州機構常任委員会、事務総長の提案した「ベネズエラ問題を討議する外相会議」の延期を決定。

5月8日 反政府デモが警察と衝突。深夜まで衝突が続く。この日、2人が死亡。3月からの死亡者は39人に達する。参加者たちは最高裁(TSJ)本部に向かおうとしたが警察と軍により阻止される。デモ指導者は、「コレクティボス」(政府支持グループ)が発泡したと主張。

5月9日 政府と野党の18グループが会談。憲法制定会議のプロセスを討議。さらに政府は、民主統一会議(MUD)に対しても参加を呼びかける。

5月10日 憲法制定会議(ANC)の招集を支持する行動もおこなわれ、数千人の漁業者と農民たちが参加。農業生産・土地省(MPAT)本部前で集会を開いた後、ミラフロレス宮殿まで行進。