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ローテータコントローラ(回転制御部)
< Rotator Controller Turn Controll >
ローテータコントローラ(回転制御部)の物理的な位置は下図のとおりです。ローテータ制御のうち、右回転・左回転および回転速度の制御をパソコンから行うもので、方位角度の検出機能は含まれていません。これらの制御信号は、ロータに直接接続するものではなく、ローテータに付属のマニュアルコントローラに与え制御します。以降の説明に混乱を与えないために、製作した基板は単に”ローテータコントローラ”、接続先のコントローラは”マニュアルコントローラ”と記すことにします。動作の詳細は回路図の項で説明することにし、ここでは概要のみ説明しておきます。パソコンから8Bitの制御データをCOMポートを介してシリアルインターフェースアダプタに送出します。シリアルインターフェースアダプタは受け取ったデータを8Bitパラレルデータに変換しローテータコントローラに送ります。ローテータコントローラはこのデータをハードウェアデコードし、右回転(ON/OFF)・左回転(ON/OFF)の信号をマニュアルコントローラに出力し、ロータの回転制御を行います。一方、回転速度についてはアナログ信号なのでデコードはせず、D/A変換を行い、0V(低速)〜5V(高速)の連続電圧としてマニュアルコントローラに出力し、速度制御を行います。なお、D/A変換回路については"VBと製作で学ぶ初めてのパソコン応用工作 ( CQ出版社 )"に掲載の回路を使用させていただきました。 | ||
製作したローテータコントローラ(回転制御部)です。IC8個と入出力コネクタで構成されています。2.54mmピッチのユニバーサル基板を使用し、配線はすべてジャンパリングで製作しました。ICは、トラブル時に簡単に交換できるよう全てICソケットを使用して装着しています。左角のフラットケーブル接続コネクタはシリアルインターファエースアダプタ接続、右端中央の白いコネクタはG-1000DXAマニュアルコントローラに接続するコネクタです。 |
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回路の動作説明の前にYAESU製 G-1000DXAローテータの仕様を理解しておく必要があります。ローテータコントローラ基板を接続するために、G-1000DXAマニュアルコントローラの改造は一切必要ありません。理由は、マニュアルコントローラ背面には、外部コントロール端子が最初から装備されているからです。端子番号・機能および動作内容も公開されています。ローテータコントローラ基板はこの端子と接続し回転制御を行います。G-1000DXAローテータの取扱い説明書で公開されている内容は以下のとおりです。 |
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外部コントロール(G-1000DXA取扱い説明書より) |
外部コントロール端子 | 端子番号 | 機 能 | 内 容 |
@ | 右回転制御端子 | D端子と接続すると、ローターが右に回転します。 | |
A | 左回転制御端子 | D端子と接続すると、ローターが左に回転します。 | |
B | 回転速度制御端子 | 0V〜5Vの範囲で電圧を加えると、電圧値と比例して スピードが変化します。 | |
C | ローテータ回転角度検出端子 | 0°〜450°回転を、約0V〜(2V〜4.5V)の電圧値に 変換されます。 | |
D | アース端子 | ||
E | NC |
筆者補足: *上記内容で 450°との表記がありますが、G-1000DXAローテータは 360°(1回転)を通り越して450°まで回転するオーバーラップ機能を有しています。 |
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ローテータコントロール(回転制御部)基板は@〜BおよびD端子に接続されます。Cのローテータ回転検出端子にも配線されていますが、この端子はローテータコントロール方位角度検出部(別基板)にスルーで接続されます。このような接続方法をとったのは2枚の基板で構成されるローテータコントローラとマニュアルコントローラとの接続を1本のケーブルにまとめるためです。 |
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回路動作 上記G-1000DXAローテータの外部コントロール機能および相互の端子間接続を参照しながら回路図を見てください。また、必要に応じて、シリアルインターフェースアダプタも合わせて参照してください。制御データは8Bitですから、HEX(16進数)で "00-FF"、DEC(10進数)で "0-255"の範囲で行います。 |
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◎右回転 ローターを右回転させてみます。右回転させるためには、パソコンからHEX(16進数)で "FD"をシリアルインターフェースアダプタに送出します。このデータを8Bit2進数に変換すると"11111101"となり、CN1を介して74HC245バッファのA1〜A8端子に入ってきます。バッファの信号方向を決定するDIRは+5Vのハイレベル固定になっているため受信データはバッファを通り抜けてB1〜B8に出力されます。このデータはNANDゲートで構成された3個のデコーダ回路(シンボル:FD/FE/FF)に入ります。データは"11111101"ですから3個のデコーダ回路のうちシンボル:FDの出力のみローレベルになり、次段シンボル:RIGHTのフリップフロップがセット状態になります。結果、TR1がONになりコレクタ〜エミッタ間が導通状態になります。この状態は@端子を通じてマニュアルコントローラの右回転制御端子に伝えられ、ローターは右回転を始めます。 |
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◎左回転 同様に左回転をさせたい時は、パソコンからHEX(16進数)で "FE"をシリアルインターフェースアダプタに送出します。"FE"は8Bit2進数に変換すると"11111110"ですから、3個のデコーダ回路のうちシンボル:FEの出力のみローレベルとなり、次段シンボル:LEFTのフリップフロップがセット状態になります。結果、TR2がONになりコレクタ〜エミッタ間が導通状態になります。この状態はA端子を通じてマニュアルコントローラの左回転制御端子に伝えられ、ローターは左回転を始めます。 |
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◎停止 回転を停止させるためには、パソコンからHEX(16進数)で "FF"をシリアルインターフェースアダプタに送出します。"FF"は8Bit2進数に変換すると"11111111"ですから、3個のデコーダ回路のうちシンボル:FFの出力のみローレベルになり、結果セットされていたフリップフロップはどちらがセットされていてもリセットされます。フリップフロップがリセットされると、ONになっていたTR1もしくはTR2はOFFになりコレクタ〜エミッタ間はハイインピーダンス状態になります。この状態は@もしくはA端子を通じてマニュアルコントローラの右回転制御端子もしくは右回転制御端子に伝えられローターの回転は停止します。 |
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◎回転速度 回転速度を変化させるためには、パソコンからHEX(16進数)で "00"〜"FC"までのデータ範囲のうち目的の回転速度になるデータ値をシリアルインターフェースアダプタに送出します。この範囲のデータは3個のデコーダ回路からは無視され、右回転・左回転・停止動作に影響は与えません。データはラダー型D/A変換回路で電流に変換されOP-AMPのOUTB端子には電圧として出力されます。ラダー型A/D変換回路に直接負荷を接続すると負荷側に電流が流れてしまい、せっかく取り出した電圧が変化し誤差が生じてしまいます。このため高入力インピーダンスのオペアンプでバッファリングおよび直線増幅を行い、アナログ電圧として取り出しています。取り出された電圧はB端子を通じてマニュアルコントローラの回転速度制御端子に伝えられ、ローターの回転速度は電圧に比例し変化します。電圧が高いほど高速になり、低いほど低速になります。また電圧は与えるデータ値に比例します。データ範囲はHEX(16進数)で"00"〜"FC"なのでこれを10進数に直すと0〜252となり、結果253ステップの回転速度の制御が可能になります。ちなみに最低速のデータ"00"を与えるとD/A変換後の電圧はほぼ0V、最高速のデータ"FC"を与えると約4.9Vの電圧がOP-AMPのOUTBから出力されました。この電圧はマニュアルコントローラの外部コントロール端子Bの機能とほぼ一致しており、G-1000DXAローテータが持つ回転速度制御端子の機能を、ほぼフルスィングで制御できることを意味しています。 |
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◎データ送出順序 右回転・左回転用のデータである"FD"もしくは"FE"を送出すると、回転速度もこの値に沿ったスピード(ほぼ最高スピード)で回転を始めます。理由は"FD"もしくは"FE"のデータもA/D変換され、回転速度制御端子に出力されるからです。回転速度を変更したければ、このあと回転速度制御のデータ値"00"〜"FC"の範囲のデータを送出します。逆に、回転速度制御のデータを先に送出したあと、右回転もしくは左回転のデータを送出した場合、、最初に送出した回転速度のデータは保持できず意味を失います。したがってソフトウェアの記述は、右回転もしくは左回転のデータを送出したあと、回転速度のデータを送出します。停止データはどの位置で記述してもかまいません。 |
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◎その他 発光ダイドードLED1およびLED2は基板製作時にフリップフロップの動作を容易に確認するため取り付けたもので、なくてもかまいません。またOP-AMPのLMC6682は2回路モジュールされていますが1回路モジュールのLMC6681でもOKです。この場合端子は、8P DIPとなります。フリップフロップは74LS20を2個使用していますが、74LS00を使用した方が1個のICで済むためベターです。 |
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参考に基板上の部品配置図を以下に示します。
参考に今回の製作基板を含めた全体の接続イメージを下図に示します。
とりあえずこの基板を製作すると、左右回転・停止・回転速度の制御がパソコンからできるようになります。つまりマニュアルコントロールができるわけです。(もちろんプログラムを作成しなければ動きませんが・・・) この基板は方位角度検出の機能を持たせていないため、プリセット動作をさせることはできません。プリセット動作を実現するには、もう一枚の基板(ローテータコントローラ・方角度検出部)が必要になります。しかしこの基板だけでも、パソコン制御でローターが回転するわけですから感動ものです。 | ||
◎ このコーナーで公開した自作品は、筆者の単なる個人的な趣味で製作したものです。
本機製作により発生したいかなる不具合もしくは損害について、筆者が責任を負うものではありません。
◎本機の製作にあたり、JA8JCR(松田OM)から技術的な支援をいただきました。TNX .
◎引用文献:VBと製作で学ぶ初めてのパソコン応用工作 ( CQ出版社 )
:トランジスタ技術(2005年4月号・5月号) ( CQ出版社 )
:G-1000DXA ローテータマニュアル(八重洲無線株式会社)