チョウゲンボウ



  
  

 
   平 野  正

川原でチョウゲンボウを見かけてから早朝散歩で観察を続けた。
鳩と同じくらいの大きさだが鳩と違って所謂鷹派だ。(タカ目ハヤブサ科)
口絵の顔のように戦闘的である。
小型だが猛禽に属す。
同じ木に留まろうとする鳩やカラスを追い払う。下にいるカモに攻撃をかける。
羽を広げると大きく見える。
其の羽が柔軟性を持ち動きはヒラヒラと見える。
山中の崖の横穴に営巣していたが最近は街に出てきて山梨や長野ではビルの
換気口に住むという。
冬鳥に分類されている。
東葛地区では印西や我孫子の河原や畑の広がる場所の建造物に冬鳥として来
るという。
留鳥として通年住んでいる説もある。
平成17年にはたまに成鳥を見かけたが平成16年に観察した巣には戻らなかった。
枝を組み合わせて巣を造る事はしない。他鳥の巣を利用する事はある。
建造物の隙間に入り込み巣とする。
このつがいはカラスの古い空いた巣を利用していた。
オスの頭の毛は青灰色でお坊さんの剃った頭の色に似ている。昔、長元というお
坊さんがいてその人に似ているので長元坊と名付けられたと言われても可笑しくな
い風貌である。
餌は川原や畑に居る雀、椋鳥、ヒバリ、せきれいetcの小鳥や野ネズミ、昆虫を食
べる。秋は殿様バッタを良く食べる。
ホバリング(停空飛翔)空中で羽を小刻みに動かし一点に留まり頭を下げ獲物を探
す動作をする。
また滑空をして獲物を狙っている。
狩をしている時は人が居ても眼中にないようだ。私の頭上の直近を通り越して2m
後ろでネズミを捕まえたのを見た。この時は木からいきなり跳んで後は滑空して獲
物を羽で覆うようにバサッと捕まえた。
チョウゲンボウ餌を持って飛び立つ
チョウゲンボウの離 陸 の 瞬 間
チョウゲンボウのホバ リング


ホバリングの連続写真

上の写真の如く空中に停止し小刻みに羽を動かし地面を見据え獲物を発見すると
急降下して足で捕獲する。
チョウゲンボウの狩 猟
高高度から勢い良く急降下をし捕まえる方法と地上1.5m位の所でホバリングし
軟着陸で捕獲する方法がある様である。上図はいずれも野鼠を獲得した。

上段の3枚は高高度からの急降下で初めは尾を仕舞い込み猛烈な勢いで落下
する。チョウゲンボウは他鳥に比べ尾は長い。

地上近くなると尾を徐々に出し獲物捕獲前には翼と尾を大きく広げ急に減速する。
チョウゲンボウ百態
       交尾 獲物を獲得直前(ザリガニを捕る)       毛繕い
腹面は白い,尾先端は黒帯脚の筋肉と尾を広る筋肉が発達   尾は頭と同じく青灰色 大きなネズミを持っている
羽は初列雨覆で折れる。
 飛んで(羽を挙げる瞬間
飛んで(羽が頂点迄挙がった   飛んで(振り下ろされる羽
腹側は白く茶色の縦縞が入っている。
背中は茶色で黒班がある。
交尾は良く見かける。交尾で情感を感じたのは写真の時だけである。其の前後
暫く寄り添っていたが他の場合はオスが飛んできていきなり乗っかる感じであ
る。メスは尾を上げジットしているところに背後からオスが飛び乗る様だ。
チョウゲンボウ食べる
野鼠の毛皮を剥ぎ肉片を 喰いちぎり2、3回舌の上 で回し美味そうに飲み込む。
チョウゲンボウ繁   殖
チョウゲンボウは巣は造らない。崖の小さな横穴や建造物の隙間を巣とする。下の写真は古いカラス?の巣を利用している。
       誕生       生後3日       生後8日
     生後14日      生後21日      生後21日
チョゲンボウ給   餌
足に野ネズミを持った♂が巣に帰る。子供達は争って餌に集まる。
チョウゲンボウ育児の経過
X月の末にメスが巣に居る時間が長い事に気が付いた。
抱卵は約一月であること。雛が孵って四週間とプラス数日で巣立つ事を読んだ。
予測した時期に雛は孵った。
真っ白なふわふわしたものがメスの給餌により育っていく。
二週間経つと白い毛の下に茶色い毛が目立ってくる。
三週間すると見かけは成鳥に近い。中学生という所か?
餌は専らオスが捕ってきてキーンキーンと合図をするとメスが巣から取りに来る。
メスが一旦餌を受け取り直ぐに巣に行かないで他所で調理をして巣に戻り給餌
をする。
オスが足でしっかり確保したネズミをメスは口ばしで咥えて運ぼうとする。ネズミが
大きすぎるとメスが落とし獲物を逃がすことがある。
失敗の次の時はオスが調理してから直接巣に餌を運ぶようである。
三週間目になるとオスが餌を丸ごと巣に置いてきて子が勝手に食べるようだ。
其の頃から常時巣にいたメスは巣からチョット離れた所に留まりあまり動かない。
メスは今までの疲労を静養で取ってる感がある。
平均4〜5羽の雛を育て多い時はネズミ50匹を一日に必要とするという。川原には
気が付かないが何百又は何千のネズミがいる事になる。良くシートを敷いて食事
をしながら団らんしている人達がいるがネズミ、モグラに気をつけなければいけな
い。
チョウゲンボウ育児中の餌の受け渡し。
背中を見せるオスの足にネズミがある。♀が(羽
ばたいている方)取りに来る。
  メスがネズミを咥えて給餌の為に飛び去る。力
の強い足で持てば良いのにと思う。
チョウゲンボウ幼 鳥
  巣立った幼鳥。片足で立つのは習性らしい       同背後側(生後29日)
    怯えた目をしたこの鳥が・・→ 生後40日小鳥(餌)の羽をむしり飛ばして食事をしている
ある日巣で羽ばたいている幼鳥がいるなと観察したら次の日幼鳥が一羽いなくなり四
羽いた子供が次々といなくなった。
そろそろ巣立ちかなと思っていて目の前で巣立ってくれると良いと願っていたが知ら
ぬ間に子供達は居なくなった。
探し回ったらコンクリートの上でじっとしてる子供を見つけた。その姿を見て未熟な体格で
外敵から身を守り餌を自分でとり親の庇護なしで生きていけるのかなと心配になった。
人間は幾つになっても働かない者が増えているというが動物はあれだけ懸命に子育
てしていても時期が来ると子供が命を張って生きるように突き放す事は少しは見習う
べき事か?。
生後40日の姿を見て逞しさは未だ無いが自然界で充分やっていけると思った。
生きる事を基本に成長する動物の生態は無駄が無い。
山奥の断崖絶壁に住んでた鳥がビルを断崖と見立てて都会に住みだした。
餌の豊富な事か、天敵からの脱出か、住まいの堅牢さの為か謎である。


                平成16年5月記

チョウゲンボウ2