依然として僕の右側だけを歩く少女に疑問を持つのは、間違いではないはずだ。
しかし僕は、知ってはいけない事を知ろうとしているのかもしれない。
本人が言わない間、秘密は秘密であり続けるのだから。

だが僕は、付き纏われる身ながらに考えたのだ。
形はどうであれ、これだけ一緒にいるものの事を、こんなにも知らないのは可笑しいのではないかと。










フ ラ ジ ャ イ ル ・ ハ ニ ィ [ 3 ]










「あ、セブルスはっけーん」
いつもの声がする。いつも、自分の左隣から聞こえてくる声が。
どこにでも…そう、今のように、図書室にいても聞こえてくる声である。
いくつもの長机の間を抜け、そこかしこで本や教科書、羊皮紙に向かう生徒達の姿も眼に入らないように通り過ぎ、真っ直ぐに僕のいる方へ、やや早足で歩いてくる。
ブラックの「近づくなよ」という台詞と睨む眼が一瞬、の映っている僕の視界にオーバーラップした。
しかし、これはどう考えても不可抗力であろう。軽く頭を振った。今日は頭痛がない。

遠くに満面の笑顔が見え、その笑顔がだんだんと近づいてきて、ちょこんと僕の左に座る。
いつもの事なのだ。よく分かっている。
いつもある事だというのに、いつから、そういう事になったのかは分からない。

いつ僕らは互いの姿を、互いのそれと確認できるようになった?
いつ僕らは互いの名前を覚えた?
いつ僕は、がいつも笑っているのだという事に気付いた?

(…いつから、お前はこうやってついて来るようになった?)

「覚えてないかぁ」
すぐ隣で、少し笑い声を含んだ声が聞こえた。どうやら、頭だけで考えていると思っていた言葉は口から出ていたらしい。
「覚えてない、とは?」
「セブルスには、なんでもない事だったんだね。でもあたしは…」
「待て。僕が何を覚えていないだって?」
覚えていないも何も、何を覚えていないのかも覚えていない。得意な魔法薬の調合法なら、そらでも言えるのに。
はまた笑って、口を開いた。

「おくすり」
「あ…」


切れかけだったシナプスが、脳の中で繋がった。











やっぱり短いです。元はこの話、次の話とまとめて1話になってたんですが
中途半端に長かったので2つに分けてしまいました。
そしたらどちらも中途半端に短くなってしまったという…どうしようもないなぁもう(泣)


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