「考える会」結成に至る経過については、会発行の第1集「神戸高塚高校事件を考える」に鈴木英喜代表が書いていますように、事件前には学校で、生徒を家畜呼ばわりする言葉の暴力の容認や、遅刻をすると校庭を走らされるとか、女子生徒は生理の日でも水泳をさせられるとか、いろんな人権無視の教育が行われていたことが、事件後の7月20日に開かれ、約500名の父母が集まった全体保護者会で明らかになりました。
 この熱い父母の訴えに、学校は一部始終を録音し、後日公開することを約束しました。さらに、2回目の全体保護者会の開催も約束し、夏休みになりました。
 この後、2回目は9月8日に開催されましたが、40人学級や校則の改正と体罰の禁止などを約束しただけで閉会にしてしまい、以後の全体保護者会の打ち切りが教育委員会から転任した新校長によって強行されました。


2001年7月6日午前8時30分頃の校門前の追悼の様子

2001/7/6校門前追悼

 「考える会」は、この全体保護者会で積極的に発言し、学校(教育)の再生を模索したメンバーの呼びかけで、事件の翌年の19991年1月27日に約30家族が集まって結成されました。
 当時の目的は
  1、「事件」の原因究明
  2、事件を忘れないための記念碑の建立
  3、管理主義教育をやめさせること
  4、生徒、先生、育友会(PTA)の三者協議会の充実
  5、父母会の開催
 これらの当初の目的の他に、この後の、第1回全体保護者会の録音テープの公開を求めて裁判を闘い、その中で、「親の教育権」の確立が最重要な目的となりました。
 しかし、事件後すぐの頃は原因究明が急がれる事柄でした。
 それは、マスコミなども取り上げた、高校生たちの集会で明らかにされ、また、各団体の主催する集会などや学校主催の全体保護者会等で明らかになった体罰やみせしめ的強制による教育の実態でした。
 とりわけ、長田高校(旧制3中)を頂点に公立高校がスライス状に輪切りにされた第三学区の中で、新設校の高塚高校がランクを一つでも上げるために、校門指導の徹底や服装チェックや持ち物検査で厳しく指導されていた実態が明らかになりました。
 このような中で、管理主義教育の批判が世論となり、それまで非公開だった教育委員会の会議を10名に限って公開したり、11学級45人のマンモス校の解消を目指すと言って、40人学級の導入を行ったのでした。
 一方、校門を押した細井教諭の裁判で、学校ぐるみで決めていたはずの校門指導が、職員会議が校長の補助機関にされたために教職員の中で意識統一されておらず、その安全性についても討論されていないことも明らかにされました。
 さらに、被害に遭われた石田さん宅は遅刻したことを非難したり、抗議する手紙や電話で二重、三重の苦しみを強いられました。悲しさの中に包まれる被害者をさらに精神的に苦しめるやり方は権力の恐るべき犯罪と言えると思います。しかし、被害者の会などが出来て、一定の理解が得られる今日でこそ、普通に主張できる被害者の人権尊重優先の思いも、当時では「世論」の前に黙って耐えるしかなかったのです。
 こんな状況を、教師の暴力で息子さんが自殺され、裁判闘争をされた内海さんも「二度も三度も家族ぐるみで殺される」と表現されました。

集会の様子

 以上、色々と当時を振り返って、原因究明の必要性が第一であった現状を述べました。もっと原因究明で明らかになった事が沢山ありますが、明らかにしていく過程で、情報公開の重要性に突き当たりました。
 この教育情報の開示は内申書公開裁判で争われていました。私たちはこれを一歩前進させる取り組みにする必要に迫られました。それが、全体保護者会の録音テープ非公開損害賠償請求裁判でした。この詳しい取り組みと闘いは「神戸発!『親バカ』奮戦記」に纏めていますので是非読んで見てください。
 要するにタイトルにしていますように「校門圧死事件」から「親の教育権」を求める、ということです。親には学校で起こっていること、成績以外のこと、いじめや体罰など知りたいことを知る権利があるということを権利として認めさせる、当たり前のことにしたいと考えているのです。

 「神戸高塚高校事件を考える会」会則 −申し合わせ事項− (抜粋)
 
 1、(会の目的)
 この会は、1990年7月6日の朝、神戸高塚高校の通用門で発生した校門圧死事件の原因を探り、あるべき高校教育のあり方を父母の立場から考え、改善の実施を求めていきます。
 2、(会の活動)
 この会は、会の目的を達成するために、次の活動を行います。
 @、校則や体罰をはじめ、校門圧死事件の背景となった高校教育現場の実態等について、父母の立場からの調査や解明を行い、改善案を提案し、実現に向けて努力する。
 A、前項の活動を成功させるための学習会を行う。
 B、この会が行った調査の結果や学習内容を神戸高塚高校育友会(現PTA)会員に知らせる。
 C、神戸高塚高校育友会(現PTA)、神戸高塚高校教師集団、地域の民主団体、協力共同ができる団体に対して、この会の内容を知らせ、協力を要請する。
 D、前記の活動を保証するための財政活動。