ナボコフおもちゃ箱 2008年







ニュースThe Original of Lauraは焼きません」 

Guardianによると、ナボコフの唯一の遺産相続人であるDmitri Nabokov氏が遂にThe Original of Lauraを焼かない」決心をしたそうです。

The Original of Lauraとは、ナボコフが死ぬまで書き続けていた未完の小説のタイトルです。本人は「死後はカードを破棄するように」と言い残していたのですが、DN氏は数年前から「父の遺言に従うべきか、大作家の遺作を世に出すべきか」で煩悶していました。ここへ来て煩悶の話題がしきりに出ていたので、おそらく後者の選択になるだろうと期待していましたが(前者であれば、黙って焼いてしまうでしょう)、ようやく出版の方向が決まり、喜んでいます。ナボコフの遺志には反するのですが、ごくごく一部を覗き見た(不正に、ではありません。生誕100年の1999年に出たThe Nabokovian(国際ナボコフ学会の会報)42号に2箇所からの抜粋が載っていたのを読み、コーネルの学会でDN氏が一部を朗読したのを聞いたものです)限りの印象では、大いに期待できそうに思えるのです。

DN氏は、すでに4月2日にZvezdaの放送で決心を語っていた模様です。

放送はロシア語ですが、DN氏が登場するだけではなく、レポーターがモントルーからパレスホテルやナボコフとヴェラのお墓も見せてくれますので、ロシア語はBGMでも充分楽しめます(私もロシア語がわかりませんのでくわしいコメントができず、申し訳ない次第です)。パレスホテル6階にあるかつてのナボコフの書斎も見せてくれます。当時使っていたランプやライティングデスク、「有名なバルコニー」(案内しているホテルの人は英語を話しています)からナボコフが見たままのレマン湖も写し出されます。パレスホテルのバーRose d'Orに当時から勤めているバーテンダー、Antonio氏も出てきます。98年春にパレスホテルに泊まって(トップページ他の写真はその時撮影しました)、ナボコフの逸話を聞くべくバーにも出かけ、アントニオ氏とも話をしました。DN氏のお姿を拝見したコーネルの学会もやはり10年前の秋でした。当然なのですが、お二人とも年を取られたなあ、とちょっと驚きました。記憶の中ではすべて当時のまま、時間が止まっていました。(4/23/2008)






YouTube上のナボコフ

YouTubeにあるものなのでいつまで残っているかわかりませんが、とりあえずご紹介します。(10/17/2008)


CBC "Close-Up"のインタビュー Part 1 Part 2

ホストはPierre Berton、ゲストがナボコフとLionel Trillingで、『ロリータ』について論じています。放送された時期は1950年代ということしかわからないのですが、アメリカで『ロリータ』が出版された58年以降でしょう。トリリングは最も早い時期に『ロリータ』の文学的価値を認め、擁護した批評家の一人でした。ナボコフが『ロリータ』執筆のきっかけとなった「檻の格子をスケッチした猿」とハンバートのつながりについて語ったり、少女愛好者の症例記録をどっさり読んだという話も出てきます。時折シャイな微笑みを見せるナボコフはとてもチャーミングです。トリリングも魅力的ですが(映像で見たのは私は初めてです)、番組の間中煙草を吸い続けているのが今見るととても不思議な感じ。


Nabokov and the Moment of Truth

モントルー時代のナボコフのドキュメンタリー。スイスの山を背景に補虫網を持って現れるところから始まり、「ロシアには戻らない。私が必要とするロシアはすべて私と共にあるという単純な理由からだ」と語り、Lolitaの冒頭を英語とロシア語で朗読、書斎で"The Texture of Time" (後にAdaになるもの)を書いたインデックスカードを見せ、文学の傑作や嫌いなものについて語ります。モントルーパラスのベランダに出て外を眺める場面、レストランでヴェラ、ドミトリと水入らずで食事をする場面、部屋でヴェラと笑いながらチェスに興ずる場面もはいっています。貴重な、夢のような映像です。インタビューは英語で、他の場面でもナボコフ自身は英語で話していますが、ナレーションと字幕がフランス語ではいっています。


Apostrophes: Vladimir Nabokov (Part I)

2006年のおもちゃ箱でご紹介したBernard Pivotによるインタビューが復活しています。その時にカットされていた部分も含め、スペイン語の字幕付きで完全版が出ている模様です。これで見ると、ナボコフはインタビュアーの方にも視線を向けていますし、確かに愛想はないのですが、それほど「狷介で倣岸不遜」という感じでもないように思えます。他の映像に比べ、なぜかあまり機嫌はよくないという印象です。ここではPart Iのみリンクしました。続きもYouTubeでご覧いただけます。



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