進化は事実?

                       小野山敬一

 人類はどこからきたのか、(そしてどこにいくのか)?……生物学では進化論で答える。
 進化とは、生物のある種から修正変化によって新しい種が生じることをいう。つまり、生物間に血縁関係があるとする。そして、進化は事実だとされ、化石記録などが証拠だという。
 ダーウィンは少しずつ徐々に生物は変化すると考えたので、多くの中間的移行型がいるはずだということになった。ダーウィンが当時の化石記録の不完全さをいいのがれにしてから百年余り、移行型を求めて莫大な数の化石が発掘された。しかし、疑わしい数例をのぞいて、化石記録に移行型は発見されていない。むしろ多くの科や綱は突然に出現している。また、多くの種は長期間にわたって不変で、異なった種は突然に現われる。
 結局、間は埋められないままである。このこと自体も進化論の予測する範囲だという人がいるが、化石記録に現われた過去の生物間に血縁関係を読むのは、やはり進化説という理論による解釈である。
 進化論が設ける第一の理論が、進化という現象(というより歴史的出来事)が実在したという主張である。この上に、進化の歴史や仕組みについての諸理論が来ることになる。
 そもそも科学における事実とは、理論というめがねをかけて見える事実だと科学論は教える。それにしても、進化が確かな理論的事実だとさえ思えないのは、生物的自然の成り立ちについて、決定的に重要なことがわかっていないからだろう。起源などはやはり簡単には答えられそうにない。


注釈 1992. 6. 30.
7.進化は事実?
 ここではデュエムや以降の理論負荷性を認める科学論を念頭に置いている.漸進的に進化するとすれば中間移行型が想定できて仮説を確証するという話になるが,そうでないと仮定すると困難になる.しかし,何をもって中間移行型とみなすかもまた理論に依存するのは言うまでもない.その意味では進化現象(あるいは出来事)実在論と進化機構論とは切り離せない.
文献
デュエム,P..1914. (小林道夫・熊谷陽一・安孫子信訳,1991)物理理論の目的と構造.xiv+531pp.勁草書房 ,東京 .
Futuyma, D. J. 1983. Science on trial: the case for evolution. xii+251pp. Pantheon Books, New York.
Godfrey, L. R. (ed.) 1983. Scientists confront creationism. xxi+324pp. W. W. Norton & Company, New York.
Kitcher, P. 1982. Abusing science: the case against Creationism. x+213pp. MIT Press, Cambridge.[科学哲学者は自ら墓穴を掘るの類い]
ハインズ,T.F..1973. (池田光男訳,1991)創造か進化か−聖書と進化論の問題−.182pp.聖書図書刊行会(いのちのことば社発売),東京.
Lo/vtrup, S. 1987. Darwinism: the refutation of a myth. x+469pp. Croom Helm, London.
モリス,19**.創造の科学的論証.聖書と科学社.[Morris, H. M. ed., 1974. Scientific creationism. の訳らしい](未入手)
Newell, N. D. 1985. Creation and evolution: myth or reality? xxxii+205pp. Praeger, New York.
ネルソン,B.C. 1958?.(山岸 登訳.1961)種類にしたがって.271pp.伝道出版社,東京.


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