みなさ〜ん、こんちは〜
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『ラブレター』の感想
4章小説第六作『ラブレター』、かつてない長編になりましたが、素晴らしい出来映えだと私は思います。
一人の人がすべてを書いても、こうはうまく書けないのでは、そこまで感じました。新人の方が二人もいたのに、不思議なぐらいです。
起の章
ぱられるさんの文章のこなれ具合、どなたかもおっしゃっていましたが、初めてなんて信じられません。やはり、漫画を描いていたということで、劇作ということ自体は手慣れていらっしゃったのかなあ、と思いました。
漫画風にいえば、まず「つかみ」として、華やかな女子生徒二人を登場させる。男ならたいてい許します(笑)。ページをめくると、タイトル『ラブレター』から想像できる通りの展開。スムーズに読み進めることができるでしょう。
しかし、そこには、真っ白な便箋・・
次回へ繋げる「ひき」として、とても秀逸だと思いました。
ただこれが、4章小説であるため、つまり、この先の展開はまだ無いわけです。いったい誰がこの謎を解くのか、という点で、あるいは「解けるのか」という不安で、少なからずドキドキでしたよ。
ぱられるさんは、初めてにしてすでに、「4章小説」の遊び方、まわし方まで掌中にしている、と感じました。すごいです。
承の章
奈々美とさつきの会話が、自然で、若々しくて、そしてことがことですから読者も一緒になって推理して、展開として盛り上がっていきます。
> 奈々美は、さつきにずばり心の内を見抜かれた気がして少し顔を赤らめたのだった。
奈々美の戸惑いを象徴する描写だと思います。
そして直後に、
> 午後の体育の授業が始まった。例の口うるさい生活指導の竹刀先生こと、虎吉先生の体育だ。虎吉先生は生徒みんなの嫌われ者だった。
ここで、謎を解く糸口が提示される。
犯人は(いや、差出人は)、体育教師という流れ。先の展開の可能性がぐっと広がりますよねえ。平松さんではないですが、私も、18禁の世界や、実はさつきが、ということをこの辺りで考えつきました。
しかも、次回を現役の燐華さんに指名、この演出も心憎いです。
市原さんも、かなり新人離れしていらっしゃると思いました。
転の章
たぶん、謎はここであらかた解明される、というつもりで、私は待っていましたが、「白い便箋」の意味をどう付けるか、ということについては、担当じゃないしともうおまかせの心境でした。燐華さんの答えは如何に・・
しかし、「じらし」が入りましたね。
意識してそういうテクニックをつかったのではないとは思うんですが、「つかみ」「ひき」「じらし」と、みなさん、嘘みたいな練達ぶりです。
> さつきは心情を当てられて、言葉が返せなかった。
ここ、注目だと思います。
当初の戸惑いから、奈々美の体勢が立ち直っていく姿が端的にでていると思いました。
市原さんの「承の章」と並べていただければ、承と転は、対句仕立てになっているということがわかると思います。
構造として、美しい、と感嘆しました。
しかし、
> ふと、教室のドアを見ると、虎吉先生が奈々美を見て、立っていた。
これで、次回、しかも最終回ですから、起、承、転と一分の隙もないような進行を受けて、なおかつ、冒頭の謎も解かねばならない、ということになったわけです。
大丈夫? 平松さん・・
というのが、私の正直な感想でした。むごいとも思いました。
結の章
見事です。
こんなに書ける人だとは、正直、思っていませんでした。
ごめんなさい、平松さん。
ぐっと、ぐぐ〜と、私の心の中でランクアップですよ〜!!!
何が一番見事といって、明るい、夢のあるエンディング、・・気持ちよくほっとできて謎も解けて、大満足。
こういうのが、最も難しいはずです。
とうてい、私には書けません。尊敬いたします。
安易に、18禁や、さつき犯人説に行かなかった、平松さんの意気が、うれしいです。
教師と生徒の恋愛を、これぐらいすがすがしく描いたものを、もう長い間読んでいない、観てもいない、という気がします。
真っ白い便箋は、口にすることのできない言葉という意味だったんですね。
> 「先生、あなたって、ばか・・・・・・・。」
底抜けにばかです。
でも、信じられないぐらい「愛を信じている」。
もしかしたら、このあと二人はうまくいかなくなってしまうということもあるでしょうが、この喫茶店のこの瞬間、「愛」は成就している、と感じました。
(感謝です。書いてくださったみなさん)
「ラブレター」は、まっとうされ、「物語」は幕を閉じる。
終わりかたも、溜息でるくらいきれいです。
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あまりにレベル高い作品が、出現してしまったようです。
でも、みなさん、一旦忘れましょう。
肩に入っている力を抜きましょう。
こういうのは、そうそう続けられるものではありません。
何ヶ月先か、何年先か、いつかまた自然に、本物が織り上がれば、それでOK、と私は思います。