国境稜線/その6 日高編
  中日高「東尾根JP〜中ノ岳〜ニシュオマナイ岳〜神威岳」
  2008年4月29〜5月2日/単独    
    沿面距離  48Km    その2
  


4日目:早朝、ニシュオマナイ岳北斜面の落差ある大滝に高度感を実感、雪面を繋ぎ次いでC1400から短いハイマツ帯を抜けると今回の縦走経路上では初踏となるニシュオマナイ岳山頂である。
 南東に平坦尾根が流れる山頂部は、ハイマツに覆われ雪堤から振り返ると、遠くなった山容の広がりに辿った道程を感慨深く眺める。
 山頂南東は、東尾根側の岩場まで平坦台地が広がり「鹿の遊園地」箇所でもあり、風を避けれる絶好のテント場適地の地形である。
 神威岳への登攀ルートを辿ると、登山道が尾根に上がる高点以降に雪面が広がるが、稜線上には黒い部分が繋がる地形を確認しつつ高度を300m程下げる。
 コルから見上げる神威岳山容は、大きくどっしりした景観であり、山肌に深く刻まれた沢筋に挟まれて延びる尾根地形は神威岳西尾根の岩峰群も加わり迫力がある。
 取付点から低灌木・ハイマツ群を抜けて岩場枯地を這うように高度を上げ、雪斜面に辿り着くと突然「登山道標識」を見る…やった着いたぞ!!嬉しさと安堵感が胸一杯に広がる。
 振り返ると遠く遠くに東尾根・ペテガリ岳・中ノ岳等の峰々が続き、この短足の一歩も努力すれば大きな踏み跡を残せると暖かな陽気下しみじみと想い返す。
 この地点が決断…このままソエマツ岳を目指し野塚峠まで向かうには4日間(予備1日)必要で体力・食料は十分と判断するが、入山して4日目、天候が不明である。
 ラジオを車中に忘れ、入山後直ぐに携帯電話の電池切れも重なり、他登山者に出逢う事もなく天気情報が得られない。
 更に
過去、坂口氏「一人歩きの北海道山紀行」と夏季に神威岳からソエマツ岳まで濃密な薮漕ぎに苦しんだ末、台風接近によりソエマツ岳(ソエマツ岳山行記録)から緊急脱出した想い出も重なり下山と決心する。
 ここまでの道程の概要は、ポンヤオロマップ岳までは夏道登山道、JPへは連続した
小大起伏に少量の雪・灌木に体力と時間を消耗、JPから中ノ岳は1469P南斜面は雪面あって薮漕ぎは特に苦にならない、中ノ岳〜神威岳間は、終始「鹿道」が発達して比較的快適に辿れ、全般的にアイゼン装着で足がすくむ地形通過もなく、一番苦しんだのはペテガリ東尾根であったと想い返す。
 奥深くなった国境稜線を辿る事ができた達成感を抱き、神威山荘へと谷間に咲く山桜の色が鮮やであり、夏道からシュオマナイ川に降り立ち、春の息吹が流れる清流で顔を洗うと爽快感が漂い、久しいきれいな水をカブ飲みする…ありがたい!!
 沢筋の雪渓歩きは怖いと想定したが夏沢であり、冬季用プラ靴で渡渉を繰り返すのが結構大変…靴を濡らす場面もあって林道に出ると例年ならば登山者の声が響くはずの「神威山荘」に夕刻到着する。
 近年、神威山荘へのシュオマナイ川沿い林道は、11Km程手前にゲート(施錠)が設置され、神威岳周辺の山々は一層遠き山となってしまったが、これも道路維持管理の難しさの結果である。
 ゲートまでの林道状況は、小規模な崩壊箇所が6箇所程あるが修復工事の形跡は一箇所も見られず、伐採木材の運搬作業が実施されれば下流部で一部工事をと予測するが、全面通行の工事は難しいと思われる。
ここから大失敗編

 本日
の山荘到着までの行動時間は11時間、通常、久しぶりの屋根付きの山荘で一泊であるが、当初の山行計画は神威岳からピリカヌブリを経て野塚峠まで予定、「足」となる自転車は野塚峠にある。 
 以上の背景に林道封鎖の状況も加わり、ここにいても仕方がない!!林道歩きは楽なもの!!と無謀にも日暮れ間近に山荘を出発する。以下、言葉に尽くせぬ温情に触れた人への「お礼の手紙」を一部引用して掲載します。
前文「略」
「私は、先日大変お世話になりました「及川です」…その節は言葉で言い尽くせぬ程に「人の優しさ/ご好意」に甘えて申し訳ありませんでした。
 あの場面は、私の無謀な行動結果にて深夜「佐藤氏宅」灯りを文字通り一筋の光と訪ねて、山中であれば遭難状況であり多いに反省の次第であります。
 当日(山中4日目)の行動は、山・沢歩き9Km/林道封鎖にて山荘から林道22Km歩きの合計31Km行程であり、体力過
信により惨めな状況に陥りました。
 冬用の固いプラスチック靴は、林道歩きには不向きの上、靴が沢で濡れ重装備も加わり、高峰から山荘まで11
時間次いで山荘からの林道を7時間を暗中に休み無く歩いた結果、足裏皮膚が浮き、一歩々が辛く精神的・肉体的にも限界の中、暗夜に浮かぶ林道は際限なく続いた時間帯に「灯り」を見た時は感動!!S氏が言われた「老人歩き」の姿状態にて深夜「水」をいただき、喉は食事を受付ませんでしたが安堵感一杯でした。
 翌早朝、道端の浮浪者のような私へ御主人が「コーヒー/おむすび/おかず」を与えて下さった御夫妻の「優しさ」に涙が止まらなく肩を振るわせて泣けました。
 お腹も減り道端で「ありがたい「と食事に手を合わせて頂こうとするのですが見るだけで…幾度も幾度も涙が流れ、「おむすび」を手にすると久しい温もりに…また涙。
 その後、御主人が白いテーピングの裸足を見て気遣って下さり、仕事の手を止めて「野塚峠」まで遠路に拘わらず送っていただき本当に感謝いたしました。
 帰路、お礼をと森の喫茶店風の素敵なログハウスに夜伺うと子供さんが「来たよ」と皆さんの歓迎に感激、奥様に初めてお会いして目頭が熱くなり「早朝」のお礼を言うのが精一杯でした。
 今回、山以上に「人の優しさに触れ、私も他人に思いやりを持ってと教えられた事が何よりの教訓であり、今回の出来事を大事に胸に秘めておきたいと想います。
 以下「略」
ありがとうございました…日高方面に向かった際にはGOOD HOUSEに寄らせていただきます。
●S氏より足の回復状況メールをいただき恐縮しましたが、良き人を訪ねた幸運と出来事に幸せ気分になりました。
1 中ノ岳山頂から神威岳
2 分岐点からニシュオマナイ岳と神威岳
3 神威岳とソエマツ岳への東尾根
4 ニシュオマナイ岳北面
5 神威岳北面

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