前回のイタリア旅行で見逃したコロッセオとフォロ・ロマーノは必見と思っていたが、コロッセオ入場の列は延々と建物を取り囲み、殆ど動かない。改めてガイドブックを見ると、予約センターの電話番号が・・・甘かった。ということで、コロッセオの内部見学はあきらめて、外周をゆっくりと回ってみる。

 コロッセオは西暦72年にヴェスパシアヌス帝が着工し、4万人の奴隷を使って、8年で完成させた闘技場。約6万人を収容することができ、捕虜となった兵士が剣闘士として出場し、剣闘士や猛獣と闘ったという。甲子園球場は50,454人収容なのでそれよりもはるかに多い観衆が熱狂したことになる。
 紀元前753年に、パラティーノの丘にローマが建国。丘の麓のこの場所が公共の場として整備された。そして紀元前509年にローマ共和国が成立すると、「フォロ・ロマーノ(ローマ人の広場)」として発展していったという。
 2千数百年前の人々を見つめ、その息遣いや祈りを聞いてきた建物が、灼熱の太陽のもとに今も静かに佇んでいる。

 ローマを歩いていると、街中で遺跡や由緒ありげな建物に出会う。ガイドブックにのっているのは、ほんの一握り。一つ一つの由来がわかればどんなにか楽しいと思う。
 現存する古代ローマ建築の中でもっとも完全な形を残しているといわれる神殿遺跡パンテオンの巨大ドーム。初代パンテオンは紀元前ものだが、焼失し、現在のものは、118年に再建されたもの。ミケランジェロが「天使の設計」だと絶賛したという。

 ヴァチカン市国の玄関口に当たるサンピエトロ広場。大規模な行事には30万人が収容できる広場だという。ローマ市内を観光しているとしょっちゅうその名前を聞く、ベルニーニの設計らしい。荘厳な大柱廊とその上に飾られた140体の聖人の像が荘厳。
 サン・ピエトロ大聖堂の内部を見学するために、見学終了時刻の18時までにと駆け込んだが、その時間にしてなお、入場のための列が延々・・・そこで、いつもの「ま、いいかぁ」の一言で、入場を断念。広場の日陰で腰掛けて、鳩にパンやりをしておしまい。
 トレビの泉は観光客で溢れかえっている(でも、なぜか今回は日本人観光客がとても少なかった)。中央の男性は、バラの花束を抱え、カップルを見つけては、女性にバラを数本差し出し、彼氏に写真を撮らせ、彼氏にお金を要求する。路上の物売りも含めて、炎天下、立っているだけでも辛い中を、こういう商売をする人が、ここかしこにいる。

 道端には、物乞いの人たちも少なくない。ただ、意外なのは物乞いの人たちの身奇麗なこと。小さな子と一緒に道端に座っている母親は、自分も子供も清潔で垢抜けた服を着て、子供に新しいおもちゃの箱を開けてやりながら、前には、お金を入れてもらう紙コップを置いている。厳しい暑さの中での観光でによれよれになって、寺院の階段で休憩している私のほうがよっぽどみすぼらしかったかもしれない。
 ローマでの観光の足は地下鉄だった。観光スポット近くには駅があってとても便利。
 ローマでもナポリでもいたるところにペンキで落書きがされているが、ホームに入ってきた地下鉄車両にも派手な落書きがされていて驚いた。
 また、あるときは、地下鉄列車内で数人の若者が、賑やかにアコーディオンやバイオリンを演奏し、演奏が終わると乗客にチップを要求(さすがにチップを与える人はいなかった)することも。