●意外に近い大阪ベイエリア
イメージだけで、実際に行ったことの無い方も多いと思いますので、
咲洲・コスモスクエア地区の紹介の
webページに記載されているデータから・・・
出発地 | 交通機関 | 所要時間 |
本町 | 自動車 | 約15分 |
地下鉄・OTSテクノポート線 | 約15分 |
新大阪 | 地下鉄・OTSテクノポート線 | 約35分 |
大阪(梅田) | 地下鉄・OTSテクノポート線 | 約25分 |
関西国際空港 | リムジンバス | 約45分 |
大阪国際空港 | 自動車 | 約30分 |
関西文化学術研究都市 | JR・地下鉄・私鉄 | 約60分 |
データからは、20〜30分程度で大阪市内要所とつながっており、
意外に近いことが分かります。
上記のwebページでも
「将来性のある頼もしさは快適で多彩なアクセスから」と謳われ、
どちらかというと「近さ・アクセスの良さ」を武器に売り込みをしています。
ではなぜ?
実際の距離以上に「遠い」イメージを持たれてしまうのでしょうか?
原因を分析してみます。
●現地へ行くことで実感させられる「遠さ」
ATC・WTCへ一度でも行ったことがある人は、梅田〜コスモスクエアの所要時間が約25分と聞くと意外に思うと思います。
実感からはほど遠い数字です。
なぜでしょうか?
駅からすべての目的地が遠いんです。
鉄道マニアでもない限り、駅そのものが目的地、という人はほとんどいないと思います。
ほとんどの人は中央線のコスモスクエア駅を降りてから目的地をめざすことになりますが、
コスモスクエア駅前には何にもないので、必然的にOTSニュートラムに乗り換えるか、
歩いて目的地をめざすことになります。
これがまた遠い遠い。
例えば
WTCの市役所に営業活動に行くとします。
1.
コスモスクエア駅でニュートラムに乗り換え、トレードセンター前駅で降りてATCの中を抜けてWTCへ
2.
コスモスクエア駅から徒歩でWTCへ
どちらの方法でもニュートラムやWTCのエレベーターの待ち時間(!)があるので
コスモスクエア駅からWTCの目的のフロアにたどり着くのにおおよそ10〜15分くらいかかってしまいます。
また、
トレードセンター前駅とATCとの位置関係も悪く、ATCの一番端っこにつながっているだけなので、
反対側の端にあるATCホールに行こうと思うと、駅を降りてから5分くらい歩かされることになります。
この
「歩かされる」というのがミソで、おそらく駅の配置を決めた人はATC内の「回遊性」を作り出すために
今の場所に駅を作ったと思われます。
つまり、
駅を施設の真ん中につくると駅の周りしか客が来ない
↓
駅を若干遠くにつくれば駅〜施設中心部の間もにぎわう
という考え方です。
でもこれが本当に利用者の立場に立った考え方かどうかは甚だ疑問です。
回遊性=歩かされることに他ならないわけですから。
また、レジャーではなく仕事でベイエリアに来ている人も多数いることが全く考慮されていません。
そんなわけで、コスモスクエア駅から各目的地まではいずれも10分以上かかります。
本町〜コスモスクエア間が約15分ですから、この「10分以上」という時間は
致命的に「遠い」というイメージを与えてしまいます。
何もない埋め立て地に造ったのだから、なぜ駅とATC・WTCを同じ建物にしなかったのでしょうか?
もしWTC2階にトレードセンター前駅があったなら、これほどまでの遠さは感じないはずです。
●イメージとしての「遠さ」
大阪人の頭の中には「南港=遠い」というイメージがインプットされています。
(独断でごめんなさい)
事実、OTS線が開通するまでは、梅田〜中ふ頭間は住之江公園経由で40分以上かかっていたのですが、
OTS線ができて所要時間は大幅に短縮されました。
しかし、
「OTS線ができて、南港への所要時間が従来より大幅に短縮されたんですよ」
「しかも咲洲・コスモスクエアは南港と違い、もっと市内中心部に近いんですよ」
というPRが全く為されていません。
そもそも「咲洲」「コスモスクエア」という呼び名は十分定着しているとはいえず、
民間の集客を必要とする施設は少しでも知名度を上げるために
コスモスクエア地区にあるにも関わらず「南港」を使用しています。
「新南港ビックトップ」(コスモスクエア駅前にあった、「キダム」の会場)
「南港The・フリーマーケット」(コスモスクエア駅前の空き地にて開催)
このことは「咲洲」「コスモスクエア」が
ブランドとして機能しないことを端的に表しています。
そもそも何で「コスモスクエア」なんていう恥ずかしい地名つけたんでしょうか。大阪市のセンス疑います。(もともと有ると思ってないけど)
また、民間だけでなく市関連施設についても「南港」「咲洲」「コスモスクエア」の
使い分けがバラバラです。
事実、「咲洲ATC・WTC」ではなく「南港ATC・WTC」と呼ばれています。
いずれにせよ、「咲洲」「コスモスクエア」の知名度を上げ、「南港」との棲み分けを
明確に図らなければ、大阪ベイエリアはいつまでたってもイメージ的に「遠い所」のままです。
大阪ベイエリアは施設配置だけでなく、
イメージ戦略でも失敗していると言えるでしょう。
(東京「お台場」との比較・大阪市のイメージ戦略の失敗については次回に詳しく考察してみます)
●価格的な「遠さ」
近いところに行くのは安く、遠くに行くのは高い。
当たり前です。
ですから、
交通費が高い所→遠い所という印象を持つのはごく自然なことです。
「
OTSのお得な切符」でも述べたように、OTS線は高いので、
OTSを使ってベイエリアを訪れたほとんどの人は、先ほどの施設配置の悪さとの相乗効果で
「高くて遠いところだなぁ」という印象を持ってしまいます。
また、OTS料金がベラボーに高いので、
例えばインテックス大阪での催し物開催時、中ふ頭駅の券売機を観察していると、
いまだにOTSを使わない
南回りのルートの料金表を見て切符を買う人の方が多いです。
南回りですと前述の通り、市内中心部まで40分くらいかかるので、
これがさらに「大阪ベイエリアは遠い」というイメージを加速するという悪循環に陥っています。
車利用の人に対しても「大阪港咲洲トンネル」が有料(普通車片道200円)のため、
OTSと同様、
「行きにトンネル代とられたので帰りは無料の南回りから帰ったら
大渋滞に巻き込まれて2時間近く余計にかかったぞバカヤロー」みたいな話を
何人もの人から聞いたことがあります。
残念ながらこれが「アクセスの良さ」を売りにしているはずの咲洲・コスモスクエア地区の現状なのです。
●ではどうすればよいのか?
以上の分析を総合すると、大阪ベイエリアは、
「イメージ的に遠く、また実際に(時間もお金もかかるので)遠く感じる」
ということになります。
ではどうすればいいのでしょうか。
簡単です。
遠く感じる原因を一つづつ潰していけば良いんです。
・
●現地へ行くことで実感させられる「遠さ」
実際の目的地までに実際にかかる時間を少しでも短くする以外に方法はありません。
コスモスクエア駅〜WTC間の無料シャトルバス運行
OTS線のダイヤ見直し(中央線との連携を図るべき)
等が必要ですが、これをやったとしても短縮時間は2〜3分程度かと思われます。
駅やWTCの場所は変えようがない以上、仕方がないですね。
コスモスクエア駅の無駄な乗換改札の廃止(=OTS上乗せ料金の廃止)も有効かと思われます。
・
●イメージとしての「遠さ」
「咲洲・コスモスクエア」と「南港」のエリア分けを明確にすべきです。
現状では、咲洲・コスモスクエア地区の施設が「南港○○」と呼ばれ、
逆に、従来からの南港地区にあった高校が「咲洲高校」に改称されるなど、
「咲洲」「コスモスクエア」「南港」の使い分けにポリシーが全く感じられません。
また、現状で知名度の低い
「咲洲」「コスモスクエア」はどちらかに統一するのが良いかと思います。
現状の使い方では混乱をきたすだけです。
個人的には「コスモスクエア」は地名として恥ずかしいので止めてほしいです。
・
●価格的な「遠さ」
OTSの値下げ・大阪港咲洲トンネルの無料化が必要です。
「入島税」を徴収している限り、大阪ベイエリアの発展はあり得ません。
OTS線は交通局と港湾局の縄張り争いからできた産物であり、
本来、OTSが別会社である必要は
全くありません。
OTS線を交通局と統合し、別料金の徴収を止めたとしたら当初数年は大赤字になるかと思いますが、
今すでに破綻している施設(ATC・WTC)の赤字を埋めるのにかかる1000億円以上に比べたら
微々たるお金ですし、
市が本気でベイエリアを発展させようと考えているのであれば、
必要な赤字として割り切るべきです。
鉄道はサービス業です。
多くの乗客がわざわざ不便な遠回りのルートを選択している事実を
もう少し重く受け止めるべきです。
・
ちなみに、市バスもOTSの縄張りのエリアを
わざと通過しています。
市バスの44A系統は、ATC・WTCのすぐ横を通って行くのですが、この間全く停留所が無いんです。
「中ふ頭」の次のバス停が「大阪港」だなんて、ちょっと
やりすぎとちゃいますか?交通局さん。
ちなみにこのバスに乗れば、弁天町〜中ふ頭間が200円です。標準所要時間24分。通常の一日乗車券も使えます。
市交通局 vs.OTSで縄張り争いをせず、もう少し
利用者の立場に立ってバス停の設定をしてほしいものです。